19.ジグソーパズル(十六夜咲夜)
先日、知人からジグソーパズルを頂いた。外来由来の品で、何でも光を当てておくと暗くなったときにほのかに光を放つらしい。へえ、と感心しつつ、私はありがたくそれを頂くことにした。
それから、数日かけてゆっくりと、就寝前に少しずつジグソーパズルを組み立てていった。完成したものを壁などに飾ってみると、中々に美しく見えたので私は満足してその日も眠りについた。
翌日、私はいつものように屋敷内の仕事をする為に、身支度を整え、開けていたカーテンを閉め、部屋内の電気をきちんと消した上で私は自室を出た。
その日は何かと仕事が立て込んでしまい、結局自室に戻れたのはいつもより遅い時間だった。確かな疲れを感じながら部屋の鍵を開け、室内に入る。
ふと見ると、壁に飾っていたパズルがうっすらと光を放っている。成る程、これは中々に綺麗で、組み立てた甲斐があったと、私は満足した。
翌日、私がいつものように仕事をしていると、パズルをくれた知人が屋敷を訪れた。その際に、例のパズルが完成したことと、中々綺麗な光景だったと私が感想を述べると知人は、それは良かったと何度か頷いて言った。
「綺麗だっただろう? あれには私も満足しているんだ。……ただまあ、惜しむらくは、いくら光を当てた所で精々一時間ほどしか光ってくれないってことぐらいかな」
20.窓(小悪魔)
最近、妙な視線を感じるような気がするんです。何をしていても、背中を誰かに見られているような感覚があって。ああ、でも大体は、昼間に、廊下とかで仕事をしている時が多かったでしょうか。その事に、変だなあと首を捻りつつ、少しだけ気味悪くも思いながら、私は仕事をしていました。
その日、パチュリー様は魔法の研究が山場だからと、深夜まで起きて研究を行っていました。そうなると当然、私もパチュリー様のお世話のために起きていました。元々夜に強い方ですし、こういったことは度々ありますから特に不満等はありませんでした。
紅茶が飲みたい。ふと、パチュリー様がそう仰ったので、私は紅茶の準備をする為にキッチンへと向かいました。
その帰りです。また、私は誰かに見られているような感覚を覚えました。何処からだろうかと辺りを見渡すと、廊下の窓の一つ、そのカーテンが僅かに開いていることに気づきました。どうやら私が感じていた視線も、その窓の方からのようでした。
私は意を決し、窓に近づいて、カーテンを勢いよく開けました。
すると、そこには私を見つめ返す、私自身の顔がありました。
一瞬キョトンとして、ああと脱力しました。ええ、そういうことです。私は、夜になり鏡のようになった窓に映った自分の視線を、他人からのそれだと勘違いしていたんです。
誰がいるわけでもなかったのですが、突然恥ずかしさを覚えた私は急いでカーテンを閉めた後、小走りで図書館へと向かいました。
大方、これまでの視線もこれと同じことだったのでしょう。背後から未だ感じる視線の正体に納得しつつ、私は気恥ずかしさにため息をつきました。
21.死神の問いかけ(パチュリー・ノーレッジ)
ふと、気がつくと目の前に死神が居た。知人であるサボり魔の様な私達にとっての本物ではなく、創作上であるような本当に人を死に至らしめるような死神だ。
「お前はあとどれだけ生きたい?」
淡々と、死神は私に問いかけた。その質問に対し、軽はずみに答えを返すのは危険だと、私はそう思った。だから、私はじっと考え込んだ。
十年後? まず足りない。五十年後? 馬鹿な選択だ。百年後? それでも足りない。二百年後? いや、それでも足りないだろう。では五百年後? ううん、それなら……。
そうやって考えていると、大きな声が聞こえた。
「おい、パチュリー!!」
その声に、私はハッと目を覚ました。何だと思って見渡せば、そこは私の図書館だ。どうやら、うっかりうとうととしていた所を起こされたらしい。
「起きたか? ったく、今日は出かける予定だって昨日言ったじゃないか」
そういえばそうだ。今日は魔理沙と一緒に、アリスの家に出かける予定なのだった。とはいえ、今の格好では少々出かけるのにはよろしくない。
「五分頂戴。支度をするわ」
「急いでくれよ」
魔理沙の苦言を聞き流しながら、私は席から立ち上がった。
「――心得た」
ふと、そんな言葉が聞こえた気がした。
22.笑顔の写真(レミリア・スカーレット)
戯れに、烏天狗からカメラを買ってみた。幾らかパシャパシャと屋敷内の写真を撮ってみたのだけれど、すぐに興味を失った私は、それを妹のフランにあげることにした。どうしても屋敷内を出る機会が少ない彼女の為にならないかと、ふとそう思ったというのも理由ではあった。
渡してみたところ、予想以上にフランはカメラに喜んでくれた。そこまで喜ばれると私も気分が良かったので、我慢しなくていいから撮りたいものを存分に取りなさいと、私はそう告げたわ。
後日、再び烏天狗から、今度はスコープというものを買った。何でもこれをカメラに繋げると、遠くの光景も撮る事が出来るようになるらしい。私はこれを、またフランにあげることにした。またフランは喜んでくれたようで、すぐにつなげて遠くの光景を取るようになった。
後日、何度目かになる写真の現像の依頼を天狗にした、とある日のことよ。フランから受け取ったフィルムを天狗に渡し、代わりに前回渡した分を現像した写真を受け取った。すぐに私はフランにあげようとしたのだけれど、その前に天狗が不思議そうな表情で言ったわ。
「ところでレミリアさん、現像した写真の中に気になるものがあったのですが」
「何かしら?」
彼女が示したのは一枚の写真だったわ。農作業をしている人間たちが、こちらに向かって笑顔を向けている、そんな何の変哲もない写真よ。
「これがどうしたの?」
「いえ、実はこれが何処なのかというのがどうにも気になりまして。これでも幻想郷の中はそれなりに飛び回っている身なのですが、どうにもこの場所が何処かパッと出てきませんで」
「ああ、そういうこと。それならフランを呼んでくるから、本人に聞くといいわ」
「助かります」
そういうわけだったので、私はフランを呼びに行ったわ。フランも特に不満を言うこともなく、素直に私についてきた。それで、二人を会わせてその写真の事をフランに尋ねたの。
「これ? うーん、何処だろう。この時は確かスコープを使って遠くの景色を適当に撮っていた時のやつだから、ちょっと正確な位置は思い出せないかな」
「あら、そうだったの」
「……それは本当ですか?」
そう訪ねた時の天狗の表情は、困ったとかそういう表情じゃなくて、何処か、怯えが混じっているように、私には感じられたわ。
三の倍数縛りは止めます。解説はまた気が向いたときに。ではまた。