アルネージュが艦橋を目指そうと第4武器庫から出た瞬間、艦内に警報が突然なりだした。しかも、その警報が、何を示しているか説明する放送はなく、ただ、警報が流れていた。
「本当に様子がおかしいわね。クリューノは使えなくなるし、変な警報はなるし、フォシュデール千翔長どう思う?」走りながら聞くアルネージュ
「たぶん、この艦隊全体の思考結晶に何らかの異常が出た可能性が高いです。しかし、思考結晶の防御対策は、特務艦隊は情報局でも随一なのに、そんなことをされるとは、信じられません。」
「そうね。とにかく、艦橋へ行けば少しは情報が得ることができるわ。いきましょう。」凝集光銃を握り締めながら言った。
二人が廊下を走っているとおよそ0.3ウェスダージュほどの前方に一人の従士が立ちはだかっていた。すると、突然、その従士の胸が光沢のある銀色に変化すると胸が割れて、そこから火薬式のマシンガンが現れた。そして、驚くべきことにその銃を握った腕も胸から生えていて即座にアルネージュ達に標準を合わせた。
「危ない。」そういって、フォシュデールはアルネージュを抱きしめて、横にとんだ。
アルネージュがさっきまで立っていた場所に銃撃の雨が降り注いだ。そして、フォシュデールは、横の通路にアルネージュを抱えたまま、すべりこむと、肩をおさえていた。その肩からは血が出ていた。
「フォシュデール千翔長、大丈夫?」心配そうに見るアルネージュ
「大丈夫、かすり傷です。それより、反撃してください」
「わかったわ。」アルネージュは、そういって、マシンガンを乱射しながらゆっくりと歩いて近づいてくる従士もどきに向けて、凝集光銃を連射した。
アルネージュの射撃は、本人も自負しているとおり、見事、その従士もどきの眉間を文字通り貫いた。しかし、穴があいたけど、その穴はまるで、なにともなかったようにふさがれてしまった。
「な…馬鹿な。こうなったら、これよ。」そういって、光源装弾を投げつけて、床に伏せるアルネージュ
ドゴォォォーーーーーンと廊下に大きな炸裂音が響き渡った。
「ふぅ…これで、跡形もなく消えたはずよ。」そういって、まだ、煙が残っている爆発地点を空識覚で認識するアルネージュ
すると、彼女の空識覚の感覚で妙なものを認識した。あたりにちった破片が液状とかしていて、まるで意思のある水のように1ヶ所に動いて集まっていった。そして、その液体がみるみる変形してさっきの従士と同じ姿になった。
「な…なんなの、あの化物は。フォシュデール千翔長、とにかく撤退するわ。」自分の状況を冷静に分析して判断をするアルネージュ
「そうですね。その方がいいです。」そういって、肩から血をだしながらも銃を握り締めて、走り出した。
従士の姿を取り戻したそれは、普通の人間以上のスピードで走り出し、アルネージュ達を追いかけた。その姿は、まるで、ブリキで作られた機械人形のごとく画一的な動作で迫ってきた。
フォシュデールとアルネージュは、凝集光銃で何度も連射したが、体が貫かれても銀色に変色してすぐにそこは、再生され、何事も無かったように追いかけてきた。
「何なのよ。あれは。そうだ。ヘルマスターに連絡とるわ。こいつのことに何か知らないか聞くしかないわ」そういって、走りながら通信機を起動するアルネージュ
「ヘルマスター、現在、正体不明の敵に攻撃されているわ。凝集光銃で体を貫いてもすぐに再生するやつ。体がまるで液状でできているみたいだわ。」
「そっちにもいきましたか?それが、グラディエーター2000です。そいつの弱点は、アルネージュ准提督の小指の爪くらいの核があります。それを破壊すればとまります。ちなみに、それは肉眼では認識するのは不可能に近いです。」落ちついた様子でダリシュは伝えた。
「じゃあ、どうやって、その核を破壊するのよ。」
「空識覚です。それで、微妙な核からでる周波を感じるのです。それと、僕はすぐにはいけそうもないので、それまで、持ちこたえてください。」そういって、通信は切れた。
「そんなこといっても、わからないわ。聞いた。フォシュデール千翔長、あなた、核の場所を感知できる?」フォシュデールに頼ろうとするアルネージュ
「すみません。無理です。微妙なといっても、そんなものは、感じられません。」断念するフォシュデール
二人がそう話しているうちにもG−2000は、接近して、そして、自分の右腕を刃物状に変形すると、アルネージュに素早く斬りかかった。
「危ない。」そういって、フォシュデールは、剣を銃で受け止めた。しかし、もう片方の腕を棒状に変化させて、フォシュデールのわき腹にそれを思いきりヒットした。
「うわー」と壁まで吹っ飛ばされるフォシュデール。
再び、アルネージュに近づき、刃物丈の腕を今度は、槍に変形させて、G−2000はアルネージュに狙いを定めた。そして、素早く接近して、その槍を突いた。
「く…」
間一髪、その一撃をかわしたが、すでに、通路の行き止まり追いこまれて、後がなくなっていた。
G−2000は、無言でゆっくりと近づき、アルネージュを追い詰めた。そして、再び変形させた刃物状の腕をふりあげた。その瞬間、後ろからG−2000の右足部分に剣が突き刺さっていた。
すると、ビューンという奇妙な音を出して、G−2000は、機能停止しした。そして、ドロドロの液状の銀色の物体になって、床に広がった。
「どうやら、間に合ったみたいです。遅れてすいません。アルネージュ准提督。」
くずれていくG−2000に剣を突き刺したまま穏やかな笑みでティアラが言った。
「ふー、おそいわよ。あなたの役目は私の護衛だったはずよ。大変な目にはあったわ……それより、フォシュデール千翔長は……?」フォシュデールが飛ばされ方向を見るアルネージュ
「大丈夫です。ちょっと、肋骨が2・3本折れたくらいです。それより、艦橋へ行きましょう。この警報の原因を知らなくては行けません。」苦痛に顔を歪めながら言うフォシュデール
「そうね。そうしましょう。ところで、さっき、その剣で貫いたのは核なの?」銀色の鉄板を指差すアルネージュ
「ええ、そうです。途中でこれと同じようなやつが3体ほど襲ってきました。ちょっと、時間がかかりました。ダリシュは10体ほど相手したみたいです。」こともなげに言うティアラ
「よく倒せたわね。確かグラディエーター2000だったかしら?これは何なの?」皮肉っぽく言うアルネージュ
「ええ、拡大アルコント共和国の対人暗殺用兵器機械兵器です。これは、最新型です。情報局のデータバンクにものっていると思いますが、知らないのですか?」探るように聞くティアラ
「ええ、そうよ。そんなものが私を襲ってくるなんて予想なんていしないし、でも、どうやって、こんなやっかいなものが特務艦隊の旗艦にのっていたのよ。ちょっと、信じられないわ。」うんざりした表情をするアルネージュ
「それですが、実はこの荷物とらしきものを調べたら出てきました。そして、それが誰の名で送られてきたのもね。この記憶片に入っています。」
「用意がいいわね。とにかく、それは分析するのはあとにして、艦橋にいくわよ。もうすぐのはずだから」
「そうですね。じゃあ、私が先陣を行きます。」そしてニヤリと不敵な笑みをあげると、突然、自慢の愛刀の『ラミューズ』で艦内の壁を一刀両断をした。
すると壁が突然、銀色に変色してさっきのG—2000の液状の物質になって、床に流れた。
「な…・これは…」眉をひそめるアルネージュ
「そうです。待ち伏せです。でも、フォシュデール千翔長は気付いたみたい。銃を構えていますよ」微笑みながら指を指すティアラ
「ええ、わかりました。それに、さきほどの核からでる周波、なんとなく感じがつかめました。それにしても、かなり高速で移動しているのですね。これは、肉眼で見るのは難しいのはわかりました。空識覚で感じなければいけないということもね。」自信の笑みを浮かべるフォシュデール
「あなた、やるわね。フォシュデール千翔長、さすが、アルネージュ准提督が指名した人ね。私もこれほど、やるとは思っていなかったわ。」満足そうな笑みを浮かべるティアラ
こうして、アルネージュ達は、特務艦隊の旗艦<クールビルシュ>の艦橋を目指していた頃、艦橋では、その場にいた翔士の顔が全員青ざめていた。
「ヘルハンズ司令長官、味方の艦隊が同士討ちをしています。信じられません。あ…旗艦の思考結晶に異常発生です。私たちの戦隊も味方を攻撃目標にしました」通信参謀の悲痛な声が響いていた。
そう説明している間にも次々と戦隊単位で味方同士戦闘が始まっていた。そして、作戦目標だったアーヴの捕虜がいると思われる輸送艦もその戦闘にまきこまれて爆散してしまった。
「くそ!!状況はどうなっている?どうしてだ。まさか、思考結晶がのっとられたのか。でも、特務艦隊ではその手の対策はしているはずだ。」指揮丈で地面をたたき怒るヘルハウンズ
「はい。思考結晶のハッキングやウィルス対策はどの艦隊よりしっかりしています。しかし、戦隊の旗艦がのっとられるとは、これは、上層部の暗号コードを入力された可能性が高いです。」あせりながらも状況説明をする機関参謀
「上層部?どういうことだ?」
「はい、それができるのは、この艦隊では2名だけです。ヘルハウンズ提督ともう一人ルーフ参謀長です」そういって、機関参謀はルーフを睨んだ。
「そんな馬鹿な。…俺ではないとすると、まさか…。嘘だといってくれ。ルーフ参謀。」ヘルハウンズはそういって、ルーフを見つめた。
「機関参謀の言う通りです。私が暗号コードをいれて、そして、思考結晶をのっとりました。そして、アルネージュ准提督が探している諜報員も私です。ヘルハウンズ提督。」いつものように無表情で答えるルーフ
「どうしてだ?どうしてなんだ。想人を人質にとられたからか。それとも、任務で領地を破壊された復讐か。くそう。答えろ。ルーフ参謀」そういって、ルーフの胸ぐらをつかむヘルハウンズ
「確かに最初は彼らに脅迫されていたのは事実です。領地のことも関係ないです。しかし、そんなことは、今はどうでもいい。ただ、帝国に一人の人間の存在を見せたかったからです。そんなことより、この艦ももうすぐ爆散しますよ。そういう風に設定しましたから」瞳に寂しさと悲しみを一瞬だけ見せるルーフ
「各乗員に告げる。…・ち、艦内放送もクリューノも使えないのか。いいか、艦橋にいる連中はとにかく口頭で伝えながら、短艇にのりこめ。急げ。俺は、ルーフ参謀長いや元参謀長を逮捕、拘束する。副長手伝え。」そういって、副長に命令するヘルハウンズ
「は、わかりました。」そういって副長はルーフに手錠をかけて、彼を引っ張っていった。
そのとき、ようやく、アルネージュ達は、艦橋へ到着していた。
「ヘルハウンズ提督、この警報はどういうことなの?説明しなさい……あれ、なぜ、ルーフ参謀長を拘束しているの?」状況をいぶかしるアルネージュ
「アルネージュ准提督、くやしいが、彼がこの俺の艦隊の諜報員だった。さっき、自らは自白した。そして、この思考結晶ののっとり騒ぎは彼がおこして、この旗艦ももうすぐ爆散するとルーフ参謀も言ったから、総員退去を命令した。」
「それなら、大丈夫です。ヘルハウンズ提督、あと1分以内に艦隊の全ての思考結晶は正常に戻ります。」そういって、クリューノの時計を見るティアラ
「馬鹿な、そんはずはない。そう簡単にあの思考結晶虫が駆除されるはずはない。それに、いくつか防御コードも修正した。」その発言に驚くルーフ
だが、ルーフがそれを言ったとき、警報は収まり、艦橋の全システムも正常をあらわす表示に戻った。
「どういうことなの?アイリーフ警衛百翔長?」
「シュリル警衛列翼翔士がちょっとした対策をしていました。それで、ここにいないのです。それに、もうすぐ他の戦隊の艦も掌握できます。」
「そう。わかったわ。ヘルハウンズ提督、とにかく、状況が正常に戻ったら、各員に被害状況を報告させなさい。」
そう言っている間にもクリューノの機能も完全に回復して、特務艦隊の全体の思考結晶の機能は正常に戻っていった。
「わかった。とにかく、全艦隊の被害を報告せよ。それが一通り終わったら、この星系から撤退する。ここは、敵の領地のど真ん中だからな。それと、副長。ルーフ元参謀長は、どっか適当な部屋に拘禁しておけ。しっかりと見張りをつけてな。」命令を出すヘルハウンズ
「はい、了解です。では、つれていきます。」副長
「はい、伝えました……。報告あがりました…。各戦隊の損耗率は、1割前後です。なんとか、大きな被害を食い止めることができました。え…。ヘルハウンズ司令長官閣下、残念な報告です。第3戦隊の司令、マーヴェジュ千翔長、戦死しました。」憂鬱な表情で悲報を伝える通信参謀。
「な…。くそ。くそ、くそ。」手から血が出るくらい壁を殴りつづけるヘルハウンズ
「ヘルハウンズ提督、それくらいで、やめなさい。血が出ているわ。」彼の腕をとめるアルネージュ
「お前に、何がわかる。ルーフ参謀の裏切りによって、俺が突撃艦時代からの直接の部下が死んだんだ。彼女はこんなところで死ぬような人じゃない。くそ……おれがもっと、早くルーフ参謀の裏切りに気付いていれば……」ヘルハウンズの瞳から一粒の涙が流れた。
「そうね。でも、証拠がなかったから、しょうがないわ。私たちも彼を諜報員の有力候補にしていていたけど、なかなか、尻尾をださなくて、それで、今回の任務を要請したのよ。運良く、ルーフ参謀長の想人が乗っていた艦の翔士が捕虜となっている場所の情報を得て、それを利用したの。」
「なんだって、こうなることは予想していたのか?」そういって、怒りのあまりアルネージュを殴ろうとするヘルハウンズ
バシィ………その拳は、フォシュデールが軽く受け止めると、一言つぶやいた。
「女性を殴るとは、男のすることではないですね。それに、アルネージュ准提督を殴っても何も解決しませんよ。それより、艦隊の撤退をすみやかに行ってください」
「ち、わかったよ。とにかく、撤退準備を急がせろ。」
ヘルハウンズがそう言った瞬間。旗艦に衝撃が走った。
そして、警報がなった。
「第6区画に外部から穴が開けられました。大丈夫です。すぐに閉鎖しました。…そこにいるのは…あ、ルーフ元参謀長です。彼がその穴から真空宇宙に出ていきました。まさか、自殺か?」旗艦の書記がおもむろにつぶやいた。
「いや、違う。外部となると、逃げたんだ。そのときの映像はあるか。くそ、あのときぶっ殺しておけばよかった。俺達を裏切りやがって。」指揮丈を思いきり壁にぶつけるヘルハウンズ
「はい、映像出します。」そういって、書記は艦橋にルーフが監禁されている部屋を見せた。
その映像にはルーフが座って窓から宇宙を眺めていると、ふと、立ちあがり、窓から離れると、巡察艦の装甲をまるで紙のように切って、そこから女性の形をした機械人間が現れた。その頭にヘッドギアのようなものをつけて、瞳は紅く、髪が青く腰までなびいていた。そして、その腕が刃物のように変化しておりそれが、艦の装甲を切り刻んだというのは容易に想像できた。そして、外部から切ったことにより、空気が真空に流れ出していたが、持っていた与圧兜をルーフにかぶせると、彼を抱きしめたまま、宇宙のどこかへ消えてしまった。
「ち、探せ。早く、やつを。ルーフ元参謀長を探すんだ。」命令をだすヘルハウンズ
「ヘルハウンズ司令長官閣下、この門の宙域に10個分艦隊相当の時空泡が近づいてきました。早く逃げないと危険です。」通信参謀。
「今の状況ではきつい。全速力で撤退だ。できるだけ、急げ。これ以上、無意味な犠牲者はだすな。作戦は失敗したからな。」そういって、命令をだして、ヘルハウンズは司令座席に座った。
「フォシュデール千翔長、どうやら、手がかりは逃げてしまったわ。どうしましょう?」自分の考えの甘さでかなりの犠牲を出して珍しく少し落ちこむアルネージュ
「アルネージュ准提督、その話は、作戦室でしましょう。シュリル警衛列翼翔士もそこにいくとありました。とにかく、大丈夫です。私はアルネージュ准提督を信じていますから。」その様子を見て、慰めるフォシュデール
10分後、特務艦隊は、素早く撤退を行ったために、敵の追撃をうけることなく、安全領域まで、撤退に成功していた。
そして、アルネージュは作戦室で憂鬱な表情を浮かべながら、ダリシュを待っていた。
「ヘルマスター、どうしたの?遅いじゃないの。」
「すいません。遅くなって。さっき、ルーフ元参謀長が逃げたところを調べていました。それで、あの機械の女性が切断した装甲を分析するとちょっと、気になるものがでてきました。」そういって、顕微鏡を見せるダリシュ
それをのぞく、アルネージュ達。
「何よ。これ?意味がわからないわ。」顔をしかめるアルネージュ
「ダリシュ、これは、『ナノマシーン』…禁断の技術ね。しかし、こんなものまで、敵が用意しているとは、やっかいね。」さすがに動揺の表情をするティアラ
「何、『ナノマシーン』…て?」当然のごとく聞くアルネージュ
『ナノマシーン』……それは、極小サイズの機械でそれが働くことにより、物質構造そのものを変化させて、ありとあらゆる環境や物に作用するものである。
そして、それはアーヴを含めて人類は長年、研究開発を行った。特に惑星改造をするときにこの技術は、大きな成功をもたらすといわれていた。そして、何回か実験を繰り返したが、そのほとんどが悲劇をうんだ。『ナノマシーン』を完全に制御することが困難であったからであった。そして、失敗するたびに、惑星の一つが破壊したり、治療を目的とした動物が異形の生物に変質したり、多くの悲劇をもたらした。『ナノマシーン』は、ちょっとした環境の変化や刺激に弱すぎるというのが大きな原因であった。最初に設定したプログラムがそれによって、簡単に変わり、やがて、多くの変化をもたらし、たいてい、悲劇の引き金と成ったのだ。
そして、そのあまりにも多くて大きな失敗から人類社会のほとんどは、この技術の研究を禁止することを決定していた。
それが『禁断の技術』といわれている由縁であった。
「……ということなのです。アルネージュ准提督」説明するダリシュ
「でも、ダリシュ、『ナノマシーン』技術は、実は10年ほど前に、ある程度の成功をあげているの。これは、前にも話したけど、軍医科と光子科と技術科の共同プロジェクトで大きな前進の一歩を見せたの。もしかして、そのときの情報を盗んで応用したかもしれないわ」確信するティアラ
「何なの。そんなものがあったの。それにしても、どうして、軍医科なの?他の科はわかるけど。」疑問に思うアルネージュ
「この技術をもし上手く使えば、一瞬で傷や病気が治せるのです。これまでの、体組織の治療よりはるかに早くね。」説明するティアラ
「ふーん、そうなんだ。ということは、あの機械の女が『ナノマシーン』使いというわけね。」納得するアルネージュ
「ところで、ルーフ元参謀長のことですけど、安心して良いです。彼の頭髪には発信機がうめこんであります。これがあれば、10セダージュ(1万km)範囲内にくれば、わかります。それに、とろうとすると、ちょっとした仕掛けがあります。爆発して死にます」いつもの穏やかな笑みを浮かべるティアラ
「そうなの。だから、あのとき、ほうっておいたのね。あなたたちにしては、手がぬるいと思ったから。」少し安心するアルネージュ
「それで、今後のことなんですけど、とりあえず、二手にわかれませんか?僕の予想以上に厄介なことになってきましたから、打てるだけの手は速く打ちたいのです。そのためには、僕とティアラさん、そして、アルネージュ准提督とフォシュデール千翔長の二人で行った方が効率が上がると思います。」控えめに提案するダリシュ
「ちょっと、待ってよ。今回の私達を襲ってきた連中見たでしょう。フォシュデール千翔長ならまだしも、私では対応できない。せめて、ヘルマスターあなただけは、私の護衛につきなさい。」拒否するアルネージュ
「その点なら手は考えています。護衛任務なら僕より適切かもしれません。それに、ある面では僕より戦闘力が高い人達を三名ほどつけます。それで、どうでしょうか?」アルネージュの発言を予想したごとく言うダリシュ
「そうなの?本当に、あなたより、強いの。」疑いの目を向けるアルネージュ
「ええ、たぶん、溶岩の中とか、地上世界や真空宇宙の格闘戦では、絶対に勝てないでしょう。」と意味ありげなウィンクをするダリシュ
「その子たちのデータを渡しておきます。大丈夫です。彼女達なら絶対アルネージュ准提督を守ります。」自信に満ち溢れた笑みをするダリシュ
「そう、あなたが、そこまで言うなら信用するわ。では、今後の連絡はあなたたちからしてね。こっちは、マークされているみたいだし、その方がいいと思うから。」決断するアルネージュ
「わかりました。では、この艦隊が帝都についてから、わかれましょう。」
「うん、わかった。じゃあ、そのときに護衛をつれてきてね。ちょっと、試験をするから。」
こうして、特務艦隊の諜報員探しは、結局失敗に終わった。そして、結局ダリシュとアルネージュは今後の状況を考えて、二手に分かれて任務を遂行することになったのだった。