とある管理外世界の紛争地域にて、その地域を守護する国防軍とテロリストらによる激しい戦闘が繰り広げられていた。
国防軍兵「怯むな、テロリスト共から我が国を守れ!!」
テロリスト「国王を引きずり出せ!俺達が正しい国を作るんだ!」
辺り一帯には無数の死体が散乱し、銃火器といった質量兵器の轟音が鳴り響き、赤・黄・緑など様々な色の魔力弾や砲撃が飛びかっている。
この世の地獄とも言えるその光景を、小さな転生者は離れた場所から静かに眺めていた。
その瞳は紅く、3つの勾玉が浮かび上がっている。
準一「こういった争いは無くならないものだな。依頼対象は捕捉できたか?テルティウム。」
テルティウム『相変わらずデバイス使いが荒いね、マスター。その程度、君でも簡単にこなせるだろう?』
紅の瞳を持つ転生者、長瀬準一は首から下げているペンダント型のデバイス〈テルティウム〉に語りかける。
準一「マスターのサポートをしてくれるのがデバイスだろう?まぁ、お前はその中でもだいぶ特殊なものだと思うが。」
テルティウム『君こそ、一般的な魔導師とはだいぶかけ離れていると思うけどね。対象は捕捉済みだよ。依頼主であるこの国の宰相が言っていた通り、彼がこのテロ集団をたきつけたんだろう。集団の後方でこの景色を楽しんでいるんじゃないかい?』
準一「集団の暴徒先導、殺人などを繰り返す次元犯罪者ギレン・キシリアか・・・。」
元々は依頼国が影で色々と利用していた犯罪者だったが、うまく手なづけることが出来ずに現在の状況に至る。管理局にギレンが捕らえられ、自分達の闇が露見するのを恐れ、奴の始末を依頼してきた。
俺は少し前から傭兵を中心に様々な戦場に身を置いている。実際の体はまだ小学生なので、魔法で大人の姿
になり、依頼を受けているが。
準一「テルティウム、セットアップ。」
テルティウム『セットアップ。』
デバイスの起動、バリアジャケット展開と共に準一の体が成人男性の姿に変わり、黒いフード付きのコートと目元が開いた白い面を着けた状態になった。
準一「いつも通り、神威〈カムイ〉で行く。」
そう言うと、瞳の模様が変化した。
準一「これより依頼を遂行する。」
すると両目の空間が渦を巻いて歪み、準一はまるで瞳に飲み込まれたかのように消えた。
ギレン「ふむ、国防軍は何とか持ち堪えているようだが、この私が戦列に加われば一気に崩れるな。どちらが飼い主か、徹底的に教えてやるとしよう。」
準一「それは無理だな。」
ギレン「!?」
ギレンが驚き、後ろを振り向くと、白い面を着けた黒フードの男がいつの間にか立っていた。
ギレン「ちぃっ!」
ギレンはすぐさま距離を取り、素早く魔力弾を5発つくり、発射するも・・・
ギレン「馬鹿な!すり抜けただと!?」
魔力弾は準一の体をすり抜けて、そのまま後方で爆発した。
準一「俺にそんなものは通用しない。悪いがお前にはここで消えてもらう。」
そう言うと準一はギレンの目を覗き込む、その瞬間ギレンの体が全く動かなくなった。
ギレン「何だっ・・・体がっ・・・!」
準一「金縛りの幻術だ。そして・・・千鳥。」
おびただしい数の鳥の地鳴きに似た音と共に、準一の右手に凄まじい雷が収束する。
準一「この光景は依頼主やいくつかの情報屋に映像を流している。悪いが、お前は俺の名を売るための礎となってもらう。(その前に・・・。)」
準一はギレンに〈写輪眼〉で催眠をかけ、念話で問う。
準一[長瀬湊(ナガセミナト)という名を知っているか?]
ギレン[・・・知らない・・・。]
準一は落胆するも表情に一切出さず、千鳥を纏う右手でギレンの首をはねた。
準一「今回も情報は無しか。」
俺が転生した先の家庭は両親と妹を合わせて4人暮らしだった。しかし、それも1年前までの話し。
ある出来事をきっかけに両親は死に、妹は行方不明、今は管理外世界の1つにある海鳴市という都市の叔父の家で暮らしている。といっても叔父はほとんど家に帰って来ないが。
傭兵まがいなことをしているのは、戦場の中にいたいというより、今は妹である長瀬湊の情報を集めるためというのが大きい。
幸い女神のおかげで能力には困っていない。必ず湊を見つけだす。
そしてこの頃から、戦場に突然現れは消え、あらゆるものをすり抜ける存在、「亡霊〈ファントム〉」の名が知られていくこととなる。