そして、城の外へ出ると……通行人が必ずと言っていいほど僕らを見てくる。流石に外では”僕”だと悪目立ちしかし無さそうだし、”私”に変える必要がありそうだな。通行人の視線を気にしながらも、僕は目的の文房具屋に着いた。中に入ると、色んな文房具があり目移りしてしまう。夢依は少々はしゃぎ気味で、僕に色んな物を進めてきた。
「ねぇ、これとか可愛くていいと思うの。あれとか、これとかも!」
「わ、分かったからそんなに騒がないでくれ……恥ずかしいから」
「分かったわよ」
とりあえず、ノートと中学の時に使っていたシャープペンシル。それと、消しゴムを持ちながらカウンターへ向かった。すると店員のおじちゃんは…
「おうお嬢ちゃん達、仲がいいみたいだけど姉妹かな?がっはっは」
「え、えぇ……まぁ」
豪快に笑う店員と、戸惑う僕。緊張しすぎて冷や汗が出そうだよ。
「可愛らしいお嬢ちゃん達には、特別にオマケしてやらぁ」
そういうと、袋の中に可愛らしい文房具も入れてくれた。ありがた迷惑なのだが……せっかくだから店員のご厚意に甘えようかな。
「ありがとうございます、それで代金はお幾らですか?」
「700ポッチだぜ」
僕は財布の中から1000ポッチを取り出し、渡した。300ポッチをお釣りとして受け取り、財布の中へ。店員に礼をしてから僕と夢依は外に出た。
「さて、帰ろうか?」
早く帰りたい僕は、城の方向へ足を進めた。しかし、夢依は僕のコートの裾を引っ張った。
「せっかくだからもうちょっと何処かに行こうよ……ね?」
……無邪気な笑顔だなー。
「う、うん…」
溜息をつくと、僕は夢依が行きたい所を聞いてみた。
「そうねぇ……行きたい場所なら…あっ」
何かを思い出したように歩き出す。そして着いたのが……ぬいぐるみショップだった。窓越しに店内を見て見ると、女性客しか居なかった。正直帰りたいと思った瞬間でもあった。しかしそれを許してくれるわけもなく、やや強引気味に夢依と入店した。中は甘い香りのアロマが焚いてあり、客はみんなぬいぐるみに意識が行っている。
「それで……何が買いたいの?」
「それは今決めるわ」
これは……長くなりそうだ。
「これいいなぁ…あっ、これも可愛い」
色んな種類のぬいぐるみがあり、目移りしている夢依。僕もいろいろ見て回ると、あるぬいぐるみが僕の目に止まった。
「………」
試しに抱いてみた。すると、ふかふかというかもふもふというか……とても気持ちよくて、欲しくなってしまった。
「へぇ……猫ちゃんのぬいぐるみかぁ、可愛い趣味してるじゃないの」
僕が夢中になっていると、夢依が隣でニヤニヤしていた。僕は慌てて平静を装った。
まぁ、僕が猫好きなのは別に隠すつもりはないんだけども……なんとなく恥ずかしい。
「ちょ……ちょっと買ってくるね」
急いでレジに向かった。お金を払い、袋に入れてもらってから夢依の元へ戻った。
「夢依は何買うか決めた?」
「う~ん……ちょっとまってね」
中々決めかねているみたいだ。僕は外の様子を見ようと窓に眼をやると、背後からひそひそ話が聞こえた。
「ねぇ……あの子たち可愛くない?」
「特に外を眺めている子……レベルが高すぎるわ」
……うん、聞かなかったことにしよう。心の中で僕は男ですと謝りながら、景色を背景にぼ~っとしていた。
「お待たせ~」
「ひゃっ?!」
不意に声をかけられて、悲鳴みたいな声が出てしまった。幸いなのが、音量をすごく抑えていたため周りには聞かれてなかったことだ。
「どうしたの?」
「いや……ぼ~っとしてたからさ、いきなり声かけられてびっくりしちゃっただけだよ」
夢依に微笑みながら、出口へ向かった。外に出ると、店内との温度差ですごく寒く感じた。特に足元が。そりゃあスカートにパンストとブーツって……冷えるに決まってる。そう思うと、よく女性はこんな寒い中でも平気だなーと思う。
「さ、寒いわねー……近くのカフェにでも行きましょう」
「そ、そうね…」
周りの人たちも居るため、芝居を続ける。カフェに到着し、夢依はキャラメル・マキアートを。僕はカフェラテを注文した。店内には暖房が効いており、冷えた体が少しずつ温まってきた。注文した飲み物が運ばれ、それをフーフーしながら飲んだ。カフェラテの暖かさが、体内に取り込まれてじんわりと来る。ほぅっと一息つくと、夢依は次行く場所を決めようとしていた。
「あ、あのね……私寒いからなるべく早めに…」
「次はケーキ屋さんに行きましょ、甘いモノが欲しくなっちゃって」
あははと言いながらも僕の案は聞き入れない。まぁ、その後に帰れるのであればお共するけれども。
「分かった、じゃあそこを最後にしましょう」
「うん」
コーヒーを飲みつつ、他愛もないおしゃべりを交わしていた。気が付くとそろそろ日が暮れようとしていた。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
「そうね」
僕らはお金を払い、外へ出た。そして夢依が言っていたケーキ屋を目指す途中、この前学校で夢依ともめていた大男と出会ってしまった。
「げっ……」
「む……?」
僕は嫌な顔をし、別ルートへ夢依を引っ張っていこうとした矢先。
「待て、お前ら……貴様は確かこの前の皇女の……夢依だったな、あの時は変な奴が居たが今日は居ないようだな。てっきり貴様の連れかと思ったが」
あの……目の前に居るんですけど。
「え、えぇ……それで、貴方は私達を呼び止めて何の用かしら。この前の続きでもする気かしら?」
「いや、流石にこの場で揉め事すると憚られる。それに、今日は違う連れがいるなと思ってな」
「わ……私のことでしょうか?」
引きつった作り笑顔で聞いてみた。すると、大男は頷いた。
「貴様のそのコート……あの男が着ていたものと似てるが、知り合いなのか?」
「い、いえ……偶々似たようなものを着ているだけだと思いますよ」
「そうか……知らぬなら仕方ない」
そう言うと、大男は溜息みたいなものを発した。
「それにしても、貴様らはここで何をしてるんだ?」
へっ?なんでそんなこと聞いてくるんだろうと思いつつも、僕はさっきまでカフェでお茶をしてて、その帰りだと言った。
「そうか、最近ココら辺に変質者が出るらしいからな、気をつけて帰れよ」
「は、はい……」
「ふん、貴方に心配される義理はないわ」
「相変わらずいけ好かない態度だ。貴様もこの女のように態度を良くしたらどうだ」
ごめんね、僕は男だし演技なんだ。本当だったらものすごく無視したいんだけどね。
「そ、それじゃ失礼しま……」
「貴様、名は何という…?」
「へっ…?」
「貴様の名だ。」
「私…?」
ここで本名を応えるわけには行かないな。どうするかと悩んでいると、母様の顔が脳裏に浮かび、とっさに
「春音……宮野 春音です」
実の母の名を、口に出していた。
「春音……か、良い名だ。俺は大道淳だ」
「よ、よろしく……」
大道は名乗った後、帰っていった。
「ほら、早く泣き止んで。ここから立ち去ろう」
「うん……」
僕らも帰路につくことにした。まさかナンパに会うなんて……ついてないな~。やがて城に着くと、皆が出迎えてくれた。その後に、伯父様にナンパに会ったことを話し、その人達は牢獄に閉じ込められた。