「サムソン家宰…。生きている。生きている。よかったぁ…」
サムソンの胸にしがみつき、泣きじゃくるセールナイ
ハイド伯爵軌道城館に帰ってきたサムソンとダリシュとミルフィーユに、セールナイは突然の号泣で迎えた。セールナイの隣にいたパーヴェリアとスォッシュは、その様子を安心したそうに見守っていた。
「おいおい。熱烈な出迎えありがとう。といいたいが、ちょっと、恥ずかしいから落ちついたら離してくれないか」
サムソンがそういってもセールナイは、歓喜あまってか、なかなか離れようはしなかった。
「サムソン監督、いえ家宰。よく生きて帰って来られましたね。あなたがたは、あの地上世界で最も過激な革命組織に捕らわれた可能性が高いと聞きました。そして、その革命組織によって、ハイド星系軍が現在、攻撃され大混乱です。でも、よく、生きて帰って来られましたよ。」同じ言葉をもう一回言い、実感を感じたように言うパーヴェリア
「そうです。なぜ、助かったか、私も聞きたいです。ティル首相もあなたの達のことを本当に心配していましたから。特にシュリル調査員に関しては。」スォッシュ
「ええ、僕の部下が何名かで助けに来てくれたのです。今、軌道城館に隣接されている船で助けに来てもらいました。そのときのメンバーで1番活躍したのが彼女です。」
「アクリア・ウェフ=イトス・ミルフィーユです。初めまして、ハイド伯爵家の家臣の皆さん」水色の巻き毛と瞳を持つ12〜13歳くらいの美少女が挨拶をした。
「へー、このお嬢ちゃんが。驚いた。監督、こんなかわいらしい娘さんに助けられるとは地に落ちたものだ。そういえば、革命組織の反アーヴ・ハイド同盟というやつらに捕まったのでしょう。そのリーダーのキールってやつは、熊も素手で倒す大男だったのでしょう。そんな男達に捕まっていてさぞ、大変だったのでしょう。」軽口を叩くパーヴェリア
すると、隣のミルフィーユを見て、豪快にサムソンは笑った。
「確かに、熊をすでに倒すくらいのやつだったな。とても恐ろしかったよ」と大声で笑いながらミルフィーユを見た。
「サムソン家宰、笑うのはそこまでにしてください。」頬を含まらせながらミルフィーユはいった。
「サムソンさん、今回のことを領民政府に対する説明や家臣にする説明はすべて、あなたに任せます。僕らは、あまりここに滞在している時間はないので、もう少しで帝都にかえらなければなりません」瞳で視線を送るダリシュ
「そうですか。わかりましたですぜ。」ダリシュがある程度の情報を偽装してくれ視線で送ったのを理解し、了承するサムソン
「あれ、もうお帰りになられるのですか?もっとアーヴの皆様方と話がしたいのですが」歓喜の状態から立ち直ったセールナイが言った。
「セールナイさん、すいません。また、機会があったら、来られるかもしれません。では、行きますので、これで。」ラシェールの搭乗口まで歩くダリシュ
「では、サムソン家宰、さようなら。そのセールナイというお嬢さん、なかなか、かわいらしいですね。あなたもすみにおけないですね。」ミルフィーユもその後へついていった。
ミルフィーユのそのいいかたが妙に気になったけど、アーヴの言いようなど、気にしていたら仕方が無いということは、これまでの経験でサムソンは知っていたので、ほうっておくことにした。
「さてと、どう説明するかな。ひと苦労しそうだ。」
サムソンは、どう話をまとめようか、これからの苦労を考えると苦笑した。
帝宮の時雨の間にて
「ジント、とりあえず、報告はまとめたよ。君の言った通り、ティル・コリント氏はシロだった。安心してくれ。でも、君の故郷の人間をアーヴの地獄へ送るなんて、家業とは言え、つらいな。」辛そうな表情で話すダリシュ
「そうか、でも、他の『青の牙』のメンバーより、君の手でやってもらった方がよかったかもしれない。ところで、あの手紙は渡してくれたかい」いつもの笑みに辛さの色を浮かべるジント
「うん、渡した。ジントには、君らしく生きろとティル氏は言っていたよ。さてと、僕の仕事の話は、ここでおしまい。君にここに来てもらったのは、正式に想人を紹介するためさ。まぁ、前にも君と彼女は会っているし、君にも名前を教えているから、そんなに緊張することも無いだろう」ジントの様子を見て言うダリシュ
「ダリシュ、それは、無理だよ。いくら鈍い僕でも、あの方に会って、緊張しないでできる人間なんてこの帝国に何人いるんだい?」
「それもそうか。さてと、もうすぐ時間だ。彼女は僕以上に忙しくてね。なかなかジントに紹介できなかったけどやっとできる。それがとても嬉しいよ。」本当に嬉しそうなダリシュ
帝宮の時雨の間にダリシュの想人が一人で入っていた。
「ジント、紹介するよ。僕の想人のラマージュだ。まぁ、本名はジントも知っているので省略するよ。ラマージュ、彼が僕の親友であるリン・スーニュ=ロク・ハイド伯爵・ジントだよ。」まるで普通に友達を紹介するような感じで楽々と紹介するダリシュ
ダリシュの想人はアブリアル・ネイ=ドゥブレスク・皇帝・ラマージュだった。
その姿は、ガフトノーシュをかたちどった頭環、はなだ色の髪、赤褐色の瞳、薄紅色の長衣を身につけたていた。
「皇帝陛下、おひさしぶりです。この度は、僕を紹介してもらうためにお忙しいなか、ありがとうございます。」声が固くなるのを感じながら感謝するジント
「そなたに感謝を。これは、私的なものだ。そんなに緊張しなくてもいいであろう。」
そういって、ダリシュの隣の椅子に座り、ジントとちょうど斜め正面のところに座った。
「まぁ、ラマージュと想人になった簡単な敬意を説明するよ。」
こうして、ダリシュは説明した。
ダリシュ説明によると、ダリシュがヘルマスターに就任した頃、ラマージュには、別の想人がいたけど、彼と関係が悪化しており、それに関してダリシュが悩みを相談されていた。とはいっても、ラマージュが一方的に愚痴を言うのを聞いているのがダリシュの主だった役目だった。
ラマージュは、ハーデスよりもダリシュを信用していた。ハーデスは、実際、任務上では、秘密保持はしっかりとやっていたが、彼個人の資質では、しゃべり好きだということを知っていたので、このことを話す気にはなれなかった。
また、ヘルマスターと皇帝の会話は帝国の秘匿中の秘匿だったので、二人以外でもれる心配は微塵もなかった。このような経緯で悩みをダリシュは聞いていたが、その努力もむなしく、結局、その想人とラマージュは破局した。
その後、帝国の柱たる皇帝に気落ちしたままでは、帝国全軍の士気にかかわることだとダリシュは判断したので、彼女を慰めるよう全力で努力した。
そう説明すると、一旦、ダリシュは、ソイ・アーサを一口のみ、ラマージュの方を見て、確認するように話した。
ダリシュが説明している間、ラマージュは彼の顔をじっと見つめて、表情も威厳に満ちたものであるが、少し頬を桜色に染め、瞳も情熱的に輝いていた。
ジントが以前あったときとは、まったく違った表情だった。
「あの話はしないほうがいいかな。やはり、君の名誉を考えるとね。」悪戯っ子の笑みを浮かべるダリシュ
「そなたが話したいなら話すがよい。事実であることは確かであるからな」
なぜか、顔を赤らめるラマージュ
「そう、わかったよ。」再び、説明をするダリシュ。
ダリシュは、ラマージュをなんとか元気にさせようと努力したのだが、彼自身は、当時、恋愛経験は乏しく、失恋の女性の心を癒すということは、わからなかった。でも、ラマージュは、ダリシュのそんな健気な努力に惹かれ、徐々にダリシュを部下としてではなく男性として意識するようになった。
そのせいもあって、ラマージュの失恋は徐々に癒されていった。そんな時、ラマージュの別れた想人だった男がまた、すぐに想人ができたという情報がラマージュの耳に入った。後日、それは、誤認情報だったのだが、それを聞いたとき、失恋の傷が再び痛みだした。
「その日が、たぶん、僕達の運命の分かれ道だった。皇帝として彼女から緊急召集をうけてね。何事かわからないけど、帝宮にいったんだ。その日、ジントも主計修技館時代だから覚えていると思うけど、授業中なのに帰っただろう。意味がわからない他の訓練生は、思ったみたいだけど、あとで、ジントだけに皇帝に呼ばれた説明したあの日だよ。」
「ああ、そうか、あの日か。それで、陛下が呼んだ理由はなんだい?ダリシュ」
「それは、最初に帝宮についたときはわからなかった。周りの人は陛下が直接伝えると聞いたので、とりあえず、僕は密議の間にいったのさ。そうしたら、そこに入った瞬間、ラマージュが突然、僕を抱きしめた。本当に驚いたよ。そして、一言『抱くがよい』といって、ずっと抱きしめたままだったんだ。」困った風な様子で言うダリシュ
「しょうがないであろ。あのときは、理性より感情が支配していた状態だったのだ。自分の感情が抑えられずそなたを呼んでしまった。慰めて欲しかったのだ。」恥ずかしそうに言うラマージュ
「まぁ、それで、なりゆき上、陛下の頼みだし、一晩、契りの相手をさせてもらったのです。その後、陛下が正式に交際を申し込んだ。でも、しばらく考えさせてくれといっていたけど、彼女に情熱に負けてつきあうことになったのさ。ジント」
最後にソイ・アーサを一気に飲み、ようやく説明を終えるダリシュ
「あの一晩、私の生涯の中では衝撃的なものだった。あれほど気持ち良いものだとは、おもっていなかったのだから」顔を赤らめるラマージュ
「ハハ、そうですか。陛下(これは、なんだか、とんでもない秘密を知ったみたいだ。)」動揺するジント
「まぁ、僕も家業の上でその手のスキルを身につけなければ、ならなかったから、陛下には満足できるように努力したよ。」いつものように穏やかに微笑むダリシュ
「ダリシュ、ここでは、名前のみといっておいたであろ。称号で呼ぶのはやめるがよい」さっきから、称号で呼んでいたのでとがめるラマージュ
「ラマージュ、わかったよ。さてと、僕の想人の紹介は終わったし、互いに忙しい身だから今日は、これくらいにしよう。」
「そうだな。そろそろ、私も皇帝の務めに戻らねばならぬな。では、ダリシュ、また、今度、そなたを銀河で1番愛している。」
そういって、ラマージュは時雨の間を去っていった。
「さてと、ジントも戻った方がいいんじゃないか。王女殿下のもとに、君の居場所はあそこなのだから。」穏やかに微笑むダリシュ
「そうだね。僕も戻るよ。『ぼくのかわいい殿下』の元へ……」
(完)