星界の風章「祝宴」    作:いち領民

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星界の風章「祝宴」 第五章

ハイド伯爵家・帝都城館完成記念の祝宴も終わりの時間をむかえ、参加してきたものは、ジントに丁重な挨拶をして、次々と自分の家路についていった。

 

 

ジントがひととおり、挨拶をしていると、家臣のミルフィーユが彼の前に来た。

 

「わが君、私とサムソン家宰からの提案なのですが、今日の外交的な祝宴は終わったので、明日は内輪のささやかな祝宴を上げようと思いますけど、いいですか?」頭一つ大きいジントを見上げながら話すミルフィーユ

 

 

「うん、別にいいですよ。まぁ、身内だけなら今回のように格式ばったものでではないし、疲れないと思うしね。」了承するジント

 

 

「はい、わかりました。それで、その席にパリューニュ子爵殿下を呼びたいのですが、わが君の方から、殿下を誘ってもらいたいのです。もちろん、殿下がこの帝都城館に泊まれる準備もできます。」それとなく、自分たちの目的を言うミルフィーユ

 

 

「ラフィールを?身内だけの祝宴だけなのにどういうことですか?」ミルフィーユの発言に驚くジント

 

 

「まぁ、家臣達の気遣いと思ってくだされば、いいかと思います。今日の祝宴では殿下とほとんど、わが君とは、話してなかったみたいですし、私たちも、一番わが君とゆかりのある王女殿下とのささやかな祝宴を楽しみたいのです。」と愛くるしい笑顔をするミルフィーユ

 

 

「わかったよ。一応、ラフィールに聞いてみるよ。」と了承するジント

 

 

「そうですか。なら、向こうの方にクリューヴ王殿下と一緒にいたので、お願いしますね。」と妙に準備がいいミルフィーユ

 

 

こうして、ジントはラフィールのもとへ、身内の祝宴の誘いにいった。

 

その様子を見て、ミルフィーユは次の行動へ移していた。

 

 

「ダリシュ坊や。ちょっと、いいかしら?」

『青の牙』のメンバーの一人と談笑しているダリシュに話しかけるミルフィーユ

 

 

「どうしたのですか?ミルフィーユさん。」

 

「ちょっと、これから、暇?わが君について、頼みたいことがあるのよ。」

 

「まぁ、特に用事は無いです。でも、ジントのことですか?気になりますね。」

 

ミルフィーユは、ハイド家の家臣でラフィールとジントの仲をなんとかしようという話があるのを説明した。そして、ダリシュに、ぜひ、その計画の立案&協力者になってほしいということも告げた。

 

「なるほどね。わかりました。協力します。僕も二人の関係が一向に進まないのにちょっと、驚いていてね。ユーリルには、悪いけど、僕もその計画には協力します。では、ミルフィーユさん達の案を聞かせてください。」と快く了承するダリシュ

 

 

一方、ジントは、ラフィールとその弟と父親がいるところへ来ていた。

 

「ラフィール、ちょっと、話があるのだけど、いいかな。」ドゥヒールとドゥビュースに挨拶をした後、ラフィールに声をかけるジント

 

すると、ドゥビュースとドゥヒールは気を使い、ラフィールからそっと離れた。

 

「どうした、ジント。そなたには、すでに祝いの言葉を与えたが、それでは、満足しないのか。」と不思議そうにジントを見るラフィール

 

 

「そう言うわけではないけど、もし、ラフィールが明日何も無ければ、僕の家の家臣達が行う内輪の祝宴に来て欲しいんだ。アクリアさんやサムソンさんもラフィール来てほしいみたいだし、僕もラフィールに来てほしいんだ」

 

 

「…わかった。別に予定も無いしな。そなたがそこまで言うならいってもよいぞ(名目はどうあれ、今日は話す機会がほとんどなかったから、この誘いをしたのであろうな。ジントも粋なことをする。)」と言葉とは逆に嬉しそうなラフィール

 

 

 

「ありがとう。ラフィール。それで、これは、アクリアさんからの誘いなんだけど、この帝都城館に泊まる気はないかな。一応、それなりの設備は用意してあるし、着替えとかは、この帝都城館からクリューヴ王宮だと4デモンの加速でも1時間はかからないから、家臣の誰かにもってきてもらってもいいけど。」

 

 

 

「ジント……。どうしたのだ?そなたがそんなことを言うなんて驚いたぞ。(まさか……でも、私は、そこまでの覚悟は……でも、ジントが望むなら)」ジントの発言を先読みして頬を赤くするラフィール

 

 

「うーん。実は言うと、君に泊まってもらいたい部屋があるんだ。それで、その部屋を見てから、判断してもらいたいよ。」そのラフィールの深読みにまったく気づかないジント

 

 

「部屋…。わかった。とにかく、そこへ行こう(なんだ、ジントの発言からすると、私の思い過ごしか)」

いつもの麗しい表情に戻り、ラフィールは、ジントの後へついていった。

 

 

ジントがラフィールをその部屋に案内すると、その部屋の前には『薔薇の居室』と書かれていた。

 

 

「こ、これは、どういうことなのだ?ジント」

部屋の名前の意図を察したがあえてラフィールは聞いた。

 

「うん、これは、僕がこの帝都城館建設のときに、一応、元フェブダーシュ男爵閣下に頼んだ。その……。ラフィール専用の居室を作って欲しくて。クリューヴ王宮で僕専用の居室があったので、その恩もこめてかな。できるだけ、君の部屋に似ている作りにしたよ」

ジントは少し、恥ずかしそうに言った。

 

 

「うん、そなたに感謝を。では、ジント入るぞ。」

ラフィールは嬉しそうにその部屋に入った。

 

 

ラフィールのために作られた部屋『薔薇の居室』に入ると、彼女の部屋と同じように豪華絢爛の作りで、なおかつ優雅な雰囲気を漂わせていた。唯一、クリューヴ王宮での部屋との違いは、一つの大きな絵画だった。その絵画は、ハイド伯国の象徴であるレズワンという魚が一輪の薔薇をくわえて、泳いでいる絵だった。

 

 

「この絵は……」何かを察したらしく頬を赤くするラフィール

 

 

「ああ、それね。元フェブダーシュ男爵閣下が、考えておいたものなんだ。特別な意味はないよ」となぜかあせるジント

 

 

「うん、わかった」あえて、ラフィールは追求しなかった。

 

「さてと、部屋の案内も済ませたし、僕は自室へ戻るよ。」部屋を出ようとするジント

 

 

「待つがよい。もう少し、ここにいてくれぬか。そうだ。ティル・ノムをだすがよい」ジントをひきとめるラフィール

 

 

「わかったよ。ラフィール。」

ジントは部屋の制御卓を操作すると、ティル・ノムとスルグーが出された。

 

 

「ラフィール。ところで、この部屋きにいってくれたかい?王女殿下には、ふさわしいとは、思えませんが、非才の身ながら最大限の努力をいたしましたので、満足していただければ、これ幸いです。」と片目をウィンクしながらわざとらしく慇懃に言うジント

 

 

「ばか。」と口を尖らすラフィール

 

「わかったよ。それで、どうだい?正直なところは」

 

 

「まぁまぁだな。ジント。さすが、ハイド伯爵家と言っておこう。王女専用の居室を構えるとは、アーヴ貴族として相当な格式を持った家だと認めねばなるまい。なぁ、伯爵閣下」とさきほどの反撃として大げさに丁重に言うラフィール

 

 

「わかったよ。ラフィール。だから、その口調やめてくれよ」と降参とばかりに手をあげ、苦笑するジント

 

 

「クス、だったら、私をからかうのはいい加減やめるがよい。反撃されて困るのはいつも、そなたのほうだからな。」いつもの笑顔に戻すラフィール

 

 

「わかったよ。ラフィール。でも、その言葉は、たぶん、次のときには、忘れているかもね。そういう性分だからね。」と曖昧の笑顔でごまかすジント

 

 

「そうだな。そなたの鈍さといったら、冷凍野菜並だからな。あまり、期待しないでおこう」

 

しばらく、二人がたわいも無い会話をしているとジントのクリューノに家臣のラグエルから入った。

 

 

「わが君、パリューニュ子爵殿下の着替えもってきたんや。もう届いているで。それじゃあ、殿下との会話楽しんどき。」そういて、ラグエルの通信は切れた。

 

 

「アハハ、ラグエルって子はなぜか知らないけど、アーヴ語の訛りがひどくてね。ダリシュによると、古代日本の「かんさいべん」というものをアレンジするように『ヘヴィ・ベル』がプログラムしたらしんだ。」

必死にごまかすジント

 

 

「そうか、まぁ、別にいい。言葉の発音はどうあれ、なんとか、聞き取れるみたいだから。あまり、優雅とはいえぬがな」困ったような表情をするラフィール

 

 

 

「さてと、そろそろ、僕も寝る時間だからいくよ。ラフィール」そういって『薔薇の居室』から去ろうとするジント

 

 

「ジント」呼びとめるラフィール

 

 

「なんだい?」

 

 

「(もっと、そなたと一緒にいたい。できれば、今夜ずっと)………なんでもない」ノドまで言葉はでかかったがあと一歩の勇気が出ずに言うラフィール

 

 

「わかった。じゃぁ、おやすみ。ラフィール」

ジントはラフィールの心を知ることなく、その場を後にして、自室へ戻った。

 

 

 

自室へ行くと、その部屋の前には、スルーフが部屋の前の椅子に座ってジントを待っていた。

 

「元男爵閣下、どうなさいました?こんな時間に」

スルーフがいることに驚くジント

 

 

「少年、ちょっと、シュリルという名の青年に用事を頼まれたんじゃ。まぁ、祝宴ではわしもお前さんとは満足に話せなかったし、ちょうどいい機会だとおもったのじゃ」スルーフは林檎酒とつまみのいくつかを持っていた。

 

 

「ダリシュがですか?まぁ、いいです。少しくらいな、お酒を減らすのを手伝いますよ。それでは、僕の部屋へ、閣下」と快くうけるジント

 

 

二人は、ジントの部屋へ入り、穏やかな雰囲気で酒精を楽しんでいた。

 

 

「それで、ダリシュから何を頼まれたのです?でも、彼が閣下に頼み事をするとは、思えないですけどね。」

 

 

「あの青年はお前さんのアーヴの中での一番の親友なんじゃろ。その彼が頼むことといったら、王女殿下と伯爵閣下の関係についてじゃ。お前さんがなかなか腹を決めていないのが心配らしいのじゃ。」楽しそうに言うスルーフ

 

 

「はぁ、そうですか。でも、それが、どうして、元男爵閣下に相談したのですか?」

 

 

「わしは、こう見えてもちゃんと、生まれがらのアーヴと恋愛経験もあることを彼もしっていたのじゃろ。ロイとクロワールの遺伝子提供者でもあるコセールとのなれそめの話をしてくれと頼まれた」自分の役割を満足そうに言うスルーフ

 

 

「なるほど、そういうことですか。興味があります。ぜひ、教えてください。」とほろ酔い加減でスルーフの話に耳を傾けるジントであった。

 

 

こうして、ジントはその夜、スルーフのアーヴ女性との恋愛話をその饒舌な口調と彼曰くちょっとした文学的修辞を取り入れた表現をふんだんにつかった話を真剣に聞き明かした。

 

 

 

家臣専用の雑談室

 

 

「ダリシュ坊や。アストリュア閣下の話は大丈夫なの?」二人が気になるミルフィーユ

 

「ミルフィーユさん。大丈夫です。ジントはどうもアーヴと地上人の恋愛に関して不安な部分があるみたいだから、彼の話を聞いてもらえば、かなり、安心するでしょうね。さてと、明日は今回の作戦の次の段階へ行きますから。」

 

 

「そうなの。でも、そう簡単に上手くいくかしら。妨害者とでないかしらね。」ある心配をするミルフィーユ

 

 

「ユーリルのことですか?でも、今回失敗しても僕は責任を持ちませんよ。僕の今回の役割は参謀役です。」とあえて、なげやりな態度をするダリシュ

 

 

「そうね。でも、私はそうすると副長という立場ね。となるとサムソン家宰、あなたが指揮官。一番の責任者よ。今度の計画が失敗したら責任が必要ね。そうだ…1ヶ月禁酒というのはどう。やる気が出るのじゃない」と悪戯っ子の笑みをするミルフィーユ

 

 

「なんですと、どうして、俺がそんなことをしなきゃいけないですぜ。それに無理だな。」とあくまでも反対するサムソン

 

 

「サムソン監督、男らしくありませんね。成功すればいいのですよ。でも、まぁ、もし、万が一失敗したら1週間、禁酒というのはどうです。これくらいなら、監督いけるでしょう。それくらいの危機感をもって臨まないといけないでしょう。」パーヴェリア

 

 

「まぁ、それくらいなら、なんとかなるが。」と周りの雰囲気につられて、しぶしぶ了承するサムソン

 

 

「サムソン家宰、大丈夫ですよ。わが君と王女殿下は、ほとんど想人みたいなものです。周りから見てもそれがわかるのに、本人達が認めないのは、ほんのちょっとしたきっかけが必要なのですから、今回、私達がそれを与えればいいのです」自信ありげなセールナイ

 

 

「そうだな。わが君が頑張ればいいのだな。とにかく、全力を尽くすしかないか。」あらためて決意するサムソン

 

 

「さてと、指揮官の意思も決まったことだし、明日に向けて、みんな寝ましょう。それと、その前にダリシュ坊や次の段階の策のさわりだけでも、教えてね。」と要求するミルフィーユ

 

 

「簡単に言うと、『雨降って地固まる』です。もっとも、雨を降らすのは王女殿下の方だけですけどね」と穏やかに微笑むダリシュ

 

 

「なるほどね。わかった。」ダリシュの意図を理解するミルフィーユ

 

 

 

 

 

こうして、表面上は内輪の祝宴という席は、ハイド家家臣達の主君であるジントの恋を実らせるための決戦場となるのだった。

 

 

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