ダルマプ星系・惑星セーバの軌道上・軌道酒保街<ハルグー>
シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリルは、書記のソスィエと監督のビュコックと一緒に昼食のひとときをすごし、スルグーを飲んで、談笑していた。
「よくよく考えると、この<プラネースカウ>の高級翔士は、ある意味、すごいですな。なんといっても、俺以外は、全員根源氏族だからな。」とマシロン茶をすすりながらビュコックは言った。
「そうかしら?まぁ、確かにここまで、そろっているのは、珍しいけど、キリューシュ前衛翔士以外は私も含めて傍流よ。そんなに気になることじゃないと思うけどね。」ティル・ノムをすするソスィエ
「まぁ、彼は子爵公子閣下ですからね。年齢も高級翔士で一番、若い上に貴族のお坊ちゃまだから、従士たちに対しての態度が悪いと評判ですよ。」ビュコック
「そうね。私も、彼は嫌いだわ。器量のわりには、プライドが高すぎるのね。もうちょっと、自分をわきまえてほしいわ。それに世の中をちょっと、甘く見ていた風だったけど、あなたのあの模擬戦闘で彼はボロボロにされたから、いいきみだったわ。」ソスィエ
「二人とも、私は彼の直属の部下なんですよ。そんな悪口を私にって、告げ口でもされたら、どうするのですか?」
と微笑みながら言うユーリル
「あなたなら、そんなことしないでしょう。それに、今のところ、彼の矢面に一番立っているのはシュリル列翼翔士でしょう。ネチネチと嫌味やいじめをうけているみたいだけど、大丈夫なの」書記として艦内の人間関係を気にするソスィエ
「そうだな。確かに、艦長もそのことを心配していたよ。かといって、あまりキリシューシュ前衛翔士に言うと、刺激しかねないしな。難しい問題だ。まぁ、従士たちの意見は彼を叩きのめせとかいっているがな」大げさに言うビュコック
「ビュコック監督、ソスィエ書記、大丈夫です。最初は、嫌だったけど、最近は、彼の行動に対しての反撃を考えるのが楽しみなんです。軍規に違反することなく、かつ効果的な策を考えるのが日々の日課です。退屈しなくてすみますよ」自信満々の笑みをするユーリル
「おお、これは、余計な世話だったかな。まぁ、『黄金眼の天才児』にケンカを売るなんてことは、しないようにしよう。」肩をすくめるビュコック
「そう、なら問題無いわね。まぁ、あまりにも優秀過ぎる部下を持つという点では気苦労するのは、わかるけど、人間は、向き不向きがあるのだから、部下を認めるだけの度量は彼に欲しいわね」ソスィエ
「それに比べて、シュリル列翼翔士は、人間ができていると思うよ。正直、あれだけの能力を発揮すれば、傲慢になりがちだと俺の人生経験上思うのだが、それがない。まぁ、最初は無理なことを言っていると思ったけど、実は、それが君の実力だとわかってから、評価を改めたよ」ビュコック
「従士たちも、あなたの人気は相当なものよ。さっさと先任砲術士にしろという意見が大多数ね。まぁ、位階が合わないのが本当に残念だわ。あなたほど、生存確率が高い巡察艦の先任砲術士はいないと思うわ」ユーリルを評価するソスィエ
「ありがとございます。でも、私はあせっていません。そういう人事は、艦長が結局、判断するでしょう。だいたい、この位階で練習艦隊で先任砲術士をやったこと自体異例なのですからね。」ユーリル
三人が休暇をそれなり、楽しんで話しているところに二人の訪問者がきた。
「シュリル列翼翔士ね。この狩人第五艦隊の司令長官コトポニー大提督よ。彼は参謀長のセスカース准提督。」毒々しいまでに赤い唇の女性翔士がそこにいた。
「これは、大提督閣下、はじめまして。ビュコック軍匠十翔長です。」動揺してあわてて敬礼するビュコック
「大提督閣下、はじめまして。ソスィエ主計十翔長です。」ビュコック同様に急いで敬礼するソスィエ
「コトポニー大提督閣下、初めまして。シュリル列翼翔士です。」優雅に敬礼するユーリル
「うん、君が噂が『黄金眼の天才児』ということを聞いたからね。とりあえず、私の艦隊に配属されたと聞いて、一目見てみようと思ってね。」紅の唇で不敵な笑みをするコトポニー
「大提督閣下も、私に興味あるのですか?それにしても、その称号からいつ解放されるののでしょうか?本当は、あまり好きじゃないのです。閣下」ユーリル
「おやおや、星界軍の飛翔科修技館史上、最高の成績を上げたんだ。それに、練習艦隊での判定委員の10人抜き…。解放されるのは、君が生き続けている限り、ないと思うよ。」コトポニー
「コトポニー司令長官閣下は、シュリル列翼翔士と少し、話がしたみたいだ。だから、ソスィエ主計十翔長、ビュコック軍匠十翔長、悪いが、少し席をはずしてくれないか」セスカース
「はい、わかりました。それじゃ、シュリル列翼翔士、休暇ももう少しだから、艦にもどるわ。」ソスィエ
「わかりました。では、俺も艦に戻ります。」ビュコック
二人とも敬礼してその場を去った。
「それで、私の艦の上官を引き払って、どういう話がしたいのですか?コトポニー閣下、セスカース閣下」興味ありげに二人を眺めるユーリル
「君はあの艦隊決戦戦術シュミレーション『至高』で全勝優勝してそのあと、軍令本部戦略・戦術分析局から入局の要請が来たと聞いたけど、どうして、前線のその巡察艦に来たのかい?」コトポニー
「コトポニー司令長官閣下、簡単に言いますと、武勲をたてるためです。後方勤務では武勲を立てる機会があるとは、思えません。」ユーリル
「シュリル列翼翔士、それだけかい?理由というのは、他にもあるのではないかね」不敵な笑みを浮かべるコトポニー
「コトポニー司令長官閣下の言うとおりですね。これは、私の持論なのですが、前線に出て見なければ、戦場の状況や雰囲気を経験することはできないし、その経験も無しに後方で策を考えて、分析しても軍士の方々に失礼だと思っているのです。」まっすぐ、金色の瞳でコトポニーを見るユーリル
「(なるほど、いい目だ。実力だけではなく、すでに指揮官としての素養をあるというのか。でも、戦場の経験を得るのは、生き残る運も必要だろうな)」
コトポニーにユーリルの分析を任されていたセスカースはそう判断した。
「そうか、わかった。その心意気は、いいな。私も後ろでコソコソはかりごとをしているよりは、前線で思う存分、暴れまわりたい性分だ。」コトポニー
「ところで、コトポニー閣下、ただ、それだけで、私を話したのではないでしょう?他にご用件があるはずだと思いますが」コトポニーを探るように見るユーリル
「そうだな。本件を言おう、できれば、私の艦の先任砲術士の仕事を君に任せたいと思ってね。もし、君が望めば艦隊人事部に要請して、変えてもらおうと思っている。」コトポニー
「私ですか?でも、位階があいません。それに、まだ、武勲を立てているわけでもないの、旗艦のその役目を負うほど、私は傲慢ではありません。単刀直入にいいますと、ありがたいお言葉ですが、拒否させていただきます。」絶対譲らない表情で話すユーリル
「司令長官閣下、どうやらふられたみたいですね。彼女は、コトポニー閣下の直接の指揮下に入る気はないみたいです」セスカース
「そうか、無理にとはいわない。どうやら、君は他に目的がありそうだから、そっとしておくよ。でも、実に惜しいな。」と穏やかな表情で見るコトポニー
ユーリルとコトポニーが今後の狩人作戦について、それぞれの立場から話をしていると、二人が話しているテーブルから0.2ウェスダージュほど離れたところに突然、テーブルを倒す音とガラスが割れた音が穏やかな雰囲気の<ハルグー>に響き渡った。
その場には、従士達が10人くらいと軍匠科の軍衣を来たアーヴの女性翔士一人を青地の階級章をつけた空挺科翔士の地上人の男が腕をとって、その後ろに10名くらいの空挺科翔士が何かを言い争っているみたいだった。
すると、それを一瞥したコトポニーが決断を下した。
「シュリル列翼翔士、あの場の状況を冷静に分析して、収拾せよ。これは、命令だ」果断に命令を下した。
「はい、わかりました。コトポニー大提督閣下。」あっさりと命令を受けるユーリル
「ちょっと、待ってください。コトポニー閣下にシュリル列翼翔士、もう少し、状況を見守ってからでも遅くは無いでしょうか?それに、閣下自身ではなく、なぜ、翔士としては一番最下級のシュリル列翼翔士にそんな命令を下すのですか?」二人のやり取りに驚くセスカース
「セスカース参謀長、私の補佐を勤めて何年になる。私の即断したとき、説明は後だ。シュリル列翼翔士、かまわず、あの場にいけ」命令するコトポニー
「は、わかりました。」そういって、その場を離れようとしたとき、すでに向こうでは、空挺科翔士と軍匠科の従士たちの乱闘が始まっていた。
「コトポニー閣下、どうやら、一足遅かったみたいですね。でも、あの勝負もあと3分くらいで方がつくでしょう。戦力が違いすぎますから、それから対処します。」乱闘を遠くで眺めながらユーリルは言った。
ユーリルが判断した通り、人数は同じくらいであったが、その乱闘は地上人の空挺科翔士の圧勝に終わった。軍匠科の従士たちは、全員地面にうずくまっていた。
「さてと、アスラメス軍匠列翼翔士とやら、一緒にきてもらおうか。君を守る護衛の野郎はみんな、いなくなったしな。」と強引にアーヴ女性の腕をひっぱる黒髪の40前半くらいの筋肉質の空挺科翔士は言った。
その周りをニヤニヤとしながら他の空挺科翔士は囲んでいた。全員30〜40歳の地上人の翔士だった。
「空挺科翔士の皆さん、ちょっと、待ってください。特に、そのアスラメス軍匠列翼翔士の腕を引いている方、状況はだいたい、察しがつきますが、腕を離してもらえないでしょうか?」不敵の笑みで声をかけるユーリル
「なんだ、お前は?これから、俺に酒をこぼしたお詫びをこの翔士に体でしてもらうつもりだ。しかも、これは命令だ。俺は地上制圧空挺部隊『青き雷(いかずち)』の副連隊長のドワーフ空挺百翔長と知って、いっているのか?」鋭い視線を向けるドワーフ
「体ですか?それは、あきらかに越権行為ですね。ドワーフ空挺百翔長。いくらなんでも、それは、星界軍の軍規にもそのような行為を認めているはずないです。ここは、大人しく収めた方がいいですよ。」と穏やかな交渉を試みるユーリル
「シュリル列翼翔士、助けてください。私は謝ったのにこの男がしつこく、迫ってくるのです」と青紫色の髪と茶色の瞳をした美女はおびえた表情で言った。
「そうですね。どうやら、従士の方々はあなたの部下で助けようとしてあえなく、敗退というわけですね。わかりました。状況はわかりました。ドワーフ空挺百翔長、そろそろ彼女の手を離して野蛮な行動をやめてください。」言葉は穏やかだが、声に刺が含まれるユーリル
「うるさい。そうだ、お前もこの女と一緒に俺達の遊びに付き合うか。」いやらしい笑みを浮かべるドワーフ
「それは、お断りしますわ。それでは、状況もわかったし、次は実力行使をしますね。前もって言っておくけど、私はコトポニー大提督から命令を受けていますので、今ならまだ、その不届きな行為をやめる機会はありますか?どうします?」表情は完全に厳しくなり、空挺科翔士たちを睨むユーリル
「ほう、お前、それは俺たちにケンカを売っていということか?どこにいるんだ。その第五艦隊司令長官のコトポニー大提督閣下は?」挑むように睨むドワーフ
「ほら、あそこにいます。今は、参謀長であるセスカース閣下とスルグーを飲んでいるみたいですけどね。」とコトポニーの方指差すユーリル
一方、コトポニーはセスカースと一緒に状況を眺めながら優雅にスルグーを飲んでいた。
「コトポニー司令長官閣下、いいのですか?あの場にいなくても?」心配するセスカース
「問題ない。それに、動きがあったらいつでも、私は行くつもりだ。シュリル列翼翔士は、格闘戦でも飛翔科修技館で最高の成績を上げたと聞いている。空挺科翔士との戦いになったら、見物だな」と悪戯っ子の笑みをするコトポニー
「司令長官閣下、お言葉ですが、いくらなんでも相手は15人もいます。例え『黄金眼の天才児』でも無理だと思います。」困惑するセスカース
再び、騒動の中
「おい、お前、嘘をついているのか?司令長官閣下はこちらの様子をうかがっているけど、止める気配はないな。」余裕の笑みを浮かべるドワーフ
「そうですね。まぁ、私にすべて、任せるということなのでしょう。それで、結論を聞いていませんでした。このまま、大人しくアスラメス軍匠列翼翔士を解放してください。それとも、私に叩きのめされますか?」挑発するユーリル
「ふん、叩きのめされるのは、お前だ。シュリル列翼翔士の相手は俺がする。おい、ガスタル空挺後衛翔士、このアーヴ女を捕まえていろ」そういって、アスラメスを部下に渡すドワーフ
ドワーフは、その後、じっくりと構えをみせて、ユーリルとの間合いをジリジリとつめていった。
「あら、意外に慎重なのね。」その構えを一瞥しながらユーリルは言った。
「ふん、俺はどんな弱い相手でも全力を尽くすんだ。例え、女や子供でもな。それが戦場に生きる鉄則だからな」ドワーフ
「(アクラクイ伯国のハルゼーグのハルクース式格闘術か。さっきの従士の乱闘でみせてもらったわ。ハルゼーグといえば、空挺科翔士や傭兵団を数多く排出しているところね。そういえば、『青き雷(いかずち)』は、その人達の精鋭部隊と聞いたことがあるわね。)」冷静に分析するユーリル
そう感じながら悠然と歩いて、ユーリルは接近をした。
「(く、こいつ、何も考えていないのか?)」相手のあまりの無防備さにいやな感じを受けるドワーフ
ドワーフが警戒しながらも電光石火の右の正拳突きを繰り出した。その瞬間、ユーリルは、カウンターで左の拳をドワーフの顎に炸裂させた。それと同時にボキという鈍い音が響いた。ユーリルの腕は拳を繰り出していたとき、相手の右腕もからめて、折っていたのだった。さらに、ドワーフは顎の骨もその拳の一撃で折れた。
「ウアァーァァ」と悲鳴ともうめき声ともわからない声を上げて、ドワーフは倒れた。
その瞬間ユーリルは倒れているドワーフの足を極めて、何の迷いも無く折った。
ビギィという骨が折れる音が響き渡った。再び、ドワーフは絶叫した
「だから、叩きのめされる前に忠告したのですけどね。さて、あなた達の副連隊長は、壊れました。まだ、私と戦います。もし、やるなら全員病院送りにしますよ」穏やかながらも悪意に満ちた笑顔をするユーリル
「うるさい、副連隊長をやられて、黙っているほど、俺達は臆病者じゃない。いくぞ」そういって、一人の空挺翔士がユーリルに殴りかかった。その後、続々と続いた。
そして、14対1という数の上では圧倒的な差の乱闘が始まった。だが、ユーリルは、空挺翔士の拳や蹴りをほとんど、かわすと同時にカウンターで手痛い反撃をだした。
決着はわずか3分でついた。
最後に残った一人の空挺列翼翔士は逃げ出そうとした。
「なんて怪物だ、俺は痛い目にあいたくない」と逃げ出す空挺列翼翔士
「あら、仲間を見捨てて、逃げるなんて美しくないわね。」
と常人には想像できないスピードをだして、彼に追いつき、蹴りを背中に炸裂させた。
その一撃で倒れた空挺翔士の足を持つと再び、ユーリルはあっさりと折った。
その状況を見ていたコトポニーは表情こそ平静だったが、心の中で驚きに満たされていた。参謀長のセスカースにいたっては、その様子を目が見開いたまま、硬直していた。
「(これが、シュリル列翼翔士の底力か。いや、あの様子だと力の一端にすぎないか。かなりの余裕を持って戦っている)」コトポニー
「(なんてことだ。あの空挺科翔士の精鋭部隊の『青き雷』の15人をたった、数分で倒すなんて、『黄金眼の天才児』は、そこまでやれるのか。)」セスカース
「どうやら、状況も落ちついたみたいだ。いくぞ。セスカース参謀長。」
コトポニーは、足早に乱闘が終結した場へ向かった。
「了解、コトポニー閣下」セスカース
「シュリル列翼翔士、見事だったな。今後の処理は私が行う。そこの軍匠列翼翔士、君も事情を聞きたいから一緒に来てくれるか」コトポニー
「はい、わかりました。コトポニー大提督閣下。閣下が、処理してくれれば、安心できます。」やっと、ほっとした様子のアスラメス
「コトポニー大提督閣下。では、私も休憩時間がもうすぐでなくなるので、自分の艦にもどっていいでしょうか?この空挺翔士の方々は、きれいに骨を折っておいたので、星界軍の医療施設なら3日で治るでしょう。」そういって、敬礼をするユーリル
「そうか、わかった。ご苦労だな。シュリル列翼翔士。それを承認する。セスカース参謀長、細かい処理と状況確認は任せる。それと、あとで、この『青き雷』の連隊長を呼んでくれ、たぶん、色々と説教をしなくてはいけないだろう。このコトポニーにこんな雑事をやらせるということをな」と毒々しいくらい紅い唇を歪めるコトポニー
こうして、ユーリルと空挺科翔士の騒動は、あっという間に狩人第五艦隊に広まり、またしても『黄金眼の天才児』という称号の名を上げる結果となった。
その噂は、尾ひれをつけて、空挺科を1個連隊撃破とか?指先一つで、骨を砕いたとか?あることないことが、広がって、とにかく、ユーリルには、滅多なことで逆らわないほうがいいというのが噂話をした者の一致した意見となった。
「まったく、いやになるわ。コトポニー司令長官閣下のおかげで、話題の中心になるなんて、まだ、戦闘を経験する前から気づかれするわ」と一人愚痴を言うユーリルであった。
★原作設定その2(ウィキペディア抜粋)
艦長艦全体の最高責任者。乗組員を指揮し、司令官からの上意下達や、作戦行動の指示などを行う。アーヴ語では巡察艦や戦列艦などの大型艦の艦長は「サレール」、突撃艦や護衛艦などの小型艦の艦長は「マノワス」と呼称する。小型艦の戦隊司令官は艦長を兼任し「サレール」という。艦長席の後方には、必ず艦長の氏族の紋章旗を掲げ、また航行日誌や戦闘状況などを記録する「思考結晶(ダテューキル)」を管理する。通常、突撃艦や護衛艦などの小型艦では十翔長、襲撃艦や巡察艦、戦列艦などの大型艦では副百翔長以上がおもに担当する。副長(ルーセ)艦長を補佐する。多くの場合、航法士や砲術士を兼任する。通常、大型艦では十翔長か前衛翔士が、小型艦では先任翔士として前衛翔士か後衛翔士が、おもに担当する。航法士(リルビガ)航法を担当し、平面宇宙での操艦も担当する。空識覚が必須なので、必ず飛翔科の翔士である。小型艦では先任翔士が担当する。当直により艦橋に航法士が不在となることを防ぐため、必ず複数が置かれる(航法士全員が他職と兼任のことも多い)。通常、小型艦では前衛翔士か後衛翔士、大型艦では十翔長か前衛翔士がおもに担当する。砲術士(トラーキア)火器管制を担当し、通常宇宙や時空泡内での操艦を担当する。航法士と同じく空識覚が必須なので、必ず飛翔科の翔士である。小型艦では艦長(マノワス)が兼任することが多い。大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。通信士(ドロキア)他の艦艇や宇宙港などとの通信を担当する。小型艦では専任者を置かず、次席砲術士などを兼任することが多い。大型艦では、後衛翔士や列翼翔士がおもに担当する。監督(ビュヌケール)機関や艦体などのハードウェアの維持管理に責任を持ち、実働部隊である多くの従士を指揮監督する。軍匠科の翔士で、部下の従士たちから好感を持たれやすい地上出身者が多い。通常、小型艦では列翼翔士か後衛翔士、大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。書記(ウィグ)燃料や弾薬、食糧や衣服、医薬品など、艦に必要な資材や消耗品、什器類の調達と管理や、艦内環境の維持管理、乗組員の健康管理、福利厚生などに責任を持つ。主計科の翔士。通常、小型艦では列翼翔士か後衛翔士、大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。なお、戦闘中は本来の職務がないので、監督(戦闘中は機関関係に集中する必要がある)を補佐し、艦体の状況(被弾箇所など)の把握や気密隔壁の制御などを行う。艇指揮(ボノワス)連絡艇や短艇などの、搭載艇の操縦士。搭載艇を使用する際、乗員の飛翔科翔士の中から艦長や副長が任命する。
装備[編集]
艦艇[編集]
巡察艦(レスィー)攻撃・防御・機動力・機雷戦ともにバランスの優れた大型艦。ビルジュ級、ロース級、ディジュ級、さらに最新鋭のカウ級が存在する。非常に強力な艦種であり、全軍を巡察艦で編成するべきとの意見もあるが、費用対効果などの問題もあり、実際の配備数は少ない。なお、皇帝御座艦「ガフトノーシュ」には最新鋭の巡察艦を充てるのが慣例になっている。おもな装備は強力な電磁投射砲と少数の機雷。ゴースロスには防御および近接戦用に可動凝集光砲と可動反陽子砲が装備されていたが、可動反陽子砲は威力と連射性が中途半端らしく、後述する襲撃艦では可動凝集光砲のみに統一された。おもな任務は、強行偵察と敵艦隊に致命傷を与えるための突撃(蹂躙戦)。汎用性に富み高い安定性と攻撃性能を持つゆえ、艦種を全て巡察艦にすべきであるという考えを持つ「巡察艦信奉者」ともいうべき存在がいる。4ヵ国連合ではこの種の艦に対し、巡洋宇宙艦という呼称が用いられている。突撃艦(ゲール)機雷を持たない小型艦で、機動力を最重要視した艦種であるが、それだけに装甲が薄いので打たれ弱く、火力も貧弱である。防御機雷戦ができないので、防御用可動凝集光砲などを装備してはいるが、機雷攻撃に対しては脆弱である。また、非力な突撃艦の主砲(反陽子砲)では防御磁場を展開した大型艦の装甲に大きなダメージを与えられないため、大型艦に立ち向かうためには数を揃えて集中砲火を浴びせる戦術が取られる。作中では、巡察艦等の大型艦へと艦隊の主力が移りつつあり、非力で大型艦に対抗しきれない突撃艦は徐々にその地位が低下している(アーヴは突撃艦より後述の襲撃艦を配備しつつあり、同様に統合体は巡洋宇宙艦の比率を高めつつある)。ロイル級とガムフ級が確認されている(短編『着任』には“コーヴ級突撃艦”との記述があるが、これは作者がロイル級と間違えたものと思われる)。なお、4ヵ国連合ではこの種の艦に対し、攻撃型駆逐宇宙艦という呼称が用いられている。人類統合体の艦種では艦の左右側面外部に4発の大型ミサイルを搭載しているのが特徴であるが、このミサイルには時空泡発生機関が無いので、平面宇宙戦闘においては時空融合後に発射する。護衛艦(レート)機雷迎撃用可動砲を多数装備し、機雷を撃滅する。機雷には強いが、突撃艦には弱い。機雷の迎撃に真価を発揮するが艦自体の攻撃力は低めなため、突撃艦部隊などと組み合わせて運用される。船体の規格は突撃艦のものを流用しており、おおよその大きさは突撃艦とほぼ同等である。4ヵ国連合ではこの種の艦に対し、防衛型駆逐宇宙艦という呼称が用いられている(護衛型駆逐宇宙艦という表記もある)。戦列艦(アレーク)機雷戦専門の艦種。サイズ的には巡察艦を上回る超大型艦で、胴体部に機雷を多数格納している。平面宇宙の戦闘では主力艦の地位を占める。質量が巡察艦の三倍にも達するため、機動力が低いのが弱点。また、雷撃を突破されるか機雷を撃ち尽くして巡察艦等の接近を許すと、防御用火砲を装備してはいるものの、一方的な蹂躙戦を許しがちである。ソーフ級が存在する。4ヵ国連合ではこの種の艦に対し、機雷母艦という呼称が用いられている。襲撃艦(ソーパイ)『戦旗III』で登場する新鋭艦種で、『紋章』には登場しない。期待される役割は突撃艦に近く、そもそも火力・装甲ともに不足の観が否めなくなりつつある突撃艦の後継として開発されたものだが、機能的には重突撃艦、性能的には機雷を抜いた巡察艦のようであり、重突撃艦と呼ぶべきか、軽巡察艦と呼ぶべきかの大議論の末、襲撃艦と命名されるに至った。襲撃艦という名が決まった後も軍士の間では議論が続き、しばしば殴り合いにまで発展することがある。主砲には電磁投射砲を採用し、突撃艦をはるかに凌ぐ火力を誇り、無数に装備された可動凝集光砲で護衛艦の担っていた機雷迎撃もこなす。コーヴ級のみで、実戦配備は途上である。4ヵ国連合ではこの種に相当する艦は存在しない(少なくとも確認されていない)。突撃艦の項目でも記述した通り、統合体は巡洋宇宙艦を増強している。過去に存在した艦種(高機動戦闘ユニット他)ジントたちの時代にはすでに時代遅れとなり存在しないものとして、高機動戦闘ユニットがある。いわゆる単座式の宇宙戦闘機と思われる。また、高機動戦闘ユニットを運用するための母艦も存在した。星界軍の初期には主力を務めたが、後に平面宇宙を自立航行可能な機雷が出現して敵機の迎撃や敵艦への攻撃をこなすようになったために淘汰されたと考えられる。同様に空母も機雷を多数搭載する戦列艦にとって代わられている。しかし、星界軍の階級名はこれらの兵器が主力であった時代のものを慣習として引き継いでおり、士官を意味する“翔士”という言葉も本来は、高機動戦闘ユニットのパイロットの称号である。輸送艦(イサーズ)資材・補給物資の輸送艦。攻撃力(自衛能力)は無きに等しく、機雷戦も不可能。質量も戦闘艦とは比べ物にならないほど大きく、そのぶん機動力は極めて低い。ただし、高い機動力を求められる巡察艦中心の偵察分艦隊に随伴するタイプは小柄で、機動力も高い。また、惑星への降下および離脱が可能な強襲輸送艦(ルソーミア)も存在する。アーヴ帝国では帝都防衛の必要が生じた時は、たまたま帝都にあって他に任務の無い商船と翔士を集めて、近衛阻止戦隊を編成する(指揮系統は、近衛艦隊司令部の直属)。その役割は臨時編成の戦列艦部隊に近く、輸送船でありながら機雷を(少なくとも)射出することが可能。ただし、正規の軍艦ではない(そのためか、「輸送艦」ではなく「輸送船」と表記されている)ため、自衛能力は皆無で、軍匠科員も乗っていないため故障等が発生しても対応は不可能。連絡艦(ロンギア)平面航行能力を備えた小型の貨客船(レビサーズ)のような構造の艦。情報と共に、貴賓や伝令使を運ぶことを想定している。連絡艇(ペリア)平面宇宙における伝令役を務める小型艇。質量が小さく、快速である。ペリアの語源は日本語の“パシリ”らしい。短艇(カリーク)平面航行能力を持たない小型艦載艇。艦が直接入港できない場合、艦と宇宙港の間での人員輸送に使用される他、艦同士の連絡艇、脱出艇としても用いられる。救命莢(ウィコー)艦艇からの緊急脱出用ポッド。制御可能な動力を持たない、いわば宇宙の筏。通常1つが1人用で、生命維持能力は24時間分、わずかな食料と医薬品が備え付けられている。艦艇の外部に面した通廊などに接して装備されている。ワンタッチのスイッチ操作で迅速に乗り込むことができ、救命莢内側のボタン操作で自動密閉、その後すぐに射出され、艦艇の爆散に巻き込まれないよう速やかに宇宙空間へ離脱する。射出後は自動的に救命信号を発信し続け、近くの艦艇に救助を求めるようになっている。
艦載兵器[編集]
機動時空爆雷(サテュス・ゴール・ホーカ)短く機雷(ホクサス)とも。平面宇宙戦闘に使用される長射程兵器。時空泡発生機関と人工知能を備え、平面宇宙を自力で航行できる。すなわち無人・小型ではあるが宇宙船としての機能を備えており、これ自体が無人・体当たり専門の宇宙戦闘機的な能力を有している。突撃艦などよりはるかに小型・軽量であるため、平面宇宙での機動性で大きく優り、これら小型艦艇にとっての天敵とすら言える存在。巡察艦には10発前後、戦列艦には100発近くが搭載されている。平面宇宙戦においては、命中させる以外にも相手の時空泡と時空融合させて質量を増やし、行き足を遅らせるといった付与効果もある。統合体では新型の多弾頭機雷が開発されており、休眠状態にして放てば待ち伏せ攻撃も可能である。また、『戦旗』では人民主権星系連合体が小型艦艇(おそらく突撃艦など)と同等の航続距離を誇る“超長射程機動時空爆雷”なるものを実戦配備し、星界軍に苦戦を強いた。電磁投射砲(イルギューフ)水素爆弾の起爆剤に「反物質」を使用した純粋水爆の核融合弾(スピュート)や質量弾を光速の1%程度に加速して発射する。いわゆるレールガン(コイルガンの可能性もあり)。破壊力が大きく巡察艦・襲撃艦の主砲に採用され、主に対艦攻撃に用いられる。原理は不明だが、ある程度の追尾機能があり、その一方で無秩序噴射により敵の攻撃を回避する。反陽子砲(ルニュージュ)反物質である反陽子を荷電粒子砲で打ち出す。いわゆるビーム砲。おもに突撃艦の主砲、巡察艦の副砲として用いられる。相手の物質の陽子との対消滅で発生するエネルギーによって分子を崩壊させることで破壊力を得るため、防御力場には阻まれやすい。威力と連射性が中途半端らしく、威力では電磁投射砲に、速射性では凝集光砲に劣る。機雷の迎撃と対艦攻撃の両方に用いられる。凝集光砲(ヴォークラーニュ)小型のレーザー砲のこと。物理法則上最速の光子を凝集して射出する(それゆえ弾影がなく、命中点のみが視認できる)。単発の破壊力は低い。ただ、弾体を施設で工業的に生産しなければならない電磁投射砲(核融合弾などを使用)や反陽子砲とは異なり、艦船のエネルギーがあればよいので物質弾体の補給の必要はない(ただし、被弾などで主機関の出力が低下した場合、射撃力低下もしくは不能になる可能性がある)。速射性・連射性にも優れ、集中すればかなりの破壊力を持つため、主に機雷の迎撃に用いられる。なお、襲撃艦の対空防御装備はこれに統一されている。人民主権星系連合体は、反陽子砲並みの破壊力を持った凝集光砲を軌道施設に配備している。凝集光であるので、拡散しやすく、硝子霧(セビュール・セラ)などを事前に散布することにより、一定以下まで火力を低下させることも出来る。
個人装備[編集]
軍衣(セリーヌ)軍士が軍務に就く際の標準服。つなぎ。胸部から腹部、足の内側は青灰色、それ以外は濃紺色で、その境界に所属兵科を示す色の縁取りがある。また、縁取りと同色の飾帯をつける。左胸に、所属兵科と階級を示す階級章をつける。軍衣自体は位階・兵科に関係なく共通のもので、位階が上がるに従い装飾が増えていく。気密性が高く、与圧兜と併用することで、簡易宇宙服として使用できる。かつてアーヴの先祖が使用していた船内作業服を元に、改良を重ねたものである。生地はドゥニューク氏が管理していたもので、高い気密性を持ち、強靭でありながら柔軟でしなやかな特性を備える。階級章(レンスィムスィア)軍衣の左胸につけるワッペン。地色で所属兵科を、また模様の色(金か銀)と、一重または二重の縁取り、星の数で階級を示す。飾帯(クタレーヴ)軍衣の上、腰回りに締めるベルト。服を締めるものではなく、銃や手榴弾などの携行装備品をこれに吊すためのものである。所属兵科を示す色のものを着用する。端末腕環(クリューノ)左手の甲に着用する、小型の多機能端末。通信や自動翻訳、情報検索や音楽演奏(戦旗)、思考結晶接続といった機能を持つ。与圧兜(サブート)いわゆる気密ヘルメット。これに大気瓶を接続し、軍衣を着用した上で与圧手袋・軍靴も着ければ、簡易宇宙服として機能する。大気瓶は容量が少ないため、簡易宇宙服による宇宙空間での活動時間は極めて短い。与圧服(ゴネー)本格的な宇宙服。宇宙空間で、長時間の作業を行うには必須である。収納時はコンパクトになるように、構造が工夫されている。また、与圧が失われた艦内で作業する際にも使用する。凝集光銃(クラーニュ)凝集光砲の小型版で、個人で持てるようにしたもの。白兵戦用の拳銃やライフルにも用いられ、出力を落とせば照明としても利用できる。
4ヵ国連合[編集]