星界の風章「復讐」   作:いち領民

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星界の風章「復讐」 第四章

紋章院の『青の牙』の長であるダリシュが発案したアーヴの復讐の選定者捕獲作戦『天元』の決行日の朝になった。

 

サムソンが寝ている間に、ハーデス、サーシャ、マナミリアの三人は、すでにテントから消えており、それぞれの持ち場に向かっていた。

 

テントから出てきたのは、サムソン、ミルフィーユ、ダリシュの三人だけが残り、テントを処分して、自分たちの痕跡を消す役目をすることになった。

 

「うーん、いい朝ですね。やはり、大地のある朝はいいですね。朝と夜がはっきりしている。久々に良い気分で朝を迎えましたですぜ。」腕を伸ばしてあくびをしながら言うサムソン

 

「サムソン家宰、おはようございます。私も別な意味ですばらしい朝を迎えましたわ。」昨晩よりいっそう、つやがあるような様子のミルフィーユ

 

「おはようございます。ミルフィーユさん、サムソンさん、今後、一緒に行動するのでよろしくお願いします。」全く、疲れていない様子のダリシュ

 

「(それにしても、いくら年齢がわからないとはいえ、こんな子供のような少女とあれをやったら、我がミッドグラッドでは、絶対、捕まるかな。いや、それ以前に人としてどうかと問われそうだな)」とミルフィーユを見ながら妙なことを想像するサムソン

 

「サムソン家宰、私をじーっと見て、どうかしましたか?」愛くるしいきょとんとした感じで不思議そうにサムソンを見るミルフィーユ

 

「いえ、なんでもないですぜ。とにかく、私達も選定者を捕縛しにいきましょう。」自分の考えを見ぬかれないようにごまかすサムソン

 

「そうですね。サムソンさん、では、その前にこれを持っていてください。これは、本物のワルサーP38で、こっちは個人防御兵器の通称『雨傘』です。これを頭環につければ、凝集光銃からは、大丈夫です。それと、このボタンを押せば、半径100ダージュ内の物理攻撃も防御できるシステムもあります。こっちは、エネルギーの消費が激しいので1時間しかもたないですけどね。注意して使ってくださいね。」銃と円盤型の部品を渡すダリシュ

 

「これは、ありがたい。助かります。少しはあなたの役に立ちたいですからね」満足そうに旧式の銃を眺めるサムソン

 

「それでは、お二人とも目標補足地点のこの森の奥にある人類統合体遺伝子実験研究所ハイド支部にいきますか?」クリューノを操作して、目標地点を示すミルフィーユ

 

「ええ、わかりました。では、行きましょう。サムソンさん。」普段とは違い、真剣な表情になるダリシュ

 

「ええ、とにかく、さっさと任務を住ませて、宇宙へ帰りましょうぜ。」久々の特殊任務で心が踊るサムソン

 

こうして、テントを張った地点からさらに奥にエキゾチック・ジャングルの深い場所へ浮揚車を使って、進んでいく三人であった。すると、ダリシュのクリューノから呼び出し音がなった。

 

「ヘルマスター、こちらグリーンです。調べておいたあの件はクロです。どうしますか?」クリューノから凛とした女性の声が響いた。

 

「そうですか、わかりました。では、帝国の法にのっての処理を任せます。では、気をつけてくださいね。」

 

「はい、わかりました。ヘルマスター。では、任務遂行します。」そういって、手短に来た通信は切れた。

 

「今のはどういうことなんです?シュリル調査員。ちょっと、気になりますな。」ダリシュが神妙な顔つきをしていたので、尋ねるサムソン

 

「ああ、これですか。これは、このハイド伯国の領民が平面宇宙航行可能の船を作った証拠が見つかったことですよ。まぁ、作ったのは元マタイ12師団であるハイド星系軍の上層部ですよ。これは、議会の承認なし秘密裏に作ったものみたいです。それで、帝国法によれば、その製造した関係者全員、死刑です。しかも証拠が見つかり次第、即死刑です。」

 

「それは…。穏やかではありませんな。でも、私もそんな法があるとは、知りませんでした。確かに、領民政府には星間航行の禁止というのがありましたが、その罰がそれほど重いとは知りませんでした。」驚きを隠せないサムソン

 

「そうですね。罰則については、領民政府には明かしていないので、普通調べないとわからないことですが、ちゃんと帝国法の公文書にものっています。これができたのは、あの悪名高き11代皇帝のドゥグナーですからね。当時の資料によると、あまりにも星間航行可能の船を作る領民政府がでてきたので、それに対して裁判をするのが面倒になり、この法律を作ったといわれています。効果は抜群だったみたいで、それ以来、星間航行可能の船を作る者は極めて、少なくなったと聞いています。」淡々と説明するダリシュ

 

「そうですか、確かに、アーヴは戦争までして、この宇宙を支配する権利を得たのですから、それを脅かすのには厳しく罰するのは当然といえば、当然ですがね。」少し考え込むサムソン

 

「それに、僕達『青の牙』の役目はアーヴの復讐を果たすだけでなく、平面宇宙航空可能の船の製造を防ぐことです。今回は、同時にそれを実行しなくてはなりませんね。まぁ、そのために、あのテントにいなかった3人を予備兵力として残して置いたのですから、大丈夫でしょう。」この状況を予想していた様子のダリシュ

 

「そうですね。それは、グリーン達に任せましょう。私達は『天元』を成功させればいいのですから。ね、サムソン家宰」片目をウィンクしていうミルフィーユ

 

「はい、わかりましたぜ。とにかく、急ぎましょう。」

 

 

サムソンは、ダリシュ達が捕縛する予定の目標の資料を眺めていた。それには、人類統合体の遺伝子研究者であり、人類統合体遺伝子実験研究所ハイド支部・所長のジョン・ディバッツの経歴や特徴などが載っていた。彼がその実験場で行ったのは、ハイド伯国周辺で捕まえてきたアーヴの人体実験(これには、ヴォーラシュ伯爵やその家族も入っている可能性あり)だった。

前ハイド伯爵の処刑との関連性は、彼はハイド伯国を占領して、前ハイド伯爵を捕まえたとき、すぐに処刑を主張した人物の一人だった。その理由が単に実験資料に不適切なアーヴの名を借りた地上人などすぐ、処分してしまえというものだった。

彼は人類統合体では、あまり注目されていなかった遺伝子工学を熱心に研究して、それを戦争に生かしたいという理由でこのマーティンのエキゾチック・ジャングルに研究所を建設した。ここが辺境地ということもあり、統合軍も彼の処遇に困っていたので、彼の研究所を作る代わりに、この地から出ないことを命令していた。

そのため、彼は星界軍がこのハイド伯国を回復した後でもこのマーティンにとどまっていたのであった。

 

…………サムソンが捕縛者の資料を読み終えた頃、浮揚車は、ふいに止まった。………

 

「サムソンさん、どうやらつきましたよ。あの林の影から巨大な建物が見えるでしょう。あれが、人類統合体遺伝子実験研究所ハイド支部です。あそこに目標のジョン・ディバッツがいるでしょう。」指を指しながら言うダリシュ

 

「そうですか、久々に特殊任務ですから、緊張しますぜ。フェアリーはどうなんですか?」銃をしっかりと握り締めるサムソン

 

「私は、久しぶりにヘルマスターと一緒に任務ができて、嬉しいわ。何しろ彼が14歳のとき、以来ですから。あのときは、楽しかったわ。でも、あんな騒動は、2度と起きてほしくはわないでしょうね。ねぇ、ヘルマスター」悪戯っ子の笑みで聞き返すミルフィーユ

 

「まぁ、そうですね。でも、あなたのおかげで助かりましたよ。さすが、紋章院の通り名で『電子の妖精』といわれているだけのことは、ありました。」懐かしそうにするダリシュ

 

「ええ、あのとき、作ってもらったこの子のおかげで、こんな地上世界に閉じ込められても、乗り越えられましたわ。この子との会話は退屈しなくてすみましたね。」そういって、クリューノを操作するミルフィーユ

 

「え…なんですぜ、気になりますな。」そういって、二人の会話興味深く聞くサムソン

 

「僕が当時、作った擬似生命思考結晶体、名前は『ヘヴィ・ベル』、それを彼女に育てて、もらってね。当時のちょっとした騒動を解決するのに役立ててもらったわけです。彼女の能力は、思考結晶にリンクできる数少ないアーヴなんですよ。サムソンさん。」

 

「なんですと?ああ、それで、『電子の妖精』か。なるほど。でも、彼女が今回の任務になぜ最適なのですか?」そこが気になるサムソン

 

「それは、あの研究所の防衛システムを排除するのは、彼女の能力が適切だからですよ。彼女がその気になれば、10個分艦隊の思考結晶ののっとりも可能です。ねぇ、ミルフィーユさん」なぜか、あえて、本名で言うダリシュ

 

「そうね。この子『ヘヴィ・ベル』と一緒なら、ラクファカールの全ての思考結晶ものっとり可能かも?まぁ、そんなことしたら、ヘルマスターに怒られるからやらないけどね。」片目でウィンクするミルフィーユ

 

「はは、そうですか(とんでもない二人だな。)でも、それなら、目標は簡単に捕縛できそうですぜ」

 

「まぁ、そう上手くはいかないと思いますよ。何しろ遺伝子研究所ですから。さて、無駄話もここまでにして、フェアリー、お願いします。」気を引き締めるダリシュ

 

「ええ、わかりました。ヘルマスター。」

そういって、頭環からキセーグを伸ばして、それをクリューノにつなげて、目を閉じた。

 

しばらく、沈黙が続き、おもむろに目を開けるミルフィーユ

 

「ヘルマスター、研究所の全てのシステムのハッキングとのっとり、成功しました。ですが…。研究所内に多数の生命体反応あり、それが…どうやら、私達の予定進路上に多くいます。たぶん、遺伝子改造された動物や植物、人間などを護衛かわりにしているようです。この研究所の地下の最下層に所長室があるみたいです。たぶん、そこの生命体反応が目標のジョン・ディバッツです。それと、残念なお知らせです。ここのデータから多数のアーヴの人体実験記録がでました。それには、ヴォーラシュ伯爵閣下も含まれます。全員、記録上では死亡しています。」沈痛そうな顔をするミルフィーユ

 

「まぁ、予想通りの状況です。サムソン家宰、あなたは、ミッドグラッドで遺伝子改造された植物や動物を食料としてきたのでしょう。ある程度の化け物でてきても、対処できるでしょう。ここにあなたを呼んで正解だったということです。」無邪気な笑顔を見せるダリシュ

 

「ふー、そこまで、読みきっていたのですね。とにかく、化け物退治といきますか?」ニヤリと不敵な笑みをするサムソン

 

「わかりました。私もなるべくバックアップします。では、突入しましょう。ヘルマスター。生命体の居場所はできるだけ伝えます。」ミルフィーユ

 

 

こうして、人類統合体遺伝子研究所ハイド支部に潜入する三人であった。

 

一方、平面宇宙航行可能の船を製造したハイド星系軍・上層部を処刑するためにたった『青の牙』のグリーンら3人の戦いが始まった。しかし、マーティンの歴史では、アーヴと戦ったという記録はどこにも乗らなかった。これは、あくまでも隠密に行われたものからだった。

 

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