この話から2話(2章)となります。
若干R要素が隠しきれては居ませんが、どうか生温い目で見守ってください(苦笑)
若霧魔法学園入学式の朝、僕はいつもより早く目が覚めた。時計を確認してみると5時半という微妙な時間であった。入学式は8時からで、ここを7時半過ぎに出れば余裕で間に合う距離だ。かといって二度寝をしてしまったら確実に間に合わない。どうしようかな……と考え込んでいると、雅が僕の布団の中から出てきた。
「おはよう、雅……まさかずっと僕の布団で寝てた?」
「おあよ……そうだけど問題でも?」
「い、いや……別に問題はないんだけどね」
問題大ありだと思う。男性が寝ていたベッドの中から女性が出てきたら普通の反応は驚くはずだ、特に雅の事情を知らない人が見れば尚更……。苦笑いでそんな事を思っていると、雅に言っておこうと思っていた事を思い出した。
「そうだ……学校に行く前に雅に言っておこうと思う事があったんだ」
「ん、なになに?」
「学園に通ってる間は、神ということを伏せておこうと思うんだ。皆にバレちゃうと色々と面倒臭そうな事になりそうだからね」
そう……僕は面白いことは好きだけど面倒事ははっきり言って御免被る、特に生徒会の人とかに目をつけられた日には……とてもではないがかったるくなりそうだ。
「う~ん……分かったわ、じゃあ契約精霊ってことにしておくわね」
「それでお願い」
(後で伯父様達や夢依にも伝えておこう。)
なんて思いながらふと時計を見てみると6時になっていた。
(朝飯の時間まで後30分はある、何をしようかな……)
時間を潰す方法を考えていると、1ついい案が浮かんだ。
「ねぇ……朝飯の時間まで結構あるからさ朝練する?」
僕は木刀を2つ持ち、片方を雅に渡しながら言う。
「そうね、ちょうど体を動かしたいと思ってたのよ」
望むところだっと言わんばかりに不敵に笑いながら木刀を受け取る雅。僕は道着に着替え雅とともに中庭に出た、そしていつものところで剣術組手を始めた。いつもは調子が出るまで時間がかかるのだが、今日は結構早く調子が出た……いつもより早起きしたからだろうか、剣筋がいつもよりはっきり意識できる……そして雅の剣筋もはっきり見える。
「へぇ……あの頃に比べると随分強くなったじゃない」
「そりゃあいつも雅に鬼みたいにしごかれてりゃ……ねぇ」
静かな朝の中庭に木刀の打ち合う音が鳴り響く。打ち合ってから数分後、僕達は少し休憩した。
「はぁ、はぁ……あ~ちょっと飛ばし過ぎたかな、もう動けない」
「ふぅ……」
流石といったところか、雅は汗どころか息一つすら乱れていない。何事もなかったかのようにゴロンと寝転がる僕の隣に静かに腰を下ろす。
「はぁ……今日は確か魔力測定があるんだっけか、嫌だな」
「何で?魔力量が大きければ皆から尊敬されるじゃん」
「尊敬されると同じくらいに嫉妬や妬み……ましてや前みたいなことが起きそうだから怖いんだよ。それに魔力測定機に嘘はつけない、魔力属性や魔力量の数値化……ましてや契約してる精霊の魔力まで調べられちゃうんだよ、不安しか無い」
「それは怖い……」
不安を口にしていると、不意に後ろから声が聞こえた。
「何の話?」
「うわっ?!」
僕はびっくりして起き上がった。振り向いてみると、夢依がそこに立っていた。
「い……いつからそこに?」
「尊敬がどうとか……そんな所からよ?」
つまり話の内容は殆ど聞かれてたというわけか。
「そういえば、夢依の契約者を見たことがないんだけど……?」
「私の?私は炎を司る精霊(サラマンダー)よ、結構頼りになるのよ……おっさんだけど」
苦笑いを浮かべる夢依、雅も苦笑いになった。
「あいつか……」
ボソッと何か言った気がしたが、僕には風のせいで聞こえなかった。
「そう言えば、どうしてここに?」
訪ねてみた。たいてい予想はついてるけど……。
「木刀の音がしたから、様子を見に来たのよ。それにもうそろそろ朝ごはんよ?」
そうか……もうそんな時間か。
「了解、僕は汗かいて気持ち悪いからシャワー浴びてくるよ」
「はーい」
僕は駆け足で自室に戻り、換えの下着と制服を持って大浴場へ向かった。中に入ると広い更衣室があり、そこで衣服を全て脱いでかごの中へ入れた。するとふと隣の籠に衣服が入ってることに気付く。
(この服は……男性物かな、おそらく伯父様が入っているのだろう)
ここの大浴場は男女混合であり、女性が入浴している時には立て札をかけておくという決まりがある。そうじゃないと大変なことになるからだ。僕は腰にタオルを巻き扉を開けた。すると……中には雄斗さんが浴槽に使っていた。
「あれ、雄斗さん奇遇ですね」
僕が何気ない一言をかけながら扉を締めた。すると、雄斗さんの姿が少しずつ見えてきた。ただ気になったのは、雄斗さんが顔を赤くして慌てているということだ。別に男性同士なら恥ずかしいことなんて無いと思うのだけれど……。
「な、ななな……なんで冬風君がここに?!」
「どうしてそんなに動揺しているんですか……汗かいたからシャワー浴びに来たんですよ。ちょうど外に立て札無かったから空いてると思って」
「そ、そうか」
何故かいつものような冷静さがない。それを疑問に思いつつ僕はシャワーを浴び、頭を洗った。その後体を洗ってる最中、不意に雄斗さんが後ろから僕の背中に触れてきた。
「ひゃっ?!」
急に触れられたためすごく情けない声を出してしまった……ものすごく恥ずかしい。
「す、すまん……背中を流してあげようかと思って」
「あ、ありがとうございます……」
僕は雄斗さんに背中を洗ってもらうことにした……そして洗ってる最中こんな話題が出てきた。
「わぁ……冬風君は子供の頃から綺麗な肌をしているね、どんなケアをしているんだい?」
「特に大したケアはしてませんが……」
「ケアしてないのにこんなにきめ細かい肌をしているのかい?羨ましいな……」
なんかいつもより雰囲気が……というか、声質が違うような違和感みたいなものに襲われた。
「雄斗さんだって綺麗な肌してるじゃないですか、執事という大変な仕事柄上結構荒れそうなのに」
「わ、私は特に……寝る前に保湿クリームとか塗っているだけですから」
「そうなんですか?」
「う、うん……」
雄斗さんの話し方がぎこちない、なんでだろう……と意識していると、不意に曇った鏡に写った自分の姿の後ろに視線が言った。それは……胸の当たりをバスタオルで隠してて、顔を赤くしながら僕の背中を洗っている雄斗さんの姿が。そして僕の顔色も青白くなっていく。
「雄斗さん……まさか!?」
「は、はい?!」
びっくりした声で雄斗さんがが叫ぶ、僕はその声にびっくりして体がビクッと跳ね上がり、椅子から転けそうになる。
「あ……」
泡だらけの体じゃまともに受け身すら取れない為、頭を打たないよう手を地面に伸ばしかけた瞬間……。
「危ない!」
後ろから雄斗さんが僕を抱きしめ、支えてくれた。
「あ……ありがとうございます」
体制を立て直し、雄斗さんの方に向かいお礼を言おうとすると……やはりいつもと違う雄斗さんだった。いつも縛っている髪を解き、体つきは本当の女性……バスタオルで前を隠していた。
「きゅ、急にこっち向かないでくれ……私だってまだ……心の準備が」
(まさか……まさか……)
自分の顔が明らかに熱い、赤くなっている証拠だ。
「雄斗さん……まさか、女性……だったんですか?」
恐る恐る聞いてみた。
「……そうだよ、私は正真正銘女だ」
「………!!」
慌てて自分の顔を隠した。
(なぜ気付かなかった、あの動揺さと言い物言いといい……。)
僕は罪悪感と申し訳なさに思いきり深く頭を下げた。
「す、すいません……ごめんなさい……で、でもどうして?」
少し気になった、なぜ女性の雄斗さんが男性の仕事の執事をしているのかと。
「……私の家系では、代々王族の執事を務めていた。それ故に皆男性だった……でも、私が女性に生まれてきてしまったために……。だから、私は姿や声質を変え国王の側にお付きすることを決めたのだ」
思いもしないほど壮大な物語に僕は黙って聞くことしか出来なかった。そして大変そうと言う気持ちとは裏腹に僕は、本当の雄斗さんを知ることが出来て少し嬉しかった。
「そうだったんですか……。でも、それを聞いて納得しました」
「何がだい?」
不思議そうに首を傾げる雄斗さん。
「今まで何故男性で執事である雄斗さんが、こうにも可憐で美しいのか疑問でした。でも、それを聞いて何故か納得しました。」
僕は苦笑い気味でお茶を濁した。雄斗さんも苦笑いをしてた。そして少し話した後に時計を確認すると、7時を越えようとしていた。
「あ……そろそろ朝飯の時間ですし、上がりましょう」
僕は立ち上がり手を差し出した。雄斗さんは少しためらったが、僕の手に捕まり立ち上がった。もちろん着替えは別々の場所でした。更衣室から出ようとすると、後ろからいつもの雄斗さんが話しかけてきた。
「あの……冬風君、さっき風呂で見たものは……」
「はい、僕の心の中にずっと仕舞っておきますよ」
微笑んでそう言うと、心なしかホッとした表情を見せてくれた。その後いそいそと伯父様の元へ向かっていった。僕も更衣室を後にし、自室へ戻り衣服とかを片付けてから食堂に行った。入るとそこには、夢依と伯父様が話していた。そして僕に気付いた。
「おぉ、遅かったのう。」
「待ちくたびれたわよ」
僕は"ごめん"と言いながら椅子に座った。すると雄斗さんが朝食を持ってきてくれて、それぞれのテーブルへ置いてくれた。雄斗さんの顔に少し視線を移すといつもよりすっきりとした顔をしていた気がした。朝食を済ませ、僕と夢依は学校へ向かった。夢依は制服の上に赤いコートをはおり、赤いマフラーを巻いていた。僕はいつもどおり黒いコートに身を包んでいた。まだ寒さが残っているせいか、息が白くなり道端には霜が降り積もっている。
「うぅぅ~……寒い~」
夢依が手を擦り合わせ、息を吹きかけていた。身震いしているところを見ると、かなり寒そうに見えた。
「そうかな、少し暖かくなってきているように見えるけど……?」
「それは冬風が寒さに強いからよ……はぁ~」
僕が住んでいた村……エーテルは、冬になるとかなり厳しい寒さに見舞われる。そんな環境で慣れているせいか、フィリアスの寒さには動じなかった。
そんな中歩いていると、桜が咲きかけている場所があった。それは満開に咲くと桜通りなるらしく、道の両端に平均的に桜の木が植えられている。花見とかにはもってこいの場所だった。桜通りを進むと、校門が見えてきた。
「ほら、校門が見えてきたよ。あと少しだから頑張って」
僕が微笑みながら励ますと、夢依は
(うん、頑張る)
と意気込んだ。校門を通りぬけ暫く歩いて行くと……。
「……よう」
玄関前で待ち受けていたのは、壁にもたれて腕を組んでいる大男……大道淳がいた。
「おはよう」
「お……おはよう」
普通に挨拶する夢依の後に、少し戸惑いながら挨拶する僕。
ぶっきらぼうに挨拶を返してくる淳。
(少し不機嫌そうに見えるのは僕だけなのかな……?)
そう思った瞬間、何を思ったか分からないけど淳が僕の腕を引っ張り校舎裏へ共に消えてった。
「ちょっとこっちへ来い」
「え、えぇぇぇぇ?!ちょっ……!」
いきなりの出来事に、唖然とすることしか出来ない夢依。僕は校舎裏の木々が生い茂っている場所へ連れてかれ、そこでようやく淳の足が止まった。
「なんでこんな場所へ……」
「あの皇女が居ると、話しづらいことだからな」
なにか嫌な予感がする。予想が外れていることを願いつつ、聞いてみた。
「話し辛いことって……?」
正直、僕の心臓ははちきれそうなほどに早くなっている。とてつもない緊張感だ。
「実は……思うことがあるんだ。お前とこの前あった女性……皇女と一緒に居た、春音という女性のことだ。今思い出して見比べてみると……瓜二つなんだ」
(そりゃあ春音は僕ですから……そう思うのも不思議じゃないと思うよ。でも、僕に女装癖があると思われても不快だ。ここは嘘を突き通さねば……)
内心苦笑いしつつも、言い訳を考えてた。そして考え抜いた結果……。
「春音……さん?へぇ、夢依にそんな友達が居たんだ。僕は今はじめてそのことを聞いたよ?」
「………」
シラを切ることにした。暫く僕の顔を見つめられたが、冷や汗をかきながら苦笑いする僕……そのせいかかなり怪しまれている。
「そうか……別人ならいいんだ、ただお前だったらどうしようかと思ってな」
「う、うん」
(どうするんだろう……)
と思う裏腹に、頭を下げて僕は謝った。ごめん、あれ……僕なんだよ。でも気づかないでくれてありがとう。
「話はそれだけ?」
早く夢依の所に戻りたい僕は、逃げるように歩き出そうとすると……また腕を掴まれた。
「待て、話はまだ終わってない」
「次は何の話?」
淳は僕の腕を離し、僕は淳の方に振り向いた。
「今日入学式の後にある魔力測定、それで勝負だ」
(……はぁ?」
僕は唖然としてポカンと口を開けてしまった。それどころか心の声と実際に出た声が重なった。
「な、なんで唐突に勝負なんか……」
「決まってるだろう、この前勝てなかったのは俺の油断のせいだ。魔力武装を破壊することなんて、魔力武装同士で打ち合った時にしか考えられない。お前の強さには何か裏があるはずだ、それを今日暴かせてもらおう!」
別に裏なんて無いんだけどね、ただ魔力武装に宿ってる魔力や加護を一瞬で奪い取り、冬の枝木の様に脆くして砕く……ただそれだけの単純作業なのだ。
「う~ん……正直乗り気じゃないけど、挑まれたのなら受けて立つよ。正面から叩き潰したげる」
僕が少し殺気を放って言うと、大道が喉を鳴らしながら硬直してるのが分かった。僕はすぐに殺気を解いて笑う。
「……ふふ、そんなに警戒しなさんな。只の魔力測定じゃないか」
「……っ」
殺気から解き放たれた淳は、冷や汗をかきながら片膝を着いた。そこまで強い殺気を放っていたわけじゃないんだけど……。
「ご、ごめん……大丈夫?」
慌てて手を差し出すと、凄く汗ばんだ手で僕の手を掴み立ち上がる。
「あぁ……問題ない」
立ち上がるとすぐに僕の手を離し、ポケットに入れる。
「じゃっ、僕は夢依の所に戻るね」
「……あぁ」
僕は淳に背を向けて歩いて去っていく。早く戻らないとなんか言われそうだしね……。
次回の登校は未定となっております、まだまだ続きますのでよろしくお願いいたします!!