人類統合体遺伝子実験研究所ハイド支部の正面の扉のロックを解除して、ダリシュ、サムソン、ミルフィーユはゆっくりと建物の中に入っていった。
建物の中は薄暗く、長い廊下と通路があり、各部屋の研究施設には、円いガラス筒の中に様々な動物や植物のサンプルがあり、美しいものもあれば、ひどく醜いものもあった。
「フェアリー、ところで、もう少し照明を明るくできないでしょうか?こう薄暗いと落ちつかないですぜ」薄暗いなかで、不気味なサンプルがあるので、恐怖心が少しずつ沸いてくるサムソン
「それは、無理ね。もともと、この研究所の明るさはこのくらいみたいですし、現在は、防衛システムをダウンさせているセーフモードなの。それだと、研究所自体の電圧を上げることは不可能なのよ。」当然のごとく言うミルフィーユ
「そうですか?わかりました。それにしても、あまりここに長くはいたくないですぜ。」
「そうですね。ところで、サムソンさん、『雨傘』の物理防御モードに切り替えてください。そろそろ、僕らの出迎えが来ましたから。」薄暗い廊下の奥を指差すダリシュ
その廊下の向こうから何か足音を立てて猛スピードで接近しているのがわかった。
サムソンは、ワルサーP38を握り締め、ダリシュは、青色の奇妙な装飾銃を、ミルフィーユも凝集光銃をかまえていた。
薄暗い廊下の中で突進してきた生物を確認した。犬だった。しかし、犬と呼ぶには不相応なくらいの大きさだった。サムソンより一回りも大きい犬が唸り越えを上げながら5匹突進してきた。
ダリシュとミルフィーユとサムソンは、それぞれの銃を構えて、応戦した。
その犬たちは、ジグザグに動き、連携した動きをしていた。
ダリシュは、そんな動きも予想したごとく、あっという間に3匹の眉間を貫いた。ミルフィーユも連射をしながら、一匹の頭を撃ちぬいた。
サムソンは、最後の一匹が横にかわす動きをしたときに心臓に3発撃ちこんで倒した。
「ふー、まずは、最初の関門は突破ですか?」そういって、最後に倒した犬に近づいた瞬間、その犬が突然、起きあがりサムソンに襲い掛かった。
すると、バチバチバチとサムソンの目の前に現れた壁に犬にはぶつかった。ダリシュがあっさりと、銃口をその犬の頭に向けて発砲すると2度と動かなくなった。
「サムソンさん、油断大敵ですよ。さっそく、『雨傘』が役に立ちましたね。ここは、遺伝子改造された生物がいるのです。心臓の一つや二つあってもおかしくないでしょう。だから、今度からは脳を狙ってください。ある程度の動物なら脳を破壊すれば機能不全に陥りますから」銃を構えながらダリシュはいった。
「へい、わかりましたぜ。それにしても、肝を冷やしましたよ。最初からこんなのが出てくると先は思いやられますぜ。ところで、その銃、見事ですね。」ダリシュの銃が気になるサムソン
「ええ、これは、我が家で代々継いでいるオリハルコン製の銃です。『アース』といいます。さてと、さっさと次へ進みましょうか。フェアリー、案内お願いします。」
「はい、ヘルマスター。でも、私も銃は苦手なので、二人の頑張りに期待しますわ。」
ダリシュ達は、地下へ通じる階段へ降りていき、その後も珍しい化物にあった。
角ある像やとげつきの長い尻尾を持った巨大トカゲ、首が二つある巨大な蛇、その他、みたこともない生物がダリシュ達を襲った。どの生物も狂暴で彼ら見ると、食い殺そう必死だった。その様子を見たミルフィーユが、一言「悪趣味ね。」といったのが、ここの研究所の実験体の全てをあらわしていた。ダリシュはほとんどの化物を一発の弾丸あるいは、連射で額を正確につらぬいて倒してきた。その銃技は、サムソンは神技に近いと感心した。
化け物は、前方だけでなく、上下左右、前後、あらゆるところから現れたけど、ダリシュの弾に吸い込まれるように倒れていった。本能で動く動物の動きを読んでいるようだった。
サムソンもそれなり、奮戦したが、彼の役割は、化物を倒すことより、銃の苦手なミルフィーユを守ることに専念するようになった。
「サムソンさん、顔色悪いですね。どうしました?」余裕の表情のダリシュ
「あれだけ、多くの不気味な生物を倒してきたら、気分も悪くなりますよ。ねぇ、フェアリー。」自分だけでなく、フェアリーにも同意を求めるサムソン
「確かに、不気味だけど気分が悪くなるほどではないわ。どんな状況でも冷静沈着に対応できなきゃ、『青の牙』では、やっていけないわ。サムソン家宰」片目でウィンクするミルフィーユ
どんどん、地下の施設へ降りていくと、300ダージュほどの大きな5つの檻が開いていた。しかも、その檻の中は無数の傷があった。
「うーん、これは、シチリール製だな。これをこれだけ傷つけるとは、どんな化物が入っていたのかな?面白くなりそうだ。」その檻を点検するダリシュ
「そうですか、それは、楽しみですね。楽しすぎて、心臓がドキドキしますよ。」苦笑いを浮かべるサムソン
「サムソン家宰、それと、もし、この怪物が襲ってきたら、『雨傘』は貫かれますよ。これほどの物理防御力はないですから、気をつけてくださいね。」重大なことをこともなげに言うミルフィーユ
「ええ、そうですか。素敵な忠告ありがとうございますぜ。いやぁ、ますますやる気がでましたよ。」
さらに皮肉を言うサムソン
「それで、フェアリー、ここに閉じ込められていた怪物はなんていうのです?データ検索はどうですか?」
「でました。ゼタリアγ…・。熊を遺伝子改造した」と彼女が説明しようとした瞬間、
いきなり四方の壁が崩れた。そこには、前足の肘から先がまるで巨大なナイフのように研ぎ澄まされた刃物状の熊が二足歩行でダリシュ達を囲んだ。コンクリートの壁はこの怪物達によって破壊された。
ダリシュは、そのゼタリアγが出現した瞬間、銃を眉間にむけて放った。しかし、その化物は、片方の前足を頭の前に盾として使い、防いだ。
「どうやら、よく訓練されているみたいだ。いい反応だね。サムソンさん……?」ダリシュが見まわすとサムソンが崩れた壁の向こう側にいっているのが確認された。
「どうやら、こいつらに分断されてしましたみたいですぜ。どうしますか?」ミルフィーユとダリシュが、崩れた壁を挟んでさらにその間にゼタリアγがいたので、かなり危機的状況に陥ったと感じるサムソン
「サムソン家宰、とりあえず、こちらでできるだけひきつけます。それまで、なんとか逃げとおしてください。」そういって、懐からナイフを取り出して、細い腕に傷をつけて、血を流すミルフィーユ。
そのあと、すばやく、その場をダリシュと一緒に去った。
ゼタリアγは、血の匂いが大好きだった。それで、匂いをかぎつけた瞬間、5匹のうち、4匹は、ダリシュ達を追いかけ始めた。だが、一匹だけはサムソンを睨みつけたまま唸り越えを上げて、サムソンに近づいた。
「どうやら、こいつは、おれが好みらしいな。シュリル調査員より、美味しそうに見えたのか?」そういって、愛用のワルサーP38を構えて、逃げながら連射した。
最初は頭を狙ったが、防御が固く前足に防がれるので、まずは、立っている後ろ足を狙った。
「ギャウーーーーーー」と怪物は叫び声を上げて、動きを止めた。
サムソンが撃った弾が怪物の後ろ足を貫通した。
「よし、やった。」とサムソンが言った瞬間、怪物は刃物のような前足でコンクリートの壁を打ち壊し、その破片をサムソンへぶつけた。
拳並の大きさのコンクリートの破片がサムソンの右手にあたり、うっかり、サムソンは銃を落としてしまった。さらに、その銃は、ゼタリアγの足元へ転がった。
「しまった。ここは、逃げるしかないか」
そういって、サムソンは何か武器があるかを探しながら逃走した。
ゼタリアγは、足を引きずりながらもサムソンを追いかけていった。
サムソンは逃げ込んでいる通路の奥には、厨房があった。そこで、サムソンは立ち止まり、大きな包丁と中華鍋を眺めた。
「(これは使える。この包丁は、チタニイル鋼製、中華鍋もアウタクリス製だ。これなら、あの化物の刃物状の前足も防げるだろう)」
左手に鍋を盾代わりにして、右手に大きな重い包丁を構えた。
「ガォーーーーー」と耳を痛めるような咆哮をあげて、ゼタリアγは、サムソンに襲いかかった。
サムソンは、怪物の痛烈な一撃を鍋でふせいだ。それをなんとか防ぐともう一撃加えようとした隙に、先ほどつらぬいた傷口に包丁を差して、さらにえぐるように広げた。
「ギャシャーーーーーーーーーーーーーー」再び、大絶叫を上げるゼタリアγ
片足の機能を完全に奪われたゼタリアγは、さらに移動速度を落として、片方の前足を杖代わりにして、ノロノロと進むだけであった。
「さてと、今日の料理は、熊の化物の丸焼きだな。」
そういって、間合いをとり、厨房にあったありったけの油らを取り出してゼタリアγにぶっかけた。その後、タバコとライターを取り出して、タバコに火をつけ、一服するサムソン。
「さてと、これで料理完成だ。」
タバコの火をゼタリアγに落とすとあっというまに炎につつまれて、絶叫を上げて、その化物は絶命した。
「さてと、シュリル調査員と連絡とりますか……。こちら、サムソン、そっちは、どうだい?」クリューノで連絡をとるサムソン
「ええ、全部倒しました。さきほどの檻の前で合流しましょう。」そういって、ダリシュの通信は切れた。
サムソンは、落としたワルサーP38を拾い、檻の前でまった。程なく、ミルフィーユとダリシュが来て、再び三人は合流した。
「シュリル調査員、あの化物四匹の相手、ご苦労ですぜ。それにしてもよく、四匹も倒せましたね。こっちは、一匹倒すのも一苦労でした。」
いかにも、大変そうに両手を上げるサムソン
「そうでしたか?まぁ、僕は3匹、残り1匹はフェアリーに倒してもらいましたよ。僕は、場所を移動して、ちょっとした技を使うことができるところに移動したのです。跳弾をつかったのです。鉄骨が多い場所を選んでそこで、全部、後頭部から怪物達の脳をつらぬきました。」こともなげに言うダリシュ
「私は、この金属製の手袋をはめて、素手で戦いました。あの化物が刃物状の腕を繰り出したとき、投げ技と同時にその腕を折って、折った先を脳天に突き刺したの。私の勇姿、サムソン家宰にみせたかったですわ」かわいらしい笑顔で答えるミルフィーユ
サムソンは、その話をきいて、こいつらこそ怪物だと思った。特にミルフィーユがあの熊を投げ飛ばしたなんて、信じることはできなかった。でも、二人様子を見ると真実なのはまちがいなさそうだった。
「さてと、先へ進みましょう。あともう少しですから。」ダリシュは、うながした。
こうして、奥の方に進むと、巨大な扉があった。すると、ダリシュは、入ろうとするサムソンに待てのサインを送った。
「どうやら、ここにはかなりの敵がいるみたいだ。フェアリー、数はどれくらい?」空識覚で認識したので、生命体反応の数を聞くダリシュ
「えーっと…。30はいます。何がいるかを今、調べていいます。フレストガンプT-005型…。人間を遺伝子改造した生体兵器です。データを今、送ります。」クリューノを操作するミルフィーユ
「うーん…。これは、きついな。耐久力とスピードが半端ではないな。普通の凝集光銃や火薬銃では、傷をつけても致命傷は難しい。特に頭部の骨の厚みはかなりのものだ。集団で連携能力もありか…。よし、決めた。サムソンさんとフェアリーは、ここで待っていてください。」決断を下すダリシュ
「まさか、一人で戦うつもりですか?いくらなんでも自殺行為ですぜ。その情報によれば、さっきの熊の2倍の腕力に5本の指にはナイフのような爪があり、スピードは1ウェスダージュを4秒で動けるようなやつらですぜ。しかも、連携攻撃ができるなんていうのに一人でどうやって戦うのですか?何か違うルートを探した方がいいですぜ。」ダリシュをとめるサムソン
「でも、ここしか道が無いんですよ。サムソンさん。大丈夫。この手の化物とやりあったのは、初めてではないですから。しかも、たかが30匹です。」と余裕の笑みを浮かべるダリシュ
「初めてじゃないって…。(この青年は一体どんな経験をつんでいるんだ。信じられない。)」その発言に本当に驚くサムソン
「サムソン家宰、ヘルマスターはとある地上世界で我々の『青の牙』でいう『バイオハザード』という状態になった地上世界で任務をしたことがあるのです。この任務が終わったら、詳しく説明してもいいですわ。たぶん、しばらく食べ物が美味しく食べられない気持ちになる可能性はありますけどね。」とミルフィーユは、説明した。
「わかりました。シュリル調査員、あなたの力を信じますぜ。」二人の様子が自信ありげだったので、サムソンも了承した。
「では、ヘルマスター、3秒後に扉を開けます。そして、ヘルマスターが入ってすぐに閉めます。いいですね。」最後の確認をするミルフィーユ
「わかりました。フェアリー、では、お願いします。」愛用の銃『アース』を握り締めながらダリシュは言った。
扉を開けた瞬間、ダリシュは一瞬で6発の銃弾を発射しながら突入した。その後、重い扉を閉じた音が響いた後、扉の向こうではフレストガンプT-005型たちの奇声と銃声がひっきりなしになりひびいた。
サムソン達にとって、とてつもなく長い時間に感じられた激闘の銃声や奇声は、唐突に終わり、静寂が扉の向こうを包んだ。
すると、サムソンのクリューノが静寂を破り、鳴り出した。ダリシュからの通信だった。
「サムソンさん、全部、片付けました。思ったより、楽でした。あのときと比べると、ここの化物のレベルはそんなでもなかったです。一応、絶命したかの確認がとれたので、入っていいですよ」まったく、呼吸を乱していない様子でダリシュは話していた。
サムソン達が扉の奥へ入ってみると、そこは大きな広場だった。そして、そこには、体長は200ダージュを超えるフレストガンプT-005型の死体が多くあった。どれも、首や頭や目などに弾痕があった。それ以外の死体は味方の爪に串刺しにされているものまであった。
そして、1番、驚いたのは、どの化物にも恐怖の色を見せながら死相だった。
「(く…。どうやら、多少は人間の本能がシュリル調査員に対する恐怖心を感じさせたのか?それにしても、わずか10分でこれだけのやつらを全滅させるとは恐ろしい青年だ。)」
死体を眺めながらサムソンは思った。
「さてと、もうひと踏ん張りです。あともう一つ、大きい広間を抜ければ、ジョン・ディバッツがいる所長室へ行けます。」まったく、疲れた様子もなくダリシュは奥へ歩きだした。
ダリシュ達が広間を歩いていると、奇妙なことに床がこれまで鋼鉄製やコンクリートだったのが、土になっていた。しかも、少し湿っていて、養分が多く含まれていそうなものだった。
「なんだか、嫌な予感がしますぜ」とサムソンがぽつりといった瞬間、
緑色の長い刺のついた鞭のような巨大な物体がサムソン達の頭上から振り下ろされてきた。
それを認識した同時に三人は素早く、飛んでかわした。
ズーンという地震にも近い、振動が起きて、あたりの様子を見ると、0.3ウェスダージュはある巨大な白い幹に刺のついた多くの触手と巨大な牙のある口がある植物とは思えない異形の生物が存在していた。
「なんですか?あれは?」思わず口走るサムソン
「データによると、大根を遺伝子改造したものみたい。登録名は『DAIKON−X』となっているわ。弱点は…。特殊な薬品をまけば、枯れるとあったけど、そんなものもっていないし、どうしましょうか?」そういいながらも次々と繰り出される触手をかわすミルフィーユ
「他には何かないのですか?フェアリー、できれば物理攻撃で対処できるのがいいと思います。」そういいながらも、無造作に発砲して、いくつかの触手を打ち落とすダリシュ
「とにかく、ここは、一時、撤退した方がいいですぜ。あの触手の数では、対応しきれない」
「そうですね。ここは、サムソンさんの言うとおり、撤退しましょう。あれは、ここから動けないみたいですから離れれば、大丈夫でしょう。」
こうして、サムソン達は、思いがけない化物にあい、一時撤退をして、策を考えていた。
「フェアリーさん、とりあえず、その薬品の成分を教えてくれませんか?なんとか、つくれないか。見てみます。」
ダリシュは、成分を見てみたが、難しい顔をして考え込んでいた。
「どうしました?やはり、無理ですか?」化学のことに関してはあまり、得意分野でなかったので、尋ねるダリシュ
「サムソンさん、自分の手持ちの材料を考えるとあと二つ足りないのです。化学式でいうと2C2H5OHの成分。いわゆるエチルアルコールです。C17H33COOHでいわゆるオレイン酸です。この二つがないとどうしようもない。純粋ではなくて混合物でもいいから欲しいです。」
説明するダリシュ
「エチルアルコールとオレイン酸ねぇ…。あ、そうだ。シュリル調査員、それって確か、蒸留酒やオリーブ油にも入っていましたか?」思いついたように話すサムソン
「ええ、それで、十分です。でも、どこに、そんなものが?」
「厨房です。さきほど、みつけてね。確か、そこにもありました。今すぐ取ってきます。」
こうして、『DAIKON−X』を枯らすための薬品の材料はそろい、ダリシュとミルフィーユが慎重にそれを製造した。
「サムソンさん、フェアリー、これで薬品はできました。さて、ここからが問題です。座残念ながらこの薬品は手持ちの材料ではわずかに作れませんでした。だから、これを僕の弾丸の中に仕込みます。それを、大根の化物の核に撃ちこみます。それには、核を表面上にあらわすまで傷をつけなければなりません。」
一息をついて、再び説明するダリシュ
「それで、ミルフィーユさんが、『ヘヴイ・ベル』とリンクして、ここの施設の感知機能から核を探り出して、その表面上にペイント弾を撃ちこみます。そこへ、サムソンさんがその包丁を思いきりなげて刺します。それを僕が銃で柄の部分を連射して、釘を打ち込むように核まで貫通させます。そして、貫通したところに最後にこの薬品入りの弾丸をいれます。これは、3人のコンビネーションとタイミング重要です。」二人を見ながら確認するダリシュ
「わかりました。ヘルマスター」ミルフィーユ
「よし、いくとしますか」サムソン
再び、『DAIKON−X』へ、接近する3人だった。無数の鞭のような触手を交わしながら、まず、ミルフィーユがペイント弾をちょうど、巨大な口から0.1ウェスダージュほど離れた真ん中あたりに撃ちこんだ。
それをサムソンは、まるで、槍投げの選手のように勢いをつけて、投げつけた。包丁は、みごとペイントされた個所に突き刺さった。
その段階では、大根の化物は、何事も無かったように無数の触手をふりまわしていた。サムソンとミルフィーユは、自分の役割を果たしたので、触手の範囲外へ撤退した。
そこへ、ダリシュが1ウェスダージュの遠距離から連射を続けると、突き刺さった包丁はどんどんと大根の化物にめりこんでいった。そうすると、耳が痛いほどの奇声をあげつづけて、苦しんだ。すると、突然、触手の刺が石つぶてようにダリシュに襲いかかった。
突然の敵の遠距離攻撃にダリシュは驚いたが、一瞬で冷静さを保ち、それをすべてオリハルコン製の銃である『アース』を盾代わりとして、ふせぎきると、さきほど以上の連射と正確な射撃で包丁を核に貫通させた。
「グヴァーーーーーーーーー」と大根の化物は叫び、苦しんだ。
そして、ダリシュが薬品入りの弾を銃にこめて、発射すると苦しみつづけていた『DAIKON—X』は、動きが鈍くなり、やがて、止まり、最後にはしわしわになってしまい、ぴくりとも動かなくなった。
「ふー、やっと、終わりましたですぜ。こんな苦労するとは思わなかったですぜ。」思わず一息つくサムソン
「サムソンさん。でも、あなたおかげでとても助かりました。やはり、僕の見こみは、間違っていなかったです。」サムソンの肩をたたきながら微笑むダリシュ
「そうね。私もサムソン家宰のことは、見なおしました。ハイド伯爵家の家宰はどこの貴族の家臣よりも化物退治が優秀だということを再認識しましたわ。」いつものように愛くるしい笑顔をするミルフィーユ
そして、最後の広間を通りすぎ、所長室の部屋へ突入する3人
「なんだ、君達は?」こんなところにアーヴが来たことに心底驚くディバッツ
「ジョン・ディバッツ、あなたを捕縛しに来ました。アーヴの地獄へのね」穏やかに言うダリシュ
「く、くそ」と銃をぬいて撃とうとした瞬間。
ダリシュも銃を抜いていて、一発でディバッツの銃を弾き飛ばした。
「無駄ですよ。あなたの動きなど。ここの化物と比べたら、亀とウサギ並みの差です。さてと、大人しく僕と一緒にいきましょうか。それとも、眠ってもらいますか。フェアリー。お願いします。」
命令をうけるとミルフィーユはゆっくりと近づいていった。すると、ディバッツは、機械類の一つのボタンを押し、何かの暗号をいった。
「クックック、貴様らもここで道づれだ。アーヴども。今、この研究所の自爆コードを入れた。あと10分で爆発するぞ。」勝ち誇るディバッツ
だが、コードを入れたはずなのに、爆破の警告音も思考結晶の自爆の起動も起きなかった。
「あなた、意外と馬鹿ね。ここのシステムは完全に私がのっとたの。自爆コードの変更なんて1番最初にやることよ。さて、お休み。ベイビー」といって、睡眠薬入りの注射器をディバッツに素早く注して眠らせるミルフィーユ
眠ったディバッツは、ダリシュが背負い、そのまま帰りはゆっくりと歩いて人類統合体遺伝子研究所ハイド支部を脱出した。
「ミルフィーユさん、ここの施設は破壊しておきましょう。こんなものがあると、また、誰かに悪用されるのも困るでしょう。ジントのためにもその方がいいしね。」命令を出すダリシュ
「わかりました。ヘルマスター。」そういって、自爆コードを入れて、研究所は爆発してダリシュ達に殺されなかった化物たちも全部、土の中にかえっていった。
こうして、ディバッツは近くに止めてあった浮揚車に乗せられ、さらにアーヴの地獄の場所となる施設に送りこまれるまで起きることは無かった。
「さてと、集合地点までこのまま行きます。サムソンさん、ようやく、ハイド伯爵軌道城館に帰れますよ。ミルフィーユさん、やっと、帝都に帰るのでしょう。本当にご苦労様でした。」任務が終了したと確信して名前で言うダリシュ
「はい、ヘルマスター。私の苦労は報われましたわ。それと、休暇ほしいです。いいですよね。」上目遣いで懇願するように言うミルフィーユ
「もちろんですよ。好きなだけとってください。あとは、僕達が働きますから。」ミルフィーユの頭をなでながらいうダリシュ
「俺も休暇が欲しいですぜ。とはいっても、帰ったら逆に仕事が山になっていそうな気がします。パーヴェリアも俺がいないとさぼる癖もあるしな。家臣もつらいところですぜ」急に現実感を感じて、ため息をつくサムソン
ダリシュ達が雑談をしながら、集合場所いると、ダリシュ達以外の『青の牙』のメンバーははそろっていた。
「どうやら、皆さん、それぞれの捕縛者を捕まえてきたみたいですね。では、確認させていただきます。カイン・シュナイダー元最高法院裁判長官、ギルド・メイアー議員、マーク・マックス死刑執行員、マルドア・エイジ元ハイド星系議会議長、クリス・ガイアー内閣調査官、ハーネット・ボブ議員など13名の遺伝子照合確認できました。さすが、皆さん、仕事が早いですね。」部下の仕事ぶりに満足するダリシュ
「そんな、照れます。でも、ヘルマスターは化物を相手にしたのでしょう?私達の様に平和なれした警備の連中の相手をしたのとは、わけが違います。そっちの方こそ、大変だったのでしょう。」サーシャが心配そうに言った。
「ええ、思ったより、大変でした。でも、サムソンさんがかなりの戦力になったので、助かりました。では、ラシェールを呼ぶので、皆さん向こうの湖にいきましょう。」そういって、クリューノを操作するダリシュ
ダリシュがラシェールを呼んでまもなく、ティアラ達が合流地点に到着した。
「ヘルマスター、こちらの平面航行可能の宇宙船の破壊および、関係者の処刑おわりました。」敬礼をして報告をするティアラ
「わかりました。ご苦労様です。では、一緒に帝都へラシェールで帰りましょう。これで、全員そろったみたいです。ティアラさん、サムソンさんに自己紹介お願いします。」
「はい、わかりました。私は、アイリーフ・ウェフ=ケレス・ティアラです。コードネームはグリーンです。ついでにいうと、ヘルマスターの遺伝子提供者は私です。サムソン家宰」緑色の瞳で穏やかな笑みをするティアラ
「そうですか。(あの微笑は、確かにシュリル調査員に似ているな。)ハイド伯爵の家宰のサムソン・ボルジュ=ティルサル・ティルースです。とりあえず、ひと仕事終わったのでやっとくつろげますぜ。」丁寧に挨拶するサムソン
5分後、『青の牙』マスター専用特殊戦闘艦『影船』1番艦ラシェールは、『青の牙』の8人全員にサムソン、『天元』によるアーヴの地獄行きの捕縛者14名をのせて、惑星マーティンをあとにした。
こうして、アーヴの地獄へ行きの人々は、帝国でも秘匿されている『ゲーフ門』の奥の施設に送りこまれた。ダリシュは、それを確認すると、ラクファカールへ帰還した。