星界の風章「復讐」   作:いち領民

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星界の風章「復讐」 第五章

ダリシュに平面宇宙航行可能の船の製造の確認を報告した20時間前

 

紋章院の『青の牙』のグリーンこと、アイリーフ・ウェフ=ケレス・ティアラは、ダリシュが監禁された別荘の一室にいた。

 

彼女はミルフィーユ同様に、反アーヴ・ハイド同盟の一員としてもぐりこんでおり、マーティンの情報、特にハイド星系軍に関しての情報を集める役割だった。彼女の髪は緑色で、緑の瞳だった。常に頭にバンダナを巻いていて、その組織の中では最も美しく、恐ろしい存在だった。

マーティンでティアラは、マリア・グレースと名乗っていた。

 

「マリア、キールがアーヴどもに殺されたぞ。どうする?この先、反アーヴ・ハイド同盟はどうなるのだ。」監視室からクリューノに通信が彼女の元へ入った。

 

「そう…。わかった。とにかく、地下室へ向かう。部下を数名、用意を頼む。」火薬式の銃を携え、戦闘準備をするティアラ

 

そして、6名ほどの部下を地下室へ突入させたが、キールは焼け焦げた死体の姿をしていて、アーヴ達は、地下へ続く入り口から逃げた様子だった。

 

「く、逃げられたか。おうかい?マリア。」部下の一人が脱出口を指しながら言う

 

「いや、ここで追ったら、敵に増援がいて逆襲にあうかもしれない。でも、まぁ、追跡慣れしているやつを数名送りこもう。それより、アーヴがどうして、この入り口を知っている?おかしいと思わないか。」他の部下に問い掛ける

 

「確かに、おかしい。この入り口は我々でさえ、知らない。とても偶然で知ったものとは思えないし…・まさか、我々に内通者がいるのか?」部下の一人が疑問を抱いた

 

「そうね。確かにそれもあるけど、もう一つ考えられる。あれは、本物のアーヴではなかった。キールを暗殺するための政府の刺客という可能性もある。アーヴなら内通者が地上世界にいるのは、不可能に思えるけど、ハイド星系政府ならここにいても、おかしくない。とにかく、そっちの可能性ならここは、危険ということになる。別の場所へ移動しよう。」素早く指示をするティアラ

 

 

こうして、ティアラの指示のもと、反アーヴ・ハイド同盟の主要メンバーは、違うアジトに集まり、今後の話し合いをした。

 

反アーヴ・ハイド同盟の副リーダーのカルツ・ハインを始め、ティアラを含めて、5人がアジトの一室で話し合っていた。

 

「まず、今日、みんなに集まってもらったのは、残念な知らせを伝えるためだ。我が組織のリーダーであるキールが殺された。しかも、先日、地上へのこのこ現れたアーヴによってだ。」カルツ

 

「なんと、あのキールが。殺しても絶対死なないと思うやつが死んだ?信じられん。」幹部の一人のアッシュ

 

「これは、事実だ。そのときの記録映像がある。これを見てくれ。」カルツ

 

そして、映像には、アーヴの青年の一人が手錠をあっさりとはずして、キールの1番の側近であるアルタとベゲルを倒し、その後、キールをあっさりと殺した映像が残されていた。

 

「見てのとおりだ。あのアーヴは、凝集光銃が効かなかった。特殊な防御兵器を利用しているみたいだ。それと、あの格闘戦の強さ。尋常じゃない。キールは、戦闘のプロだった。彼は我々の兵士が10人たばになっても、素手ではまったく歯が立たなかった。しかも、あのアルタもベゲルも我々の中で5本の指に入るくらい白兵戦闘力は高かった。だが、彼らを一度も触れさせること無く倒したのだ。」沈んだ声で語るカルツ

 

「皆、この映像を見てどう思う?私は、どうみても、特殊な訓練をしているとしか思えない。普通のアーヴが地上であれだけの動きができるとは思えない。キールは、私が知っている兵士の中で1番の強さを誇ったやつだ。とくに格闘戦や白兵戦では、特別だった。」

重い空気の中、ティアラが口を開いた。

 

「カルツ、悪い知らせだ。さっき、そのアーヴを追跡した部下3名の連絡途絶えた。」アッシュ

 

「そうか、わかった。それで、とにかく、キールは死んだ。ここに集まってもらった本題は、この後の組織のリーダーを決めること。私は、次はマリアにリーダーになってもらいたい」カルツ

 

周囲の他の4人はざわついた。

 

「どういうことだ?彼女がこの組織に入って数ヶ月だぞ、いくらなんでもそれは反対だ。リーダーなら、副リーダーのカルツがやればいいじゃないか」アッシュ

 

「これは、キールの遺言だ。我々反アーヴ・ハイド同盟がこれまで、革命組織としてやってこられたのは、キールのおかげだ。彼は、我々マーティン人と違い、傭兵として人類統合体と一緒にこの星へ来て、縁あって、我々の組織に入ってくれた。それまで、我々は口先三寸だけで、何も行動できない組織だったのを真の革命組織と生まれ変わらせたのも彼だった。その彼が、もし自分が亡くなったとき、次に任せることができるのは、マリアだけだと言った。」一気に説明するカルツ

 

「そうか、あいつがそんなこと言っていたのか。でも、私は断る。例え、遺言でもね。私は、やつの遺言を守る前にやるべきことがある。復讐さ。あのアーヴとあいつを操って、キールを殺した連中へのね。」怒りに満ちた表情のティアラ

 

「どういうことだ。あのアーヴは、情報では政府と何か交渉事で地上へ降りたが、決裂してすぐに戻るということだ。それをキールが捕まえたのだ。それに裏があるということか?」アッシュ

 

「ああ、私が独自に調べたとき、あのアーヴは、すでに政府もしくは、軍と交渉はまとまったとあった。だから、キールが手を出すとき反対したんだ。何か怪しいと。だが、あいつはきかなかった。据え膳食わぬは男の恥とかいって。その結果がこれだ。あいつは、我々や他の反アーヴ主義を唱えているテロリストを釣るえさかもしれないということさ。」重大なことを告げるマリア

 

「なんだと、最初から、仕組まれていたということか。確かにあのアーヴの戦闘力は、信じられなかった。しかも、凝集光銃の防御兵器をつけていた。最初から、このことを予想していたとしか考えられない。」マリアの考えに同意するアッシュ

 

「その結果は、もうすぐ出るさ。今回の件を私は組織とは別の傭兵を使って調べている。その情報がもうすぐ、来る」

 

しばらくして、ティアラの元に連絡が入った。それは、暗号で書かれていたので、他の幹部にはわからなかったが、実際はハイド星系軍が平面宇宙可能の船の製造をしている造船所の場所と証拠が示されているものだった。

 

「どうやら、カラクリがわかった。あのアーヴは、地上の反アーヴ主義者を掃討するための暗殺部隊の一人、そして、それが誘導しているのがハイド星系軍の上層部、そして、その上層部はアーヴによって、宇宙船の製造までやっている。それで、この星から逃げて、アーヴの元へ行く気だ。くそ、あいつら自分たちの利益のために我々を売ったのさ。」吐き捨てるように言うティアラ

 

「そんなことのために、キールは殺されたのか。ち、あいつら絶対復讐してやる。」

ティアラの嘘をすっかり信じ込むカルツ

 

「そういうことだったのか。よし、マリア、我ら反アーヴ・ハイド同盟の力をみせてやる。指揮は、君に任せた。」アッシュも信じこんだ。

 

こうして、反アーヴ・ハイド同盟は、ティアラの策略に踊らされて、平面宇宙航行可能の船を破壊する作戦に参加することになった。

 

 

「(さてと、準備はできたし、後は、ヘルマスターへ報告して、命令を待つわけね。)」自分の個室でこれからの算段を考えるティアラ

 

すると、彼女の背後に音も無く忍びよって、原色に近い青色の髪をした男が凝集光銃を背中につきつけていた。

 

「あら、シャドー、ずいぶんなご挨拶ね。」そういって、左わき腹から後ろに向けて銃をつきつけているティアラ

 

「いや、ちょっとした、戯れ事だよ。君の腕を確かめるためのね。それにしても、君の演技もなかなかだよ。これなら、どの地上世界でも女優としていけるのでないかな」皮肉っぽく言うシャドー

 

「あら、名無しのあなたには、言われたくないわ。紋章院で唯一、正式な名称が未登録というあなたにわね。知っているのは、各マスタークラスだけという珍しい人にわね。」

顔を見ずに後ろ向きのまま話すティアラ

 

「そうだね。さて、無駄話もここまでにして、作戦は、決まった?ヘルマスターには、報告だけするでは、無能だと思うけどね。一応、君が今回の指揮官だろ。」

 

「ええ、決まったわ。私は、反アーヴ・ハイド同盟を率いて、敵の造船所を破壊する。とびっきり、派手にね。そこで、関係者は全員殺すわ。それで、あなたは、ハイド星系軍の国防本部に潜入して、自爆テロを装って、今回の船の密造の首謀者のゼータリ司令官を含めて、上層部の主要人物の暗殺をお願いするわ。あと、それ以外で、うちもらしたリストのメンバー殺害をナイトにやってもらう。まぁ、おおまかは、こんな感じね。詳しいことは、これに入っているわ」後ろを振り向かずに記憶片を投げるティアラ

 

「そうか。わかった。これで、今回のことは、反アーヴ・ハイド同盟の犯行ということになる。フェアリーが、この組織にいたおかげで、色々助かった。ああ、それと、さっき、エンターテイナーから連絡がきて、向こうの任務をさっさと終わらせて、こっちに参加したいといっていたよ。どうする?」興味深げに口元に笑みを浮かべるシャドー

 

「え…。とりあえず、断ると連絡いれておいて。シャドー。いくら想人でも、私も誇りがあるわ。ヘルマスターからまかされた任務を彼の手助けをしてやり遂げようとは思わないしね。」苦笑を浮かべるティアラ

 

「そうなのかい?グリーン。ヘルマスターは、君が遺伝子提供者なんだから、彼にいえば、とめてもらえるのじゃないの。そっちで断りの連絡伝えたら。」意地悪く笑うシャドー

 

「いいえ、それは、しないわ。ヘルマスターには迷惑かけたくないの。よし、わかった。私からエンターテイナーに伝える。こっちには手だし無用って。とにかく、祭りの準備しておいて。作戦発動時間は、009955時でお願い。」

 

「わかった。じゃぁ、また。君に幸運を。」

そういって、一瞬で気配を消して、闇にまぎれるシャドーだった。

 

その後、ダリシュに平面宇宙航行可能の船の製造が確認されたことを伝えて、その関係者暗殺すること命令を受けて、そのための準備をティアラは入念に行った。

 

 

一方、ハイド星系政府首相官邸にて

 

「まだ、シュリル調査員の行方は、わからないのか?マルクス長官」警察庁長官に尋ねるティル

 

「ティル主席、残念ながら行方知れずです。誘拐した犯人の方は、確定情報ではないのですが、反アーヴ・ハイド同盟が有力です。ですが、彼らから犯行声明が出されていないので、確定はできないのです。いつもの、テロ行為ならすでになされていると思うのですが…」申し訳なさそうに答えるマルクス

 

「反アーヴ・ハイド同盟…・。やつらか、ここが人類統合体に占領される前までは、口先だけの連中だったが、リーダーが変った途端、最も急進的で強硬派の革命組織に変った連中か。だが、もし、そんな奴らに捕まったら、ちょっとした事でシュリル調査員が殺されてもおかしくない…」苦悩した表情のティル

 

「一応、ハイド星系軍にも協力を要請しているのですが、彼らはあまり、積極的ではないみたいなのです。何だか、我々に隠し事をしているみたいで、今回のことも、急に野党勢力に組したことも何か裏がある気がします。」警察特有の鼻を利かせるマルクス

 

「そうなのか。では、再度、私から直接ゼータリ司令官に伝える。とにかく、緊急を要することなのだ。もし、今回、シュリル調査員が不当に殺されたらどうなる?統合体の連中から聞いたことだが、彼らは復讐をきっちり、果たす種族だぞ。領民政府の責任を追及されでもしたら、このハイド星系政府自体が風前の灯火だ。」額に汗をかきながら言うティル

 

「はい、わかりました。我々も全力で捜索します。では、」

そういって、主席官邸の部屋から出るマルクス

 

「(くそ…・。なんで、こんなことになった。シュリル調査員の地上へ降りることを許可したからか。いや、軍の連中に護衛を任せたことか。いや、そんなことより、これからが大事だ。とにかく、生きて彼を宇宙へ送り出さないと。ジントの親友だぞ。いくらアーヴとはいえ、ジントの親友を殺させるわけには、いかない。何か考えろ。ティル・コリント)」必死になって、一人考えるティルであった。

 

 

 

 

アイリーフ・ウェフ=ケレス・ティアラは、グランドン市から西へ50キロほど離れた山奥のミジウル鉱山採掘跡へ反アーヴ・ハイド同盟の部下30人ほどを引きつれて、待機していた。ここにハイド星系軍が秘密裏に作った平面宇宙航行可能の宇宙船の造船所があった。

 

「よし、情報どおりだな。敵のハイド星系軍は、兵士が100名、船の技師や関係者、現場関係者は他400名、全員、元マタイ師団に所属していたもの。マーティンの元々の市民はいない。どうせ、全員で逃げるきだったのだろう。よし、皆殺しだ。いいか、みんな、これは、絶対命令だ。わかったか。」命令を徹底させるティアラ

 

「おお、わかったぜ。キールの仇だ」意気込む反アーヴ・ハイド同盟の兵士達。

 

「(フフ、お馬鹿さんたちね。あのキールの中身がフェアリーだったと知ったら、どう思うかしら。まぁ、あの中からアーヴのほとんど子供の美少女がでてくるなんて思うことはなんて無理だと思うけどね。さてと、祭りをはじめなきゃ。派手な祭りを)」ティアラ

 

「A班準備、いい。そっちは、西側の出入り口を封鎖して、逃げてくる連中を一人も残さず射殺して。B班は北口を爆破して封鎖。残りは、私と共に突入する。ねずみ一匹逃す気はない。では、あと1分で作戦発動時間になる。それまで、待機」

 

作戦時間になった。

ティアラは、見た目は、軍用のヘルメットだが、頭環と同じ機能をもっている特別性のものを被っていた。そして、作戦時間なると、ハイド星系軍の造船所の正面入り口に向けて、ティアラはバズーカ砲を構えて発射した

 

ドゴォーンとまるで地震のような地響きが造船所で響き渡った。バズーガ砲によってあけられた大きな穴に凝集光銃を発射しながら突入していく反アーヴ・ハイド同盟の兵士達。

彼らが突入した時間は、深夜だったので、兵士の半分は、寝ていて。戦闘準備とれていない状況だった。それどころか、この造船所に敵が攻めてくるなど思っているものはほとんどいなかった。

 

「さてと、私もいきますか。シャドーは上手くやっているかしら」時計をちらりと見て、突入するティアラ

 

その突入時間から5分後、ハイド星系軍司令本部に平面宇宙航行船「ランブルク」の造船所が襲われた事実が伝えられた。

 

「どういうことだ。誰に知られた。」深夜たたき起こされたゼータリ司令官

 

「は、わかりません。ただ、襲撃の様子では反アーヴ・ハイド同盟が有力と思われています。とにかく、対策本部と援軍の編成準備をただいましています。司令官閣下、早く会議室にお越しください。」副官のゲルクが状況を説明する

 

そして、その後、5分でハイド星系軍の主だった首脳部は会議室に集まった。

「ゲルク大佐、援軍の準備は整ったのか。一刻を争う。あれが破壊されては私達の逃亡計画がだいなしになるぞ」怒りと不安にかられるゼータリ司令官

 

「そうだ、早くしろ」各参謀や司令部の幹部からもいらだちがつのっていた。

 

そこへ、幹部以外は入室不許可の会議室へ一人の青年が入ってきた。

 

「皆さん、集まっていますね。これは、ありがたい。ナイトさんに楽をさせることができます。」黒いベレー帽を被った原色に近い青色の髪の青年が不敵に笑っていた。

 

「なんだ、貴様は。」そういって、いきなり銃を撃つゼータリ司令官。

だが、彼の目の前で凝集光銃は相殺されてしまった。

 

「あらあら、無駄ですよ。あなたがたは、これから死ぬのですから。これを知っていますか?アリエル級小型爆弾です。さて、起爆スイッチを押します。あと、2秒ですね。」そういって、その小型爆弾をゼータリの足元へ投げつけた。

 

ハイド星系軍の幹部達は、必死の形相で爆弾を放り出そうとしたが、時間があまりにもなかった。

 

ドッゴーンと雷鳴に似た響きと共に、ハイド星系軍の上層部の25名の命は一瞬にして消えた。

その中で一人シャドーだけがニヤリとした表情のままたたずんでいた。

 

「任務終了。あとは、ナイトの手伝いでもするか」そういって、再び闇にまぎれるシャドーだった。

 

司令本部が突然爆弾テロにあったために、ハイド星系軍は大混乱に陥り、とても造船所に援軍をよこせる状況ではなかった。しかも、主要な幹部はそのテロによって、全員死亡。指揮系統そのものが消滅したようなものだった。

 

 

造船所に突入したティアラは、思ったより敵の抵抗が弱かったので、とても不満だった。

 

「なんだい、あの連中。敵が攻めてきたのに、逃げることばかり考えて、掃討するこっちの身になってみろよ。」そういいながら、凝集光銃で兵士をまた一人撃ち殺すティアラ

 

「マリア、どうやら、やっと、敵も立てなおしてきたみたいだ。ここの所長で司令官のガルビン率いる部隊50名がこっちに向かっている。」無線で状況を説明する部下の一人

 

「わかった。よし、そいつらを殺せば、後は、戦闘能力はないやつらばかりだ。そいつらの迎撃態勢に入る。」やっと、手応えがある敵が来ると思って心が踊るティアラ

 

指で指図をして、部下にコンクリート壁をたてがわりにさせて、八の字の陣形をして、敵が突破を図ろうとする通路を囲む反アーヴ・ハイド同盟の兵士達。

 

「(こいつらと実戦は初めてだが、よく訓練されているな。フェアリーは教官としての才能もあるみたいだ)」自分の思い通り動く兵士達に満足するティアラ

 

「みんな、ふせて。」空識覚で肉眼より速く敵の攻撃を感知するティアラ

そして、敵の銃撃は、一瞬後、雨のように襲いかかった。

 

頭を伏せながら空識覚で状況を確認するティアラ

 

「(なるほど、5人一組で横に並んで一気に突撃する気か?だが、甘いわね)」

そういって、銃撃の中、目線と指で他の部下に命令を伝えるティアラ

 

「よし、今だ。」タイミングを見計らい指で合図を送る。

すると、八の陣形から同時にティアラの部下たちは発砲した。

一斉射撃によって、5人同時が倒れた。敵も思いがけない反撃にあい、一瞬動きが止まった。

 

それを見逃さずにティアラは、先陣を切って、突撃した。そして、空識覚で認識していた敵の司令官であるカルビンを凝集光銃の一撃で額を貫いた。

その後、ティアラに続いて、彼女の部下たちも一斉にハイド星系軍に襲いかかった。司令官をなくしたハイド星系軍の兵士はまったく、統制のとれない反撃をするだけで、次々と倒れていった。

 

30分後には造船所を守っていた守備隊は全滅した。

 

「よし、あとは、この船に爆薬をつめて、破壊するだけだ。みんな、ここにいた造船所の技師たちや工員はこの造船所に閉じ込めておけ。船と一緒に始末する。いいか、わかったら、さっさと動け。」最後の命令をするティアラ

 

「マリア、あんたの指揮は見事だった。敵の司令を1撃でしとめる射撃の腕といい、頭を伏せながら的確なタイミングで指揮をする。すばらしい。やっぱり、キールの後を継ぐのはあんたしかいねぇ」

一緒に同行していて幹部の中で1番反対していたアッシュがいった

 

「ありがと。でも、まだ、作戦は終わっていない。この船と造船所を破壊して、初めて終了よ。あなたも、準備が終わったら、さっさと退避しなさい。私はもう少し、爆破作業の様子を見る」

 

「わかった。では、作戦が終わったら、キールの葬式と共に新リーダー誕生の宴をするからな。」そういって、造船所から立ち去るアッシュ

 

「(ふー、どうやら、なんとかなりそうね。あれ、どうしてこんな所に子供?でも、ダリシュの幼いときに似ている)」

 

ふと、造船所を歩いていると、8歳くらいの子供が倉庫のタンボールから顔を覗かせていることに気付くティアラ

 

すると、その子供が突然、凝集光銃を構えて、ティアラの方へ向けた。

「父さんの仇。」

 

ティアラは、ダリシュに似ている子供を撃つのを一瞬ためらってしまった。

 

「(しまった。)」

彼女がそう思った瞬間、一人の男が彼女の前に立ちはだかり、その男の前に壁が一瞬現れて凝集光が相殺された。

 

「坊や。よいこは、お眠りの時間だ」

 

そういって、その男は凝集光銃を発砲すると、心臓を貫かれた子供は、そのまま即死した。

 

「ハーデス、なんで、あんたがここにいるの?」ふいに現れた男に話しかけるティアラ

 

「グリーン。いや、ティアラ、君も甘いな。油断大敵だよ。言っただろ。あっちの任務が片付けたら参加すると。もっとも、君は断ったけどね。でも、私にも想人を心配する権利はあるのじゃないかな。現にこうやって君の命を救ったしね」地上人に変装したハーデスが微笑みながらいった。

 

「ふー、わかったわ。とにかく、ありがとう。言いたいことは、あとで言うわ。爆発作業の準備も終わったみたいだし、とりあえず、ここから退避するわね。」

 

「わかったよ。でも、君に聞かせたい話があったので、本当は一刻も早く、あいたかったのだよ。とにかく、まずは、ここからでるか」

 

ハーデスとティアラが造船所を脱出してまもなく、大きな爆発音と共に平面宇宙航行船「ランブルク」は、完成をまたず破壊された。その関係者の人々の命を飲みこんで…・

 

 

マリアとして反アーヴ・ハイド同盟としていたティアラもその状況を見ながら、自分の任務が完了したことを確認した。そして、落ちついたので、ハーデスと二人きりで話をしていた。

 

「ところで、話って一体何?あなたが、特殊任務中なのに話したいってことは、よほどのことなのね」あきれた風にいうティアラ

 

「うん、すごいことだよ。実は言うと、ダリシュのことなんだ。彼が数年前から想人がいたことは、わかっていた。ただ、誰かは絶対に教えてくれなかった。私も色々手を尽くしたが、わからなかった。それが、つい先日、そのダリシュの想人から伝えられてな。びっくりしたよ。」不敵な笑みをするハーデス

 

「そうなの。それは、興味があるわね。それにしても、あの子もそんな歳になったのね。では、きかせてもらおうかしら、その相手を。」そういって、耳を貸すティアラ

 

ティアラの耳にゆっくりと、ダリシュの想人の名前を告げるハーデス

 

「……、それは、掛け値無しで、すごいわね。ねぇ、ハーデス、もし、ダリシュが恋愛相談しても私は受ける気はなくなったわ。そのことは伝えておいて。あの子苦労するわよ。絶対に、これは断言できるわ」なんだか寂しそうにするティアラ

 

「私も、そう思うよ。では、ダリシュ以外は、だいたい今回の任務のメドがたったみたいなので、合流地点にいこうか。君の反アーヴ組織での話も聞きたいしね」もうすぐ、任務の終わりが近いことを示唆するハーデス

 

こうして、『青の牙』の「アーヴの復讐」とは違う、もう一つの仕事である平面宇宙航行可能の宇宙船の製造の阻止と関係者の処刑という任務を果たしたグリーンたちの戦いは終わった。

しかし、この史実は、アーヴではなく、マーティンの革命組織によって、行われたとハイド星系史には、永遠に記載されることになった。

 

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