モンスターハンター 青熊好きのハンター   作:littlelock

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第十二話


第十二話

「ちょ、待ってください!」

 

 ジャギィの群れに単身で突っ込もうと爆走するクラルをジュンは呼び止める。 特攻する気満々だった状態に水を差されたのか、クラルは少しむっとした表情でジュンに疑問を投げる。

 

「もー、なんで止めんのさ? 今ならあいつらを塵にするくらいの自信があるのに」

 

「その棍棒みたいな片手剣でどうやったらそんな状態にまで切り刻めれるんですか? て、そうじゃないや」

 

 そこで一度ジャギィの群れを横目で確かめ、ジュンは改めて止めた理由を話す。

 

「あいつらはまだ遠くにいます。 あの距離と速度ならこちらに接触するまであと数分はかかるはず。 その前に一度こちらも打ち合わせしときましょう」

 

「自由行動でいいんじゃない? あたしら出会ったのさっきなんだし、連携は難しいだろうしさ?」

 

 安直に提案するクラルだが、ジュンは困ったように首をひねりながら話す。

 

「それでもいいかもしれませんが、向こうは百体程で連携とって来ますよ? 百対一人と百対複数、どっちがいいですか?」

 

「うっ」

 

 クラルは言葉に詰まる。 小型とはいえモンスター百体分。 ボロスシリーズを着こんでいるとはいえ、まだハンターランクもキャリアも少ない自分一人では返り討ちにあうかもしれないと思ったからだ。

 

「それに」とジュンはつなげる。

 

「あんだけの数が一斉に動いているんです。 なんとなく親玉がいる気がしません?」

 

「親玉」と聞いた瞬間、クラルはにが虫を噛みつぶすような顔をする。

 

「えーと、マジ?」

 

「こっからじゃ見えませんが、そっちの方があの大群が動き出す説明が付きやすいと思いませんか?」

 

「いざとなったらドスジャギィとも戦わなきゃいけないって事かよー!」

 

 クラルは片手で頭を押さえ、うめき声を上げる。

 

「という事なので、どうです? 分散して個々で挑むより、協力して行動した方が安全じゃないですか?」

 

 クラルはしぶしぶ頷くしかない。

 

「それで、打ち合わせするって言うからには、何か案があったりする?」

 

「ありますよー。 けどその前に質問が」

 

 ジュンは一拍置いたあと、クラルに向かって問いかける。

 

「足の速さに自信がありますか?」

 

 

 

 □ □ □ □

 

 

 

 紫の波近づいてきて、一つ一つがどんどん輪郭を表していく。

 

 それらは横に細長い身体作りをしていて、背丈はあまりない。 しかし、引き締まった身体中の筋肉や、狩りをするために鍛えられた顎の力はバカには出来ない。 トゲの付いた尻尾や顔に宿したマフラーは成長した親玉の姿を思わせる形をしている。

 鳥竜種、ジャギィ。 彼らはそう命名されていた。

 

「うわー、爽快な眺めですねーある意味。 あんなに大群をなって動く所、始めて見ました」

 

 迫り来る脅威にも動じず、ジュンは目の前の光景に感嘆の声をもらす。

 

「あたしらあの中に突っ込んで行かなきゃいけないんだよね」

 

「まぁ何とかなるでしょ。 シイナ達……妹達に援軍を来させるよう頼んでおきましたし」

 

 シイナの名前が出た瞬間、クラルはある事を思い出す。

 

「ねぇ、妹さんが本人に聞いてくれって言われた事があるんだけど、ジュン君? ちゃんって男、女?」

 

 目の前の女性用のアシラシリーズを着こんだ少女顔のハンターに聞くと、少女顔のジュンは意地悪をするような笑みで返す。

 

「どっちに見えます?」

 

「女の子」

 

「答えは町に着いてから」

 

「おおー、それは頑張って生き残らないと」

 

 気合いを入れなおすクラルに、今度はジュンが質問する。

 

「どうして僕の名前を?」

 

「妹さんに聞いた」

 

「ああ、なるほど。 ちなみにあなたのお名前は?」

 

「まいねーむいずクラル」

 

「クラルさんですね、よろしくお願いします」

 

「ちょ、異国語で名乗ったのにふれてよー!」

 

 そう無駄話をしている間もジャギィの群れはどんどん近付いてきた。 そろそろ時間がない。

 

「んじゃ、手筈通りにお願いしますね」

 

「了解。 それじゃ、ぼちぼち行きますか!」

 

 そう話すと、二人のハンターは大群に突っ込んでいった。

 

 

 □ □ □ □

 

 

 

 

 紫色の波に向かって、ジュンとクラルは迎え撃つように近づいていく。 緊張しているのか、クラルの顔もちはこわばっていた。

 

 紫色の波の正体は鳥竜種、ジャギィ。 小型の肉食モンスターだ。

 

 理由は分からないが、それが百体ほどの数で群を成してジュン達が通っていた道を横切ろうとしている。

 

 このままジャギィ経ちが進み続ければジュン達はともかく、ジュンの妹であるシイナやアイルー達を狙いかねない。 それを避けるためにハンターであるジュンとクラルは動いていた。

 

 ジュン達の目的は二つ。 一つはジャギィの群れの注意を引き、その隙にシイナ達が乗車している竜車を安全な場所まで退避させる事。

 

 もう一つは、囮が済んだらシイナ達が呼び出してくれた援軍が来てくれるまで生き延びる事。 倒しきってしまうのが一番手っ取り早そうだが、ジュン達の装備や武器、アイテムだけでは長く戦い続けれないと判断し、無理に高望みをしない事になった。

 

 ジャギィとの距離はもうあと僅か。 すでに前方を走っているジャギィはジュン達を捉えたのか顔を高く上げ声を張り上げている。 仲間に不信な生き物を見つけた事を知らせているのだろう。

 

(何体かにはこちらの存在を気づかれちゃったみたいだけど、それでも向う側はあまり僕らに気づいていないはず……。 そろそろ使うか!)

 

 そう考えると、ジュンはクラルに声をかける。

 

「それじゃあクラルさん、打ち合わせ通りに!」

 

「了解だよジュン君! さあ、突っ込むぜー!」

 

 威勢よく答えるクラルを尻目に、ジュンはアイテムポーチからこぶし大のアイテムを取り出す。 それをジャギィ達の方に向かって放り投げた。

 

 それは放物線を描きながらジャギィ達の目の前で地面に落下し、弾ける。

 

 直後、放り投げたアイテムから白い煙がもうもうと立ち込める。

 

「ゥギャア!?」

 

「ギャア!?」

 

 その煙は風に乗ってみるみるうちにジャギィの群れを包み込む。 驚いたのかジャギィ達から驚愕の声が上がり始めた。

 

(いやー、まさかあのガラクタ達がこんな所で役に立つとは……)

 

 ジュンが投げた物はけむり玉と呼ばれるアイテムだ。 文字道理のアイテムで、こぶし大の素材玉でつくられた入れ物が割れるとツタの葉で作られたけむりがフィールド全体に充満し、モンスターの視界を阻害する事ができる。

 

 素材は前にジュン達兄妹が住んでいた村にいた先輩のハンターがくれたせんべつ(と言う名の余り物)で作った。 人生、どこで何が役に立つか分からない。

 

 そして、けむり玉のおかげで出来た隙を、ハンター達は見逃さない。

 

「よーし、突貫!」

 

 クラルの号令を皮切りに、ジュン達は煙に包まれたジャギィ達に攻撃を仕掛ける。

 

 ジュンとクラルは最初に片手剣をジャンプしながら抜刀し、そのまま斬りかかる武器出し攻撃を繰り出す。

 

「はぁっ!」

 

「せいっ!」

 

 ジャシュッ、ドスッ!

 

それぞれの気合いの声と共に、技がそれぞれ相対するジャギィ炸裂した。

 

「「アギャア!?」」

 

 攻撃をくらった二頭のジャギィは痛みにのけぞる。 小型のモンスターといえど一撃だけでは倒せない。 そしてもとより倒す気などジュン達には毛頭ない。

 

 ジュンは二、三撃の攻撃をつなげると前に転がり次のジャギィに斬りかかる。 少し攻撃を与えたら止まらずに前へ進み、目の前にいた別個体のジャギィに斬りかかった。

 

 クラルもジュンと同じように数回斬りかかると前に進む。 ただしジュンと違うのは、

 

「せあっ!」

 

 ドコッ!

 

「ギャア!?」

 

 クラルの攻撃が二、三回与えるとジャギィが放り投げられるように宙を舞った。

 

 宙から叩き付けられるように落ちて地面に戻ってきたジャギィは立ち上がる個体もいれば、

 

「グォォー……」

 

 低いうめき声を上げながら討伐された個体もいた。 ジュンとは違い与えるダメージが大きい。

 

 ジュンの力が不足している訳ではない。 これを可能にしたのはクラルの使用している武器、ドラグロメイスの力だ。

 

 クラルが装備しているボロスシリーズと同じ、ボルボロスから作られた片手剣。 ボルボロスの甲殻をふんだんに使われたそれはジュンの使うハンターカリンガの攻撃力や切れ味を上回る性能を有している。

 

 その代り普通の片手剣より扱いにくく、攻撃がうまく伝わらないなどの欠点もあるが、それをものともしないような活躍を見せていた。

 

 二人は攻撃を続けながら進み続ける。 斬りかかったジャギィの視界からすぐ消えるように動くため、ジャギィ達はハンターの動きを捉える事が出来ない。 結果的に一方的な先頭を繰り広げている。

 

 しかし斬りつけ進み続け群れの中間辺りまで来た時、二人はある相手を見つける。

 

 それはジャギィを少し大きくなったような体をしていた。 棘の生えた尻尾、背中から尻尾にかけて生えた毛、そして顔を覆うようにして生えているエリマキ。

 

 さっきまで戦っていたジャギィとはちがう雰囲気を持つ目の前の存在をジュン達は知っていた。

 

(ドスジャギィ……!)

 

 ジュンの予想通り、この群れには長が存在していた。

 

 ドスジャギィ。 ジャギィを束ねる群れの王者。

 

 ドスジャギィの存在を知り、この狩りがそう簡単に終わらない事を二人は思い知った。  

 

 

 

 

 

 

 

 




つづく
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