自衛隊異戦記~彼女たちの海へ~   作:1等陸尉(仮)

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2014年11月3日
トルコ、シリアの国境付近
「なんだあれ?」
最初の異変に気付いたのは陸軍歩兵部隊の小隊長である俺の上司だった。同じ方向を見ると、向こうの草むらで何かがガサガサと動いている。
(またか・・・)
俺は溜息を一つついた。ここの国境付近ではシリアにいるIS、イスラム国が時折挑発行為に来るのだ。かと言ってそれを相手にしていてはきりがない。俺たちは、只々相手の動向をアサルトライフ片手に監視するしかない。
俺は時計を見た。丁度お昼時だ。小隊長に声をかけその場を離れようとした次の瞬間、
「伏せろ!!」
突然、小隊長の叫び声がしたと思うと鉄条網が突然吹き飛んだ。10メートルにも及ぶ黒い土煙がもうもうと立ち上る。
「なっ、なんだ!!」
「ISの野郎だ!ロケットランチャーを持ってやがる!」
「全員、撃ち方始め!!」
中隊長の怒声が響き渡ると同時に歩兵達が一斉に射撃を開始する。しかし、相手の陣からは次々と対戦車ミサイルが飛翔してくる。
「あいつら、いつの間にあんなものを持ってたんだ!?」
小隊長が吐き捨てるように愚痴った。
「政府軍の弾薬庫じゃないのか!?」
一人の隊員がそう言った。確かにそうだ。3日前に政府軍の弾薬庫が襲撃され、武器が盗まれたという話を聞いていた。
「ぎゃあああああ!!!!」
叫び声がと共に仲間の体が四散する。血飛沫が辺り一面を赤く染めていった。
「だめだ、みんな逃げろぉ!!」
そういった声を合図に、一人また一人と戦線を放棄し逃げ出していく。無論、俺も逃げ出した。町は華やかな光景から地獄絵図に変わりつつあった。
11月5日
トルコ政府はようやく非常事態宣言を発令した。が、すでにイスラム国は首都アンカラに迫りつつあった。しかしこれに黙っている諸外国ではなかった。
11月9日
アメリカ、ロシア、フランスの3カ国が安保理決議の採択を要請したのだ。内容は、ISに対する武力制裁であ
る。勿論、この要請は即時受け入れられ、翌々日の11日に武力制裁はスピード可決した。
11月13日
最初に現地に入ったのは、ロシアの国連軍であった。更に翌日にはフランスが、さらに翌週にはアメリカが現地入りした。しかし、思いの外イスラム国の攻撃は激しく首都防衛線は崩壊しつつあった。
そこで、目を付けられたのが日本だった。
12月2日
アメリカ外務省から日本政府に対して、自衛隊の派遣要請の連絡が入ってきた。勿論、返事はNOである。「PKFは海外派兵」という意見の影響であった。しかし・・・。
12月4日
何を思ったのか、突然自衛隊の派遣を決定したのだ。理由は「米軍の後方支援のみなら海外派兵にはならない」といったことだった。これを受けて日本政府はPKF派遣法を強行採決し、来年の7月には派遣すると発表したのだ。
そして運命の7月26日がやってきてしまったのである・・・。




第1話 派遣艦隊出港

7月26日

海上自衛隊横須賀基地

派遣行事はここ、曇り空の横須賀基地で挙行されることとなった。岸壁やバースには家族や見物者などが詰め掛けている。

「IS、イスラム国を攻撃する米軍の後方支援の為、自衛隊のPKF派遣艦隊が出港します」

「6番放せ」

「出港用意」

けたたましいラッパの音と共に旗艦である護衛艦ひえいから舫が外されていく。同時に音楽隊による軍艦行進曲の鳴り始めた。

「全後部えい柵放せ」

「両舷前進微速!」

指示を終えた艦長と司令がひえいに備え付けられている見張り台、ウィングと呼ばれる物に立っていく。

「護衛艦隊司令長官に敬礼する。左、気をーつけ!」

再びけたたましいラッパ音が鳴り響く。それを合図に隊員達が護衛艦隊司令長官の方を向いた。

それが終わると司令は振り返り、乗員に新たな指示を出した。ひえいはまるで別れを告げるかのように汽笛を鳴らして総勢22隻の艦隊は日本を旅立った。これが本当に最後の汽笛になるともしらずに・・・。

8月2日

ソマリア沖

海上を行くのは一週間前に横須賀基地を出港した自衛隊PKF派遣艦隊である。艦隊は一度ジブチに立ち寄り補給等をしてトルコへと向かう予定なのだ。

無論その間も訓練は欠かさない。

「教練対空戦闘用意!!繰り返す、教練対空戦闘用意!!」

海自には対空、対水上、対潜を想定した3つの訓練がある。今回はその内の教練対空戦闘を行うこととなっているのだ。

ひえいCIC

「目標群α3機確認、70度8マイル。会敵まで5分!」

「落ち着いてやれ」

砲雷長の木村1尉が耳元で囁く。隊員はおもわず「はい!」と緊張した返事を返してしまう。

「シースパロー発射用意!!」

制御室のSAMというパネルに明かりが灯る。

「インネンジ3秒前!3、2、1」

「インネンジ!てぇー!!」

シースパローの発射ボタンを砲雷士が押すが勿論、実弾は出ない。艦橋からは撃墜と接近の情報が次々と上がってくる。

「CIWS、AAWオート!!」

「CIWS、AAWオート撃ちぃー方始め!!」

隊員がスイッチを入れると同時に左舷格納庫上部にある近接防空システム、CIWSがモーター音を轟かせながら目標へと銃身を向けた。因みにこの兵器はひえいが以前搭載ていたCIWSとは異なり、ブロックBと呼ばれる対水上の目標も攻撃することが出来るものである。

艦橋から全機撃墜の報告が上がってきた。途端にCICは安堵の空気に包まれた。だが、この時は誰も巨大な雲には気がつかなかった。

同じ頃

ひえい艦橋

最初に異変に気付いたのは派遣艦隊司令の中本海将だった。彼は司令席から前方にあるどす黒い雲を凝視した。

「な、何だあれは?・・・」

「司令!」

突然呼びかけられた中本は慌てて振り返った。そこには艦長の柏木1佐が報告書を持ち立ってた。

「教練対空戦闘が終了しました。先月よりかは、迅速になっていますが・・・」

「うん・・・まぁよかろう。焦り過ぎも良くないからな」

「はぁ・・・」

気のない返事を聞いたところで中本は気象庁にソマリア沖の天気について問い合わせるように指示をした。艦隊は徐々に黒い雲に覆われつつあった。

午前10時30分

護衛艦じんつう

艦隊の一番外側を航行していたじんつうの見張り員は降りしきる雨の中、不審なものを捉えていた。それは・・・

「光点?」

「はい、距離9000、本艦の左110度」

備え付けの双眼鏡を覗くと、確かに光点が一つはっきりと見えた。それはゆっくりと右へ動いている。

「ソマリアといえば、タンカーか海賊だが・・・」

「海賊・・・はないですから、タンカーですあね?」

隊員は双眼鏡を弄りながら仮説を導き出す。

「んー・・・タンカーにしちゃあ遅いような・・・」

航海長はブンブンと頭を横に振り、監視を続行するよう指示を出しその場を立ち去ろうとした。だが突然、見張り員の「あっ!」という声を聞いて振り返った。

「どうした!?」

「目標の砲火を確認!!」

「なにっ!」

慌てて確かめようとした次の瞬間、じんつうの左前方に大きな水柱が上がった。




どうも初めまして。1等陸尉(仮)です。このような小説を読んでいただき有難うございます。近々設定資料などをあげようと思いますのでアドバイスなどよろしくお願いします。因みに投稿は不定期なのであしからず・・・。
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