偵察分艦隊<アイネーアース>の第1015戦隊所属の巡察艦<プラネースカウ>は、ハスイー門への偵察任務を行っていた。そこで、突然、門から出てきた人類統合体平和維持軍の戦列艦隊の機動時空爆雷の攻撃に襲われた。そして、偵察分艦隊<アイネーアース>のほとんどは、練習艦隊から編成したばかりの艦が多く、無視できない被害を受けていた。
そのため、偵察分艦隊<アイネーアース>の司令長官のイーデフ准提督は、この門に1個分艦隊並の戦列艦隊がいるという本来の偵察の役目を十分に果たしたと思い、全艦隊に撤退命令を出した。
巡察艦<プラネーカウ>の艦橋
「艦長、イーデフ司令長官より、撤退命令が出ています。狩人第五艦隊が集結しているアルクー門まで、全速力で撤退せよ。ということです。」先任通信士のラムケーム前衛翔士
「わかったわ。本当に死ぬかと思ったわ。うちの戦隊で生き残ったのは、私の艦だけだし、機雷攻撃がこれほど、実戦で強力だとは思わなかった。とにかく、機雷の射程外に出たし、命令どおり撤退するわ。」ドゥニューク
「わかりました。艦長。アルクー門に進路確定します。」先任航法士のダベーム十翔長
「艦長、どうやら、今のところ我々の艦が偵察分艦隊<アイネーアース>の1番後ろの位置です。しかも、機雷の破片が多いために艦隊の速力に遅れをとっています。どうしますか?」心配するダベーム
「何ですって?しょうがないわ。とにかく、できるだけ、ついていきなさい。とはいっても、物理法則を超えては、無理だけどね。敵の状況はどう?」ドゥニューク
「はい、戦列艦隊は、我々が撤退したのを見計らって、門に戻っているみたいです。」通信士のラムケーム前衛翔士
「わかった。なら、たぶん、大丈夫みたいね。なんとか、初陣は生き残ったみたい。みんな、第2級臨戦態勢に移行する。直をそのむねでお願い。」少しほっとした様子のドゥニューク
「はい、わかりました。艦長。では、移行します。」ダベーム
「艦長、待ってください。敵、時空泡がこちらに、向かっています。質量から見て突撃艦の単艦時空泡が12個です。1個戦隊相当です。どうやら、速度が鈍って、味方の偵察分艦隊<アイネーアース>から孤立した私たちの艦に標準を決めたようです。」不安の表情をする探査担当通信士。
「なんですって?味方の援護はもらえそう?」ドゥニューク
「無理です。艦長。距離的には、敵の突撃艦の方が速くこちらにつきます。それに、時空粒子の流れは、こちらに向かう方向とは逆の流れになるので、燃料の消費も激しいので、たぶん、他の艦はギリギリになります。事実上、援護はうけられないでしょう。」
深刻な顔でダベーム言った。
「そう……。あと、何時間で敵の突撃艦は機雷の射程距離に入るの?とにかく、私たちだけで何とかするしかないわ。」腹を決めるドゥニューク
「はい、あと3時間15分後です。」探査担当通信士
「わかった。副長。第2級臨戦態勢を継続。そして、艦内時間、18時30分に第1級臨戦態勢に以降予定とする。先任砲術士、戦術分析をお願いするわ。」
「はい、わかりました。艦長。」ダベーム
「了解です。艦長」キリューシュ
こうして、巡察艦<プラネースカウ>は、今回の戦いが初陣という新米のほとんどである
軍士で突撃艦12対巡察艦1という圧倒的な不利な状況で戦わなくてはならなくなった。
「艦長、先任砲術士のキリューシュ前衛翔士ですが、残念ながら私の分析では勝率は0.35.これ以上は上がりません」不安な面持ちで言うキリューシュ
「そう…。0.35か。かなり、悪いわね。この数字はなんとかならいないの?」厳しい目キリューシュを見るドゥニューク
「私の力では……。そうだ。シュリル列翼翔士、彼女ならこの状況をなんとかできるかもしれません。艦長、彼女に先任砲術士にしてください。自分からもお願いします。この艦とみんなの命がかかっているのですから、彼女にまかせた方が確率は上がるはずです」決意をこめて言うキリューシュ
「先任砲術士、どうやら、あなたも私と同じ意見ね。確かに、このままでは、確実に死ぬわ。『黄金眼の天才児』に任せるかしかないわ」ドゥニューク
「彼女を呼ぶわ。シュリル列翼翔士。艦長室へ来て。」そういって、クリューノを捜査するドゥニューク
「艦長、了解です。」ユーリル
<プラネースカウ>の艦長個室
「シュリル列翼翔士、時間がないから単刀直入に言うわ。あなたは、今から先任砲術士に任命する。戦術分析を速やかに行い。今後の艦の操舵を任せる」
「はい、つつしんで。拝命します。艦長。それと、戦術分析はすでに行っています。私の策が上手く行けば、0.80の確率で勝つ自身はあります。安心してください。」にっこりと自身に満ち溢れた笑顔を見せるユーリル
「8割の確率?そんな、キリューシュ前衛翔士は、4割にも満たなかったのよ。どうやったら、その確率があるのか、教えてもらいたいわ」驚くドゥニューク
「はい、わかりました。説明します。まぁ、少々賭けに近いですが、私が先任砲術士になれば、上手く行くでしょう。」
そういって、ドゥニュークに説明した。
………数分後。
「シュリル列翼翔士、あなたのおかげで、希望が見えたわ。ありがとう。その策で行きましょう。タイミングはすべて、任せるわ。それと、戦闘時の命令権も艦長同様にする。その方が色々とやりやすいでしょう。」ドゥニューク
「それは、ありがとうございます。物分りのいい上司がいると助かります。それと、これは、私の推測ですが、この突撃艦は、核融合弾は、つんでいないですね。時空泡の速度が通常より速いです。それは、その弾薬が不足しているか、あるいは、すでに無いことを意味していると思います。では、色々と準備がありますので、これで。」敬礼するユーリル
「わかった。その情報は、生き残ったら伝えましょう。では、互いに頑張りましょう。」敬礼で答えるドゥニューク
艦内時間18時30分
「艦長。時間です。」ダベーム
「わかったわ。」
ドゥニュークは、全部署全乗員に放送した。
「告げる。こちら、艦長。敵の突撃艦級単艦時空泡が12個こちらに向かっている。それにともない、ただ今より第1級臨戦態勢に移行する。与圧兜着用の上、全員戦闘配置につけ。それと、これは、私の判断で、先任砲術士を『黄金眼の天才児』ことシュリル列翼翔士に任せた。だから、みんな安心して。この戦いは数の上では不利だけど、勝機は十分にある。そして、自分の持ち場を精一杯頑張ってちょうだい。」
ドゥニュークがそう告げると、艦内に警鐘が鳴り響いた。
「艦長、どうやら、艦の士気はかなり上がっています。『黄金眼の天才児』の効果はてき面ですね」書記のソスィエ
「そう?士気だけじゃないと思うわ。さて、今、この艦に機雷は残り4発しかない。前の戦列艦隊の対抗雷撃に6発使ったわ。残念だけど、しょうがないから、三発だけ発射準備お願い。」
ドゥニュークは静かに命令を出した
「3発ですか?残り1発はどうするのです?艦長。ここは、温存するのではなく、全部使う方がいいと思います。」副長のダベーム
「副長、これは、命令よ。機雷戦準備お願い。第7から第9まで反物質燃料の装填しなさい」
「わかりました。監督、指示お願い。」
「了解。反物質燃料充填。…充填完了しました。」監督のビュコック
すでに、敵の突撃艦には、1〜12までの仮の数字を決めていた。
「機動時空爆雷、発射準備、狙いは、敵突撃艦の第5、第8、第9いいわね。諸元入力お願い。機雷の射程距離に入りしだい。発射しなさい。」命令するドゥニューク
「艦長。了解。諸元入力、照準完了しました。」機雷担当砲術士。
「先任砲術士、電磁投射砲の発射準備お願い。」
「了解、電磁投射砲、準備完了しました。」落ちついた様子でユーリルは言った。
ドゥニュークは、艦長席から、立ち、指揮丈を腰から、ひきぬいて、艦内に警鐘を鳴らした。
「みんな、この戦いに勝って、絶対生き残るのよ。そのために、ありったけの力をつぎこんでちょうだい。それでは、戦闘開始」艦内に放送を入れるドゥニューク
「機雷発射せよ。」ドゥニューク
「了解」機雷担当砲術士
<プラネースカウ>の3つの機雷は、敵突撃艦の第5、第7、第9の時空泡に時空融合して、見事消滅させることができた。そのとき、艦橋では一瞬だが、どっとわいた。
そして、ドゥニュークは、間髪いれずに、命令を出した。
「航法士、敵第6に時空融合、こちらから、機先を制する。」
「了解」
そういって、1番、近くに接近していた第4と示された時空泡に<プラネースカウ>は時空融合した。
「先任砲術士、融合したら命令を待たずに撃て。」ドゥニューク
「了解。電磁投射砲、発射」ユーリル
ユーリルは、時空融合面にほんのわずかな隙間を狙うように電磁投射砲の弾頭を発射して、それと同時に次の敵の融合面に艦首を向けていた。電磁投射砲の連射を受けた第4は、反陽子砲の反撃をする間も無く爆散した。
「敵第1、第2、第3、次々と時空融合します。」
「まずは、艦首で第1を次に艦尾の電磁投射砲で第3を狙いなさい。」緊張のためか汗を書きながら命令するドゥニューク
「了解。」その命令を言う前にすでにユーリルによって、<プラネースカウ>の艦首は第1の融合面を捉えていた。そして、再び、融合面のほんのわずかな隙間に電磁投射砲を連射した
「第1、爆散です。」探査担当通信士
続けて、第3も時空融合した瞬間に艦尾の電磁投射砲の餌食になり、爆散した。
しかし、第2、第4、第7、第10、第11、第12と融合してきた突撃艦は、いずれも艦の側面に現れて、艦首と艦尾の電磁投射砲の射線にはとらえきれなかった。
この時点になると、ドゥニュークは戦闘の全ての指示をユーリルに任せていた。それは、あらかじめ、他の高級翔士に言われていたのでスムーズに行われていた。
「書記、第503区画、第863区画、封鎖して。それと、監督、50-yと40−zを防御磁場を強化、続けて3秒後には、56-w、36-qをお願い」立て続けに指示を送るユーリル
ユーリルは、普通のアーヴよりはるかに、空識覚がすぐれているために、敵がどこのポイントを狙撃するかを艦の操舵しながらも的確にわかっていた。そのため、被害個所を素早く理解して、そのための対応策をだしていた。
さらに、凝集光砲や反陽子砲の可動砲群担当の砲術士にある程度、指示を出していたために、敵の突撃艦は、ユーリルの予想範囲の行動をとらざろうえなかった。
ユーリルは<プラネースカウ>の右側面には敵の動きを封じるような的確でなおかつ苛烈な砲撃を指示していたが、左側面は比較的自由に担当の砲術士に任せていた。
その結果、敵の突撃艦が左側面に集まるようになったのであった。
「監督、最後の機動時空爆雷の反物質燃料を充填お願い。ただし、3分の2でお願い。急いでね。それと、機雷担当砲術士、それが完了後、ただちに機雷発射、65-34で諸元入力。私が指示したと同時に自爆させて」自信の笑みを浮かべるユーリル
「了解…。反物質燃料の充填完了。」素早く命令を履行するビュコック
「こちらも諸元入力完了しました。機雷発射します」機雷担当砲術士
「了解……今よ。自爆させて」ユーリルは目をつぶりながら、タイミングを計り、指示をした。
その瞬間、狭い時空泡内で<プラネースカウ>の左側面に5艦の突撃艦が密集体型で一気に<プラネースカウ>を攻撃しようとしたところに、機雷が現れて、しかも爆発したので、その機雷の破片をうけた5つの艦は3艦が爆散して、残りの2艦も防御磁場もなくなり、反陽子砲も使用もできなくなり、沈黙してしまった。
「すごい…第10、第8、第11爆散、第3、第6は沈黙しました」歓喜の声上げる探査担当通信士
だが、艦橋の翔士達が驚くのは、まだ早かった。ユーリルは、爆風の余波利用して、回頭を通常より5秒速くすることができ、それによって、艦首に最後の第9をとらえることができた。それを予想したごとく、ユーリルは電磁投射砲を連射して、最後の第9を爆散させた。
機雷を発射してからわずか1分とかからないうちに敵の突撃艦の半分の6隻が沈黙したのであった。
「艦長、やりましたよ」大声を出してよろこぶ通信士ラムケーム
「そうね。あとは、沈黙している残り2艦にとどめをさせばいいわ」やっと安心するドゥニューク
「艦長、まってください。このまま、時空分離しましょう。理由は、敵の状況を見ると、ほうっておいても、時空消滅しそうです。それに、このままだと敵の艦の残骸が多すぎて、私達の艦が遅くなります。それなら、そのまま時空分離して、敵に残骸をもってもらって、少しでもこちらは軽くなりましょう。」ユーリル
「そうね。あなたの判断に任せるわ。航法士、時空分離しなさい」命令するドゥニューク
「了解。時空分離します」ダベーム
<プラネースカウ>が時空分離した5分後、敵の時空泡は一向に動くことなく、消滅した。ユーリルの予想通りとどめをささなくても、すでに敵の艦は時空泡を維持するので精一杯瀕死の状況だった。
「書記、監督、被害状況を教えて」ドゥニューク
「はい、凝集光砲、反陽子砲、姿勢制御の噴射口のいくつかは、破壊されていますが、艦の航行に大きな障害をもたらすものではありません。主機関も問題ないです。」ビュコック
「艦長、閉鎖された区画は7つですが、これはシュリル列翼翔士が安全のために指示したものが大半なので、実際の被害は4つというところです。さらに、今回、負傷者は10名でましたが、死者は一人もいません。まったく、あの状況で死者0というのは、すごいです。これを偉業といわなくて、なんというのですか、私にはわかりません。」死者が0ということに感動しているソスィエ
「シュリル列翼翔士、あなたのおかげ、本当に助かった。艦の全員の代表としてあなたに感謝します。」ドゥニューク
「艦長、私は翔士として当然の責務を果たしただけです。でも、一人も死者がでなかったというのは運が良かったと思います。それには、私は自信がなかったですから」と柔らかい微笑をするユーリル
「とにかく、帰ったら祝杯をあげよう。従士たちも生きていることの喜びを伝えなきゃな。それに、『黄金眼の天才児』の戦いぶりも従士たちに話さなくてはな」ビュコック
こうして、ユーリルの初陣は、突撃艦12隻をたった巡察艦1隻で、しかも死者がなしという星界軍史上でも奇蹟といもいえる戦果をあげたのであった。もちろん、その突撃艦に核融合弾がなかったという情報は、敵の弾薬もつきかけているという貴重な情報を意味して、それも偵察任務としての成果を上げるものだった。
そして、シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリルは、今回の武勲によって、星界軍では滅多にない二階級特進を果たし、前衛翔士に昇進した。
もっとも、これは、彼女を正式に先任砲術士にしたいという艦長のドゥニュークの意向が大きく作用したのは、いうまでもなかった。
前任の先任砲術士のキリューシュ前衛翔士は、ユーリルのもとでは働きたくないという意向で転属願いをすでに星界軍人事局に出していて、艦長のドゥニュークもそれを了承したので、<プラネースカウ>から、彼はすみやかに離任した。