モンスターハンター 青熊好きのハンター   作:littlelock

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第一話


第一話

とある家にて、一人の少年が食事をしていた。

 

テーブルには色とりどりの料理が並んでいて、少年はそれらを笑顔でほうばっている。 その顔にはおいしい物を食べた事以外にも別の喜びが見えた。

 

 ある程度テーブルに上がっている料理を口にすると、頭にかぶっていた物をはずして少年は立ち上がり、棚に置いてある物を手に取り、またにへらっとほほ笑む。

 

 それは青く美しい毛皮だった。 毛皮を置いていた場所の隣には青い色のした甲殻や大きな骨なども置いてある。 おそらく大型モンスター、アオアシラからはぎとった物だろう。

 

 少年はハンターだった。 全身は青色が目立つアシラ装備を身につけていて、腰には片手剣のハンターカリンガがさげられている。

 

 手に取った毛皮を少年は見ているだけでは治まらず、撫でまわし、顔をうずめ、ほうずりをする。 その幸せそうな顔の理由は同業者でも理解出来ないだろう。

 

「……何しているの、ジュン兄?」

 

「っ!?」

 

 後ろから聞こえてきた声にジュン兄と呼ばれた少年が顔を真っ赤にして振り向くと、そこには少女がいた。

 

 あまり高くない身長に長く黒い髪を一つにゆわえていて、子供のような顔つきをしている。 三角巾とエプロンを身につけている姿はとても可愛らしい。

 

 その少女は子供のような顔に呆れを浮かばせながら口を開く。

 

「今の姿、家族である私でも受け入れられないなぁ」

 

「シイナ~、いるならいってよ……」

 

 ジュンにシイナと呼ばれた少女は、嘆息しながら手に持っていた料理の入っている皿をテーブルに置いて、イスに腰掛ける。

 

「いやだってさ、実の兄がリビングに今日狩ったモンスターの毛皮を飾っておくどころか、それにメロメロになっている姿を見たら声かけにくいよ……」

 

「ウッ」

 

 息をつまらせるジュン。 そして恥ずかしがるように呟く。

 

 

「アオアシラが可愛いのがいけないんだもん……」

 

 

 ハンターの、しかも男が吐くとは思えない言い訳に、シイナは顔を曇らせる。

 

「本当に男なのウチの兄貴は……」

 

 そう呟きながら、兄であるジュンを見る。

 

 シイナが見ている人物は、男らしいやかっこいいから対極にある姿をしていた。

 

 その姿を言葉にあらわすとしたら、おそらく(きれい、可愛らしい)だろう。

 

 シイナと同じくあまり高くない背に、肩にかかる長さの黒い髪。 子供のような顔つきをしていて、シイナに瓜二つだ。

 

 彼を知らない他人に「男の子と女の子どっちに見えますか?」と質問したら「女の子」と返すひとは少なくないだろう。

 

「いいじゃん別に男が可愛い物好きでもさ~」

 

「だからって女性用装備を身につけるのは絶対におかしいと思う」

 

 そう言いながらシイナはテーブルに置いてあるアシラヘルムを手に取る。

 

 それはでこの部分にゴツゴツとしたトゲが付いていて、ほうや首元をしっかり隠している男性用のアシラヘルム……ではなかった。

 

 それはアオアシラをかたどったようなヘルムで、固い甲殻も使われているはずなのにどこか軟らかいイメージがある。 防具より帽子に近いヘルムだ。

 

 確かにこれもアシラ装備だ。 ただし、女性用の。

 

「だって男性用装備あまり可愛くないし」

 

「だからってスカートっぽい装備を着る事にためらいはないの?」

 

 ジュンはアシラ装備を身につけている。

 

 もちろん、女性用である。

 

 防具というより服に近いデザインで、腰の防具はミニスカートにみえる。 これで性能は男性用装備と大差がないのだから不思議だ。

 

「似合ってるからいいじゃん」

 

「男としてのほこりは?」

 

「好きな事をつらぬく事が男らしいと思わない?」

 

「迷いなく言ったな。 ……もういいや。 どうぞ続けて」

 

 そうつげた瞬間、再び毛皮に没頭するジュン。今度は「ハチミツのにおい~」と言いながらにおいを嗅ぎ始める。 中性的な声と可愛らしい容姿とあってか気持ち悪さわ感じられず、むしろ微笑ましさすら感じる。 シイナも呆れたような、しかしどこか可愛らしいものを見るような目でジュンの横顔を眺めていた。

 

(何というか、こんなんでハンターの仕事やっていけてるのかなぁ)

 

 気苦労のたえない妹だった。

 

(あ、仕事といえば……)

 

「ジュン兄、この後、話があるから手短にね~?」

 

「はーい」

 

 ジュンは毛皮を枕にして寝転びながら答えた。

 

 

 □ □ □ □ 

 

 

「新しく出来た村から引っ越しの案内?」

 

 毛皮をある程度した事後、残った料理をつついていると、妹からそのような話題を持ち込まれた。

 

「うん。 今日ね、その村を立ち上げた村長さんがこの家に来てね、ぜひ私たちの村に来てほしいって」

 

 シイナはコップに入っている水を口に入れながら今日起こった事を話している。

 

「そりゃ何でまた?」

 

「んとね、理由は三つあるんだって。 まず一つ目は、若い人達に村へ居着いてほしいそうで」

 

 その村長は村の将来を考えて若い人達を積極的に誘っているのだという。

 

 大人達の力ももちろん必要だが、体力や記憶力、気力が良い若者がきてくれれば、村の開拓に役立ち、将来その若者が大人になった時、次の世代の人達を引っ張ってくれる。

 

 少し理想染みているが、村の未来を思っている事が伝わった。

 

 ジュンは今年で十五歳、シイナはその二つ下。年齢的には調度いいあたりだ。

 

「残り二つは?」

 

「まぁどっちも職業関係。 ジュン兄はハンターとして、私は雑貨屋としてその村に居着いてほしいんだって」

 

「……あぁ、そういえばシイナはそんな事してたね」

 

 雑貨屋。 ハンターが狩猟に必要な道具を売っているだけでなく、日常品も取り寄せているため、どの村にも必要とされている。

 

「確か近くの雑貨屋で働かせてもらっているんだっけ?」

 

「そ。 もうだいたいの商業の流れは学んだから、必要な物さえ揃っていればいつでも店を立ち上げられるよ」

 

(十三歳で随分と大人びた知識を)

 

 聞く所、シイナが通う雑貨屋は妹が来てからなかなか繁盛しているらしい。 もう自分より頭がいいのではっとジュンはここ最近じみに心配になっている。

 

「私としては収入が良くなりそうだから賛成だけど……ジュン兄はどうかな?」

 

「どうもなにもどこに引っ越すか分かんないのに……場所はどこらへんなの?」

 

「渓流やユクモ村の少し東辺りに、道が十字路に別れる場所があるでしょ? あそこに村を作ったんだって」

 

「あぁ、そういえば竜車の積み荷を護衛する途中で木の柵で囲った場所があったかも」

 

 竜車の進む通りにアオアシラが出現したと聞いて受けた護衛任務だったが、その途中で見かけた。 きっとあそこだろうとジュンはおもった。

 

 テーブルにある物をすべてたいらげて、イスに背を預けながらジュンは考え込む。

 

(渓流にもアオアシラが現れるから、引っ越したとしてもその問題は大丈夫。 だけどこの村の近くにもアオアシラが現れるし……)

 

「うーん」

 

 ジュンが悩んでいると、シイナが突然芝居かかったような声で話しかけてきた。

 

「あ、そうそう! その村って西には渓流があるでしょ? それで東の道には水没林があって、南の道には孤島に行くための港がある」

 

「? だからどうしたの?」

 

 首を傾げていると、シイナはわざとらしく肩をすくめる。

 

「分かんない? どの狩り場もジュン兄の大好きなモンスターが棲み処にする場所なの。 つまり、その村に引っ越せば三ヶ所のアオアシラとそうぐうする確率が高くなる!」

 

「!?」

 

「ハンターズギルドがそこに行ける許可を出してくれたらの話だけどね。 他にも北に進めば凍土にも行けるし、港を経由すれば砂原や火山にも行けたりするから、ジュン兄にとっても大変魅力のある話だと思うよ? まぁお返事は来週くらいまで待ってくれるって言ってたから、ゆっくり決め」

 

 

「何くっちゃべってんのシイナ、さっさと支度して!」

 

 

 シイナが話している間、ジュンはどこからか用意したふろしきに物を詰め込む作業を始めていた。 すでにこの部屋にある三分の二の物がふろしきにつめこまれている。

 

「だから急がなくてもってか早! うちのリビングって結構物であふれかえっているはずだけど!?」

 

 部屋がすっきりしたせいかシイナの声がよく響いた。 

 

「出発は来月になるらしいから、もし行くならご近所の人にあいさつしたりとか準備しておくといいって言ってたから、もうちょっとゆっくりしようよ」

 

そう諭すシイナはどこかしたり顔のような面をしていた。

 

「えぇ~、いっぱい会えると思ったのに……」

 

「別に行けなくなる訳じゃないのに。 でも賛成してくれてよかった。 んじゃ、明日にでも向こう先の村長さん話してこようよ。 来週までこの村の宿に泊まって色々見てまわるみたいだし?」

 

「りょーか~い、明日は予定いれないでおく」

 

ずいぶん片付けちゃったし、もうこのまま準備しちゃうねっとジュンは再びふろしきに物を積んでいく。 来月まで殺風景なリビングで食事をする事になりそうだなっと思うシイナだった。

 

 

 

 

 




つづく
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