07.退院(上白沢慧音)
先日、所要で永遠亭を訪れた時の帰り道で何者かに襲われた。幸い、薬売り帰りの鈴仙が通りかかってくれたから良かったものの、そうでなければ半妖の私でも確実に死んでいると確信できるほどの大怪我だったようだ。
とはいえ傷も癒え、ようやく昨日退院する事が出来た。人里の皆には随分と心配をかけていたようで、戻った時熱烈な歓迎を受けることとなった。皆の歓待に申し訳なさと嬉しさを感じ、これからもここで頑張っていこうと改めて決心した。
その次の日、つまりは今日だが、妹紅が私の家を訪ねてきた。
「お見舞いに行けなくごめんな」
「気にしなくていいさ」
あそこの住人である輝夜姫と妹紅の仲はとてもではないが良好とは言い難い。だから彼女がお見舞いに来なかったことはある意味当然だと納得している。
「そういえば慧音、犯人の顔なんかは見たのか?」
「いや、それがいきなりだったからな……」
後ろからの不意打ちであったので、気づいた時にはもう倒れていた。そのまま私はうつ伏せで地に伏していたので、誰に襲われたのかがまるで分からなかったのだ。
「……そうか」
「お前も気をつけろよ?」
「ああ、じゃあそろそろ帰るよ。今度はちゃんとお見舞いに行くからな」
「ありがとう」
そう言って帰った妹紅を見送った私は、明日の寺子屋の授業の準備を始める。いやはやまったく、持つべき者は優しい友人だな。
…………あれ?
08.悲鳴(稗田阿求)
深夜、私は浴場で身体を洗っていた。何処かまだ汚れていないか、そう確認しながら身体を洗っていると、居間の方から一つの悲鳴が聞こえた、
――まさか!?
そう思った私はすぐに風呂を上がり、服を着もせずに裸のまま居間の方へとは向かう。
静かな屋敷の中を走り、居間に辿り着く。するとそこには、覆面を被った一人の男と、身体から血を流した私に良く仕えてくれた三人の使用人の死体が床に横たわっていた。
その覆面の男は私を見た途端、すぐさまその場から逃げ出した。一拍遅れて聞こえてきた音から、窓を破って外に出て行ったようだ。
――ああ……、終わった……。
私は顔を真っ青に染めながら、その場に座りこんだ。
09.本棚(鈴仙・優曇華院・因幡)
今日、仕事で鈴奈庵に向かった。いつものように置き薬の補充と料金の徴収も終わり、たまにはと私はここで本を借りてみることにした。
どれがいいかなと色々と見回ってみると、壁際の棚に外来本がいくつも並べられていたのに気付いた。ちょうどいいかなと思った私は、そこから適当に面白そうなタイトルの本を抜き取り、パラパラとめくってみた。
それを何冊か繰り返していると、抜き取った時に棚の隙間から向こう側の人と目が合った。私はここで他にお客さんがいたことに初めて気付いたから、少しだけ驚いて思わずその本を棚に戻してしまった。ちょっとだけ罰の悪さを感じつつ、私は違う本を抜き取った。
その後は十分ぐらい本を吟味し、気に入った本を三冊抜き取って店番をしている女の子に借りる旨を告げ、料金の支払いを済ませて店を出た。
帰路の途中、やっぱりあの時戻した本も借りておけば良かったと後悔したけど、今度また借りればいいかと、私はそのまま永遠亭に戻った。
10.ゲーム(因幡てゐ)
とある老人が、私に言ってきた。
「ゲームをしないか?」
どんなゲームと私が聞いてみると、次のような内容のゲームだった。
箱の中に多額の賞金が入れられており、私が見事その箱を開ける事が出来れば、その賞金は全て私のもの。ただしその箱はとても頑丈で、素手で開けるのはまず不可能らしい。とはいっても、周りには斧など箱を壊す道具が準備されているし、時間制限の類も一切ないらしい。
ふむ、と少し考えて、私のそのゲームをやらせてもらうことにした。私には老人が嘘をついているようには思えなかったし、聞いた限り特にリスクの類もなさそうだったからだ。
参加を表明した私に老人は一つ頷いて私に言った。
「実は、箱に辿り着くまでには幾つか難関がある。お前さんがいくらか金を払えば、その額に応じてより近い場所からスタートさせてやろう」
ははあ、と私は思った。これがこの老人の手口なのだろうと。とはいえここまで興味を持ってしまった以上、詳しい話を聞かないという選択肢もない。そう判断した私は、老人に対し少しばかり質問をしてみた。
すると、私が払う分はまったく払えないというほど高額でもないようで、そもそも賞金事態がその分よりもはるかに高額であるようだった。
それなら躊躇う理由もない。そう思った私は老人の求めた金額の最大を払うことにした。私からそれを受け取った老人は、一つ頷いて言った。
「では、ゲームは賞金のすぐ傍からスタートさせてやろう」
ゲームがスタートした。
――賞金は、私のすぐ目の前にあった。
11.山盛りの肉(西行寺幽々子)
目を覚ますと、そこは暗い密室だったわ。何が起こったのかと驚く私に、何処からか声がかけられた。
「ここにある肉を全て食べてください。そうしなければ、貴女を殺します」
密室の中に、その無機質な声が響いた。
何の冗談かしら? と言いたくなったんだけど、私の周りにあるいくつもの死体が、その声の主の真剣さを物語っているようだった。
とりあえず従わないとマズイ。そう思った私は目の前にあった、巨大な皿に山のように盛られた肉を注視する。
かなり多いけれど生憎と私はそれなりに大食いに対し自信があった。どうとでもなると判断した私はその肉の山を食べ崩し始めた。
――確かに多い、でも!
目の前の皿を空にし、何処かにいる声の主に対し、声高に宣言する。
「全部食べたわ!」
一拍をおいて、またあの無機質な声が流れたわ。
「それでは、貴女に罰を与えます」
12.家族(八雲紫)
「一つ、願いを叶えてあげましょう」
そう、私は目の前で泣く少女に言った。突然現れた私に、彼女は涙を引っ込めるほどに驚いていたけれど、すぐに彼女は叫びました。
「家族を消して頂戴!!」
その少女の叫びに、私は確かめるように聞き返したわ。
「家族を消す。それが貴女の願いでいいのね?」
私の言葉に、彼女はしっかりと頷いた。
「あんな家族、まっぴらよ!」
彼女の叫びに頷いて、私はニッコリと微笑んだ。
「その願い、叶えましょう」
翌日、私が彼女の前に姿を現すと、彼女は私を詰ってきた。
「嘘つき! お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、誰も消えてないじゃない!!」
「あら? 私は嘘なんてついていませんわよ?」
確かに、私は彼女の願いを叶えたわ。
「お願いどおり、私は貴女の家族を消したわ。……貴女の家族を、確かに、ね」
「……!? 待って、それって!」
――ええ、それが、貴女の願い。そう、私は受け取ったわ。
「気に入って、貰えたかしら?」
ニッコリと微笑みかける私とは対称的に、彼女は焦りの表情を浮かべて私にすがる。
「お願い! 昨日のお願いを取り消して!」
「――駄目よ。一度叶えたお願いは取り消せないわ」
それを聞いた彼女は、座り込んで泣き出した。――お願いは、考えてやらないと、ね?
はい、久々更新です。幻想郷の世界観でも通じる話を探すのはやはり面倒ですね。次を書くときは、現代の話を秘封倶楽部の二人に交互に話して貰う形にしますかね。ではまた。