星界の風章「陰謀」   作:いち領民

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星界の風章「陰謀」 エピローグ

帝国星界軍・情報局本部・第8作戦室

 

 

フォルシュ・アロン=フリート・公女・アルネージュはフォシュデールと共にでカシュナンシュ大提督に今回の任務の結果について説明していた。

 

 

「カシュナンシュ大提督、以上が、今回の任務対する調査及び、成果です。残念ながらハニア連邦に帰ったアイロン・クェス以外は、情報を漏えいした組織の破壊、および人物の殺害と捕縛は終わりました。具体的には、カイザーの捕縛、秘密結社『フリーパーソン』の壊滅、そしてルーフの殺害を実行しました。」クリューノで資料を操作しながらアルネージュは伝えた。

 

「いや、ご苦労様だったよ。この短期間でこれだけの成果を出せるとはさすがアルネージュ准提督だ。フォシュデール千翔長の補佐も素晴らしかったと聞いている。これでラマージュ陛下やファラムンシュ軍令長官も少しは気が休まるだろう。」カシュナンシュは満足そうに微笑んでいた。

 

「それで、今回の任務で一番気になったのはルーフを護衛していた三体のナノマシーンを使いこなしている人型兵器です。そのあたりの情報はわかりますか」フォシュデールは恐る恐る尋ねた。

 

「ああ、あれか。あれなら、ヘルマスターがすでに調べていて、結果も出ている。そちらのクリューノに情報を送信しておく」

 

 

カシュナンシュ大提督から送られた資料には三体のナノマシーン人型兵器は実はルーフの想人が開発したものであった。この三体はナノシリーズと彼の開発局では言われていた。彼はこのナノシリーズの開発者の一人としてそれらを輸送艦でヴォベイルネー鎮守府へ輸送中に人類統合体に襲われて誘拐された。

 

ナノシリーズは人類統合体の兵器として使用しようとしたが、ルーフの想人はそれを拒否、結局拷問を続けてもついに死ぬまで拒否し続けた。ただ、他の開発者を使ってなんとか起動には成功したが、ナノシリーズはルーフを守るという命令と、ルーフ以外の命令はうけつけなかった。それに目をつけた統合体はあたかも想人がまだ生きているようにしてルーフに脅迫をして、星界軍の軍事情報を集めるように指示した。

しかし、ルーフは情報を提供することには協力したが三体の人型兵器を戦場に使うことはしなかった。

これはヘルマスターであるダリシュの推測ではあるが、すでに想人の死亡についてルーフは予想していたかもしれない。ただ、最後の望みを託すためにも情報だけは提供していたが、ナノシリーズは彼の想人が作り出した兵器ではあるが、子供のように感じていたのかもしれない。想人の子供を戦場に出してはいけないと・・・また、彼が生きているうちはナノシリーズには利用価値の可能性があるので人類統合体に破壊されない。そう思いながら、特務艦隊で粛々と任務を続けていた・・・最後にそう説明されてその情報は終了した。

 

「なるほどね。だから我々に裏切り者としてばれるまでは表舞台に出なかったのね。あれが戦場に出ていたらと思うとぞっとするわね。でも、ナノシリーズの情報は人類統合体に渡ったわよね。あれが戦場に出てくる可能性はないの?」カシュナンシュ大提督に向かってアルネージュは聞いた。

 

 

「それはたぶん、無理だと思う。あの三体は奇跡に近い確率で成功した兵器だったんだ。これまで星界軍はナノマシーンの研究にどれだけ失敗したと思う。あれは環境に弱すぎるし繊細すぎる。とにかく、ナノシリーズの残骸は一応情報局の管轄で保管しておく。後の研究に役に立てばいいが・・・・」難しい顔で答えるカシュナンシュ

 

 

「ところで、カシュナンシュ大提督、休暇申請をしたのにまだ返事がないのはどういうことでしょうか?」アルネージュはきつい目でにらんでいた。

 

 

「あれ、そんな申請来ていたかな。ああ、今届いたみたいだ。いやあ、かなり時間がかかるものだな。ここのシステム点検したほうがいいな。」わざとらしく言うカシュナンシュ

 

 

「そう、受け取とりましたね。じゃあ。今からフォシュデール千翔長と一緒に一か月ほど、休暇をもらいますわ。」

 

「今からだと、それは困る。まだ、頼みたい任務が山ほど・・・・」

 

「あれ、こんなに働いたのに休暇申請を受け取れない職場なのですか?それなら転属願いでも出しましょうか。紋章院に。ヘルマスターに手紙の一言でも出せば、彼ならあっさりやってのけるでしょう。」自信たっぷりに言うアルネージュ

 

 

「なんだと・・・・それは困る。わかった。休暇申請を今すぐ受理しよう。フォシュデール千翔長も君も今から休暇だ。一か月間ゆっくりと養生したまえ。」観念したような表情でカシュナンシュは認めた。

 

 

「アルネージュ准提督さすがです。こうもあっさりと、カシュナンシュ長官から休暇を勝ち取るとは思えませんでした。」

 

「そう、フォシュデール千翔長、彼にも苦手なものはあるのよ。その一つがヘルマスターなだけ。それに最近気が付いたの。あなたも長官に何か交渉したいときは使ったほうがいいわよ。ただし、その後の彼の報復に関しては関知しないけどね。」とかわいらしく微笑むアルネージュであった。

 

 

「いや、遠慮しておきます。私ははおとなしく静かに暮らしたいですから。」二人のやりとりにフォシュデールは関わりたくなかった。

 

 

「そういえば、休暇の前に今回の任務からの褒美を渡すのを忘れていた。ちょっと待っていてくれ」

カシュナンシュが突然そう発言すると彼の映像は切れた。

 

そして、次の瞬間、第8作戦室の扉があいて、カシュナンシュが入ってきた。

 

 

「な・・・、すぐそこにいたんですか。カシュナンシュ大提督」突然の訪問にフォシュデールは驚いた。

 

「まさか、後ろの背景がやけに合成映像に近いと感じていたけど、こんな悪意のある登場を考えていたのですね。」

 

「そうだ。まあ、せっかく私が直接ここに来たことだし、褒美は特別に5000スカールほど君たちに支給しよう。ただし、休暇前に少し私の話に付き合うことが条件だがね」

そういって、飲み物をクリューノで手配して二人の目の前にカシュナンシュは座った。

 

 

あまりにも自然に二人の前に座って完全にカシュナンシュのペースになったので、二人は沈黙して彼の話を静かに聞くことにした。

 

「さて、早く休暇もとりたいだろうから本題に入ろう。君たちは今の情報局についてどう思っている。私は四か国連合との開戦を察知できなかったこと、今回の幻炎作戦での情報漏えいと、散々たる結果になっていると思う。はっきりいってうまく機能していないのではないかと感じているのだよ」

普段の飄々とした様子とは違い真剣な様子でカシュナンシュは伝えた。

 

 

「そうですね。帝国で変わり者にして優秀たるカシュナンシュ大提督としても二つの情報局の失敗は確かにあなたらしくないですね。」

アルネージュもその言葉に考える

 

「私はなんとなく理由はわかります。情報局は組織として巨大すぎる。その巨大すぎる組織を長官の才覚に依存しようと考えている局員が多いのが理由だと思います。性格はどうあれ、情報局員にとって長官は非常識な人物を思われつつも最後はなんとかしてくれるだろうと思っている風潮があるのです。」

フォシュデールは現在の情報局を冷静に分析していた。

 

 

「それがあなたが一度退役して修技館に再入学の希望したい理由なの?」

アルネージュは茶色い目でじっとフォシュデールを見つめた。

 

「そのことを知っていたのですか。まあ、情報局の体質に嫌気がさしていたのは事実です。」

 

「なるほど。私の責任ということでもあるのか。まあ、最初の開戦については私が長官に就任して一か月でなったことだから、陛下はそこまでお咎めなしだったけど、今回の幻炎作戦の情報漏えいについてはひどく怒っていたから。私もさすがに必死だったよ。実はいうと、開戦した後でわかったことだが、情報局員の中に開戦一年前に、四か国連合による先制攻撃の可能性を示したレポートが当時の十翔長から出されていた。君のことだよ、フォシュデール千翔長」スルグーを優雅に飲みながらカシュナンシュは伝えた。

 

 

「そうですか。時期は間に合わなかったのですが一応は長官に伝わっていたのですね。私はこれまで帝国と戦争した国の外交史から色々と分析とした結果、四か国連合の行動がかつて帝国に先制攻撃をして今は消えていった国によく似ていたと思ったからです。彼らの大使の行動や言動からそう分析しました。結局は途中もみ消されて、なかったことにされたみたいですけどね。」

 

 

「そんなこともあったの・・・知らなかったわ。なるほどね。退役したくなるわけね。でも、私がいる間はいてもらわないと困るわ。フォシュデール千翔長、私があなたが多少は居心地のよい職場環境にかえるつもりだから。」

 

その言葉を聞いたとき、カシュナンシュは今まで見せたことのない笑みを見せた。

 

「それを聞いて安心した。実はいうと今回アルネージュ准提督に紋章院、まあ実際はヘルマスターだけど任務させることが一番の収穫だったと思う。彼から学ぶべきことは多かったと思う。ここでの関係構築もいったことだし、いつでも君に情報局を託せそうだよ。」

 

 

「は・・・。何をいっているの。長官。あなたまさかこんな状況でやめる気なの?」

突然妙なことを言い出すアルネージュは驚いた。

 

 

「いや、やめる気はない。だが、私は二回も失敗している。これはファラムンシュ長官やラマージュ陛下も三回目の失敗をしたらどうなるか君も予想がつくだろう。二人ともそんなに気が長いほうじゃない。特にアブリアルである陛下は。そこでだ。三回目の失敗を防ぐための方法として戦時中だが情報局の組織改革を考えている。そしてその責任者と副責任者も決めている。」

 

2人を見ながらニコニコと笑みを浮かべながらカシュナンシュは伝えた。

 

こうして、アルネージュとフォシュデールは休暇後に特別任務を受けることになった。

情報局改革対策本部という組織を作り、そこの本部長と副本部長に任命され、巨大になりすぎて有効に機能していないと思われる組織改革を実行することになったのであった。

 

そこでの二人の奮闘は情報局ができて以来の苦闘と暗躍とちょっとした皮肉がまじったとんでもない戦いになるのではあったが、それは後日の話である。

 

 

 

 

帝都ラクファカールの高級料理亭「蒼海」にて

 

 

「アドゥールもう、元気出しなさいよ。今は二人きりで休暇中なんだから、料理を一緒に食べて明日への糧にしなければならいわよ」

 

「そうだけど、これからのことを考えると胃が痛いんだよ。君は休暇後の任務についてなんとも思わないの?」

 

「そうね。それは思うことは色々あるけど、今考えても仕方ない。それに・・・・アドゥールと一緒なら大丈夫よ。だって、私フォルシュ・アロン=フリート・公女・アルネージュはあの修技館のときから決めたの。目の前の敵がたとえ何であろう叩き潰す。アーブらしくね。」

 

その時の姿はまるで戦勝宣言をしているように彼女は言った。

 

こうして、彼女の小さいながらも決意に満ちた姿見て、フォシュデールは思った。

 

「(自分が変える側に回るなら情報局員も悪くないかな。大抵の障壁は彼女が叩き潰していって私はついていくだけだ。でもいざとなったら、守ろう。それがこれから星界軍の役目なのかもしれないと)」

 

 

恒星アブリアルの光をあびながら未来の想いを二人は互いに感じあったのであった。

 

 

(完)

 




幻炎作戦の人類統合体の動きが良かった理由について考察しているときにこの話が浮かんだので作りました。途中で話が止まってしまってので、プロットを再構成させて、なんとか完成させることができました。

思ったよりPS版のキャラクターを生かせていなかった気がします。
とにかく完結するのに苦労した話でした。

これからも星界の紋章、星界の戦旗の二次小説を書いていきたいのでよろしくお願いします。
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