Fate/once more night   作:ココイッチー

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お待たせいたしました。遅くなってすいません。

この話は5話のエミヤ視点です。


6話 3度目の出会い

「かんぱ〜い!」

事故で入院したものの、打撲という比較的軽傷だったため1日の検査入院で退院することができた。

今は、ここに来て初めてであり、これから住むことになる我が家で、退院祝いの豪華な夕食を家族みんなで食べているところだ。

 

「もし、士郎が事故でもっと酷い傷を負っていたら…こうして食事をすることはもう2度とできなかったのでしょうね…。」

唐突にセラがこんな事を呟いた。

そう、この光景は本来失われていたはずのもの。オレが召喚されなければ2度と繰り返されることはない、みんながいることで初めて成り立つ奇跡なのだ。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。私のせいで…。」

涙目になりながら謝罪をしてくるイリヤ。もし、彼女が"俺"の死がキッカケで、あの明るい笑顔を忘れてしまったら。そう考えるだけで締め付けられる。

「そう暗い顔をするな。オレは今、こうして美味しい食事をみんなと囲むことができている。今はもしもの話で落ち込むよりもまず、この料理をもてなしてくれたセラへ感謝をする方が先ではないかな?ただ…」

「ただ…?」

人には2つの種類がある。罪を犯せば許されて欲しいと思う人、逆に罰を与えて欲しいという人。

イリヤやクロのような純粋な娘は、おそらく後者だろう。前回はごめんというなと言ったが、それではお互いの間にシコリが生まれる。これから更に信頼関係を発展させていくうえで、そういう蟠りを残したままにするのはよろしくない。

 

「イリヤ、次の日曜日みんなに晩飯を作ってみろ。」

「え?え、エェー!?!?」

「どういうつもりですか士郎!また私の仕事を奪うつもりですか!?」

「セラは怒る論点が違う気がするが…まぁ聞け。とにかく、イリヤは晩飯を一品作ること。何を作るかは友達に聞いてもいい。それと、セラにはイリヤの監督役をしてもらう。料理人の補佐というのも、メイドの立派な業務だろ?」

「えぇまぁ。それなら。」

「イリヤ、どうする?」

「うん、私やるよ。それでお兄ちゃんに許してもらえるなら、絶対美味しい料理作るからね!」

「いい返事だ、イリヤ。」

 

せめてものご褒美にと、隣に座るイリヤの頭を撫でてやると、眼を細めて頬を赤く染めていた。こう嬉しそうに反応してもらえるのなら、兄というのも悪くない。

 

 

 

「筆箱がない…だと…?」

その日の晩のこと。翌日から早速学校に行けるということだったが、鞄も一緒に車に轢かれていたようで、その中身がバラバラに粉砕されていた。これでは授業を受けることができない。

 

「ちょっとコンビニ行ってくる。」

「どうしたんですか士郎?もう10時半ですよ、深夜徘徊をするような子に育てた覚えはないんですが。」

セラに断りをいれようとするが、案の定良くない顔をする。まぁ、自分も普通のこの年頃の男が外に買い物に行くなど、よくない人とつるんでいると勘違いされても無理はない。先の筆箱の惨状を話すと、門限11時までという約束のもと家を出た。

 

外に出ると、違和感を感じた。根拠があるわけではないが胸騒ぎがする。しかもその感じが、かつて体験した聖杯戦争の夜のそれとどこか似ていたのだ。

筆箱とその中身は諦めて家に帰るのが正しい選択だろう。今でなくとも、一成に借りればなんとかなる。

しかし、気がかりになることが一つ。

それは、生前の知り合いのイリヤが聖杯だったということだ。

もしもイリヤが、あるいはクロが、またあるいはセラやリズが聖杯戦争に巻き込まれているとしたら。

それは兄として、家族の味方を引き継いだ今のオレには見過ごすわけにはいかない。直感を頼りに、歩みを進める。

 

海浜公園。かつて、セイバーとのデートの帰りに英雄王と戦った、今となっては懐かしの場所で、彼女はいた。

服装はオレの知るそれではなかったが、その顔は、その気品ある雰囲気は、間違いない。彼女だ。

なぜ彼女がいるのか、それは分からない。マスターとしても、サーヴァントとしても、この冬木で彼女とは聖杯戦争を共にした。

こうしてまた出会えるとは…。

 

戦況的には彼女が劣勢だった。

おそらく、オレもサーヴァントとして、この聖杯戦争の参加者として召喚されたのだろう。ならば本来、この状況は歓迎すべきなのかもしれない。

しかし、少年衛宮の影響を受けてか、精神年齢が幾ばくそれに近づいていたオレは、彼女をこのまま見殺しにするのではなく、助けることを選んだ。

 

自分に問う。

この行為は、また他人のために自分の命を勘定に入れないものではないのか。かつて正義の味方を憎みながら、まだそれを続けようとするのか。家族を守ると言いながらも悪戯に自分の命を捨てるのか。

違う。これはセイバーのためではない、彼女と話がしたい、俺のための戦いだ。家族を守る、ならばオレだって家族だ。その家族のために戦うと誓ったのだ、ならばこの一度だけでも、自分の欲望のために戦っていいはずだ。

 

 

頭の中に撃鉄を思い浮かべ、それを落とす。これは、生前何度も繰り返した、普段は機能していない魔術回路を、スイッチをオフからオンに切り替える、起動の動作。

この世界に来てからは初めて行ったが、召喚された際に体の中身がオレのそれに更新されていたようで、何事もなく行われた。

 

これならば、いける。

 

彼女に迫る魔弾から彼女を守るために、オレは前に出た。

 

I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

 

もう何度も唱えたそれを。

心の景色を映し出す、オレの、オレだけに許された魔術。

ありとあらゆる武器、防具を投影し、貯蔵する剣の墓場。

その中から、最強の盾を左手に映し出すべく、その真名を唱う。

 

熾天覆う…七つの円環!(ローアイアス)

彼女と前に飛び出すと、左の掌を魔弾の前にかざす。

瞬間、その掌に花弁が現れる。

これが彼の持つ最強の守り。本来はその真名の通り七つの花弁の盾なのだが、体が魔術回路に比べ未熟なためか、五枚しかない。

だが今はこれで充分だ。

 

魔弾と花弁がぶつかり合う。赤い光を纏った魔弾は、正確には"弓矢"が、彼女を射抜こうと花弁と突き破ろうとするも、両者の勢いは拮抗し、やがて花弁が一枚失われた頃にはその矢も消えていた。

続く第二第三の雨を一枚ずつ消費しながら、オレは次の手を打つ。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

この一言を唱えると、墓場から再び、今度は使い慣れた弓を映し出す。

最後の一枚が割れると、今度は左手にまたも剣を写す。

 

虹霓剣(カラドボルグ)

かのケルト神話にて、光の御子クーフーリンの友であり義父である豪傑、フェルグス・マック・ロイの愛剣。

 

本来の虹霓剣(カラドボルグ)のまま使用しても充分な威力を発揮するそれに、更に改造を加えよりオレ好みの物にする。

 

投影、重装(トレース・フラクタル)

 

投影を重ね、オリジナルとは別の方向性へと姿形を変える。

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

そうして、それを矢として放つ。

最早それは虹霓剣(カラドボルグ)ではなく、

 

偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)

完成されたものを更に鍛えられたそれは、見えない位置から放たれた魔弾の、横を通り過ぎる。

 

「…え?」

背後にいる彼女が、驚いたような声をする。

確かに、目には目を歯には歯を、投擲には投擲で相殺すると考えるのが普通だろう。

 

だが、この状況下でそれでは間に合わない。敵は見えない位置にいる。あちらからの攻撃は容易でも、その逆は難しい。今この状況で射手を倒すには、後出し必勝の宝具でもなければ突破は困難だろう。それを投影できたとしても、今のオレに使いこなせる保証はない。

ここで求められる選択肢は一つ、撤退だ。

 

螺旋剣が魔弾の横を通り過ぎだ時、突如螺旋剣が爆裂した。

魔力で練られた剣を崩壊させ、その解放された魔力を爆発させる技、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

その余波により、陽炎で視界が歪み、爆風が吹き荒れるがそれを堪え、背後に目をやる。

 

尻餅をついてる彼女とそれを見下ろすオレ。

あの時とはポジションが逆だ。それは、オレが彼女と肩を並べられる日が来たということなのだろうか。

それならば、オレがかけるべき言葉は気遣いではなく…

「ついて来られるか?」

これが、オレと彼女…"アルトリア"(セイバー)との3度目の出会いだった。

 

 

「さて…コンビニによるつもりが、とんでもないことになったものだ。」

「あ、あの!」

「すまない、話は後だ。またいつ奴に狙われるか分からない、陽炎が奴の視界を眩ませている間にここから離れるぞ。」

 

「ここまでくれば問題ないだろう。」

あの後公園を出て別の小さな公園まで避難した。

「すまない、実は先の戦闘の前から身体を痛めていてね。そこのベンチに座ってもいいか?」

「大丈夫なのですか?」

「なに、君のその腹部の傷に比べれば、まだ可愛いものだろう。寧ろ、君の方こそ大丈夫なのかね?」

「わ、私は大丈夫です!こう見えても丈夫ですから!」

その傷で動けるのに丈夫という言い訳は不自然な気もするが…まぁ、ここで時間を割いていてもしょうがない。ひとまず二人でベンチで腰を下ろし、痛みが落ち着いたところで彼女が話しかけてきた。

 

「あの、先程の戦闘では、助けていただきありがとうございます!」

「いや、気にすることはない。ただ、君に聞きたいことがあっただけだ。」

「助けていただいたお礼です。話せる範囲でお答えしましょう。」

「では、まず一つ目に、今この街で何g

「こんな所にいたんだ、お兄ちゃん♪」

 

出会ってまだ2日目だが、ハッキリと分かるその声の主。

「クロ!こんな時間にどこをほっつき歩いている!誘拐でもされたらどうするつもりだったんだ!」

「それはこっちのセリフだよ、お兄ちゃん。なんで"私と同じ"魔術をお兄ちゃんも使えるのか、それを聞きたくて追いかけてきたんだけど、この際もうどうでもいいわ。」

私と同じ、だと?どういう意味だ?

彼女の姿を今一度見ると、私と同じ赤い外套を纏っていた。

まさか…

「クロ、お前も投影魔術を使えるのか?」

「そうだよ。でもそんなこと今はどうでもいいの。」

「どうでもいいわけあるか!クロ、お前は一体何もn

「ねぇお兄ちゃん、そこの女…誰?」

 

何者なんだ…え?今、何と言った…?

 




まずはじめに、前回の話が日間ランキングで4位になれました!多くの方に読んでいただき、大変ありがとうございました!

それから、感想の場所では詠唱のミスや心情描写、タイトルの英語の誤用、このサイトのルール等、様々な事を指摘してくださった皆様、次回が楽しみと言ってくださった皆様には感謝してもしきれません。

今後も皆様により楽しんでいただける話を書けるよう、誠心誠意努めていきますので何卒よろしくお願いします。

追記
3/1 エミヤの詠唱、及び武器名にルビを追加しました。
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