星界の風章「初陣」   作:いち領民

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星界の風章「初陣」前篇

練習艦隊所属・巡察艦<プラネースカウ>の艦橋でシュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリル列翼翔士は、副砲術士(反陽子砲の可動砲群担当)として、周りの状況を眺めていた。

 

「(みんな、緊張しすぎね。いくら、模擬戦闘とはいえ、体に力が入りすぎている。まぁ、見たところ、本当に実戦を経験したのは、書記と監督くらいしかいないからかしら。)」

自分の担当である反陽子砲の可動砲群の調整をしながら、ユーリルは、そう考えていた。

 

 

「シュリル列翼翔士、調整終わっている?ここは、戦場だと思ってしっかりしろよ。」

先任砲術士のすみれ色の髪で目がまなじりがさけているような独特な形をした男性のキリューシュ前衛翔士は、自分の直接の部下であるユーリルに厳しくいった。

 

 

「はい、キリューシュ先任砲術士、わかりました。調整はすでに終えています。あとは、敵が来るのを待つだけです。」と極めて、冷静に言うユーリル

 

 

「そうか、わかった。凝集光砲担当の砲術士も準備いいか。今回は、機雷担当の砲術士は、休んでもらう。時空融合したときの模擬戦闘だからな」といつも以上に緊張しているキリューシュ

 

 

そのやりとりから、5分後、艦内に緊張感が一層、高まった。

 

「敵・巡察艦、時空融合してきます。」探査担当・通信士

 

「先任砲術士、命令をまたず、電磁投射砲を撃て」

艦長の黒い肌を持つ女性のドゥニューク百翔長は、指揮丈をふるい、緊張した声で命令した。

 

敵の巡察艦が時空融合した瞬間、融合面に電磁投射砲が発射されて、前方に4門ついている発射口から4発の模擬弾が敵の巡察艦にむかって、接近していた。

 

その様子を見て、ユーリルは、舌打ちを心の中でならしていた。

 

「(タイミングが遅い。あとは、融合面から予想した発射角度も悪い。これだと、全部の弾が打ち落とされる。だから、それを考えて、連射しないと。)」

と頭で認識しながらも反陽子砲の可動砲群を敵の反撃を予想して操作していた。

 

ユーリルの予想通り、全ての弾は敵の巡察艦に打ち落とされて、逆に向こうは、8発の弾がこちらの艦に向かっていた。敵は、融合した同時に電磁投射砲の連射をしたとユーリルは、確認した。

 

 

「可動砲群、敵の弾を打ち落としなさい」艦長のドゥニューク百翔長は、あきらかに狼狽していた。

 

「了解。」とユーリルが声を上げている間にすでに、反陽子砲で7つほど、破壊していた。それは、艦橋にいた全員が驚くほどの射撃だった。

だが、最後の1発を破壊したとき、その破壊したのが艦にかなり、接近していたために、反陽子砲の可動砲群にある程度のダメージを与えてしまった。

ちなみに、凝集光砲担当の砲術士は、一発も破壊できなかったのであった。

 

その後、敵艦は、こちらの艦首からすべるように横に回る動きをしてきた。そのため、先任砲術士もそれに対応して、横腹を避けようとしたが、艦の動きでは敵の方が一歩も二歩もあり、ことごとく、横腹を抑えられては、敵の電磁投射砲の射線に入れられて、しかも、連射で攻撃を繰り返された。

 

「く、これは、きりがないわ。このままじゃ、駄目ね。」と反陽子砲で30発目の電磁投射砲の演習弾を落として、愚痴を言うユーリル

 

その間にも、敵の反陽子砲や凝集光砲やあとは、接近されて演習弾を破壊したことにより、反陽子砲の可動砲群の可動率は5割以下になっていて、もう1回、連射されたら、たぶん、私でも無理だろうとユーリルは、そのときには、思っていた。

 

 

「(こうなったら、ちょっと、自分で賭けをしてみるか。まぁ、この艦の先任砲術士の能力と艦長の采配の特徴はわかったし、敵の動きもある程度よめるから)」そういって、反陽子砲の可動砲群を一時、いっせいにとめるユーリル

 

 

「シュリル前衛翔士、なにをやっていんだ。正射をつづけろ。ここは、遊び場じゃないんだ。」ユーリルの行動をとがめるキリューシュ

 

 

「すいません。先任砲術士、ちょっと、反陽子砲の可動砲群の調子がおかしくなったみたいです。」といいながらも、金色の瞳でキリューシュを睨み返すユーリル

 

 

すると、敵の巡察艦は、これまで完全に捉えたと思った電磁投射砲の演習弾が反陽子砲によって、破壊されていたけど、それがまったく、出なかったと確認して、その可動砲群が壊れたと判断して急速に接近してきた。一撃で決めようという意思を表すかのように。

 

その瞬間、ユーリルは、しめたと思った。

敵の巡察艦の電磁投射砲を発射するタイミングを計っていたのであった。演習弾が発射する発射口に発射直前に4本の反陽子砲を絶妙のタイミングでたたきこんだ。

そのため、敵の巡察艦は前方の4門は発射不可能まで追いこんだ。

それを見た先任砲術士のキリューシュは、喜び、ここが機会と急速に接近した。

しかし、敵の巡察艦はその状況で混乱することなく後ろの2門がこの艦の横腹になるように艦をすべらせ、その2門から演習弾を発射、しかも、反陽子砲の可動群が1つしか残っていない方の艦の側面を狙われたので、1つはユーリルが破壊したが、もう一つが艦の機関部を直撃したという判定が出て、結局、巡察艦<プラネースカウ>は、爆散という判定で、模擬戦闘は終了した。

 

 

思考結晶が艦橋で爆散の警告音をひとしきり、ならした後、練習艦隊の敵役であり、判定委員の巡察艦の艦長から通信が入った。

 

 

「艦長。ミリタース千翔長から通信です。」原色に近い青色短い髪をした男性翔士のラムケーム前衛翔士は、冷静に対応した。

 

 

「じゃあ、つないで。通信士。」模擬戦闘の激闘の影響で額に汗をだしながら、ドゥニュークは命令した。

 

 

「みごとだな。ドゥニューク百翔長。模擬戦闘でここまで、俺がてこずったのは、初めてだ。新米にしてやるな。ところで、反陽子砲の可動砲群を担当した砲術士は、誰だ?やはり、『黄金眼の天才児』か?」アーヴにしては、体ががっちりとした体格をしているミリタース

 

 

「ええ。そうです。シュリル列翼翔士です。私も彼女の技量には驚きました。艦長としては、私は今回の模擬戦闘では戦力になっていない気がしました。」

 

 

「なるほどな…。ところで、最後の俺の艦の前方の電磁投射砲を4門同時に破壊したのは、ドゥニューク百翔長の考えかい?」一番気になるところを聞くミリタース

 

 

「いえ、あれは、シュリル列翼翔士が独断の判断でしたものです。それがどうかしたのですか?」

 

 

「そうか………わかった。48時間後にもう1回、模擬戦闘を行う。そして、そのときは、シュリル列翼翔士を先任砲術士として参加させる。これは、命令だ。」思いついたように言うミリタース

 

 

 

「なんですと…しかし、それは、私の艦の人事権を犯すものです。越権行為ではないでしょうか?」そういって、現在の先任砲術士のキリューシュ前衛翔士を見るドゥニューク

 

 

 

「残念だが、上官は誰かね。ドゥニューク百翔長。これは、命令だ。それに俺だけの判断ではないということも説明しておく。とにかく、シュリル列翼翔士を通信にだしてくれ」とまったく、悪びれもなく言うミリタース

 

 

「はい、わかりました。シュリル列翼翔士、ミリタース千翔長がお呼びよ。とにかく、出て。」と不満ながら命令するドゥニューク

 

 

「艦長。了解です。ミリタース千翔長。シュリル列翼翔士です。ところで、どうして、私が先任砲術士をやるのです?位階があいませんが。」ユーリル

 

 

「まぁ、それは、軍事機密としておこう。それより、後48時間で君は、その仕事をできそうかな。」挑むような感じで言うミリタース

 

 

「最大限の努力はします。では、ミリタース千翔長。また」そういって、通信を艦長に戻すユーリル

 

 

「わかったわ。では、ミリタース千翔長。次の模擬戦闘まで準備を行うので、これで」

敬礼してドゥニュークは通信を切った。

 

 

 

「まったく、妙なことになりましたね。判定委員のミリタース千翔長もどういう意図があるのかな。」地上人の監督で、年齢が40後半の男性のビュコック軍匠十翔長

 

 

「まったくだわ。書記である私にとっては、人事関係の手続き上、どうやって、今回のことを処理すればいいか、悩むわね。公式記録にはどうしましょうか?まぁ、それは、艦長に相談するしかないわ。」青く光沢のある髪と緑色の瞳をした女性翔士のソスィエ主計十翔長

 

 

 

こうして、ミリタースの奇妙な命令のため、巡察艦<プラネースカウ>では、模擬戦闘の間に不穏な空気が流れていた。その間、ユーリルは先任砲術士の役目である電磁投射砲の訓練と通常空間戦の操舵の感触を確かめていた。

 

 

 

巡察艦<プラネースカウ>の会議室に高級翔士は、全員集められていた。

艦長のドゥニューク百翔長、副長兼先任航法士のダベーム十翔長、書記のソスィエ主計十翔長、先任砲術士のキリューシュ前衛翔士、先任通信士のラムケーム前衛翔士、監督のビュコック軍匠十翔長がいた。

 

 

「皆にここに集まってもらったのは、次の模擬戦闘についてよ。知ってのとおりに判定委員のミリタース千翔長がどういう理由か、シュリル列翼翔士を先任砲術士にご指名なの。理由は軍事機密といったけど、艦の意思の統一を図る以上、あなた達の意見を聞きたいわ」ドゥニューク

 

「艦長、簡単に言えば『黄金眼の天才児』の実力がみたいと思います。飛翔科きっての天才とは、もし、機会があれば、私も戦いたいわ」ダベーム

 

 

「それにしても、迷惑な話だ。キリューシュ前衛翔士の誇りを傷つけることだ。俺なら文句の百戦隊も送っているがね。」と軽口を叩く、ラムケーム

 

 

「僕は別に気にしていない。確かに、反陽子砲担当だったが、彼女の実力の一端を感じた。あれだけ、模擬戦闘で善戦できたのは、彼女のおかげとも偽りではない。悔しいがな。だが、それで、僕以上の操舵を先任砲術士として上手にやれるかは、わからないな。だって、僕は、この訓練を3ヶ月もやったんだ。たかが、30時間程度で超えられるとは思えない」と不満そうな顔をするキリューシュ

 

 

「やっぱり、気にしているじゃない。まぁ、命令だし、いいんじゃないの。『黄金眼の天才児』のメッキを要するに判定委員の方たちは、はがしたいのよ。」ソスィエ

 

 

「アーヴの皆さんは、そんな判断ですが、俺はシュリル列翼翔士は、かなりやると思いますぜ。さっき、仕事を頼まれてね。この艦を操舵して、違和感のある個所を何箇所か指摘されてね。それで、そこを調整してみると、彼女の言うとおり、部品の劣化した部分や出力の伝達機能が低下しているところがあってね。さらに、主機関の能力を微調整するデータを記憶片でもらって、それを使ったら、現状より、0.25%も上がりました。いや、監督としては、驚きましたよ。」ビュコック

 

 

 

「そうね。やはり、本人にここに来てもらって、彼女の意見も聞いたほうがいいかもね。」

そう思い、ドゥニュークはクリューノでユーリルを呼び出して、会議室によんだ。

 

 

 

「艦長。シュリル列翼翔士、ただいま、参上しました。」

星界軍式の頭環に指を添える敬礼をしてユーリルは入ってきた。

 

 

「先任砲術士の訓練の方は、順調?とりあえず、ここに来たのは、次の模擬戦闘について、高級翔士のみんなに意見を聞いたのだけど、あなたにも、自分なりの意見をいってもらいたいわ。正直にね」この艦のアーヴで一番の年長者らしく、諭すように聞くドゥニューク

 

 

「正直にですか、わかりました。もし、判定委員の相手がミリタース千翔長なら長くて5分でしょうね。もしかしたら、相手が私を甘く見たら一瞬で私が勝つでしょうね。」

と冷静に判断するユーリル

 

すると、その発言にビュコック以外の翔士が全員立ち上がって、驚いたと同時にユーリルを批判した。

 

 

「そんな大言壮語もいい加減にしろ。相手は、経験豊富な判定委員だぞ」キリューシュ

 

「いい、いくら『黄金眼の天才児』といわれてもあなたは、翔士修技生を終えたばかりのヒヨっこよ。無理よ」ダベーム

 

「傲慢にもほどがあるわね。先の模擬戦闘でいくらいい活躍をしたからって、その発言はよくないわ。」ソスィエ

 

「まったく、戦歴も無いのに修技館の勉強だけで戦場は上手く行くとは思えないよ。君こそ、星界軍の判定委員を甘く見ているのではないかね」ラムケーム

 

 

「皆、まぁ、そんなに批判しなくてもいいでしょう。ねぇ、本当にシュリル列翼翔士は、それだけの自信はあるの。仮にも相手は経験豊富な判定委員、あなただけの力で艦を動かしているわけではないし、そう簡単にうまくいくかしら。」ドゥニューク

 

 

「ええ、大丈夫です。さきほどの模擬戦闘で皆さんの力を拝見させてもらいましたが、砲術士に関しては、私の指示に従いながらいけば、間違いなく勝てます。艦長、安心してください」と自信に満ち溢れた笑顔をするユーリル

 

 

「まぁ、わかったわ。とにかく、次の模擬訓練まで皆、準備しっかりしてね。いくらシュリル列翼翔士が先任砲術士といっても手を抜かないように。これは、命令。では、解散」

ひとまず、今回の会議を撤収するドゥニューク

 

 

「了解」他の翔士

 

 

 

前の模擬戦闘から48時間後

 

 

 

「時空融合まであと10秒。8、6、7、…3、2、1.時空融合」先任航法士のダベームは静かに告げた。

 

 

時空融合と同時に敵の巡察艦は以前と同じように電磁投射砲を連射した8発の演習弾を発射した。ユーリルは電磁投射砲の連射をして、次の行動に移っていた。

 

 

「凝集光砲、反陽子砲の砲術士、5624のポイントに3秒後、集中放射、それ以降も指示どおりにして」と指示をだしながらグーヘークで艦を電磁投射砲の正射の振動からいち早く立ち直らせるユーリル

 

ユーリルの指示どおりに可動砲群は対応して、敵の演習弾をあっという間に叩き落した。そして、自分が発射した電磁投射砲の演習弾の破壊をしやすいような位置に敵の巡察艦が移動するのを予想して、その横腹に次の瞬間、すべりこむように<プラネースカウ>は、移動していた。

 

「凝集光砲、反陽子砲は、敵艦の43-8Yと65-9Z方面を集中放火を浴びせて」とまたも、的確に指示を出しながら、電磁投射砲を連射した。

 

この指示によって、敵の可動砲群は、ユーリルが放った2度目の電磁投射砲の連射された演習弾に対応することができなくなり、8発のうち7発も演習弾は、敵の艦は命中して爆散の判定が下された。

 

結局、時空融合してからわずか2分あまりの時間で決着はつけられた。

 

 

「ドゥニューク艦長、見事だ。いや、はっきりいって、悔しいというのが正確な気持ちだ。『黄金眼の天才児』の実力は、我々の予想以上といってもいいな。」と悔しそうな表情のミリタース

 

 

「ミリタース千翔長、あなたに今の艦橋の雰囲気を見せてやりたいですね。ここのほとんどの翔士が驚きと感嘆の表情をしています。これほど、芸術的な操舵をできるとは、思えませんでした。かくいう、私もすこし、感動しているくらいですから」と静かにドゥニュークは微笑んだ。

 

 

「そうだな。電磁投射砲を連射したときからの姿勢制御の安定させるスピードもすごかったが、それより、加速も恐ろしく早かったし、その加速の中で正確にこちらの一番痛いところをつく射撃の正確性、まぁ、完璧だな。」と判定委員らしい仕事をするミリタース

 

 

「そうですね。ところで、まだ、彼女を先任砲術士にさせた理由を教えてもらっていないですが、それは、まだ、軍事機密ですか?」ドゥニューク

 

 

「うーん。どうしようかな。よし、実は言うと、俺以外にも彼女に挑戦したい判定委員がいてね。そいつらに全員勝ったら教えてもいいかな。ちなみに後9人いるけどね。これは、シュリル列翼翔士に判断してもらいたい」と再び挑むような態度をするミリタース

 

 

 

「ミリタース千翔長、別に私は知らなくてもいいのでいいです。」とあっさり断るユーリル

 

 

「なんと、じゃぁ、命令する。他の9人との判定委員と勝負したまえ。それと、秘密は本当にいいのかい?君の艦長は知りたがっているけど」ミリタース

 

 

「ええ、もう予想はつきましたから。艦長、この私を先任砲術士の仕事をさせる模擬戦闘の意味は、星界軍の上層部から旗艦の先任砲術士としての力量を見極めるためのものでしょう。たぶん、サンカウかラーシュカウ、その辺りに配属させようというものなんでしょうね。」あっさりと意図を見ぬくユーリル

 

 

 

「そうなのですか?ミリタース千翔長。」ユーリルの話をそのまま伝えるドゥニューク

 

「ふ、見事としかいいようがないね。まったく、驚いたよ。とにかく、あと9人いるのだから、それが終わってから、全てを話そう」そういってミリタース通信は切れた。

 

 

こうして、9人の判定委員が<プラネースカウ>に挑んだが、全て爆散で負けという形になった、ユーリルは練習艦隊で初めて、判定委員たちを10人抜きした先任砲術士となった。

この一件により、ユーリルは艦長の指示によっていつでも、先任砲術士になれる役割を負うようになった。もっとも、普段は、ドゥニュークは本来の先任砲術士であるキリューシュ前衛翔士に任せていて、彼もユーリルの実力を知ったので、しょうがないと感じていた。

 

 

 

ラルブーリューヴ鎮守府

 

 

「みんな、所属が決まったわ。偵察分艦隊<アイネーアース>の第1015戦隊所属よ。この分艦隊は、コトポニー大提督が司令長官の第五艦隊に所属するみたい。どうやら、次の狩人作戦には間に合いそうね」艦橋にいる全員に告げるドゥニューク

 

 

「了解です。艦長。少なくてもビボース提督ではなくてよかったわ。」代表して副長のダベームが言った。

 

 

「では、皆、用意はいい。私達のはじめての戦場に向けて、ダイ・セーレ」ドゥニューク

 

 

その状況を見ながら、シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリルはジントも狩人作戦に参加していることをふと思い出していた。ようやく、所属は違うけど、一緒に戦場に出ると思っていた。

 




★原作設定(ウィキペディア抜粋)

人類が、太陽から0.3光年離れたところに発見した「ユアノン」なる素粒子を利用した恒星間宇宙船を開発し、惑星改造により太陽系外に居住惑星を拡大し始めて何世紀も経った頃。

ハイド星系・惑星マーティンの政府主席の息子ジント・リンが幼少の頃、彼の故郷は「アーヴによる人類帝国」なる星間帝国の大艦隊によって侵略を受けた。彼の父ロック・リンは降伏と引きかえに領主の称号を得、そのためジント自身も帝国貴族の一員となる。それから7年後、ハイド伯爵公子となったジントは、皇帝の孫娘ラフィールと運命的な出会いをする。その時からジントは帝国貴族として生きていく事を決意する。

アーヴとよばれる遺伝子改造によって生まれた架空の種族は、宇宙の人類世界の半分弱(2兆人のうち9000億人)を支配している。アーヴは後述のごとく日本文化を継承する種族であり、帝政をとる。他の半分は現在の国家に近く民主政体をとっている。これら民主国家がアーヴによる人類帝国の伸張に恐れをなし、侵略戦争をしかけるというのが物語の背景となっている。

アーヴはホモ・サピエンスと異なる遺伝的特徴、美貌・不老や空識覚をもつにとどまらず、宇宙空間を旅する船舶、あるいは宇宙に浮かぶ都市や施設など宇宙空間で暮らすことを常とすることでも、人類一般と異なる。このアーヴという種族の設定のみならず、超光速航行を可能にするために別の宇宙である「平面宇宙」を移動する、平面宇宙航法と呼ばれる恒星間航行や、アーヴ語と呼ばれるアーヴ独特の言語体系などの設定も、星界シリーズの大きな特徴となっている。

日本神話を世界設定の背景にしていることも特徴的で、例えば八頸竜「ガフトノーシュ」は「八俣大蛇(ヤマタノオロチ)」、金色鴉「ガサルス」は「八咫烏(ヤタガラス)」、皇族「アブリアル」は「天照(アマテラス)」、帝都「ラクファカール」は「高天原(タカマガハラ)」であり、また「帝国(フリューバル)」は星々の集合ということで「御統(ミスマル)」の語形変化とされる。


星界シリーズの超光速航法は、通常宇宙空間から「門」を通じて「平面宇宙」という別の宇宙空間を経由して、再び「門」をくぐって通常宇宙空間へと戻るという方式である。

他のスペースオペラと異なる特徴は、別の宇宙空間である「平面宇宙」の設定と描写が詳細であり、「平面宇宙」の通過にはそれなりに時間を要すること、さらにはそこでの宇宙戦闘艦同士の戦闘があり、戦略があることである。恒星間の移動は全て「平面宇宙」を経由することから、宇宙地図・星間国家の勢力図は、平面宇宙上の地図で表される。

この世界には、かつては恒星系ごとに独立した数百を越える国家が存在したようであるが、長年の間に侵略と併合が進み、現在は「アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ)」、通称「帝国(フリューバル)」を含めて5か国しか存在しない。

帝国は人類宇宙の約半分を支配し、その交易により莫大な富を得、超大規模の星界軍(ラブール)を維持している。というよりも、星界軍が帝国の政治、行政の多くを動かしており、事実上帝国の基盤となっている。

形式上は皇帝(スピュネージュ)が帝国全体を統治しているが、その支配は緩やかなものであり、地上世界(ナヘーヌ:有人惑星)では現地人からなる領民政府(セメイ・ソス)が各惑星の統治を行い、帝国に対しては領民政府の代表である領民代表(セーフ・ソス)が、帝国貴族である領主(ファピュート)と各種の交渉を行う(領民政府の統治権は大気圏外には及ばない。したがって、複数の有人惑星を持つ星系には同数の領民政府がある)。

このように、帝国は地上世界や領民(ソス)に対して直接関与せず、地上世界で起きていることに通常はまったく関心を払わない。領民は、帝国臣民としての自覚や忠誠を期待されてはおらず、帝国の支配に反対することすら禁止されていない。

人類宇宙の残りの半分は、一部は遺伝子操作種族もいるものの、普通の人類からなる「人類統合体」「ハニア連邦」「拡大アルコント共和国」「人民主権星系連合体」が、離合集散しながら統治している。彼らは一般に、アーヴの帝政に嫌悪感を持っており、民主主義国家を標榜している。「4ヵ国連合(ノヴァシチリア条約機構)」という軍事同盟を結んでアーヴによる人類帝国と敵対しているが、各国の帝国に対する態度にはかなり温度差がある。

戦いは、帝国以外では最も強大にして敵愾心の強い、人類統合体の大規模な先制攻撃から始まった。帝国はこれに対し、断固たる報復で応えんとする。


種族としてのアーヴ[編集]

小説における一般的な“アーヴ”という表現は、こちらを指す。人間(ホモ・サピエンス)を宇宙環境に合せて遺伝子改造(デザイナーベビー)したもの。

起源[編集]

小説の設定では、日本と推定される島国から独立した小惑星帯上の軌道都市で遺伝子改造により開発された人工生命体がその起源である。本来は太陽系外に発見された惑星を探査するための生体機械として開発され、人権を与えられなかった。青系の髪はその名残である。実際作られたのは30体だが、一体は事故で失われ、29体で宇宙へ旅立った。

核融合推進宇宙船により太陽系を離脱した後、彼らはユアノン(後の「閉じた門」)を発見・回収し、ユアノン推進型亜光速宇宙船に改造。それと共に軌道都市からの離脱・自立を宣言して目的の惑星で宇宙船を都市とも言える大型のものに改造(アブリアルと命名―旧帝都ラクファカールの中核)、武器を生産し、勢力を拡大。その間に宇宙船の艦長は船王として彼らの頂点に立った(後の皇族アブリアル)。そして、29体の子孫たちは各部門の船員として徒弟制度、後に世襲制度により血脈を強化した(後の帝国貴族)。

離脱から約200年後、懲罰を恐れる余り、彼らは大艦隊によりかつての故郷である軌道都市を滅ぼしてしまう。彼らが「原罪」と呼び、後悔することとなったこの事件により、このときまでは「同胞(カルサール)」と自称していた彼らはアーヴと名乗り、出自と原罪を忘れないために青系の髪を保持し、軌道都市の文化の保存・継承を自らの目的とした(その間に資料や言葉は大きく変容してしまったが)。その後、アーヴは武装商人として他星系との交易により情報を得、自給自足により勢力を拡大した(空間放浪時代)。

その後、平面宇宙航法を発見したアーヴは技術と既得権益である恒星間貿易の独占のため、建国帝アブリアル・ドゥネーにより「アーヴによる人類帝国」建国を宣言(この時を以って帝国暦元年とする)、他の星間国家を侵略・併合しながら勢力拡大を続け、今に至っている。地上人をアーヴとして認めて以降、アーヴの祖先に当たる29体の子孫は皇族アブリアル以下アーヴ根源二九氏族と名乗っている(アブリアルを除いてアーヴ根源二八氏族とも言う)。

外見[編集]

髪は緑から紫と幅があるが、おおむね青みを帯びている。容姿は美形である。

さらに、氏族の外見的特徴である「家徴(ワリート)」が、遺伝子レベルで刻み込まれている。先の尖った「アブリアルの耳(ヌイ・アブリアルサル)」、紅玉のような「スポールの紅瞳(キレーフ・ピアナ・スポル)」などが有名な家徴として知られている。

空識覚[編集]

「空識覚(フロクラジュ)」とは、電波探知による空間把握能力である。

生体器官としては、額にある菱形で真珠色の器官「空識覚器官(フローシュ)」と、額の奥、脳の前頭葉に位置する「航法野(リルビドー)」と呼ばれる領域で構成される。ただし、これらの生体器官だけではほとんど用をなさず、空間情報を収集し空識覚器官に送り込むための人工器具である「頭環(アルファ)」を必要とする。

空識覚器官は、1億以上の微細な眼の集合体で構成された感覚受容器官であり、本人用に調整された頭環がとらえた周囲の空間の情報を受け取り、それを航法野に伝える。

航法野は、空識覚器官から送られた情報を受容・再構成し、周囲の空間を把握する。また、宇宙船操縦のための運動も司るものとされている。

この能力のため、頭環を装着したアーヴ種族に対しては、後方や上方からであっても、気付かれないように近付いたり尾行するのは非常に困難である。

空識覚は、艦艇の操縦の際に、最もその役割を発揮する。小型艦艇の艦長や大型艦の航法士といった艦艇を直接操縦する者は、頭環の側部に付属する鎖状の器具である「接続纓(キセーグ)」先端の菱形の部分を操縦席の接続スリットに挿入することで、艦艇周囲の空間の状況を空識覚で直接認識することができる(艦外空識覚と呼ぶ)。操縦者自身が艦艇の生体レーダーと全方位カメラになるようなものであり、艦外の状況に応じた迅速な操艦を可能とするが、戦闘などにより艦艇が損傷した場合は、その被害を航法野で直接知覚することになり、意識が遠のくほどのショックを受けることがある。

なお、空識覚以外の一般人と同じ五感についても、聴覚においては絶対音感を持ち、その他の感覚も鋭敏に調整されている。

アーヴは空識覚を、自分たちと地上世界出身者とで一線を画する存在と考えており、地上世界出身者が遺伝子調整により空識覚器官を持つことを許さず、持ったものは国民にすらなれない(それ以外の青髪、不老長命などの遺伝子調整は認められている)。

宿命遺伝子[編集]

アーヴには皇帝に対する絶対的な心服や忠誠という概念が無く、しばしば皇帝や皇族は揶揄の対象となる。ある皇帝が不敬罪を作ったが、実際に運用するとアーヴ貴族の大半を逮捕しなければならなくなるため死文化しているというエピソードもある。

その一方で組織・帝国への反抗が起きたことも無く、これはアーヴに植え付けられた宿命遺伝子によるものである。このためアーヴの歴史に(地上人主体の地上軍による反乱を除き)内乱はない。また、皇族同士での血生臭い権力闘争や、有力貴族による簒奪・クーデターが試みられた例もない。実際に皇帝ないし船王をアーヴが抹殺した(しようとした)例は、アーヴ黎明期に初代スポールらが、初代船王である"名も無きアブリアル"を殺害した例が記録されるのみであるが、これはその"名も無きアブリアル"が、自ら機能停止を望んだが故のことである。

クー・ドゥリン(会社の経営権を巡って父親を叔父に殺害された)などのように、こうしたアーヴの側面を非人間的で、アーヴが人間ではない証拠だと主張する者もいる。しかしながら、知性を持った生命体にそのような絶対服従を遺伝的に植え付ける事は不可能であり、実際の宿命遺伝子の効果としては、仲間への強い帰属意識を持たせる事でしかない。そして元来は宿命遺伝子は、アーヴに母都市への服従を強いる目的で作られたものである。しかし宿命遺伝子による「仲間への強い帰属意識」は、母都市に対してではなく、むしろアーヴの集団に対して向けられるようになってしまった。結果としてアーヴは母都市と決別し、ついには懲罰を恐れるあまり母都市を滅ぼすに至る。しかしその事はアーヴにとって深刻な種族的トラウマとして、長い年月を経た後も彼らに残されている。また上述の通り、少なくともアーヴの間での権力闘争や叛乱を阻止する効果はあったようである。

一方、アーヴを生み出した母都市は、その後、アーヴ同様の作業生体を作り出した様子である。その作業生体に植え付けられた宿命遺伝子は、アーヴのそれよりも母都市に対する忠誠を喚起する効果は高かったようであり、彼らはすでに生命が滅びた太陽系に帰還して自らを滅ぼした。

生誕と寿命[編集]

アーヴの生殖は主に人工授精によって行われ、その後、親の手による遺伝子調整がなされ、人工子宮で育てられる。なお、基本的には愛する異性に遺伝子を提供してもらって子供を作るが、他のパターンも存在する。アーヴ社会には結婚制度はなく、親と呼ぶ相手は1人だけである。

もちろん、遺伝病などの不都合は、遺伝子調整の時点で全て排除される。特に、地上人と生物学的なアーヴとの間では、通常の受精だけでは深刻な遺伝病がかなりの確率で発生するため、遺伝子調整は必須である(アーヴ同士であれば、全く遺伝子調整をしなかった例もある。ラフィールなど)。

誕生後、しばらくはホモ・サピエンスと同様の成長をするが、青年期に達した後は肉体的に老化することはなく、若々しい姿を保つ。寿命は平均230年から250年である(脳細胞に限界が来たら呼吸が止まるよう遺伝子操作されている)。

このように、地上人であるホモ・サピエンスとは違う種として設定されているが、作中のアーヴ自身のコメントでは「わたしたちもまた地球の子です。ただちょっと遺伝子をいじってあるだけ」「我らは進化したわけではない」とあり、アーヴが自らをホモ・サピエンスと違う種として認識していない可能性も示唆されている。ただ、アーヴの中にも自らが人間なのか半信半疑の人物もおり、その事をテーマとした短編も描かれている。

アーヴの地獄[編集]

アーヴは人に究極の苦痛を与えるために科学の粋を集めた施設、アーヴの地獄を持っており、アーヴに不当な危害を加えた者に復讐する目的でこれを用いている。第11代皇帝ドゥグナーの命令によって建設された。

復讐は必ず果すとの悪評と復讐の残忍性こそがアーヴの安全を守るための抑止力となると考えられており、復讐は彼らの存在理由の1つともなっている。

もっとも、建設を命じられた技術者が名前を記録に残さないことを条件として作った、あるいは実際にどのような苦痛が与えられるのかは不明という事もあり、単なるブラフである可能性も示唆されている。

性格[編集]

生物学的なアーヴは、自らを「星たちの眷属(カルサール・グリューラク)」と呼び、星を渡る交易と戦闘を最大の生きがいとしている(モンゴル帝国と類似している)。また、性格は「アーヴ、その性、傲慢にして無謀」と言われている。

そのほとんどが軍役に就くことから官僚になる生物学的なアーヴは少なく、帝都ラクファカールの行政機関は前宰相シドリュアによれば「地上人の楽園」である。

階級としてのアーヴ[編集]

小説の設定では、アーヴ帝国の法ではアーヴは皇族(ファサンゼール)・貴族(スィーフ)・士族(リューク)を総称する名称でもある。貴族・士族には、帝国建国以前から存在したものと、戦争等の功績により叙されたものの2種類がある。アーヴは、アーヴ帝国創建まもなく地上世界出身者(ナヘヌード)をアーヴとして受け入れるようになり(正確には帝国創建直前に1名を受け入れている。『星界の断章III 来遊』より)、したがってこの意味でのアーヴは種族としてのアーヴと完全に同一ではない。ただし地上世界出身者のアーヴの子孫は、遺伝子改造を受けて生物学的にもアーヴとなるため、世襲のアーヴは全てが種族としてのアーヴである。一方、アーヴとしての階級を一時のものとして、再び地上世界に戻る者もいる(詳細については帝国(フリューバル)の社会構成を参照)。

なお、貴族では地上世界出身者であっても頭環を着用するが、当然ながら地上人に空識覚はないので、この場合の頭環はダミーである。

帝都、星界軍など帝国のシステム全体が生粋のアーヴ中心に運営されていて地上世界出身者には不便なこと、また老化しないことなどから、前宰相シドリュアやフェブダーシュ前男爵スルーフ、ジントなどの地上世界出身者のアーヴの中には生粋のアーヴに対して内心複雑な感情を抱く者もいる。実際、帝国初期に勃発したジムリュアの乱の主導者ジムリュアは領民から地上軍元帥にまで上り詰めたものの、空識覚を除いてほぼアーヴと同じ遺伝子調整を受けた地上世界出身者だったこと、自分たち地上世界出身者が帝国内では圧倒的に少数であることなどからアーヴに対する劣等感が高じてついに蜂起するに至った。

名前[編集]

アーヴの名前は、氏姓(フィーズ)・家姓・個人名で表され、皇族・貴族は家姓と個人名の間に称号が入る(上記リンク参照)。なお、家姓は姓称号(サペーヌ)およびアーヴとなった初代当主の名前がアーヴ語で生格に変化したもの。地上人がアーヴになる場合は個人名もアーヴ語式に変化する。このとき、基本としては元の発音に忠実になるように綴りが変化するが、末尾に主格語尾が付くときはその発音も変化する。

例を挙げると、ハイド伯爵家創設者ロック・リン(マーティン語:Rock Lynn)の場合、姓であるリン(マ:Lynn)の綴りがアーヴ語ではLinnになる。名前はロック(マ:Rock)からローシュ(アーヴ語:Roch)に変わり、その正格はロク(Rocr)となる。彼は新興貴族なので姓称号はスューヌとなる。つまり、彼の正式な名はリン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵(ドリュー・ハイダル)・ローシュ(ア:Linn ssynec Rocr Dreur Haïder Roch)となる。

また、個人名(本人だけでなく、親の名を用いる場合もある)から氏姓を作る場合もあり、個人名に「〜リュア」(ryac 「〜の後裔」の意)を付けて氏姓とする。例としては、アトスリュア(Atosryac、フェブダーシュ男爵家)、シドリュア(元・帝国宰相)などがある。彼らの家の創始者は共に地上人だが、エクリュア(Aicryac、帝国創建前に創氏の士族出身)のように生粋のアーヴの氏姓にもこの用法は見られる。

通常は、「氏族名・姓称号=姓・(王名または貴族名・)名」という構成であると理解すればよい。

具体例を挙げると、例えばラフィールの場合、

アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵(ベール・パリュン)・ラフィール (Ablïarsec néïc Dubreuscr Bœrh Parhynr Lamhirh)

であり、順に、アブリアル氏族、皇族、クリューヴ王家、パリューニュ領主である子爵のラフィール、という意味になる。王家の家姓についての詳細は不明。

士族では、王名や貴族名はない。例えばサムソンの場合、

サムソン・ボルジュ=ティルサル・ティルース (Samsonn Borgh Tiruser Tirusec)

であり、順に、サムソン氏族、帝国創建後に創氏の士族、ティルサル家のティルース、となる。

本来、個人を特定するのは末尾部分であるが、作品中で省略して呼ぶ場合は、全てアブリアル氏族である皇族については名または尊称(皇帝陛下、王女殿下、○○王殿下など)で、貴族や士族は氏族名で呼ばれることが多い。また、軍の位階で呼ぶ場合は、全て氏族名を用いる(アブリアル十翔長、リン主計列翼翔士など)。

頭環[編集]

アーヴの地位にある者(皇族・貴族・士族)は、全て頭環(アルファ)を着用する。これは、生物学的なアーヴにおいては、上記の空識覚の説明にあるように、生体そのものと密接に関連する情報収集器具であり、本人用に調整されたものを幼少時から着用する。ジントやサムソンなどの地上出身者においては装身具に過ぎないが、その身分などを示すものであるため、軍務中や公の場では着用が義務付けられている。

なお、アーヴ語による呼称「アルファ」は「頭環」の和語読み「あたまわ」の語形変化とされる。

頭環は、用途により以下の3つに大別される。
軍用頭環星界軍で軍務中の翔士(翔士修技生を含む)が必ず着用する。華美な装飾はなく、シンプルなものである。形状により、大まかな階級を示す。軍用頭環には、副百翔長と百翔長に着用が許される「片翼頭環(アルファ・クラブラル)」、千翔長以上に着用が許される「双翼頭環(アルファ・マブラル)」などがある。これらは、多くの若い翔士たちにとっては憧れであり、目標ともなっている。式典用頭環軍士としてではなく、皇族や貴族として各種式典や公式会見、調印式などの儀礼的な場に出席する時に着用する。宝石や貴金属が使われたり、緻密な彫刻が施されるなど、身分にふさわしい装身具の意味もある。中心には宝石のような外観の思考結晶(ダテューキル)がはめ込まれており、身分によってその色が決まっている(例を挙げれば、ジントのような新興貴族は緑色)。私用頭環空識覚を持つ生物学的なアーヴは、軍務や公務にない時(軍士であれば休暇中など、また幼少時や退役後など軍士ではない者)でも、ほとんどの場合は感覚器の一部として頭環を必要とする。頭環をはずすのは入浴時や就寝時ぐらいだが、これらの時間ですら頭環を着用し続ける者も多い。つまり、生物学的なアーヴにとって頭環は幼少時から死の間際まで、ほぼ一生の必需品である。このため、ほとんどの生物学的なアーヴは軍用でも式典用でもない「私用頭環」を持っている。なお、プライベートタイムでも非番中の軍士であれば軍用頭環を、また休暇中や軍士でない者でも身分を示す必要がある場面(特に皇族や貴族)では、式典用頭環を着用することもある。私用頭環のデザインは、軍用や式典用の頭環と類似していなければ、自由とされているようである。
紋章[編集]

アーヴはすべて家の紋章(家紋)を持つ。これは、帝国建国と共にガフトノーシュ(八岐大蛇)が国章となり、各星系に封じられた貴族が紋章を持つようになり、さらに士族も紋章を持つようになったのに伴い、紋章の国家管理が必要となったためである。各家の紋章は帝国紋章院(ガール・スカス)により管理されている。例を挙げると、スポール大公爵家のガサルス、ハイド伯爵家のレズワンなどがある。

これらのアーヴ身分には様々な特権と義務が伴うが、アーヴ籍からの離脱は少なくとも貴族・士族においては本人の自由に任される。なお、ホモ・サピエンス、つまり地上人がアーヴになった場合、子孫にその地位を継がせたければ、子供に遺伝子改造を受けさせて生物学的なアーヴとすることが義務付けられている。

文化[編集]

日本語に起源する人工言語・アーヴ語を母語とする。また、言語のみならず、日本に由来すると思われる様々な文化を持つ(箸、米酒、竹製の容器など)。料理は素材の味を生かすために薄い味付けを好む点が日本料理と共通するが、食材の一部に海亀や鶴などの21世紀初頭の地球では絶滅危惧種とされる生物が用いられており、食文化の変質が見られる。ちなみに食肉は培養肉、野菜は水耕栽培により生産されている。

物理単位(度量衡)も現代地球の国際単位系と基本的には[1]同様である。ただし基本単位がMKS系ではなくCGS系であり(これの理由は不明)、接頭辞はキロ・メガのような10の3乗・6乗ではなく日本語圏(すなわち万・億)ベースの10の4乗・8乗……という体系になっており、全てアーヴ語が設定されている[2]。暦については解説で「地球との絆をもっとも感じさせる」とある通り[3]、地球以外では本来特に意味を持たない「60秒 = 1分、60分 = 1時間、24時間 = 1日、365日 = 1年」という体系を維持している。しかしそれ以上の、たとえばうるう年などは無い。

家族制度は黎明期の宇宙船での各部署における徒弟制が元になっている。幼い頃の初等教育は専ら親が行い、読み書きなどを教えると共に家風(ジェデール:趣味、人格などの家系上の特徴。根源氏族のような古い家系は前述の宇宙船での担当業務に似た家風を持つ)の継承に努める。血統よりも家風を継承させることが重視されており、優秀な後継者を作るために自分の遺伝子情報を子供に使わない場合もある。また、両親という概念は持たず、1人の親のほかは遺伝子提供者と呼ばれる。

無宗教であるが、葬儀(遺体を宇宙に発射する)、「弔いの晩餐」(故人を記憶に留めるための晩餐)、「忘れじの広間」(戦死者など、帝国のために命を落とした者の名を柱に記して永久に記憶する場所)など、死者への畏敬の念は十分に持っており、霊魂などの概念も理解している(ただし、霊や霊魂については、概念が理解されているだけで信仰されている訳ではない)。

宇宙空間を生活の場とする星間種族を自認することから、地上世界に関しては(諸侯にとっての領地や交易の必要上などの例外はあるものの)興味を持たないことが良識とされる(ただし、ソバーシュなどの例外もある)。

なお、地上世界出身者のアーヴは、子供の段階からアーヴとしての教育を受けている訳ではないので、当然の帰結として種族としてのアーヴほどアーヴ文化を受容している訳ではない。公女時代のレトパーニュ大公爵ペネージュが家宰に対して「あなたが宗教を持っているとは知らなかった」と言う台詞があり、地上世界出身のアーヴには宗教を持つ者も珍しく無いようだ(もっとも当のレトパーニュ大公爵家の家宰は、徹底した無神論者であった)。

恋愛観[編集]

アーヴには制度としての結婚はなく、複数恋愛への禁忌もないが、恋愛感情は有しており、一般の人間と同じように男女で共同生活を送るものもいる。

ただ、彼らの恋愛は通常短期間で一気に燃え上がり跡形もなく燃え尽きる場合が多く、「超新星爆発のような恋」と表現することもある。

彼らは出会いを求めて帝都に集い、帝都ラクファカールは「愛の都」との異名も持つ。また、我が子を作るための遺伝子提供を願う行為(詳細は下記「アーヴの遺伝子改造について」を参照)は、アーヴにとって最も真剣な愛の告白であるとされている。

アーヴの恋愛が主に男女間によってなされるのは、単なる慣習であり、同性愛についてのタブーは存在しないようだ。人工交配のための遺伝子提供は同性であっても可能である。

もちろん上述のアーヴの恋愛観は、種族としてのアーヴのものであり、地上世界出身のアーヴはそれぞれの出自の地上世界の慣習に影響されていると思われるが、作中では未だ具体的描写は無い。

アーヴの女性においては、アーヴの男性どうしの恋愛を妄想するという、奇矯な趣味の持ち主がごく一部に存在するようである(ラフィールおよびスポール提督も、この奇矯な趣味の持ち主であるようだ)。そういった奇矯な趣味の持ち主のための祭典が年2回帝都ラクファカールで開催され、そこではこの時代には珍しくなった、参加者の手作りによる紙媒体の書籍が売買されている。

経済・産業[編集]

アーヴは平面宇宙航法の発見以前から巨大な宇宙船に乗って宇宙を放浪し、様々な地上世界を訪れ貿易を行っていた。帝国の建設後もアーヴの主な産業は貿易であり、星間交易によって得られる利益の独占こそがアーヴが帝国を築いた最大の目的ともいえる。アーヴ貴族は封じられた地上世界と他の星系との交易を独占する権利を持ち、帝国はその利益から税を徴収することで国家および星界軍が運営されている。また領地を持たない士族階級も宇宙船を帝国商船団より借りる権利を有し、貿易を行って利益を上げている。ただし、帝国への納税の義務を負っているのは領地を持つ貴族だけである。

一方、国民や領民と呼ばれる階級の人々(主に地上人)は、星間交易に従事する資格を持たない。貴族・士族身分は一般に世襲されるが、貴族の場合は帝国への義務(兵役・納税など)を果たさなければ身分を剥奪される。一方地上人出身者でも軍士や官僚として一定の功績があれば士族・貴族に出世でき、星間交易を行う事ができる。なお、星間航行の能力を持つ船は全て帝国の国有であり、たとえ大公爵や皇族といえども私有は認められていない。ただ、帝国から借り受ける事ができるだけである。ただし、古い船を軌道城館にする場合は、星系まで移動した後に時空泡発生機関(星間航行に不可欠な装置)を切り離して帝国へ返還する、という方法により購入することができる。

その他、無人惑星の鉱物資源採掘とそれを利用した工業製品の製造、反物質燃料の生産といった鉱工業も行われている。こうした天体も全て貴族の保有である。

アーヴの遺伝子改造について[編集]

帝国法は、アーヴ身分にある者が子女を産む時、守るべき遺伝配列を27000箇所に渡って定めている。その人工的起源により種族としてのアーヴは本来遺伝的に不安定であり、アーヴ同士の遺伝子交配は50人に1人の割合で致死遺伝子ないし先天的障害をもたらす危険を伴う。また個々のアーヴも自分の趣味・美意識・子女への希望をその塩基配列に反映させようとするため、アーヴにとって子女の遺伝子配列を設定することは普通である。とくに、家徴(ワリート)と呼ばれる一族共通の肉体的特徴(耳・目・髪など)は、その家を見分けるための重要な慣習である。

アーヴの交配は人工交配によることが普通だが、自然状態での受胎も行われる。ただし後者の場合でも遺伝子検査のため胎内から受精卵を外に出し、その後普通は人工子宮で誕生まで育成が行われる。また、ごく稀に「変わった体験をしてみたい」などの理由から遺伝子調整の終わった受精卵を女性の子宮に戻し、一般的な妊娠と自然分娩が行われる例もある。しかし、こういった行為はアーヴの基準から見るとかなりの変わり者と認識されている。

人工交配による遺伝子接合では、自分の遺伝子の複製・他人の遺伝子と自分の遺伝子の接合・他人の遺伝子の複製などさまざまな方法が取られる。他人の遺伝子をもらう場合、その相手は「愛する人」(ヨーフ(想人))が普通であるが、アーヴの恋愛観は非常に自由であり、相手が同性であったり、近親者であったり、複数人であったりすることは、アーヴにとっては奇異ではない。

人間以外の生物の遺伝子を接合することも技術的に可能であるが、上記のように多様な恋愛観を持つアーヴの倫理をもってしてもこれは変態行為とされており、法律でも禁止されている。

上述の通り、地上世界出身のアーヴも、そのアーヴとしての階級を世襲するためには、士族位ないし爵位を賜って以降に産まれる子女に対して遺伝子改造が義務付けられており、2代目以降は種族としてもアーヴの一員となる。ただし、叙される以前に産まれた子女に対しては、種族的な意味でのアーヴでなくとも士族位ないし爵位を相続することが認められている。

一例として親が叙爵される以前に産まれたジント(第2代ハイド伯爵)やフェブダーシュ前男爵スルーフ(第2代フェブダーシュ男爵)は遺伝的には地上人であるが、叙爵後に産まれたスルーフの子であるクロワールとロイは種族的アーヴである。
星界シリーズ最大の特徴が、この平面宇宙である。

平面宇宙での戦闘形態[編集]

平面宇宙とは、文字通り2次元の宇宙であり、通常宇宙(ダーズ:3次元)上にあるものが平面宇宙に入る際は、通常宇宙を切り取った「時空泡(フラサス)」を時空泡発生装置によって形成して、3次元を維持しなければならない。また、物理法則も通常宇宙とは異なる。時空泡の移動速度は、内部質量と反比例するなどである(このため、複数の艦艇が時空融合した時空泡で防御しつつ、攻撃に際しては「単艦時空泡」に時空分離して急速接近する戦術が用いられる)。電磁投射砲の砲弾も凝集光も時空泡外では存在できないため、平面宇宙戦闘は、敵味方の時空泡が重なった場合に起こる「時空融合(ゴール・プタロス)」によって発生する。そこでは3次元的な戦闘が行われる。ただし、時空泡発生機関を独自に持つ機雷を使用すれば、時空融合していない遠距離の敵艦を破壊することもできる。

艦隊同士の平面宇宙戦闘は、通常まず多数の機雷を搭載した戦列艦同士での撃ち合いに始まる。しかし、機雷は質量が大きく数が限られる上、防御機雷戦(機雷によって機雷を撃破する)や護衛艦による迎撃もある程度可能であるため、機雷のみで敵艦隊を全滅させることはかなり難しいようである。機雷戦の後、一方がダメージを受けるか機雷を撃ち尽くすなどして、満足に雷撃が行えない状態に陥ると、巡察艦もしくは突撃艦が敵時空泡と時空融合して戦闘をすることになる。戦列艦中心の部隊が巡察艦部隊による突撃を受けると、戦闘は一方的な展開となりやすく、これを蹂躙戦と呼ぶ。

上記の戦闘形式は大艦隊同士の戦闘形態であり、小規模な局地戦ではこの限りではない。例えば大質量の機雷を多数搭載する戦列艦には機動力が低いという弱点があり、強行偵察と奇襲を主な任務とする機動力重視の偵察分艦隊に含むことはできない。偵察分艦隊は戦列艦より機動力の高い巡察艦のみで編成され、敵偵察分艦隊の迎撃には主に突撃艦がその任に当たることとなる。平面宇宙での巡察艦と突撃艦の戦闘は、まず巡察艦が機雷を発射して突撃艦の数を減らし、その上で生き残った突撃艦と巡察艦が時空融合して戦う形となる。突撃艦は火力が弱く機雷攻撃にも弱いため、巡察艦を相手にする場合は数で圧倒しなければ勝利は難しい。もっとも、突撃艦にとっては、敵の巡察艦と時空融合する(いわば懐に飛び込む)までは難しいものの、いったん時空融合して時空泡内部での戦闘に持ち込むことができれば、機動力で巡察艦を翻弄しつつダメージを与えることが可能となるため、十分に勝機がある。作中で、人類統合体の駆逐宇宙艦(アーヴ帝国の突撃艦にあたる艦種)10隻がアーヴの巡察艦1隻(艦名『ゴースロス』)に辛勝した戦いを例に挙げると、時空泡内部での戦闘に持ち込むまでに6隻が失われたが、生き残った4隻が巡察艦を撃沈した(時空泡内部での戦闘で、さらに3隻が失われた)。

平面宇宙戦闘で一番問題となるのは、時空泡の中身は質量でしか判断できないことである。泡間通信ができない場合、時空泡の質量や配置から経験と勘と運に頼って、敵か味方か、また艦種は何かを判断するしかない。何が出てくるかは実際に時空融合してみないと分からないこと、そして時空泡内の質量にも限界があることで、少なくとも襲撃艦6隻程度の質量が限界のようである(厳密にどの程度かは不明)。もっとも、限界質量に関しては『戦旗III』にて明らかにされたため、それ以前の映像作品(特に『戦旗I』)との間に矛盾が発生している。なお、限界質量を超えると時空泡は分裂してしまうが、無規則に分裂するため、どのような時空泡ができるか予測できず危険である。

平面宇宙と通常宇宙[編集]

そもそも、人類が銀河文明を築き得たのは、平面宇宙の発見と、通常宇宙と平面宇宙を繋ぐ「門(ソード)」利用技術の確立によるものである。

通常宇宙と平面宇宙との位置関係は1対1ではない。平面宇宙は通常宇宙の投影ではなく、別個の宇宙である。両空間における位置関係は全くのランダムである。ただ、「第二形態ユアノン」または「開いた門」(単に「門」とも)と呼ばれる特異空間においては、平面宇宙と通常宇宙は1対1に対応している。ある門から平面宇宙に入って別の門から通常宇宙に出ると、光速以上の速さで移動したと同様の結果となる場合があり、このような「門」と平面宇宙を介した超光速移動のおかげで、人類は通常宇宙の物理法則から解放され、銀河文明を作りえたのである。

そもそもユアノンは、常に一定のエネルギーを放出し続ける特殊な素粒子として発見され、人類はこの素粒子が放出するエネルギーを利用する亜光速宇宙船を建造していた(ジントの故郷も、そうしたユアノン推進宇宙船によって植民された星の一つである)。この「第一形態ユアノン」はすなわち「閉じた門」であり、放出するエネルギーは平面宇宙から流入してくるものであった。

戦闘においても、当然「門」は重要な拠点であり、制圧対象である。例えば、機雷を大量に「門」に放てば、防御機雷戦ができない艦隊はなすすべがない。これは、通常宇宙から平面宇宙に機雷を撃つ場合(時空融合)も、その逆の場合(時空分離)も、真である。

平面宇宙の勢力図[編集]

通常宇宙の銀河系で中心部ほど星が濃密であるように、平面宇宙の「天川門群(ソードラシュ・エルークファル)」にも「中心円」と呼ばれる「門」が密集した領域が存在する。この領域は時空粒子流が激しく、アーヴといえども航行できない。また、時空粒子流は中心円から外側へ向かって流れるため、流れに逆らって進む時はその反対方向へ向かうのに比べて遅くなる。

中心円から離れると、「環(スペーシュ)」という門がある程度密集した同心円状の領域が飛び飛びに存在する。「アーヴによる人類帝国」を構成する八王国のうち7つと4ヵ国連合諸国はおおむね第1環から第7環までの「中央領域(ソール・バンダク)」に存在し、イリーシュ王国のみが第12環にある(第8環から第11環までにも、有人星系に通じる門が少数ながら散在する)。ジントのハイド星系が長らく帝国に発見されなかったのは、ハイド門が第12環の中でもイリーシュ門のほぼ反対側という「辺境」に存在するため、探査自体がほとんど行われなかったことによる。第12環から外側は門がほとんどないが、一部に門密度の高くなっている領域があると観測されていたため、遥か遠くに別の銀河系に由来する門群があると推定されているが、まだそこまで到達したものはいない。

帝都ラクファカールのあるアブリアル伯国には八つの門があるが、それぞれが平面宇宙側では八王国のどれか一つに通じている。このためにいわゆる「内線の利」を発揮することが可能だが、逆に帝都が陥落すれば一気に分断されてしまう。『紋章』では、人類統合体を主力とする連合艦隊が第12環に通じる2つの門からイリーシュ王国に侵攻し、帝都に通じるイリーシュ門へ向けて進撃した。

平面宇宙における勢力境界線は、かつて地球上にあった国境ほど明確なものではないが、便宜的にそれに準じて記した勢力図が『星界の戦旗I』の付録に示されている(第12環以外の「環」は省略)。7つの王国は4ヵ国の支配領域の隙間を埋めるように存在する。中でもラスィース王国とスュルグゼーデ王国は、人類統合体に楔を打ち込んだ状態になっており、『戦旗I』ではこの王国を出撃基地として攻撃を加えている。

図上では、クリューヴ王国だけがハニア連邦内に孤立している。ただ、ハニア連邦は他の三国全てと隣接しているものの、大戦初期に中立を宣言していたため、アーヴ側もクリューヴ王国方面への戦力増強は控えていた。しかし、この領域が実は重大な問題であったことが、『戦旗IV』の最後で語られた。

機雷と平面宇宙戦闘[編集]

星界シリーズにおける機雷は、我々の世界で海中に敷設する実在の兵器のようなものではなく、時空泡発生装置を持ち、敵艦隊に向けて高速で投射・誘導される、いわば「平面宇宙用ミサイル」とでもいうべき架空の兵器である。

通常のSF艦艇の主力兵器である、レールガン・荷電粒子砲といった兵器(無論、星界シリーズの艦艇でも装備しているが)は、平面宇宙では、時空融合しない限り意味を成さない。 敵の機雷攻撃に、味方の機雷をぶつけることで防御する防御機雷戦が必要なのは、そのためである。大量の敵機雷に時空融合されてから打ち落とすのでは、全てを打ち落とすことは不可能で、また打ち落とせたとしても時空泡内の質量が増して機動力が削がれ、艦隊運動に支障をきたし壊滅的被害を受ける。時として、数としては圧倒的に優勢な帝国星界軍艦隊が危機に陥るのは、補給不足や機動力重視の艦種構成ゆえの機雷の不足によるところが大きい。

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