星界の風章「祝宴」    作:いち領民

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星界の風章「祝宴」 エピローグ

リン・スーニュ=ロク・ハイド伯爵・ジントは、ゆっくりと、目を覚ました。

そして、彼が目を覚ました瞬間、目の前にはまるで神話の世界にでてくる天使のようなとびっきりの容貌の美少女がこっちを向いて静かに寝息を立てていた。

 

「(…驚いた。夢の中だけではなく、起きた瞬間にラフィールが目の前にいるというのは…なんだか、嬉しいな。ラフィール…)

 

ジントは、ラフィールの寝顔をしばらく、見守っていたが、ふと悪巧みを思いついた。ラフィールに気づかれないようにそっと、顔を近づけ、柔らかい頬にくちづけをした。

 

 

「おはよう、ラフィール」その後、アブリアルの細くとがった耳元でつぶやくように言うジント

 

ラフィールは、無意識の内に頬に手を当て、ゆっくりと黒瑪瑙の瞳を開けて、ジントの顔を見た。

 

 

「うん…。ジントか。(…あれ、この頬に当たる感触はなんだったのだ?)」半分頭が眠った状態でも、ジントの唇の感触をラフィールは感じた。

 

 

ラフィールが頬に手を当てながら不思議そうな表情をしていたので、ジントは、思いきって伝えた。

 

 

「お目覚めのキスだよ。僕のかわいいい殿下」いつもの穏やかな笑みを浮かべるジント

 

「ばか」その言葉で状況を一瞬で理解して、頬を赤らめるラフィール

 

 

「頬では嫌だったかい。じゃぁ、今度は唇にするよ」ラフィールの反応を面白がるジント

 

 

「ばか」再び、恥ずかしさと怒りで耳まで赤くするラフィール

 

「ジント、私は湯浴みをする」

 

そして、ジントを睨んだ後、即座に立ちあがると、背を向けて、そのまま湯殿へゆっくりと、生まれたままの姿で歩いていった。

 

 

黝い髪から現れているラフィールの美しい後姿を凝視しながら、ジントの思考は、止まっていた。

 

数秒後、ジントは精一杯、虚勢をはるように言った。

 

 

「び、びっくりするじゃないか。僕はまだ、君の肢体になれていないんだ。」ジントの顔はさっきのラフィール以上に赤くしていた。

 

 

 

 

1時間後、ラフィールが先に湯浴みをした後、ジントも湯浴みをして、二人とも王女と伯爵

の長衣を着ると、朝食をとるために、食堂へ向かった。

 

 

 

ハイド伯爵帝都城館・食堂

 

 

「おやおや、二人とも朝帰りですか?」

ジントラフィールが並んで食卓につくとサムソンはからかうように言った。

 

 

「サムソンさん、何を言っているのですか?朝帰りって…ここは、僕の家なんですから、そういう表現はおかしいと思います。」あせるジント

 

 

「朝帰りとはどう意味なのだ?」ラフィールは不思議そうにサムソンを見つめた。

 

 

「それは、わが君にでも聞いてください。ちょっとした、世俗的な表現です。私の口からではとても王女殿下にはいえません。」わざとらしく慇懃に言うサムソン

 

 

「そなた、私を子供あつかいするのか?」

ラフィールはサムソンの態度が気に入らないらしく眉をひそめた。

 

 

「王女殿下、子供あつかいでないですわ。むしろ、大人あつかいというのがその言葉の意味に含まれています。さぞかし、昨晩は情熱的な夜だったのでしょうね」とうっとりとした表情をするミルフィーユ

 

「そなた、無礼だぞ」ミルフィーユの意図を理解したらしく顔を赤くするラフィール

 

「アクリアさん、やめてください。いくらなんでも、失礼ですよ。」さすがにこの手の話題を続けられるのをいやがるジント

 

 

「すいません。気をつけます。さすがに不敬罪に値する発言ですね。」といいながらも楽しそうにミルフィーユは微笑んだ。

 

 

「まぁ、とにかく、今回の祝宴も昨日でおわりですぜ。また、今度、機会があったら、呼んでくれるとありがたいですぜ。これに関しては、アクリアさんに頼むとしましょう」

ジントの心情を理解して話題を変えるサムソン

 

 

「そうね。まぁ、考えとくわ。わが君も明日には<フリーコヴ>に戻るのでしょう。今回はけっこう、バタバタしていたけど、楽しかったです。あなたの家臣になれたことを誇りに思います」真剣な表情でジントを見つめるミルフィーユ

 

 

「ありがとう、ございます。僕も助かりました。今後ともよろしくお願いします。」

 

 

「あら、わが君、セールナイも忘れないでください。私達の仕事はハイド伯国ですが、一生懸命頑張ります。それが王女殿下のためにもなるのですから。」なぜか、ジントではなく、ラフィールを見ながらうっとりとするセールナイ

 

 

「おやおや、皆、自分をアピールするのか。じゃあ、俺もします。わが君、給料分は働きます。もっと、自分に要求したいのなら給料を上げることが最善の方法ですよ」いつものように軽口をたてるパーヴェリア

 

 

「そなたの家臣は、皆、失礼な者ばかりだな。あまり、そなたに節度をもっているとは、思えないがな。」あえて、ジントにあおるように言うラフィール

 

 

「いいんだよ。ラフィール、この方が気楽でいいよ。それに、この中の2名はとある軍艦の軍士だったようだよ。その艦長の影響なんじゃないかな。」ささやかな反撃をするジント

 

 

「ばか。私のせいではないであろ。このものたちは、以前からこんな感じだったぞ」ジントに反撃されて面白くないラフィール

 

 

「おやおや、もう痴話喧嘩ですか。そういうのは、二人きりのときだけにしてもらいたいですぜ。見ているこっちが辛くなる。」面白がるサムソン

 

 

 

こうして、和やかな雰囲気のまま朝食をジント達は終えた。

 

 

 

サムソン達は、家臣専用の休憩室に集まっていた。

 

 

「どうやら、監督、禁酒はまぬがれましたね。あの二人に雰囲気を見たら、間違いないと思いました。」保護者気分のパーヴェリア

 

 

「そうね。よかったわね。サムソン家宰。それにしても、あの若い二人に雰囲気を見たら、私も恋したくなったわ。燃え上がるようなものをね。」再び、夢見る少女の表情をするミルフィーユ

 

 

「そうだな。わが君をもう坊やとなんて、2度と言えないな。」

 

 

「そうですね…でも、本当にそうかしら?」疑問の視線を送るミルフィーユ

 

 

「いや、誓うぞ。絶対にいわない。」

 

 

「なら、監督。こうしましょう。監督がわが君ことハイド伯爵閣下に坊やと1回いうたびに1日、禁酒。何回もいったら、累積していくというのは、どうでしょう。喜んで判定委員になりますよ」自分の考えに満足するパーヴェリア

 

 

「何だって、別にそんなものを賭けなくてもいい。第1、俺にメリットがない。」不満なサムソン

 

 

「あら、サムソンさんは、家宰なんでしょう。その人がわが君を坊や扱いしたら、家臣達の士気にかかわるわ。当然の義務を怠ったという意味での贖罪としての効果としてはいいと思います。」セールナイもその話にのりかかった。

 

 

 

「おいおい、皆、それはないぞ。とにかく、この件はなしだ。」困り果てるサムソン

 

 

「そうね。確かにサムソン家宰メリットはないわね。だいたい、禁酒なんて、自らの意思でやることであって、他人に強制されるのもではないしね。ということで、サムソン家宰がわが君を坊やといったら、ここの帝都城館の施設では1滴も酒が出ないようにするわ。それならいいでしょう。」悪戯っ子の笑みをするミルフィーユ

 

 

「なんだって、ということは、わざわざ、自分の懐から酒を買わないといけないのか。」

 

「ええ、そういうことです。私なら、この施設でちょこっとリンクすれば、可能ですからね。」

 

 

「うん、それは、いい考えだわ。」賛成するセールナイ

 

 

「その方がいいですね。禁酒をするよりは、ましということで、監督も納得できますよね」

 

 

「納得などしてない」

 

 

「これは、決定事項ですわ。もう、思考結晶に入力しました。」先手を打つミルフィーユ

 

 

「…わかった。なるべく努力する」観念するサムソンだった。

 

 

 

帝都城館・宇宙港

 

 

「じゃぁ、ジント、クリューヴ王宮へ帰るからな」

のってきた交通艇の搭乗口の前でラフィールは言った。

 

 

「うん、まぁ、この後、すぐにフリーコウで会えるからね。気をつけてね。」

 

 

「馬鹿にするな。ここからでは、一瞬でつくぞ。そなたの帝都城館は一番、私の王宮に近い城館なんだからな。」

 

 

「わかっているよ。ラフィール。でも、僕にも想人をきづかう権利はないのかな」

そういって、ジントはラフィールを優しく抱きしめた。

 

 

「それは…べつによい」ジントに抱きしめられて至福の笑みを浮かべるラフィール

 

二人はしばらく、沈黙しながらみつめあった。

 

唐突にジントが言った。

 

 

「ラフィール、キスしていいかい?」

 

「ばか、突然、何を言う。今から私は帰るところだぞ」頬を桜色に染め、ジントの腕の中でうつむくラフィール

 

 

「だから、別れのキスさ。一時でもね。それに、僕が子供のときは、よくリナがおやすみのキスやお目覚めのキス、あるいは、別れのキスとかもしてくれたんだ。僕の記憶が確かならそこの恋人達はよくやっていたそうだ。もし、君が嫌ならいいよ」残念そうに言うジント

 

 

「別に嫌だとは言っていない。ジントが望むならいいぞ。」

そういって、ラフィールは目をつぶり、桃色の唇をそっと上向きにした。

 

 

そっと、軽いキスをして、ジントは、ラフィールから離れた。

 

 

「ラフィール、じゃぁ、また、今度、」

 

「うん…。ジント、また、私と抱き合ってくれるか。」

瞳を少し潤みながら、アブリアル特有の耳まで赤く染めながらラフィールは尋ねた

 

 

「君が望むなら。今度は、もっと、激しく…僕のかわいい殿下」悪戯っ子の笑みを浮かべるジント

 

 

「ばか」

そういって、ラフィールは交通艇に搭乗した。

 

 

交通艇にのる直前のラフィールの顔に浮かんだのは、本当に幸せそのものであった。それを見届けたジントも至福の笑みをそっと、浮かべた。

 

 

<完>

 

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