とりあえず一度に三つずつ投稿。一話3000字は行くようにしたいから場合によっては三の倍数投稿することになるのかねえ。
04.肩を叩かれた(物部布都)
先日、人里で行われた演劇を見に行った時に帰りの話だ。
我と屠自古、そして太子様の計三人で見に行ったのだが、これがまた中々に面白い演劇であったのだ。故に終了後もその熱は冷めず、三人で口々にそれの感想を語り合いながら帰っておった。
そうしていると、太子様が後ろから誰かに肩を叩かれたのだ。
何事じゃ? と思って振り返ると、そこにはおおよそ八十くらいであろうか、背の低い腰の曲がった老婆が立っておったのだ。
その時我らはまだ人里の中におった。故にご老人がいること自体はおかしくないのだが、かといって呼び止められる覚えもない。人里で迷子というのもありえぬ、いやそもそも太子様の肩を叩いたのだから道教に興味があるのか? などと色々と思いを巡らせておったのだが、そのご老人はこう言ったのだ。
「私、死にそうに見えます?」
とな。その返答を聞いた我らは一瞬、
「は?」
という思いになったし、もしかしたら口に出していたかもしれん。一体何を言っているのか、と問いただしてやろうかと思ったのだが、どうにも様子がおかしい。妙にその後老人の目が虚ろで、それこそ死人ではないかと思えるほどであった。真剣、と表現するのは変だろうが、少なくともふざけているようにはとても見えなかったのだ。
もしや本当に死期が迫っており、それを覆す為に仙人になりたいとでも言うのだろうか。などとも考えてみたのだが、やはり様子がおかしい。尸解仙となり、並みの妖怪変化に遅れをとらぬようになったこの身が僅かに恐怖を感じてしまうほど、その後老人は虚ろだったのだ。
「……布都、屠自古、行きますよ」
という太子様の声にハッとなった我は、すぐに了承してその場を離れた。これ以上このご老人に関わりあいたくなかったからだ。
そのまま人里を抜け、神霊廟へと空を飛ぶことしばし。ようやく話す余裕が出てきた我が太子様と屠自古に話しかけた。
「何であったのでしょうな、あのご老人は」
「えらく変な人だったね、布都なんかびびってたし」
「屠自古よ、それはお主もではないか?」
「まあまあ、二人とも」
そうして実際に口に出してしまえば先ほどまで感じていた不気味さも多少は薄まる。余裕の出てきた我と屠自古がああだこうだと言い合い、太子様がそれを窘めるといういつもの流れになってくる。だから我はそのまま先ほどのことは笑い話にしてしまおうとした。
「いやはや、それにしてもおかしなご老人であった。てっきり太子様に師事したいのかと思ったりもしたが、流石にあの歳ではなあ」
「あの歳だから、じゃないのか? まあ私は最初、太子様が肩を叩かれたのを見て噂の逆ナンとやらかと思ったけど」
「それは勘弁して欲しいね、というか肩を叩かれたということをあまり思い出させないで欲しいな」
「は?」
太子様が苦笑しながら言った内容に最初は首をかしげたのだが、すぐに気がついてしまった。
先ほどの一言で、気付いてしまったのだ。
05.心霊写真(本居小鈴)
少し前、阿求が私の家にカメラを持ってきた。時折取材などで人里に来るあの烏天狗の記者さんと同じような物をどこかから手に入れたらしく、その自慢兼試し撮りに来たとのこと。パシャパシャとあまり馴染みのない音を響かせながら阿求はひとしきり店の中や、ついでに家のほうの写真も撮って帰っていた。勿論、撮った写真は後日持ってくるとのことだった。
で、今日がその日だった。店番をしつつ楽しみに待っていると、阿求が封筒を手にやってきた。その阿求が持ってきた写真をああだこうだ言いながら見ていると、一枚だけ変な写真が混ざっていた。
家で撮った写真の一枚、押入れを背景に私を撮ったものだったのだが、そこに変なものが写っていた。背後の押入れから、見知らぬ青白い顔の女が顔を出し、こちらを睨みつけているのだ。
そんな写真を見て、私達は顔を見合わせる。
「ちょ……、何これ?」
「何って言われても……、私にも分からないわ」
「現像の時に気づかなかったの?」
「私が自分でやったわけじゃなくて、人に頼んだだけだったからねえ。あんたと一緒に見るために受け取ってからも見てなかったし。……それにしても、一体何なのかしら、これ」
「……心霊写真って奴かしら」
「心霊写真?」
「この前読んだ外来本に載っていたんだけど、写真を撮っていると時々幽霊もこんな風に写っちゃう事があるんだって」
「それで心霊写真?」
「たぶん、ね……」
そう考えるとあまり気分のいいものではない、私達は急ぎ博麗神社に向かうことにした。
「心霊写真? ……まあ、見るだけ見てみるけど」
いぶかしげな表情で写真を受け取った霊夢さんだったが、その顔が段々と曇っていく。そして、深刻そうな表情で霊夢さんは口を開いた。
「…………この写真からは霊気も、ましてや妖気も感じないわ。たぶんだけど、心霊写真でも何でもないわね」
「良かった~……」
その表情とは裏腹に、霊夢さんの言葉は私を安心させてくれるものだった。そのことに喜ぶ私に対し、霊夢さんと阿求は言った。
「小鈴ちゃん、私が言った意味分かっている?」
「小鈴、早くアンタの家に戻るわよ!」
「え? え?」
…………意味を聞かされたとき、私の顔が大きく引きつったのが分かった。
06.美女の肖像画(東風谷早苗)
たまには珍しく紅魔館に遊びに来てみた。突然の訪問にレミリアさんは嫌な顔一つせず、今日は泊まっていくといいとすら言ってもらった。最初は辞退しようかと思ったのだが、それこそたまにはいいかとご厄介になることにした。
それで、大図書館で本を読んだり、フランさんと遊んだりなどして過ごしていると段々と日が落ちてきた。夕食をとり、お風呂を借り、客室に案内された私は就寝準備を始めた。が、どうにも目が冴えている気がする。このままベッドに入ったところで眠れないままもぞもぞとすることになりそうであった。私は気分を変えるために紅魔館の中を散歩することにした。
吸血鬼が主であるというのに、夜の紅魔館はそう明るくない。妖精メイドも眠いのだろうか、中々廊下ですれ違う事がない。何か、面白い物でもないだろうか。そう思った私がふらついていると、とある部屋のドアが半開きになっているのを見つけた。
何かないかな、そう思いながら部屋を覗き込むと、部屋の正面に一枚の絵が大事そうに飾られているのを見つけた。
とても綺麗な女の人の肖像画で、素人目には高そうに見えたのだが少し不気味な感じがあり、その目に特徴があった。何となくだが、そのとても大きな瞳でこちらを見ている気がした。
その瞳に何故か恐怖を感じた私は、すぐに自室に帰ってベッドに飛び込み、朝まで寝ることにした。
翌朝、館が全体的に騒がしかった。何でも、私が昨晩見た絵が盗まれたのだそうだ。おそらく最後に見たのは私だろう、そう思った私はレミリアさんにそのことを伝え、彼女から色々と聞かれることになった。
「なるほどね。昨晩散策した時にはあった、と」
「ええ、間違いないです。……そういえば、あの絵は高価な物なのですか?」
「ん、価値としてはそれほどでもないわ。昔、私の友人の画家が自分の娘の寝顔を描いたものでね。タイトルもそのまま『眠りに落ちた美女』っていうの。……まあ、その友人も娘もとっくにこの世から去っているのだけどね」
「そうなんですか……」
結局、あの絵は見つからなかったそうだ。不思議なことに、泥棒が入った痕跡も見つからなかったらしい。
だろうな、と帰るときに私は何となく思った。
ぶっちゃけ幻想郷の住民で幽霊やらを怖がる人ってそう多くなさそうなんだけどね、少なくとも主要キャラの中では。外の世界じゃないと通じない話は秘封倶楽部に出張ってもらわんといかんのだけど、そうなると出番がかなり多くなりそうなだな。等々と色々思いつつ書いてみたり。ではまた。