Fate/once more night   作:ココイッチー

5 / 10
今回もエミヤ視点でなく、別の人物の視点になります。
それから、内容はバトルパートが中心になります。

最後に一番大事な事ですが、今回の話は後日投稿予定の6話の別視点という立ち位置です。
唐突すぎて理解不能、と不快に思われる方もいるかもしれませんが、それでもよければぜひ見てください。


5話 運命的な幕開け

interlude ②-1

 

夜の11時。

ここ冬木には2つの大きな街がある。

ビルに囲まれ昼夜問わず人と灯り溢れる街、新都。のんびりとした住宅地でこの時間になると街頭が佇むゴーストタウンと化す街、深山町。

新都と深山町、一見全く異なる別世界のようだが、それらを冬木という1つの街として繋ぎ止める唯一のスポットがある。

冬木大橋。2つの異世界に跨がるここは冬木の中でも特別異質な場所として人々に認識されている。

 

ただ、この日は何が違った。いつもと違う要因は明らかだ。

本来この場所にいないはずの存在、いてはいけない者たちによる、フィクションを超えたノンフィクションが繰り広げられていたからである。

 

 

 

白い鎧を纏った女騎士が橋を駆ける。その鎧はどこかドレスのようで、何も知らぬ人が見れば上質なコスプレ衣装、あるいは撮影と思うだろう。

しかし、その考えはすぐに覆されることになる。赤い光を纏った魔弾が女騎士に迫っていたからである。

魔弾の存在に気づいた彼女は堪らず振り返ると、手に持った黄金の剣でそれをなぎ払う。

「ハァアッ!」

しかし、1つ回避したところで、第二第三の魔弾が続けざまに彼女に降り注ぐ。

それを彼女は第一の時と同じ要領でそれらをなぎ払っていく。

だが、このままでは押し切られると勘付いた彼女はすぐさま近くの公園に駆け込み、木を盾にして剣を構えた。

 

「これで、ある程度は状況を立て直せるはず…」

しかし、それは甘かった。魔弾は盾を粉砕すると、失速する事なく彼女に向かってくる。

「それなりに立派な木を選んだつもりでしたが、これ程の威力とは。」

感心している場合ではない。 あっさりと策を破られた今、彼女に残された唯一の策は魔弾1つ1つを斬り伏せていくことだけだ。

どんなに逃走してもこの魔弾からは決して逃れられない。しかもそれらは、射手がこちらから確認出来ない距離からの狙撃だというのだから尚更タチが悪い。

 

一撃目、二撃目、三撃目、四撃目。立て続けに迫り来る4つの魔弾を彼女は無事斬り伏せると、続けてくる第五第六の魔弾を警戒した。

だが、しばらくしても魔弾が飛来する気配がない。ここに来て初めての状況。

歴戦の兵士ならば、これは騎士が安堵したところを確実に奇襲するための罠だと気づいただろう。しかし、まだ実戦経験の浅かった彼女は、事もあろうかこれで終わりだとまんまと策に嵌ってしまったのである。

 

彼女が背後を向けた瞬間。

通常よりも長い時間チャージされたそれは、彼女の腹に突き刺さる。その膨大な魔力量で敵の攻撃は終わってなかったと気づき、咄嗟に斬り払おうとするも既に時遅し。

 

「グッ…!ァ、ガハッッ…!」

その重い一撃に思わず吐血してしまった彼女。今の彼女に、続いてくる第二第三の魔弾を防ぐ余裕はなかった。

 

「どうやら…ここまでのようですね…」

王になるための修行中に命を落とした彼女は、次こそは失敗せぬよう、正しく民を導けるようにもう一度やり直したいという願いを聖杯にかけてこの冬木に召喚された。

自らの油断が招いたこの結末。彼女はまたも同じ過ちを犯したのかと思うと、悔しくて堪らなかった。

だが、それもここまで。

彼女は瞳を閉じ、次に目を開ける頃には英霊の座に帰還しているのだろうと思いながら敗北を覚悟した。

 

しかしその覚悟は。

 

突如現れた青年によって砕かれる事になる。

 

I am the boneof my sword.(体は剣で出来ている)

 

青年は聞いた事のない詠唱を終えると、その左手を魔弾に向かってかざし、

 

熾天覆う…七つの円環(ローアイアス)!」

直後、彼の左の掌から5枚の花弁が展開されると、2枚の花弁を犠牲に魔弾の連撃を見事に防いだ。

今度はより短い間隔での魔弾が3つ飛んでくる。しかし、先と同じように彼は防いでいく。

 

一枚、また一枚と彼の花弁は割れていく。しかし、彼はそれを全く気にする事なく同時に別の詠唱を始めた。

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)

そう言うと花弁を展開する左とは別の、もう片方の右手から弓が出現した。

 

今のは投影の魔術によるものなのだろうか。それ以前に、彼は何者なのだろう。味方なのだろうか、なぜ私を守ろうとするのか。

そんな事を考えている内に、最後の一枚が割れると、魔弾の雨は再び止んだ。だが、同じ轍はもう踏まない。

 

「気をつけてください!次に来るのは

「分かっている。それよりも、吹き飛ばされないよう少し踏ん張る努力をしたまえ。あぁそれと、こうして揚げ足を取ってしまったが、教えてくれた事は感謝する。」

「えっ…」

 

分かっている。それはつまり彼は女騎士よりも実力者だということだ。そう思うと少し悔しかったが、同時にお礼を言われたことで内心喜んでいた。

 

なんて物思いにふけっていると、彼の手には私の持つ剣によく似た剣が握られていた。

それを彼は、なんと矢として放ったのだ。その構えはとても洗練されたもので、疎い彼女でも分かる、見る者の心を奪う美しい弓だった。

 

偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)

その詠唱の後に放たれたそれは、私の予想通りやってきた今までのそれよりも強力な魔弾の、横を通り過ぎた。

「えっ…?」

 

しかしその直後だった。

突如彼の放った矢、偽・螺旋剣Ⅱが爆発したのだ。爆発により生まれた凄まじい爆風に吹き飛ばされそうになるのをなんとか耐える。

 

ふと彼に目をやる。

彼はその爆風の中心に居ながらも、微動だにせず、ジャケットを風で靡かせながらも立ち続けていた。

そうして私の方を見ると、どこか挑戦的で、その実優しげに微笑みながらこう問いかけてきた。

 

「ついて来れるか?」

 

風が止み、美しい月夜の下で、私は小声で、彼に聞こえない程度にこう呟いた。

「むしろ…引っ張っていて欲しいです///」

 

これが彼と彼女の最初の出会いであった。

interlude out




いかがだったでしょうか。

あらすじでも書きましたが、この作品はなるだけシリアスよりも、ちょっとおバカで後半真面目なアニメプリヤような話にしていくつもりです(ドライはSNみたいな展開に突入しているので、あまり適当な事は言えませんが)。

初めてのバトルパートで不安はありますが、受け入れてもらえれば幸いです。
6話は、4話の続きをエミヤ視点でお送りします。
今回の話は、聖杯戦争のプロローグを書きたかったので投稿させていただきました。
唐突な始まり方は、脚本家の三条陸氏を意識したのですが…全然ダメですねw

最後に、4話で感想を6通もいただき、ありがとうございます!サーヴァントの要望だけでなく、ストーリーの穴や細かい設定のズレ等も指摘してくださり、本当に感謝しています。
これからも応援よろしくお願い申し上げます。

追記
2/29 始めと終わりにinterludeを付けました。
3/1 エミヤの詠唱をルビを追加しました。
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