モンスターハンター 青熊好きのハンター   作:littlelock

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第二話


第二話

 引っ越しを決めてからあっという間に一カ月が過ぎた。

 

 準備も滞りなく進んだ。 あいさつや家の引き渡しの件など細かい事も終わらせ、もういつでも出発出来る状態となっている。

 

 出発は明日の夜が明け始めた時。 向こう先の村長が用意してくれたアプトノス達を使って移動する。 村長曰く村全員で送り出してくれるとの事だった。

 

 出発する前日の夜。

 

「こんな寂しい家で食事するとご飯まずくなる~」と家具も何もかも片づけた家での食事をジュンが嫌がって、二人はこの村での最後の食事を集会酒場で済ませることにした。

 

 酒場に着くと、なぜかこの村にいる住人のほとんどが揃っていた。

 

 酒場の中は色とりどりに飾られていて、多人数が座れるテーブルにはたくさんの料理と飲み物が並べられている。

 

 何事かと聞くと、どうやらジュン達を盛大に送り出してやろうとドッキリパーティを極秘にすすめていたらしい。

 

 料理をたくさん用意し、何も知らないジュン達が入って来ると同時にクラッカーと一緒に驚かしてやろうという企画だった。 

 

 そして後は呼び出すだけというタイミングでジュン達が来てしまったとの事。

 

 全員の手にはクラッカー(悪乗りなのか数名音爆弾)を握られている事から、本当に最終段階まで準備は完了していたようだ。

 

 みんなはドッキリに失敗したことに落胆していたが、ジュン達は素直によろこんだ。 食べ放題な上に無料なためだ。

 

 本当にいいのかと聞くと、「二人とも随分この村にいい事してくれたから」とこのパーティの企画者である村長が答えてくれた。

 

 シイナは雑貨屋としていつも懸命に働いている所を村人達は見守ってきたし、ジュンはアオアシラを狩る準備のついでと称して新人ハンター位しかやりたがらない採取クエストをいつも引き受けている事も同僚や村人に知られている。 村人は二人の事を本当に感謝していた。 

 

「では主役の二人も来た事だし……ドッキリは失敗してしまったが、改めて。 みんな、クラッカーの用意」

 

 村長の号令でクラッカー(自粛したのかもったいなかったのか音爆弾の姿はなかった)がいっせいにジュン達に頭を向ける。

 

「改めて……ジュンとシイナの旅立ちに、よーっ」

 

 パアァーッン!!

 

「「「「おめでとー!!」」」」

 

 ぱちぱちぱちぱち!!

 

 甲高い音と、村人達の声と、たくさんの拍手が聞こえる。 酒場に響きわたる。 もしかしたら村の端までとどいてるかもしれない。 そのくらいうるさかった。

 

(だけど、こう祝われると……、こう、なんというか……)

 

 シイナは既に涙を流している。 その涙を見て村人達はほほえんでいた。

 

 ジュンも泣きたかっただろうが、妹が泣いたからという変な理由で泣くのを我慢して、大きな声を出す。

 

「ありがとう! それじゃ、いただきまーす!!」

 

 

 

 

 そこからは普通の食事会だった。 目の前にある料理に舌鼓して、村の人達と話して、村人の芸を見て・・・・・・。 いつもどうりの姿。 しかし、最後だと思うと少しさみしいなとみんなの輪から少し離れた所で見守るジュン。

 

(引っ越し……早計すぎたかな?)

 

 村の人達と話しをするシイナの笑顔(自分が乗せられた事に気づいていない)を見ながらそう考えている時だった。

 

「大変だ~っ!」

 

 酒場の入口から息を切らした若い男が入ってきた。 相当急いできたのか、叫んだとたん地面に手をついてしまう。

 

「おい、大丈夫か!」

 

 近くにいた村人が彼に水の入ったコップをやり、落ち着かせようとする。 しかし男はそれを拒み、また叫ぶ。

 

「さっきこの村の近くにある狩り場を通って来たんだよ。 そしたらさ、居たんだよ、見たんだよ!」

 

 かなり混乱しているのか、なかなか内容の主核を話さない。

 

「なにがいたんだ」

 

 酒場はすっかり静まり返り、彼の次の言葉を待っている。

 

「まさか、大型モンスターがいたのか!!」

 

 男は頷く。 とたんに周りがさわぎはじめた。

 

「何がいたんだ!!」

 

 村人の恐怖心もあってか口調を強くした。 

 

「……ラ」

 

「ら?」

 

 聞こえないため、周りにいる村人達を静めてから聞き返すと、男は少し呼吸を置いて、話の核部分を話す。

 

 

 

「アオアシラ!アオアシラがいたんだよ!!」

 

 

 

 その時、酒場はさっきとは違う意味で静まり返った。 シイナを含めて何人かは青ざめてすらいる。

 

 別にアオアシラを恐れた訳ではない。 一般人からしたら確かに恐れるにたる大型モンスターだが、生憎この村には上位クエストをこなすハンターも何人かいる。たとえ今すぐここにアオアシラが来たとしても討伐ないし追い返す事くらい、たやすい事だろう。

 

 だが問題はそこではない。

 

 酒場にいる二人以外全員が同じ方向を見る。 その内の一人は先ほど入って来た若い男だ。

 

 そしてもう一人が……。

 

 シイナ達の視線の先には、

 

「……」

 

 無言で笑うジュンがいた。 ほうを少し赤く染め、肩がふるえている。

 

 ふいにジュンが立ち上がる。 そしてその足でギルドカウンターの席に座っているギルドマスターの方へ走っていく。

 

((((マズイッ!!))))

 

 シイナ達がそう思ったときには既にジュンはギルドマスターに話しかけていた。

 

「マスター!」

 

「……何だ?」

 

「依頼として、アオアシラのクエストを出していただけませんか!?」

 

 

 予想出来た。 アオアシラが出現したと聞いた時には既にシイナを含め村人達全員がこの光景を予想出来た。

 

 村人達は、ジュンのアオアシラへの心酔を既に知っている。 そうでなければ女性用装備を身に付けた男ハンターと平気で食事が出来るわけがない。

 

 ジュンがマスターに話しかけた時、シイナ達は遅れてギルドカウンターに詰め寄る。 無駄な抵抗をする為だ。

 

「ジュン兄、駄目だって!」「明日引っ越しなんだよ!?」「出発時間に遅れたらどうする!」「今日は我慢しよう!? な、な?」「あっ、なんか俺今アオアシラを狩りたい気分!」「そういえば私アオアシラの素材の何かが必要だったような!?」「僕今音爆弾持ってる! さっさと倒してくるよ!!」

 

 他、割愛。

 

 しかし、なんとかやめさせようとしているシイナ達はもう分かっている。 先程も記述したように「無駄な抵抗」だと。

 

 あれやこれやと騒ぐ中、ふいにジュンがシイナ達の方に顔を振り向ける。

 

 目に妹泣いている時も流さなかった涙を浮かべながら、今度はほうだけでなく顔全体を少し赤く染め、口をへの字にまげている。

 

 その顔でジュンがシイナ達に声をかける。

 

「……どうして……行かせてくれないの?」

 

 泣きだす数秒前というような顔を見たシイナ達は口調を弱めていき、きまずそうに顔を背ける。

 

 昔から村の住人達はジュンの泣き顔に弱かった。 いつもいい子にしていたジュンの涙をこらえるような顔は、自分達が悪い事をしているような気分にさせたのだ。

 

「……マスター……」

 

 シイナ達が押し黙ってしまったため、ジュンは再びギルドマスターに話しかける。 泣きそうな顔をそのままに。

 

 ギルドマスターもこの顔にやられたのか困ったように目をそらす。

 

 そして、おずおずと口を開く。

 

「……まだ被害が報告されていない以上、依頼はだせん。 作る手続きにも時間がかかるし、そうしている間にどこかへ移動するかもしれないからな」

 

 そう告げた瞬間、ジュンからどんよりとした暗い雰囲気が醸し出された。 頭を下に向けているのでシイナ達からは顔を見れないが、本当に泣きかけているのかもしれない。

 

 シイナ達はさっきとは一転して何とかしてあげたいと思った。 

 

 ギルドマスターも同じなのか、ジュンに一枚の紙を渡す。

 

「だから、これを受けるといい」

 

「?」

 

 泣きそうな顔をこらえながら紙を受け取り目を通す。

 

 それはクエストの内容が書かれている紙だった。

 

 内容は、特産キノコを二十個集めるという内容もの。

 

 意味が分からないという顔をしているジュンに、ギルドマスターは説明する。

 

「そのクエストの制限時間は狩猟場までの移動時間も含めて九時間だ。 取り終わって余った時間で狩猟を行うといい。 あまり時間がないが、討伐出来なくても戦えば満足出来るだろう。」

 

「!! ……マスター」

 

 まだ涙を浮かべながらも笑顔を取り戻すジュン。 周りにいるシイナ達もほっとしている。

 

「あぁ、んじゃ俺達もつれていけよ。 変わりに特産キノコ集めておくから」

 

「あなたは自分の狩りに集中して」

 

「たまにやらないと採取の腕なまっちゃいそうだしね」

 

「本当ですか!」

 

 他の先輩ハンター達の願ってもない申し出に喜ぶジュン。

 

「あ……でも……」

 

「大丈夫だ、お前の狩猟に手は出さねえよ」

 

「はい、すみません」

 

 そこだけジュンはゆずれなかった。 自分の力で勝たなければ意味がないと思ったからだ。

 

「よし、それじゃあ支度するぞ、無駄話で時間が無くなるのはおしい」

 

「あの、それなんですけど先輩。 ちょっと……」

 

 ジュンは他の先輩ハンター達とまるくなって自分の作戦とまでは言わないが思いついた事を話す。 

 

 先輩ハンター達は少なからず驚いていた。

 

 

 

 

 

「まったくジュン兄は……」

 

「ごめんねシイナ」

 

 場所は変わって村の門。

 

 竜車を引っ張るアプトノス達の調整の間をぬって兄妹で話している。

 

「何で我慢ができないのかなぁ?」

 

「大好きだから」

 

「理由になってないよ……」

 

「そろそろ出発するぞ、もうすぐ日の出までの時間が九時間をきる」

 

 星の位置を確認した先輩ハンターが忠告してくる。

 

「は~い。 じゃ、行ってくるね」

 

「まあ心配はないと思うけど……気をつけて」

 

「イエッサー!」

 

 そう言って竜車に乗り込む。 先輩ハンター達も乗り込み準備は整った。

 

「では、しゅっぱつ~!」

 

 ジュンは叫ぶと同時に指示を出してアプトノスを前に動かすのだった。

 

 

 

 

  

 

 




つづく
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