サムソン・ボルジュ=ティルサル・ティルースは、久々にバースロイルで戦友だった従士達との酒を楽しんでいた。
「いやぁ、貴族の家臣というのがこんなに大変だとは思わなかったよ。これなら、まだ、突撃艦の監督をやっていたときの方がよかったな。バルサは、今、フリーコヴにいると聞いたけど、調子はどうだい?」ほろ酔い加減でいい気分のサムソン
「サムソン監督、今、そのフリーコヴで従士長をやっているのですが、上官のグリンシア監督がねぇ…。優秀なのはわかるんですけど、堅物でね。ちょっと、息苦しいのが現状ですよ。こんなことなら、若くて美人の家臣がいるハイド伯爵の家臣もいいかな。ねぇ、パーヴェリア従士長」
「この帝都城館では、若い娘ばかりだが、上司は子供だぞ。あそこにいるアーヴの美少女がここの管理者だ。子供の使いをお前さんはやりたいのかい?」そういって、ミルフィーユを指差すパーヴェリア
「いや、ごめん、こうむります。やはり、翔士になるまでは、頑張りますよ。そうすれば、老いない子供を育てられる。しかも、美人のね。俺は、アーヴの美人の娘を3人育てるのが夢なんです。それまで、なんとか、頑張りますよ」酒の心地よい酔いに浸って言うバルサ
「まぁ、頑張れよ。生き残れば、お前さんならすぐに翔士になれるだろうよ。…うん。あれは、アストリュア千翔長だな。声をかけているのは…ビボース兄弟の一人、どっちかはわからないが」従士たちとの話も一段落して、ふと周りを見まわすサムソン
「監督、アトスリュア千翔長とビボース兄弟の片割れですか?面白そうですね。ちょっと、眺めていますか?」すっかり、傍観者のパーヴェリア
すると、サムソンは、何か悪巧みを思いついたらしく、クリューノのでソバーシュを呼び出した。
「サムソン監督。どうしたんだい?」
「いや、ちょっと、ご報告と思って、呼びました。ソバーシュ百翔長、あなたの親愛なる直々の上司が今、ビボースの狂気にさらされようとしています。これは、先任参謀をつとめる忠実なる部下としては、助けに行くべきですぜ」と大げさに言うサムソン
「サムソン監督、そんな冗談を言うために連絡したのかい?……それに、あのご婦人はビボースの狂気くらいで、どうにかなる相手ではないよ。でも、まぁ。上司である男爵閣下の社交界の場で眺めるのいいかもな。場所を教えてくれないかい。見に行くよ。」
一方、サムソンとソバーシュが話していた張本人のアトスリュアは、ビボースとの会話をそれなりに楽しんでいた。
「閣下、はじめまして。ビボース・アロン=ネレム・公子・ネフェーです。一応、星界軍では、千翔長をやっています。」男爵の頭環を持つロイに話しかけるネフェー
「初めまして。私は、アトスリュア・スーニュ=アトス・フェブダーシュ男爵・ロイです。あなたのことは、知っています。幻炎作戦のアプティック防衛艦隊に私は所属していたので、顔と噂くらいは、聞いていました。ビボース兄弟のほうで、常識的な方と聞いていました。」不敵な笑みを浮かべるアトスリュア
「ネレースと比べられて、常識的といわれても嬉しいとは思えないですけどね。でも、あの艦隊にいたとは、驚きました。ところで、この祝宴に来たのはどうしてですか?」林檎酒を片手に優雅に話すネフェー
「ええ、まぁ、色々と我がフェブダーシュ家とハイド伯爵家は因縁がありましてね。兄である前男爵のクロワールがハイド伯爵閣下と王女殿下の任務の妨害ばかりか、抹殺をしかけてね。逆に返り討ちにあって、私がこの家を継いだというのもあります。まったく、兄の性格がそこまで、歪んでいるとは思っていなかったですけどね。」唇をかみ締めながら言うアトスリュア
「男爵閣下。それだと、ここには、絶対に招待されないと思いますけど、どうして、招待されたのですか?」アトスリュアの話に興味が向くネフェー
「まぁ、色々あったの。たぶん、あれは、歴史浅きフェブダーシュ男爵家でも後世に語り継がれる事件だわ。でも、そのときにたまたま兄によって監禁されていた父とハイド伯爵閣下が命からがらの脱出劇を演じでね。それで、友人になったの。この帝都城館も父が設計と建設の指揮をとったのだから、当然、私も来なくては、いけないでしょう。それに、ハイド伯爵閣下は、私の戦隊の部下でもあるしね。」といつもの気品に満ちた笑顔を浮かべるアトスリュア
「たまたま、父親を監禁していたのですか?これは、あなたの兄君は、狂気に満ちていたのでしょうね」とネフェーは自分の一族のことをたなに上げて判断した。
「あら、ビボース一族の方々からそんなことを言われるとは兄も光栄でしょうね」と皮肉っぽく反撃するアトスリュア
「まぁ、その話も興味深いですが、せっかく、男爵閣下とはお会いになったのですし、ここは、じっくりと、話しましょう。」そういって、会場の所々に置いてある休憩用のソファーに誘うネフェー
「そうね。確かに、ビボースと話すのも今後の社交界での経験になりそうね。少しは、華やかな狂気でも体験してみるわ」と不敵に笑うアトスリュア
「僕自身は、狂気なんてもっていないですよ。閣下。さてと、まず、そのフェブダーシュ男爵事件とやらを教えて欲しいです。なにしろ、我が一族でもパリューニュ子爵殿下とハイド伯爵閣下の冒険談は、有名でね。興味もありますし、もちろん、閣下個人についてもおおいにありますが」そういって、熱い眼差しをアトスリュアに向けるネフェー
「ふーん、そういことね。ビボース千翔長。(恋多き男の本領発揮というわけね。楽しみだわ)」
「男爵閣下、千翔長ではなく、ネフェーと読んでくれませんか。お願いします。」優雅に頭を下げ、要求するネフェー
「いいわよ。ネフェー。では、私もロイといっていいわ。かくいう私も閣下と呼ばれることにはなれていなくてね。まぁ、どこかの貴族と同じような気持ちね」そういって、遠くにいるジントをちらりと見るアトスリュア
「そうなのですか。ところで、ロイは、戦場では、恋愛より軍務を優先したいタイプですか?」
特別製の蒸留酒を飲みながらネフェーは言った。
「軍務を?……そうね。別にそんなわけではないわ。もっとも、命にかかわる状況だったら、そんなことを考えている訳にはいかないけど、暇を持て余すときに、それが多少あってもいいかもね。でも、どうして、そんなことを聞くの?」ネフェーの真意を察していたが、あえて聞くアトスリュア
「それなら、もし、退屈なときにこのビボース・アロン=ネレム・公子・ネフェーの恋の火遊びのお相手をしてくださいませんか。」と慇懃な態度で手を差し出すネフェー
「あら、私を求めているの?そうね……やっぱり、辞めておくわ。上司と恋愛するのは、苦労するのは目に見えているから。それに、他に気になる人もいるしね。」と微笑むアトスリュア
「そうですか?残念です。でも、もし、その気になる人とやらに相手をされなかったら、まぁ、ニ番手候補としても考えてはどうですか?」となおも食い下がるネフェー
「そうね……」
アトスリュアがその答えを言いかけた瞬間、ネフェーとロイの元にネレースがやってきた。
「ネフェー、探したぞ。あれ、これは、お邪魔だったかな。」と悪びれもせず、ネフェーの隣にどっかりと座るネレース
「ネレース。邪魔だ。そんなわかりきったことを言うのは、相変わらず常識が無いな。」同じ顔の双子に文句を言うネフェー
「まぁ、いいじゃないか。私もこの祝宴を楽しみたいんだ。では、男爵閣下、はじめまして、ビボース・アロン=ネレム・公子・ネレースです。一応、星界軍では提督の身分で借り染めの伯爵位を持っていますが、気楽にネレースと呼んでいただけたいです」とネフェーにかまわず、自己紹介するネレース
「ええ、いいわ。ネレース。私は、アトスリュア・スーニュ=アトス・フェブダーシュ男爵・ロイです。さき程もネフェーに話したけど、私は幻炎作戦のとき、アプティック防衛艦隊にいたわ。まぁ、あのときは、突撃隊司令だったけどね。」この状況を戸惑いながら楽しむアトスリュア
「そうか。じゃぁ、一応、大きな意味では同じ戦場を戦った戦友になるわけだ。ロイ。あのときは、苦労したからな」珍しく覚えているネレース
「ネレース、お前はあのとき、旗艦が戦闘中でありながら湯浴みに入ったではないか。本当に非常識な兄弟を持ったと思ったよ。そう思はない?ロイ」と含み笑いをするネフェー
「あら、本当ね。でも、面白いわ。その常識的でないネレースの話も聞いてみないわ。」
「心外だな。ネフェー。疲労をとるための手段に入っただけだ。」ネレース
こうして、ビボース兄弟の二人とアトスリュアは、それぞれの感覚で会話を楽しんでいた。
一方、祝宴の主役であるジントは、来賓の挨拶が一通り終わったので、ほっとして、ひときわ大きなソファーに座って、落ちついていた。
「ふー、やっと終わった。意外ときついな。こういうのは、いつになったら、慣れるのかな。降伏の式典とかあったけど、あのときは、ラフィールが一応主役だったし、式典の主役というのがこうも疲れるとは思わなかった。」独り言を言いながらジントは、林檎酒を持っていた。
「わが君、お疲れですね。冷たいスルグーはいかがです?」
ジントの様子を見守っていたミカエルが硝子杯に入った飲み物を持ってきた。
「ああ、ありがとう…。あのう、どうして、わが君というんだい?昨日まではハイド伯爵閣下だったけど。」その称号に戸惑うジント
「それは、昨日、サムソン家宰とミルフィーユちゃんが話し合って、家臣はわが君と言うことに決めたの。閣下という称号は、他の所でも言われるのですし、家臣ならではの呼び方がいいということになって、もし、それが嫌ならもう一つの候補であった『ご主人様』はどうですか?」とまぶしい笑顔で話すミカエル
見た目は地上人の絶世の美女のミカエルたちから『ご主人様』という風に呼ばれることをジントは、なぜか、よからぬ妄想をかりたてられそうになり、その称号は断り、わが君に結局落ちついた。
「(まったく、クゥ・ドゥリンにこの状況を見せてやりたいよ。外から見れば、後宮計画に見えるぞってね。そうだ、彼女達に囲まれた写真映像を今度、彼に送ってやろう。どんな返事が返ってくるか楽しみだ)」と悪巧みを考えるジント
ジントとミカエルがそんな風に話しているとふいに、エクリュアがジントの元へ来た。
「閣下、おめでとう。」とどきつい混合酒の杯をかざすエクリュア
「ああ、ありがとう。ところで、君がこの祝宴に興味を持っているとは、驚いた。そういうに関心がないと思っていたから。」
「あなたに会いたかったから………と言ったら嬉しい?」とジントの顔を無表情ながら凝視するエクリュア
「ああ、嬉しいよ。」と曖昧の笑顔でごまかすジント
「ところで、猫……ディアーホはどこ?」と本来の目的を言うエクリュア
「ああ、そういうことね。たぶん、猫用の部屋があるから、そこにいると思うけど、ここに連れてきて欲しいのかい?」ようやく、エクリュアの目的を理解するジント
「そう。お願い。」と珍しく熱意のある瞳でジントを見るエクリュア
「わかりました。わが君、私がつれていきます。」その場の流れを感じて、迅速に対処するミカエル
ほどなくして、ミカエルはディアーホの猫籠を持ってきた。
「ディアーホ、君の戦友が来たよ。あのときは、かなり、世話になったんだ。挨拶しなければな」と猫籠を開けて、ディアーホ抱いて、エクリュアに渡すジント
「ありがと。ディアーホ、久しぶり、ちょっと、太ったかな。まぁ、いい。」そういって、早速猫をあやすエクリュア
その夢中にディアーホをあやす姿を見て、ジントは、この場に自分は場違いだと感じ、エクリュアからそっと離れた。
ジントがエクリュアとディアーホから離れた頃、スポールとクファディスは、ユーリルを見つけて、話しかけていた。
「初めまして、スポール・アロン=セクパト・レトパーニュ大公爵・ペネージュよ。あなたが噂の『黄金眼の天才児』のシュリル前衛翔士ね。」と紅の唇を不敵に歪ませるスポール
「はい。初めまして。大公爵閣下。シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリル前衛翔士ですが、その称号はあまり、好きではないです。」金色の瞳でスポールをまっすぐ見つめるユーリル
「あら、どうして?そのような名誉な称号を持つ翔士なんて、滅多にいないのでは?」不審に思うスポール
「天才というと、与えられた能力ばかりを重視していて、私の努力を認めていない様に感じるのです。それに、今の自分のレベルに満足しているわけではありません。世の中にはもっと、すごい人はいますから。」真剣な表情で言うユーリル
「そうなのね。まぁ、称号というのは他人がつけるものですから、自分でなんとかするものではないのでしょう。ああ、そういえば、クファディス参謀長の紹介を忘れていたわね。彼が私の参謀長をしているの」とクファディスを紹介するスポール
「はい。閣下。シュリル前衛翔士、はじめまして。クファディス・ウェフ=ウェスピール・セスピー。星界軍では千翔長である。よろしく。」星界軍式の敬礼をするクファディス
「はい、閣下。よろしくお願いします。ところで、気になったのですけど、どうして、星界軍ではレトパーニュ大公爵閣下の参謀長であるのは、わかるのですが、このような私的な祝宴までもクファディス閣下は、大公爵閣下と一緒にいるのですか?まさか、個人的にもお二人は関係あるのですか?」二人の関係を疑うユーリル
「いえ、たまたまです。シュリル前衛翔士。ハイド伯爵閣下には、好感を持っているので、ぜひ、きたいと思ったのです。大公爵閣下も同様で、それで一緒に来たというわけです。」なぜか、あせるクファディス
「そうなのですか、わかりました。ところで、大公爵閣下、どうして、私に会いに来たのですか?私には、閣下のような身分の高い方に会いたいと思われる理由など思いつかないのですが」と慎重に探るように聞くユーリル
「あら、別に身分は関係ないわ。面白い方なら、ぜひ、話したいの。あなたの兄に会ったとき、とても驚かされた。陛下の想人という面だけではなくてね。」紅の唇に不敵な微笑をするスポール
「そうなのですか。なら、大公爵閣下にもわかったと思いますが、兄の恐ろしさを。あの兄が身近にいるのです。自分の実力のなさを兄と比較するたび、痛感します。」困った風に言うユーリル
「それは、翔士としての実力なのか?とても、信じられないのだが。思考結晶から取り出した君の成績は抜群だよ。これを上回ることができるなんて、とても思えないけどな」クファディスはデータを見ながら判断した。
「ええ、ほとんどの面で翔士としては、兄に負けますわ。でも、艦隊の戦術や戦略については、兄に勝てます。この点では、今まで、誰にも負けたことはありませんわ。クファディス閣下。」自信に満ち溢れた笑みを浮かべるユーリル
「そうなのか。…艦隊の戦術…。そういえば、50年に1度行われる星界軍主催の艦隊戦術シュミレーション決戦大会『至高』が最近あったな。それにも、シュリル前衛翔士は出ていたような気がする」そういって、再び、思考結晶網につないで、データを出すクファディス
「あら、艦隊の戦術や戦略ね。どの程度なのかしら。まぁ、今の位階では、その力を発揮するのは無理だと思うけど、1回、あなたと対決してみても面白そうね。」スポール
「スポール閣下、それは、やめた方がいいと思われます。このデータを見てください。」そういって、クリューノでデータを送るクファディス
「あら、どうしたの?とりあえず、見てみるわ……。これは、『至高』のシュリル前衛翔士の出場記録……。全勝優勝。……」
その情報を見てスポールらしからぬ動揺をした
星界軍主催の艦隊戦術シュミレーション大会『至高』はすでに、10回の歴史があり、今回は戦争中であったが、10回目の記念大会として、かなりの星界軍の中で名だたる名将といわれている人物がそろっていた。前の大戦では、『鬼人』と言われた前レトパーニュ大公爵のアセーヌ、『悪運の堕天使』といわれたビボース一族の長スカーボール大公爵、現役では、ケネーシュ星界軍元帥、トライフ大提督などがいた。そして、何より前回の優勝者であり、今回の大本命のファラムンシュ軍令局長官も参加していた。彼は、皇帝のラマージュと共に戦争に参加していたとき、芸術的な用兵をして、その強さに、アブリアルやスポール一族の両方からも一目置かれていた存在だった。
そして、この大会は、8人の総当りで行われて、その成績で順位が決定していた。この大会では飛翔科修技館の訓練生も1名だけ枠があり、そのときの1番優秀な訓練生が参加していたが、前の9大会全て、最下位というのが普通で、数あわせと、将来の有望な翔士の卵に痛い経験をさせて、よりいっそうの成長を期待するというのが目的だった。
さらに、この大会では全勝優勝したのはいまだにいなかった。その1番大きな要因は、様々な特徴を持つ戦術家がいるために、対戦相手によって、千差万別の方法をとらなくてならなく、しかも、この対戦したときの情報はすべて、公開されるために一度行った戦術は2度と使えるはずも無く、結果として選択肢がせばまり、思わぬ失敗をしたりして、レベルの高い参加者にそこをつけこまれて、負けるというパターンが数多くあった。
「お母様だけではなく、スカーボール大公爵にも勝ったの。本当に兄弟そろっていやらしい方たちね」と小指をかみしめるスポール
「本当に信じられないな。どうして、これだけの相手に勝ちつづけたか教えてもらいたいな。特にケネーシュ星界軍元帥とは一度、私もお手合わせしたけど、とても歯が立たなかった。」このときの試合内容が気になるクファディス
「クファディス閣下、わかりました。なら、そのときの内容を詳しく話しますわ。」そういって、ユーリルもクリューノを操作してデータを取り出した。
「あら、あたくしも、気になるわ。特にお母様とスカーボール大公爵との内容が聞きたいわ。あの二人はあたくしにとって、天敵みたいな戦術をとるから、苦手だったのよ」と腕を組みながら考え込むスポール
こうして、スポールとクファディスとユーリルは、戦術や戦略についての論議に盛りあがり、しばらく続いたのであった。
◎登場人物紹介その2
パーヴェリュア。ハイド伯爵家家臣。もと軍匠科従士長。地上世界出身者で本名はアントン・パーヴロヴィチ・フセイノフ。パーヴェリュアという名前は星界軍に入る際にアーヴ風の名前に改名する必要があると誤解してつけたもの。優秀なエンジニアで、反応炉が専門。決断が遅い傾向がある。帝国暦955年に軍匠従士長として突撃艦バースロイルに着任。帝国暦956年に星界軍を退役。ハイド伯爵家家臣となる。サムソンとはバースロイルに配属される以前からの付き合いで、慕っている。バースロイルに配属されるときはサムソンに部下として呼んでくれるよう頼んでいたし、伯爵家の家臣となったのも、サムソンと働きたかったのが主な理由だった。また、サムソンが士族になるべきかどうかで悩んでいたときに、身分なんて服みたいなものだから自由に着替えればいいと助言した。アプティック門防衛戦の際に負傷して爆発寸前の艦に取り残されるが、自力で救命ポッドを発射させて脱出した。助けに来たジントに無駄足を踏ませたことになるが、結果としてジントとラフィールの絆を深めるのに一役買っている。
フェグダクペ・セールナイ。セールナイ商会会長。フリーザ伯国出身の女性。アーヴ語に訛りがあり「音楽的」と評される。真空作業の免許を持っているが、真空溶接は苦手。幼い頃から国民になることが夢だったが、軍人になる気はなくフェブダーシュ男爵クロワールの家臣となった。クロワールのもとで教育を受け真空作業の免許を取得、燃料槽の整備点検を担当していた。帝国暦952年、男爵領におけるラフィールの反乱に加担。クロワールの死後、グレーダ、アルサとともに帝都でセールナイ商会を立ち上げ、会長となる。帝国暦956年、ラフィールの紹介によりハイド伯国に向かう。男爵領における反乱の際は最初にラフィールに味方した。もともとアーヴに対する強い憧憬があり、この時の体験と相まって以降ラフィールを崇拝するようになる。原作ではサムソンが推察しただけだが、アニメ版『星界の戦旗III』においては本当に王女親衛隊結成を企てた。また、セールナイ商会設立資金はクリューヴ王家からの援助によるもの。ジントの臨時秘書を務めた際に才能があると評された。
アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ前男爵(リューフ・レカ・フェブダク)・スルーフ。第二代フェブダーシュ男爵。クロワールとロイの父親。晒したような白髪、白い眉、がっちりした体格をしている。遺伝形質は地上人のものだが地上世界の出身ではない(母が従士の時にラクファカールに生まれた)。穏和で飄々とした好々爺だが、娘からは韜晦趣味があると評される。ジントを「少年」と呼ぶ。もと造船翔士であり、居住区間であるフェブダーシュ男爵城館を自ら設計した。クロワールにより城館内の一室に監禁されていた。同じ部屋に監禁されたジントとともに、ラフィールにより救出され脱出。クロワールの死後男爵領の統治者に復帰する。スファグノーフ沖会戦後、男爵領が人類統合体が侵攻の足がかりとしたケイシュ193門(現在のバスコットン門)に最も近かったため、トライフ艦隊により家臣たちとともに帝都へ護送され、男爵家帝都城館に住んでいた