東方意味怖録   作:kokohm

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意味怖・23~26

23.スクエア(姫海棠はたて)

 

 

 

 

 スクエア、っていう怪談を知っているかしら? まあ、ざっくりと話すわね。

 

 ある日、冬の山に五人の登山者が入ったわ。しかしそこで強烈な吹雪に遭ってしまい、遭難をしてしまう。その上、仲間の一人がその最中に亡くなってしまうというおまけ付きでね。

 

 そんな七難八苦に絶望する登山者たちだったけれど、幸いにも山中にて山小屋を発見する事が出来たの。亡くなった一人を小屋の近くに埋葬し、四人は山小屋の中で休息を取ることにしたわ。

 

 山小屋にあった無線で何とか下界の救急隊に連絡を取る事が出来たから、この吹雪が止むであろう明日の朝まで耐えれば下山できるかもしれない。だけど山小屋には暖房器具の類はなく、灯りもない。彼ら自身が持つ防寒具だけでは、暗闇に耐えかねてうっかり眠ってしまった場合、そのまま凍死してしまう可能性があったわ。そんな中、彼らのリーダー格が一つの提案をしたわ。あるゲームをしよう、というね。

 

 方法は単純。山小屋の四隅にそれぞれ一人ずつ座り、まずリーダーが時計回りに次の角まで歩き、そこに座る仲間の肩を叩き、そこに座る。続いて、叩かれた仲間は立ち上がり、同じく時計回りに歩いて次の角の仲間の肩を叩く。

 

 これを一晩中繰り返すことでうっかり眠ってしまわないように一晩を過ごそうと、そういう提案をリーダーは行い、それに仲間達も同意したわ。そして、彼はそれを実際に朝まで行ったの。

 

 朝日が昇り、山小屋の中に明かりが届いた時、彼らは本当に驚いたわ。何故なら、山小屋の中央に、確かに外で埋めたはずの仲間の遺体があったからよ。

 

 どういうことか、と彼らが混乱する中、山小屋の戸がドンドンと叩かれたわ。彼らが待ちわびた、救助隊の到着の知らせよ。

 

 救助隊の到着に喜んだ彼らはその不可思議を一旦保留にし、状況を問う救助隊のメンバーに対して昨夜からのことを大まかに伝えたわ。

 

 すると、その救助隊の一人が不思議そうな表情を浮かべた後に、さっと顔を青ざめさせて、

 

「それ、出来っこないですよ……」

 

 と、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 ……という怪談ね。まあ、有名な話だから知っていた人も多いかしらね?

 

 で、何でこんな話をしたのかというと、実は前にこんな感じの事態に巻き込まれた事があるからなのよ。五人で山に登って、そこで吹雪にあって、そして山小屋で一夜を過ごすって話ね。

 

 そんな状況だった所為か、当時の私はどうにもスクエアの事を思い出してしまったのよね。疲れから思考力も落ちているし、とりあえずこうすれば生還できるって思って、まあその通りにやってみたわけよ。

 

 するとびっくりすることに、私達は四人揃って生還する事が出来たってわけ。いやー、あの時ほど覚えていて良かったと思ったことはないわね。あの後も何度か同じ目に遭ったけれど、その度に同じようにしたら帰ってこられたし、まったくスクエア様々って奴よ。

 

 

 

 

 

 ……それにしても、その度に友達が私の傍からいなくなってしまうのは、一体どういうわけなのかしらね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

24.畑に一つ(八坂神奈子)

 

 

 

 

 最近、趣味でやっている畑を荒らす奴が居てね。これがまた本当に面倒で、見張っているときは絶対に来なくて、見張りを止めた途端に荒らしに来るんだよ。おかげでそれなりに自慢のあった西瓜なんかが幾つもなくなっているんだよね。

 

 困った、と本気で頭を抱えた私は色々と考えた末、良いアイデアを思いついたんだ。それは西瓜畑に一つの看板を立てるっていうものなんだけど、その内容が重要でね。

 

『注意!! この中に一つ、毒の入った物が混じっています!!』

 

 と、そういう風に書いておいたんだ。勿論、毒なんか入れてはいないんだが、犯人からすればまさかと思って手を出せなくなるだろうと、そういうことさ。

 

 そういうわけで、これで一安心だと私は喜んだんだ。だけど、その翌日のことさ。畑にもう一つ、見知らぬ看板が立っているのを見つけたのはね。

 

 

 

『今は二個』

 

 そう、看板には書いてあったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

25.雨音(犬走椛)

 

 

 

 

 先日、同僚たちと一緒に肝試しに行ったんです。私はあまり乗り気ではなかったのですが、私以外の全員がノリノリで、致し方なく私も付き合うことになったんです。まあ、元々酒の席での提案でしたから、皆酔っ払って気が大きくなっていたんでしょうね。

 

 それで、夜も遅い上に、雨も強く振っているというのに、私達は最近話題になっている、山の麓にあるとある洞窟へと向かったんです。生憎と私はその噂を知らなかったので聞いてみたのですが、なんでもその洞窟は山向こうに続いていて、夜中にその洞窟を通り過ぎると良くない事が起こるそうなんです。はっきり言って非常に胡散臭い話だったのですが、まあ仕方がないと諦めて付き合いました。

 

 そして雨の中、傘を差しながら大勢で歩いていったのですが、まあその道中の五月蝿いこと。一人ほぼ素面な私としては、正直恥ずかしかったですね。時間帯もあって人気が少なかったのが不幸中の幸いだったのでしょうか。

 

 そんなこんなで、目的の洞窟に私達は辿り着きました。傘を差しながら歩いていく皆について、私も同じように洞窟へと入ったんです。

 

 当初私は、地面に出来ている水溜りに足を取られないようにしつつ、騒いでいる皆の後ろをついていっていました。雨は勢いよく傘を叩いてくるし、反響しているせいかより激しくなっていった雨音が容赦なく私を苛立たせていきました。特に私は他の人よりも耳が良いものですから、余計に。それに、洞窟に入った時からずっと、気持ちの悪い感覚があったというのもありましたし。酒の影響がないこともあって、私は段々と機嫌が悪くなっていきました。

 

 もう帰りませんか? そう私が先導する皆に対し声をかけました。私としては本気で言っていたつもりだったのですが、それを聞いた皆は一笑しました。酒の力でしょうかね、私の事を臆病者と呼んでそのまま足を止めずに洞窟の奥へと歩いていったんです。

 

 そうなると、私としてはもうやる気もない状況でしたので、皆には悪いと思いましたが、一人で帰ってしまうことにしました。これ以上、付き合っていられなかったというのもありますが、何より先ほどからずっとある違和感が、もうここに居たいと思わせなかったんですよね。

 

 その後、私はそのまま洞窟を出て、夜の雨の中を自宅まで帰りました。そして、特に何事も無く家に辿り着いた私は、玄関に入った所で傘を閉じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その瞬間、全身に鳥肌が走ったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

26.誰にでも気付けること(洩矢諏訪子)

 

 

 

 

 一週間ぐらい前だったかな。ちょっとした噂を聞いたんだよ。人里の子供たちの間ではやっているらしいんだけどね。ここから少し行った所の崖、そうそう、大体十メートルくらいはある、今は枯れた川の傍にある崖ね。その上から飛び降りるとその最中に死神に出会えるって話らしいんだ。

 

 何で死神なんだとか、その後はどうなったのかとかは分からないんだけどさ、とりあえず子供たちの間では流行っているんだって。それでまあ、何かそれをやって度胸試しをしよう、なんてことを考えている子もいるらしいね。実際、私も子供たちがそんな事を話している事を聞いたからね。今から飛び降りてみようかー、なんてね。

 

 話のトーンからすると結構本気だったように聞こえたけど、大丈夫なのかねえ。その時はそんな風に思っていた程度だったんだけど、それが一変したのはそれから数時間ほど経った後さ。

 

 さっき話していた子供たちが、慌てた様子で走ってきてね。それも、さっきと比べて一人少ない。これは、と思っていると案の定、子供たちが口々に喋りだしたんだ。

 

 あの子が崖から飛び降りたら死んじゃった、たぶん途中で死神を見たからなんだ、って口々に、繰り返すようにね。

 

 

 それを聞いた途端、私はちょっとゾッとしたね。ん? ああ、いや。死神が出たかもしれないからゾッとした、ってわけじゃないよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……もしかして、君も気付いていないの?

 




 久々に投稿しました。前話含めて解説はまたいずれ。ではまた。



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