モンスターハンター 青熊好きのハンター 作:littlelock
(残り時間3時間45分)
「引っ張るぞ―、せーの」
アオアシラを狩猟したジュンは先輩ハンター達を呼び出して、アオアシラを竜車に乗せる作業に取り掛かる。 竜車の荷台に引っ張り乗せ、亡骸を紐で荷車に括りつけた。
「よーし、乗ったな。 そんじゃ、出発!」
先輩ハンターの掛け声を元に、竜車をけん引するアプトノスが歩きだす。 それにつられてけん引される竜車も進みだした。
「やっぱり最初みたいに速度は出ないか。 だけど、時間的に問題なさそうですね」
「まあ、お前が早めに倒してくれたからな」
3時間以内の狩りを大幅に1時間早く終える事が出来たため、いまは余裕をもって移動している。 最初にここへ来る時の速度に比べたら大幅に落ちているが、この調子なら余裕で間に合うだろう。
「しかしまぁ、よくこんな早くアオアシラを討伐出来たな。 俺らでももう少しかかると思うぞ? しかもその武器で……。 もしかして、やっと強化に乗り出したか?」
先輩ハンターはそう褒めながらジュンの後腰にさげられているハンターカリンガをまじまじと見る。
ハンターカリンガは初心者のハンターでも扱いやすく、手に入れやすい素材で出来る武器だ。 素材から取ってこなくても武器屋で完成品を売られている事も多く、片手剣使いならこの武器を使った者もけして少なくない。
しかし、扱いやすい分キレ味や武器そのものの威力はかなり低い。 そのため大型モンスターの狩猟には向かないとは言わないまでも、狩猟がかなり長引いてしまう事が多い。 そのため、すぐ武器強化をしてしまうハンターも多く、ハンターカリンガとして使い続けるハンターはあまりいない。
だがジュンはその武器を使って先輩ハンターの予想を超える好タイムで狩猟を終わらせた。 そのため、先輩はジュンが武器強化をしたからここまで早かったのではと考えた。
しかしジュンは苦笑を浮かべながら否定する。
「いやいや、これは僕がハンターになってから3年間使い続けているハンターカリンガで間違いないですよ」
「まじでか。 んじゃなんでこんな早く?」
疑問を投げかけて来る先輩ハンター。
ジュンは3年前、12歳で訓練所を卒業しハンターになった。 ハンターカリンガはその時に村全員でお金を出し合い、ハンターになった祝いとしてジュンにプレゼントした物だ。
しかしジュンはそこからハンターランクをあまり上げようとせず、武器も強化して来なかった。 そんなジュンがどうしてここまで早く狩猟を終わらせる事が出来たのか先輩ハンターは気になってしょうがなかった。
他の先輩達もいつの間にかジュン達の話に耳を傾けていた。
その問いにジュンは自信満々に答える。
「僕だって伊達にアオアシラの狩猟を中心に活動してませんよ? あいつの弱点や攻撃してくるタイミングくらい把握してます」
謙遜がないその返しに先輩ハンター達は少し驚いたような顔を見せた。 しかしすぐに「なるほど」と納得したような顔を見せる。
ハンターランクを上げていないから、武器を強化していないからと言ってジュンはさぼっていた訳ではない。 ただジュンは好きな事に一生懸命なだけ。 それを知っていたから納得したのだろう。
先輩ハンター達が納得している中「あ、でも」と話をつなげてくるジュン。
「今日初めて分かった事もありますよ。 毒投げナイフで2回目の毒状態に追い込むには3本必要だって」
「ああ、そうかそうか。 収穫があったんなら、来てよかったな」
「はい! でも、無茶言ってすみませんでした」
「いいよ。 もう慣れたし、これで最後だからな」
そう言った顔には、嬉しいような寂しいような、そんな顔をしていた。
「そうですね……、あの、改めてですけど、今までありがとうございました」
先輩ハンター達も「おう」と返してくれた。
「でも、これでしばらく顔合わせられなくなるわね」
女性の先輩ハンターは苦笑しながら答える。
「向こう行ったら何するんだい?」
もう一人の男の先輩ハンターが質問してきた。
「そうですね……。 とりあえず、いままでとあまり変わらないと思います。 アオアシラを狩ったり、採取したりとか」
「そうか……あのな、ジュン」
「はい」
急にまじめな顔つきと声になったため、笑顔を引っ込めるジュン。
「お前とさ、たまに一緒に狩りへ行く事あっただろう? その中で、クルペッコ狩りに行った事があったじゃん」
「ああ、ありましたねそんなの」
クルペッコとは、鳥竜種に分類される大型モンスターだ。 両羽先に付いた火打石を打ちあわせて炎をぶつけてきたり、気持ち悪い汚吐物を吐いたり、あげくには声真似で別のモンスターを呼び出したりといろいろとやっかいな攻撃をしてくる。
ジュンはその時先輩ハンターに、「もしかしたらアオアシラを呼ぶかもしれないし、アオアシラがいなくてもクルペッコから鳴き袋が採れるから、損はないはず」と言われついて行ったのだ。 まあ、アオアシラは現れない上に鳴き袋も手に入らなかったらしいのだが。
「その時感じたんだけどさ、お前ハンターとしてのセンスあるって思ったんだよ」
「はぁ」
「戸惑ってたの最初だけで、その後はばしばし攻撃決めてたじゃん」
「……よく覚えてません」
本当に思い出せない。 ただ、強敵を前に必死だったのは覚えていた。
「何が言いたいって言うとさ。 お前、もっと広い世界見てもいいと思うぞ。 せっかくのハンターなんだ。 もっと遠い知らない場所だって行ける」
それは、先輩ハンター達だけでなく妹や村人全員が思っていた事。 アオアシラに全てを捧げるのではなく、もっといろいろな事を知ってほしい。 村の住民全員でそう願っていた。
「広い世界……?」
そう言われてもあまり実感がない。 今のままでも十分に充実している。 それなのに広い世界へ何を求めろと?
「まあ難しく考えんな、これから見ていけばいい」
そう言われて、この話題は打ち切りになった。
つづく