星界の風章「陰謀」   作:いち領民

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星界の風章「陰謀」 第四章

軍令本部・情報局所属・特務艦隊は、久々に活気に満ち溢れていた。諜報員騒ぎがおきてから数ヶ月ぶりに任務を遂行することになった。

 

 

「ルーフ参謀、久々の任務だな。腕がなるぜ。ルーフ参謀の手腕を期待しているからな。」艦橋の司令座席で指をポキポキならすヘルハウンズ

 

 

「はい、ヘルハウンズ提督の期待に添えられるように頑張ります。」いつものように冷静に対応するルーフ

 

 

「相変わらずだな。久々の任務なんだからテンションを上げていかないか。部下の戦隊司令たちは、かなりやる気があるみたいだ。ちょっと、呼んでみようか。」そういって、通信をつなげるヘルハウンズ

 

 

「ヘルハンズ提督、グリュカシア千翔長です。どうしましたか?」

 

「久々の任務だからな。戦隊司令の気合を確認しようかと思ってな。まぁ、君たちとは、突撃艦の翔士のときからの付き合いだからな。」角刈りのように短く切りそろえられた頭をかきながら言うヘルハウンズ

 

 

「クス、相変わらずですね。でも、大丈夫ですよ。腕もなまっていないですし、これまでの経験もあります。今回の任務も上手く行きますよ。だから、安心してください。それでは。」不敵な笑みを残してグリュカシアの通信は切れた。

 

 

同様に、ルーキスにもつなげるヘルハウンズ

 

 

「ヘルハウンズ提督、ルーキス千翔長です。およびですか?」

 

「ルーキス千翔長、気合入っているか?」と突然聞く、ヘルハンズ

 

 

「…もちろんよ。人類統合体の男連中なんかに、負けてやるわけ無いわ。ボコボコにしてやるわ」と少しとまどったが、得意げな笑みを浮かべるルーキス

 

 

「うん、さすが、ルーキス千翔長だな。じゃぁ、期待しているぞ」と満足げに次の通信をつなぐヘルハウンズ

 

 

「ヘルハウンズ提督、何かご用ですか〜?」いつものようにのんびりとした口調で穏やか笑顔で言うマーヴェジュ

 

 

「マーヴェジュ千翔長、気合を入れているか?」

 

 

「はーい。気合は入っていますよ〜。」と両手を前に出して握りこぶしを見せるマーヴェジュ

 

 

「うん、いいぞ。じゃあな。」そういって、最後の戦隊司令に通信をつなげるヘルハウンズ

 

 

「ヘルハウンズ提督、お呼びですか?…まさか、個人的な話をするのですか?(ついに愛の告白をしてくるのですか)」瞳を情熱的に輝かせるイーディア

 

 

「……個人的な話ではないのだが、久々の特務艦隊の任務でやる気をみなぎっているかどうか、確認したかったからだ。(彼女の態度は少し苦手だな)」苦笑しながら言うヘルハウンズ

 

 

 

「そうなんです…少し残念です」

 

「何が?」

 

 

「いえ、こっちのことです。大丈夫です。ヘルハウンズ提督は、命に代えても私が守りますから。」決意を込めて言うイーディア

 

 

「わかった。じゃあ、野郎ども。いくぜ。ダイ・セーレ」そういって、艦隊で指揮丈を振るうヘルハウンズ

 

 

 

情報局・特務艦隊が出発して2週間後、目的地の門へあと数日というところまで迫っていた頃、アルネージュ達は、旗艦の作戦室の一つを諜報員特別対策室として借りていて、今後の対策を話し合っていた。

 

 

「それで、フォシュデール千翔長、目的の相手は、尻尾を出したかしら?」こいスルグーを一口つけて、苦い顔をするアルネージュ

 

 

「いえ、今のところは、何もないです。でも、本当に今回の任務で動き出すのでしょうか?」少し疑問の顔をするフォシュデール

 

 

「それは、間違い無いと思うわ。そっちの専門家の二人も何か思うところがあるみたいよ。」そういって、部屋のすみで自分の愛用の武器の手入れをしている二人をさすアルネージュ

 

 

 

「あのう…二人とも熱心ですけど、やはり、何か起きるのでしょうか?」とダリシュに尋ねるフォシュデール

 

 

「ええ、僕の勘では、確実に起きます。そのために作戦目的をそこの場所を要請したのです。敵が動くために。フォシュデール千翔長も与えられた役目を頑張ってくださいね。」

ダリシュは、そういいながらも青色の奇妙な装飾銃の手入れをしていた。

 

 

「それが、『アース』ですね。噂のオリハルコン製の銃を見るのは、初めてです。」興味深そうに眺めるフォシュデール

 

 

「フォシュデール千翔長、どうして、それを知っているの?そんなことは、あの記録映像にものっていなかったわよ。」驚くアルネージュ

 

 

「ええっと、それは。」といいかける。

 

「それは、フォシュデール千翔長が、サーシャさんと幼馴染だからですよ。彼女から色々聞いたのでしょう。」少し微笑むダリシュ

 

 

「サーシャ…誰、それ?それがヘルマスターの銃を知っているの?」

 

 

「ええ、サーシャ、まぁ、正式にはクラミス・ウェフ=ハイネリア・サーシャですが、彼女は『青の牙』のメンバーです。まぁ、最近なったばかりですが、その彼女から色々と話を聞きました。」なぜか、恥ずかしそうに言うフォシュデール

 

 

「ふーん、そういう関係というわけね。でも、いくらなんでも、『青の牙』の秘密をペラペラとしゃべるのは、よくないわ。後でおしおきしないといけないわ。」そういって、愛用の剣を眺めながらうっとりとした感じでいうティアラ

 

 

 

「アイリーフさん、サーシャにそんなことしないでください。」いつもは、冷静なフォシュデールは珍しく怒った。

 

 

「冗談よ。私にそんな権限無いですし、ダリシュがいいならいいわよ。」そういいながら、剣を鞘に収めた。

 

 

「そうですね。まぁ、サーシャさんの件は厳重注意で止めておきます。」

 

 

「そうですか、わかりました。」ほっとした様子のフォシュデール

 

 

そのフォシュデールの様子を見て、アルネージュはなぜか、苛立ちをおぼえていた。

 

 

「フォシュデール千翔長、その子の話はもういいでしょう。それより、任務をしっかりしなさい。私達は、遊びにここにきているわけではないのよ」いつも以上にキツイ目で睨むアルネージュ

 

 

「はい、わかりました。(何をアルネージュは怒っているのだろう?)」困るフォシュデール

 

 

「それで、本題に戻しますけど、二人とも注意だけはしておいてください。何が起きても冷静にいれるようにしないといけません。」そういって、装飾銃を腰にさして、真剣な表情を浮かべるダリシュ

 

 

「そうね。私も久々にこの愛刀の『ラミューズ』の出番が出そうね。」そういって、いつもとは違う迫力のある表情になるティアラ

 

 

「ハハ…そうですね。(なんだか、普段の二人とまったく違う。これは、覚悟をきめておいた方がよさそうだ)」二人の雰囲気に飲まれるフォシュデール

 

 

 

数日後、特務艦隊は、目的地のアルゼール132門に入った。そこは、人類統合体の領域であり、そこの小惑星帯には、ある施設があった。アーヴ専用の捕虜収容所だった。

そして、その施設にいる捕虜になった星界軍の翔士を救出するのが今回の作戦の目的だった。

 

 

ヘルハウンズは、艦隊司令長官の椅子に座って、横にいるルーフに話しかけた。

 

 

「この門の捕虜収容所には、強襲輸送艦<ザームセス>の翔士がいるという情報があった。そこには、人類統合体に輸送艦隊を襲われて、行方不明になったルーフ参謀長の想人もいる可能性がある。少しは、喜んだらどうだ。作戦が成功すれば、会えるかもしれないのだぞ。」

 

 

「確かにその情報は情報局からうけました。しかし、彼女がここにいるとは限りませんし、第一、まだ、作戦が成功していないのです。」いつものように淡々と話すルーフ

 

 

「相変わらずの悲観主義者だな。ルーフ参謀は。」指揮丈を握り締めながらいうヘルハウンズ

 

「ヘルハウンズ提督が楽観主義すぎるのです。」いつもの無表情の中に少し苦痛に満ちた見瞳を見せるルーフ

 

 

「さてと、そろそろはじめるか。状況を説明しろ。ルーフ参謀」

 

 

「はい、この小惑星帯には、6つの軌道施設があります。その中心が捕虜収容所と思われます。他の防御兵器や護衛用の艦隊を撃破、突破して、すみやかに撤収します。敵の戦力は、こちらより少ないですが、地の利は向こうにあります。それに、援軍がくる可能性もあります。時間との勝負となるでしょう。」

 

 

「そうか、わかった。なら、さっさと済ませよう。いいか、特務艦隊の全軍士に告げる。司令長官のヘルハウンズ提督だ。いいか、今回は同胞を助ける非常に重大な任務だ。こころして、いけよ。では、作戦開始」そういって、指揮丈を振るって、命令を出すヘルハウンズ

 

 

場所は再び、諜報員特別対策室。

 

 

「アルネージュ准提督、どこにいくのですか?」と部屋から出ようとするアルネージュの声をかけるダリシュ

 

 

「ちょっとした用よ。自室へ戻るわ。」少し恥ずかしそうにいうアルネージュ

 

 

「そうですか。でも、あまり、ここを動かない方がいいですよ。何かおこるかわからないですし、僕がついていきましょうか?」銃を持って、ついていこうとするダリシュ

 

 

「いいわよ。とにかく、ついてこないでね。」ますます顔を赤くするアルネージュ

 

 

「そうですか、では、トイレは早めにすましてください。」いつもの穏やかな笑みで言うダリシュ

 

 

「な…・」そういって、キツイ目でダリシュを睨み部屋をアルネージュは出ていった。

 

 

「さてと、救出作戦は順調そうですね。果たして、その後、どうなるやら。」そういって、クリューノを見つめて、つぶやくダリシュだった。

 

 

再び、艦橋にて。

 

 

「よし、敵の機動衛星、護衛専用艦隊を全滅させた。陸戦隊を送って、短艇にのせろ。時間との勝負だ。敵の援軍がくる前にすませろよ。」状況を見て、素早く命令するヘルハウンズ

 

「了解です。各艦隊に伝えます。」通信参謀

 

 

「ルーフ参謀、どうやら、上手く行きそうだな。早く、想人に会えるといいな。」

 

「そうですね。」そういいながらも表情は変わらなかった。

 

 

その頃、アルネージュは自室で、トイレを済ませて、外へ出た。すると、従士が20名ほど、こっちへ向かっていた。その手にはナイフや鉄の棒を持っていた。

その様子を空識覚でアルネージュは認識すると眉をひそめた。明らかに敵意と狂気のある眼差しでアルネージュを睨んでいたからであった。

 

 

「アルネージュ准提督だな。貴様には恨みが無いが、死んでもらうぞ」とリーダーらしき従士の一人がいった。

 

「ボイク、俺は一度、アーヴの女を犯してみたかったんだ。殺す前にやらせろよ。まぁ、こんな子供のような容姿だが、我慢するぜ」そういって、ニタニタといやらしい笑みを他の従士の一人が浮かべた。

 

 

「まぁ、いいさ。さっさと済ませろよ。目的はこいつを殺すことなんだから」ボイク

 

 

「な…なんですって、あなたたち何をいっているの(く、どうやら、裏切り者がこんなにいたのね。20人か。きついわ。ここは、逃げるしかない。)」自分の状況を認識するアルネージュ

 

 

「さてと、死んでもらうぞ。そのまえに、俺達の慰み者となるがな。」ボイク

 

そして、ボイクが指で合図すると、その男達は、アルネージュにいっせいに襲いかかった。

 

 

アルネージュは、すでにその時点では逃走に態勢に入って、すばやく反対方向に走っていた。

 

 

「おい、逃げるのかよ。アーヴのお嬢ちゃん。」そういって、ダルクは持っていたナイフを投げつけた。

 

 

アルネージュは空識覚で認識してなんとかかわしながら、クリューノでダリシュに連絡をとろうとした。

 

「…・なぜ、どうして、通じないの。こんなときに故障しているの?」自分が追い詰められている状況に絶句するするアルネージュ

 

 

「ハア、ハア、ハア(…・このままでは、ヤバイわ。どうにかして、救援を呼ばないと。)」

 

アルネージュがそう思っていると、かどを曲がった向こうに5名ほどの従士がこっちにゆっくりと歩いていた。

 

 

「(しめた。彼らに助けを)」とアルネージュが思って、声をかけようとした瞬間。

 

「よし、バルカル、フォルシュ准提督を捕まえろ。そこで待たせておいて、正解だったな」と後ろからボイクが大声で言った。

 

 

「ボルク、よし、わかったぜ」と口元をにんまりと歪めながらその男と他4人はゆっくりとアルネージュに近づいてきた。

 

 

「(なんですって、く、とにかく、前方の5人を突破しなくては、やられるわ)」そういって、覚悟を決めて突進するアルネージュ

 

 

アルネージュは、前方の男達に接近して、最初の男のパンチをかわしたが、次の瞬間、他の男に腕をとられた。

 

 

「(しまった。やられる)」とアルネージュが思った瞬間。

 

「うわ」といって、その男は、急に倒れた。

そして、アルネージュを囲んだ男達が一瞬にして5人ともふっとばされて、倒れたのであった。そして、一人の翔士が手を差し出して、優しくいった。

 

 

「アルネージュ准提督。大丈夫ですか?助けにきました。」

 

「アドゥール、あなた…(あれ、こんなに格闘戦は強かったかしら?)」と驚きの表情をするアルネージュ

 

 

「それより、ここは、戦いに不利なんで、ちょっと、場所を変えます」そういって、アルネージュの手をとり、ひっぱるフォシュデール

 

 

「あ…うん。(アドゥールの手は、こんなに力強かったのか)」そういって、フォシュデールの後をついていくアルネージュ

 

 

二人が、残りの20人の従士たちから逃げて、通路の行き止まりのところまでフォシュデールは連れてきた。そして、アルネージュを壁のところで待たせて、従士たちの前に悠然と構えて立ちふさがった。

 

 

「フォシュデール千翔長、ここでは、追いこまれたのじゃないかしら?」彼の作戦に疑問に思うアルネージュ

 

 

「いえ、追いこまれたのではなく、誘ったのです。」そういって、余裕の笑みを浮かべるフォシュデール

 

 

「おいおい。たかが、油断した5人ほどをやっつけて、つけあがるのもおかしくないか。まぁ、せいぜい騎士きどりだろうと思うけど、この人数だ。袋叩きにしてやるぜ」ボイク

 

 

「じゃあ、試してみれば、私の実力を」そういって、フォシュデールは音もなく、一瞬で20人の男達に接近した。

 

 

その速さに前方の数人が驚いている瞬間に、右の拳が一人の顎を捉えた。そして、その男が倒れる間もなく、次の男には左の蹴りが急所を捉えて、うずくまっていた。まったく、反応する間もなく1番前にいた4人が倒されたのであった。

 

 

「貴様、何だ、その動きは。」といって、一人の男が、鉄棒を振りかざして、フォシュデールに向けて、たたきつけた。しかし、それは空を切り、地面をたたいたにすぎなかった。

そして、その男がもう一度ふりかざそうとする前に両腕を蹴り上げられて、鉄棒を離した。それをフォシュデールは、ゆっくりと拾うと威圧するように残り15人と減った従士たちに対して鉄棒を突き出すような構えをした。

それを見た従士たちは動きが完全にとめられた。そして、フォシュデールに対して慎重な態勢になったのであった。

 

 

「どうしたんだ?私が鉄棒を持っただけで、びびったのか?さっきの威勢はないみただな。なら、こちらからいくぞ」

 

フォシュデールが再び、常人とは違う速さで突進して、あっという間に5人を叩き臥せた。

今度は、拳や蹴り以上に強力な鉄棒の一撃を加えられたので、それを受けた個所はすべて、骨折して、痛みで倒れる従士が次々とでていった。

後ろの方で見ていたリーダーのボイクは、チャンスを伺っていた。そして、フォシュデールが後ろを見せた瞬間、ナイフを3本投げつけた。

「(よし、殺った。)」とボイクが思ったのが、彼の思考の最後だった。

なんと、フォシュデールはその連続で投げられたナイフを鉄棒を使い後ろ向きで全て撃ち返した。しかも、撃ち返した一本は、みごとボイクの額に突き刺さった。そして、それ以外の2本も他の従士の身体に刺さっていた。

 

「化物だ。こいつは」といって、残り数人になった時点で一人の従士が逃げ出した。

しかし、フォシュデールは、残った数人をあっさりと鉄棒で叩き臥せると、最後の一人にその鉄棒を投げつけた。それは、みごと、背中に突き刺さり、逃げた従士は絶命した。

 

 

「アルネージュ准提督、もう大丈夫です。とりあえず、全員、気絶または、殺しました。こいつらの尋問などの処理は、ヘルハウンズ提督にまかせましょう。もっとも、この様子では麻薬中毒者みたいですし、調べるのは苦労するでしょうけど。」そういって、いつものように冷静に言うフォシュデール

 

 

「うん、ありがとう。ちょっと、ここを離れましょう。そうだ、武器庫へ向かいましょう。こんなことあるなら私も武器が必要だから」

 

「はい、わかりました。」

 

二人はしばらくして、武器庫へ入って、少し落ちついた。

 

 

「ふー…・・助かった。死ぬかと思ったわ。……あれ、震えがとまらない。それに、涙も……」突然、両腕で自分をだきしめるようにつかみ、震え出すアルネージュ

 

 

「どうしたのですか?アルネージュ准提督」その様子を不思議そうにみるフォシュデール

 

「私、怖かったんだから。あんなやつらに囲まれて、犯されて、殺されるかもしれないと思ったら怖かったの。アドゥール。なんで、もっと早く助けてくれなかったの。クリューノは使えなくなるし…」フォシュデールの胸元に顔をうずめて、涙で言葉がだせなくなるアルネージュ。

 

 

「ごめん。アルネージュ。でも、ヘルマスターの同行を断ったのは、君じゃないかな。まぁ、とにかく、助かってよかった。それに、君が本当の涙を見せるなんて、修技館のあのとき以来だね。」安心させるような笑みを浮かべるフォシュデール

 

 

「そうね。自業自得かもしれないわね。…ふー、少し泣いたら気分が落ち着いたわ。とにかく、クリューノが使えなくなった原因を調べなければいけないわ。武器も用意したし、今度はなんとかなるわ。射撃はけっこう自信あるから。」茶色の瞳に浮かぶ涙をふきながら言うアルネージュ

 

 

「そのことなんだけど、はい、これ。ヘルマスターから緊急用に渡された通信機。これは、クリューノが壊れたり、それに関連する妨害工作がされたときに使う『青の牙』の通信機だよ。あ…そういえば、敬語つかっていなかったね。」自分の言動を反省するフォシュデール

 

 

「いいわよ。どうせ、ここでは、二人きりだし…。それに、つい最近まで階級も同じだからいいわ。あ、今後も敬語は使わなくていいわ。その方がアドゥールもやりやすいでしょう。二人きりならいいわ。」少し頬を染めながら言うアルネーージュ

 

 

「そうか、それは、ありがたい。まぁ、そのうち慣れるようにするよ。とにかく、原因をつきとめに、艦橋に行こうか。」

 

 

「うん、そうね。ところで、一体どうしたの?あの格闘術は、修技館時代ではそんなに凄くなかったと思うけど」

 

 

「ああ、あのときは、わざとだよ。なまじ、格闘戦技が強いとそっちの方面に回されたくないしね。空挺艦隊とかの所属になっても嫌だと思ったからだよ。それに、弱い相手に勝っても嬉しくないし、わざと、本気を出さなかったの。ちなみに、僕の格闘術はカンフーと言われているもの一つで、うちのお祖父さんが地上世界出身のカンフーの達人だったのさ。それで、我がファンドゥル家では、このカンフーを修練することが家風の一つというわけなのさ。」得意げに言うフォシュデール

 

 

「そうだったの。知らなかったわ……とにかく、助かったわ。ありがと。」少しうつむくように言うアルネージュ

 

 

「うん。それより、早くヘルマスターに連絡を取ろう(なんだか、態度がいつもと違うな。)」不思議に思うフォシュデール

 

 

「うん、わかった。ヘルマスター、今どこにいるの?現在私達は、第4武器庫で凝集光銃や他の白兵戦用の武器を手にしていて、待機しているわ」小型で長方形の形をした通信機で連絡するアルネージュ

 

 

すると、通信の向こうから銃撃の爆音と共に、ダリシュの声が聞こえた。

 

「アルネージュ准提督、現在、こちらは、敵と交戦中です。あれは、グラディエーター2000、通称G—2000に強襲されています。でも、こっちで対応するので、そっちは、艦橋へ向かってください。僕だけで大丈夫です。」そういっている間にも銃撃音は、絶えず聞こえていた。

 

 

「なんなのよ。それは、とにかく、本当に合流しなくていいの?」

 

 

「ええ、大丈夫です。ティアラさんもそっちに援護するようにいいました。もうすぐ、合流できると思います。その通信機は、発信機も兼ねているので、彼女もつくと思います。では、こっちは、忙しいので、落ちついたら連絡します」そういって、爆音の中でダリシュの通信は切れた。

 

 

「アドゥール、急ぐわよ。どうやら事態はもっと、悪化しているみたい。とにかく、この艦の艦橋へ行って、状況を確認するわ」いつもの態度に戻るアルネージュ

 

 

「はい、わかりました。アルネージュ准提督を援護します。」そういって、敬礼するフォシュデール

 

アルネージュとフォシュデールは凝集光銃と実体弾の銃をもって、艦橋へ走っていった。

その行く手には、恐ろしい敵がいるともそのときは、知らなかった。

 

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