01.悩み(博麗霊夢)
……やれやれ。全く、どうしたものだろうか。頭を抱えながら、私は悩んでいた。
二日前は山に足を運んだ。ふと、じっくり見てみると、自分で思っていた以上に美しかったことを覚えている。
昨日は湖に足を運んだ。足を湖に沈めながら見ていると、水の中と外ではまた見え方も違うのだなと、今更ながらにそう思った。
しかし、これからは一体どうするのがいいのであろうか。今日は朝から手を焼いているが、これが中々骨が折れる。……いや、逆に考えよう。こちらの方が、私にとっては都合が良いかもしれない。
…………いやいや、それよりも問題は別にあるのだった。何せ、さっき勝手に入って来た早苗が悲鳴を上げながら出て行ってしまったのだから。手早く片付けてしまわないと、色々と面倒だ。……まったく、頭を抱えている程度で何故悲鳴を上げるのか。私にはどうにも理解できないことだ。
よっこいしょ、と重い腰を持ち上げる。さて、どうにもいい場所は思い浮かばないが適当に飛び回りながら考えるしかない。まあ、どうにかなるだろう。
……ああ、そういえば咲夜に頼むむねを確認しなければならないのだった。…………よかった、特におかしなことにはなっていないようだ。といっても、多少おかしくなっていても問題はないだろう。何だかんだと言って、レミリアやフランは大雑把なところがあるし。
ちょうど思い出したことだし、今日は紅魔館の方に行くことにしよう。道中でちょうどいい場所があるかもしれない。さてさて、そうと決まった以上さっさと腹をくくることにしよう。速いに越したことはなし、と。
…………魔理沙が済んだら、次は早苗か。
02.壁の穴(霧雨魔理沙)
「……まあまあかな」
ざっと部屋を見渡した私はそう呟いた。
全く面倒なことになった、パチュリーがあんなに怒るなんて思ってもみなかった。そりゃあ私だって勝手に本を借りていったのは悪いと思っている。だからとあんなに怒ることはないじゃないか。おかげで私の家は半壊、修繕が終わるまで何処か別の場所で生活するはめになってしまった。
最初は霊夢を含めた知人の誰かの家に泊めてもらおうというのも考えたけれども、どいつもこいつも一癖ある奴ばかり、下手に借りを作ろうものなら後々面倒なことになるに違いない。と言う訳でこの案は泣く泣く却下した。ではどうするか? 一時的に実家に戻るというのも考えなかったわけではないが、下手をすれば『一時的』が『一生』になりかねないと思ったので却下。結果として残ったのが人里に家を借りるというものだった。流石に一時的な生活の場で一戸建てというのもあれなので長屋の一室を借りることにしたのだ。
……で、今私は借りたその部屋を見渡しているのである。さっきもこぼしたが中々悪くない部屋のようだ。特に汚れているというわけでもないし、これから少しの間生活する分には何の問題もないだろう。……む?
小さな穴が空いていることに、今初めて気がついた。壁の端の方、微妙に目立ちそうで目立たない場所だ。
「ふーむ……」
不審な穴が空いていれば、覗いてみるのが人間の性というものだ。ということで早速、その穴を覗いてみる。まあどうせ木ぐらいしか……ん?
「……赤?」
穴の中にはただただ赤が広がっていた。建材に赤い何かを使ったなどということはないだろうから、おそらくは隣の部屋にまで貫通していて、その部屋の壁か何かが見えているのだろう。
「……変な奴なんだな」
私の知っている限り、紅魔館ぐらいしか部屋を真っ赤に染めている所はない。それが悪趣味かどうかはまあ、明言しないでおくが、一般的な感性でないことだけは確かだ。しかも持ち家ではなく借家である長屋の一室をわざわざそうしているのだから、隣の住民はよほどの変わり者のようだ。
まあ所詮はそれだけの話、どうせ少しすればここから出て行くつもりなのだ。特に挨拶に行く予定もない以上どうでもいいことだ。
……何か、奇妙な感じだ。引っ越した翌日に私はそう思った。
部屋の戸は締めている、窓もちゃんと閉まっている。だというのに、何処かから視線のようなものを感じる、ような気がしている。
最初は当然のように例の穴を疑った。もしかしたら、隣の奴がそこから私の部屋を覗いているのではないかと思ったのだ。だからその穴を覗き込んでみたのだが、別に人の姿は見受けられない。と言うか、赤以外の何も見えなかった。それ以外の何も、全く見えない。時間を変えて見てみても、結局は赤しか見えない。隣に住人がいるのか怪しいぐらい、人の影が見えないのだ。
どうにも気味が悪い。そう思った私は適当な家具でその壁の穴を塞ぐことにした。その後も度々妙な視線を感じるような気がした。あまり気分はよろしくないがあと少しの我慢、そう思いながらそこでの生活を続け、ついに私の家が直ったとの報告が来た。
「お世話になりました」
長屋を出る日、私が長屋の大家さんに挨拶に行くと、大家さんは寂しくなるねと私に言ってくれた。少しばかり別れが惜しい、と思いはしたもののやはり自分の家にはかなわない。
「……あ、そういえば」
ふと、ここで例の穴のことを思い出した。正確には穴の先で見た赤い部屋のことを思い出したのだ。だから私は大家さんに尋ねた。
「私の住んでいた部屋の隣には、どういった人が住んでいるのですか?」
と。……すると、大家さんはこう答えたのだ。
「ああ、あの人ね。何でも、昔の病気の後遺症とかでね――」
その意味を理解した時、私の背を寒気が走った。
「――目が真っ赤な人が住んでいるよ」
03.何の肉?(魂魄妖夢)
「ただいま、妖夢」
「あ、幽々子様。お帰りなさい」
私が庭の手入れをしていると、昨日からお出かけしていた幽々子様が帰ってきた。何でもレミリアさんに招待されたとかで、一人で紅魔館にお泊りをしてきたそうだ。一応私も誘われたのだがちょうど別の用事があり、残念ながら幽々子様についていく事が出来なかったのだ。
「どうしたか? 紅魔館での生活は」
「中々悪くなかったわ、ご飯も美味しかったし」
「へえ、それは良かったですね」
「あ、そうそう。その食事がちょっと面白かったのよ」
「面白い?」
首を傾げる私の様子が面白かったのか、幽々子様は少し微笑んだ後このようなことを言った。
「夕食でステーキが出たんだけど、何の肉だったと思う?」
「はあ、ステーキなら牛肉なのでは?」
「そうね、私も当然のようにそう思っていたわ。でもレミリアが、実はこれは牛肉じゃないの、って食べる前に言ったの」
「へえ、何だったんですか?」
私の問いかけに幽々子様は、うーんと悩みながら口を開く。
「それが分からなかったのよねえ。いくら聞いても教えてくれなかったし」
「もしかして……、人肉とかじゃ無いですよね?」
吸血鬼の館の食事だ、まさかと思いながら私がそう聞くと、幽々子様は笑いながら扇をふった。
「違うわよ。まあ最初はそうかもって思ったんだけどね、食べてみたら違ったわ。今まで食べたことのないお肉だったわねえ、あれ」
「ふーん、そうですか。で、最後まで教えてくれなかったと?」
「そうね。気になって今日出る前にもう一度だけ聞いてみたんだけど、結局教えてくれなかったわ」
「何だったんでしょうね……」
「何だったのかしらね、美味しかったのは事実だけれど」
そんな会話を交わした後、幽々子様はお屋敷へと戻っていった。そして、私もまた庭の手入れの続きを再開したのだった。
意味怖にしては微妙に長く、物語にしては短い。やっぱり難しいですね、これ。いつかはオリジナルを書きたいと思ったり、思わなかったり。まあ続きを書くかどうかは知らないけど。ではまた?