今回は秘封倶楽部の二人が、外の世界の意味怖を話してくれるそうです。
13.壁の中の遺体(宇佐見蓮子)
今日、ニュースを見ていると、見覚えのあるマンションが映った。大学の友人の男の子が住んでいるマンションだと、すぐに気がついた。何だろうと思っていると、どうやらマンションの一室の壁の中から少女の遺体が出てきたらしい。
思わず、その友人に電話をかけてみた。
「――あ、もしもし?」
「……宇佐見? 一体どうしたんだ?」
「どうしたんだって、テレビを見たからに決まっているじゃない」
「へ? テレビがどうしたんだ?」
話がかみ合わない。そう思った私は、彼に事情を聞く。すると、何でも彼は少し前に引っ越していたとのこと。それなら気づかないのも仕方がないと、私は今テレビで見たことについて彼に話し始めた。
「……で、貴方が住んでいたマンションなんだけど、何処かの部屋で遺体が見つかったらしいの」
「え? マジで?」
「ええ。何でも、今の住民がリフォームしようとした時に、壁の中に埋まっていた遺体を見つけたらしいの」
「うわぁ……、怖いな……」
「怖いわよね。殺して壁に埋めるなんて、正気の沙汰じゃないもの」
本当、一体どういう神経をしていたのだろうか。その犯人に対してふつふつと怒りを感じる私に彼は、
「いや、その子もかわいそうだけどさ、俺って何も気付かずその部屋に住んでいたんだぜ」
「あ……、確かにそうね」
「それが怖いよ。考えるとぞっとしてきたわ……」
言われて初めて気付いたけれど、確かにそうか。自分の部屋に遺体が埋まっているだなんて、考えるだけでも嫌になる。彼にとっては自分の身に起こったことだし、当分はつらいでしょうね……。
14.交通事故(マエリベリー・ハーン)
今朝、大学に向かう途中で交通事故の現場に出くわしてしまったの。本当についさっき起こったばっかりだったみたいで、壁にめり込んだ車から煙が上がっていたわ。車の状態は本当に酷くて、これは運転していた人はまずいわねと、そんな風に思っていたら声がしたの。何処からと思ってよく見てみると、車の窓のあったらしいひしゃげたところから、女の人が首を出して呻いていたのよ。
思わず駆け寄って、大丈夫ですかと声をかけたんだけど、その女性はただ、
「痛い……、痛……、助けて……」
と繰り返すだけ。とにかく意識があることにほっとして、私はすぐに110番と119番に電話をかけたわ。そこには私一人しか居なかったし、私じゃその人を外に出してあげることなんて無理だったし。
そんな感じで、少ししたら警察と救急車が到着して、私はその警察の質問に幾つか答えてから大学に向かったわ。こう言ってはなんだけれど、私からすれば大学の講義も重要だもの。
それで、講義が終わった後で、そのことを友達に話していたんだけど、その途中でもうネットに事件の事が上がっていたらしくて、友達の一人が調べて見せてくれた。
「今日午前、○○市でスリップした乗用車が壁に衝突する事故があり、運転していた女性が死亡した。女性は大破した車体に挟まれて首が切断されており、即死したものと見られている」
……それを聞いてどうしたかって? 勿論、悲鳴を上げたに決まっているじゃない。
15.電話(秘封倶楽部)
「……はい? メリー?」
『蓮子!?』
「どうしたの? わざわざ電話なんてしてきて……」
『お願い蓮子! 助けて!!』
「はい? 助けてって一体……」
「どうしたの?」
「あ、メリー。いえ、ちょっと電話が…………」
『閉じ込められているの!! 蓮子、助けて、お願い!』
「――どうしたの、蓮子?」
16.年齢当て(宇佐見蓮子)
あと十分ほどで日が変わる。そんな時間帯に私は特急列車に乗っていたわ。時間が時間だけに、私の乗っていた車両には数える程度にした人が乗っていなかったわね。幾つかの駅を通過した後についた一つの駅で、一人の男性が乗り込んできた。
その男性は、電車のドアが閉まった後に、突然我に返ったように乗客の顔を見渡し始めたわ。人が少ないから、当然その男性の行動は目に付いた。私だけじゃなく他の乗客たちも少なからず注目していたと思う。
そんな中、突然その男性が私に声をかけてきたわ。
「すみません。貴方の年齢は二十歳ですか?」
「え?」
その言葉に私は驚いたわ。何せ私の年齢ピッタリだったんだもの。
「ええ、その通りですけど……。どうして分かったんですか?」
そんな私の問いかけに対し、その男性は答えることなく他の乗客に声をかけ始めたわ。
「貴方の年齢は四十五歳ですか?」
「そうだけど……」
「貴方は六十二歳ですね?」
「どうして分かったんだ?」
そんなやり取りを男性は繰り返していく。どうやらその男性には、顔を見ただけで年齢を当てる特殊能力のようなものがあるらしい。
次の停車駅まではまだ十五分以上ある。こんな機会はもうないかもしれないと、私はその男性に話を聞きたいという衝動にかられたわ。
「貴方は五十歳ですね?」
「そうですが、あと五分で日付が変わったら、五十一歳になるんですよ」
最後に質問された女性は、そう笑顔で答えた。だけど対称的に、その男性の顔が一気に青ざめたのを私は見た。
「凄いですね。百発百中じゃないですか」
男性の表情には気になったものの、私はそう彼に対し話しかけた。そのまま彼に、色々と話を聞かせてもらおうと思ったわ。
だけど男性は、その青い顔を私に向けて、こう言ったの。
「貴方は勘違いをしています。私に見えているのは、――その人が死ぬ年齢だけです」
え? と疑問の声を漏らした瞬間、私は確かに大きな衝撃をその身で感じたわ。
17.ノック(マエリベリー・ハーン)
先日、ちょっとした事情で遠出し、一人でホテルに泊まることになった。それ自体は別にいいのだが、問題はそのホテル自体にあった。
そのホテルの予約を取っていたときに友達から聞いたのだけど、そのホテルは所謂、出る、らしく、利用する前から大分気落ちされたわ。
そんな状態で夜、私は少し怯えながらベッドに入ったのだけど、案の定真夜中になってドアをノックする音が聞こえ出したわ。
最初は寝ぼけていたのもあって、ホテルの人かなと思っていたのだけれど、声をかけてみてもまったく返事がない。ただただ、ドアをノックする音――次第に叩くような調子になっていったわ――が聞こえ続けていたの。
もうドアを見るのも怖くて、私はずっと身を縮めて夜が明けるのを待ったわ。
その後、朝方になってノックの音が止んだから、私は飛び出すように部屋を出て、すぐさまホテルをチェックアウトしたわ。
それで、大学に戻ってきた日に、例の話をした友達に会ったからその話をしたのだけど、その友人は、
「やっぱりね」
と、納得したように頷いて、こんな話をしてくれたわ。
何でも、そのホテルは以前火事になったことがあって、逃げ遅れた人が居たのだそうよ。その人は運悪く部屋に閉じ込められてしまって、そのまま亡くなってしまったそうなの。
それを聞いて私は、ドアを開けなくて良かったと、ホッと胸を撫で下ろしたわ。
18.誘い(秘封倶楽部)
「結構遅くなっちゃったわね」
「何だかんだと長話になったものね、仕方がないわ」
「んー……。ねえ、蓮子。今日、私の家に泊まる?」
「そうするわ」
「え? いいの?」
「ええ。この時間だと家まで帰るのはちょっと大変でしょ?」
「助かるわ、じゃあお世話になるわね」
「ええ」
はい、久しぶりの更新です。毎度毎度幻想少女たちに語ってもらうのもアレンジが大変なので、今回は外の世界の二人に語ってもらいました。途中の秘封倶楽部名義だけ、話ではなく、実際の会話、のような形式で書いていたりします。まあ、だからどうというわけでもないんですけどね。ではまた。