プロローグ
「あ゙ー暑い暑いぞ」
そんなことをぼやきながらいつもの日課である学生ならわかる、ヒジョーに面倒な学校というものに通っている、かなり身長の高い一人の高校生、もとい、
なぜ8月半ばなのに学校に向かっているのか? 簡単な話である。授業中の態度が悪いせいで「補修に来い」と命令が先生から下ったのである。
「この前、全国模試1位とったんだけどなぁ」
この男、近年稀に見る天才なのと同時に近年稀に見るめんどくさがりなのである。
そんなことを言ってるうちに学校に着き、もう補修が始まっているが…
当の本人は寝ている。
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「 ─────て来なければ───
彼を───赤桜さ───」
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「は………きろ!…………早く起きろ‼赤桜‼」
「なんだよ、せっかく続きの気になる夢見てたのに起こしやがって…」
彼、赤桜 咲雅は教師に対してタメ口なのだ。だから当然、教師からの評判は最悪なのである。
~~
「は~ やっと終わった!」
三時間弱の補修が終わり、咲雅は帰路についていた。
~~
「ただいまー」と虚空に呼び掛け、自嘲するかのように鼻で笑う。
赤桜 咲雅は孤独である。幼い頃に両親は死んだと聞かされ育ってきた。育ててくれた、叔父と叔母も3年前に事故で死んだ。
だから、無駄に広い500坪もある家には独りしかいない。
だが、その独りしかいないはずの家に、咲雅の目の前に、金髪の“美しい”なんて言葉では足りないくらい美しい女性がいた。
「あら、こんにちは」
目の前にいる不法侵入者はまるで、自分の家のようにくつろぎ、軽く挨拶をする。
そして、咲雅は目の前の女性から確信に近い何かを感じとった。
『独り』ではなくなるんだ。と
「お前は誰だ?」
「八雲 紫よ」
「そうか、俺は「赤桜 咲雅でしょう?」なっ…………!」
「その顔は驚いたって感じね。貴方、表情があんまり変化しないから分かりずらいわ~。貴方、独りきりのの生活は嫌でしょ?」
「…あぁ」
「私が連れ出してあげる。着いてきて」
何を言っているのかわからない。そんな様子で紫の指し示す方に目を向けると、空間に変な亀裂のようなものがはしり、その両端にリボンがくっついている何かがある。
そして紫はそこから顔と手を出してコッチコッチ と手招きしている。その亀裂をくぐり抜けると────
~~
今、咲雅は落ちている。大事なことだから2回言おう。空からまっ逆さまに落ちているのである。
「あの亀裂を潜り抜けたら大いなる空に直通ーとかありえないだろ… このまま行ったら俺お陀仏だぜ?」
うーん…何か助かる方法はないかなぁ。
「突然チート能力に目覚めましたー とかないかなぁ」
そんなことをブツブツと言っていると、ふと、頭に言葉が浮かんできた。
『奪う程度の能力』
「なんだよこれ」
……もしかしてこれが俺の能力?
なんてご都合主義な……おっと、メタいメタい。
「あっでも使い方わかんねぇから意味ねぇ」
そう気づいたときにはもうすでに遅く、地上まで10Mもなかった──
───バシャン‼ そんな音をたてて咲雅は無事着地…ではなく着水した。
「……ップハ‼ アブねぇアブねぇ落ちたさきが水じゃなかったらお陀仏だったぜ… それにしてもどこだ此処?」
咲雅は今とある湖のほとりに立っている。そして、すぐ傍には、紅に染められた悪魔の統べる館 紅魔館 があった。
「よくわかんねぇけど、この館に入って此処がどこだか聞いてみよう」
その館の主が悪魔だと知らない咲雅はスタスタと館の前まで歩いて行く。
「それにしても、目に悪そうな色使いの館だな。
おっ、門番さんらしき人発見!
すいませーん!」
「高身長で銀と黒が混じったような髪の男…………………お嬢様がお待ちです。さぁ、どうぞこちらに」
「リョーカイ」
門番らしき赤髪の女性はなにやらブツブツ言った後に中には入るように言ってくる。咲雅はあやしがりもせず、女性に着いていく。
そしてだだっ広い屋敷のなか漸くついた部屋に居たのは、
幼女とメイドだった。
「幼女じゃない!!」
「ぬおっ⁉ びっくりした」
「私は幼女じゃないわよ」
「いや、どう見ても俺より年下だろ。 つーか勝手に人の心読むなや」
「こう見えて、貴方の25倍は軽く生きてるわよ」
「へー、ソーナノk…………25倍?」
「ええ、それでも妖怪のなかでは、まだ若いほうよ」
「えっ? 妖怪?」
「あら、妖怪を知らないってことは、外来人なのね。
ここは、“幻想卿”。 人と人ならざるものが共存する世界よ」
「ナニィ⁉………つまり俺は別世界に来ちまったって訳なのかぁ⁉」
「詳しい話は後よ、貴方、ビショビショじゃない。 風邪をひくわよ。 咲夜~」
「はい、 では、此方へ」
咲夜と呼ばれた少女は、返事をして、瞬く間に咲雅の傍にきた。
~~
咲雅は、咲夜と呼ばれた少女に案内された部屋で着替えを済まし、幼女とこの世界のことなどを話している。
「さっきも話した通り、ここは、幻想郷と呼ばれる世界。 貴方がもともと、どこに住んでいたかは、分からないけど一応、『別世界』になるわね。」
「別世界かぁ……まぁ自分で望んだんだし
いいんだけどねぇ……別世界ねぇ……」
「今貴方、自ら望んでここにきた、とか言ったわね?」
「あぁ、言ったけど?」
「どうやって?」
「いやぁ、なんかね? もといた世界の自分の家に帰ったら、金髪の美人な……八雲 紫とか言ってたかな?に連れ出してあげるとか言われて、なんか亀裂みたいなのが現れて、それを潜ったら、湖の真上に放り出されて、今に至るって訳」
「だから、ビショビショだったのね……
にしてもあのスキマ妖怪が…………
そう……フフフフ……名前くらい覚える価値はあるかしら?
貴方、名前は?」
「赤桜 咲雅、ただのしがない人間だ」
「そう……赤桜 咲雅……覚えておいてあげる。
私は、レミリア スカーレット この紅魔館の主にして気高き吸血鬼」
「あぁ、今日はありがとう。」
「いえいえ、それで?貴方、宿はあるの?」
「……………………」
「はぁ、わかったわ、今日は宿を貸してあげるわ」
「ありがとうございますレミリア様ぁ」
「それでいいのよ、それで♪」
~~~
咲雅が疲れて寝てしまった深夜、レミリアと咲夜は咲雅のことについて話していた。
「ねぇ咲夜?」
「なんでしょう?」
「あの咲雅って男。私は今日、運命を見ていたら彼のことが見えたわ」
「はい」
「そしたらね?ナニが見えたと思う?」
「ナニが見えたのです?」
「何も見えなかったのよ……いや、見ることを阻害されたってほうが正確ね」
「阻害されたとは?」
「そのまんまの意味よ。訳が分からないわ。にしてもあのスキマ妖怪がつれてくるなんて……タダの餌なのか、それとも、ナニかがあって連れてきたのか……」
「では、大図書館で調べてみたらいかがでしょう?」
「必ずしも情報があると限らないけど……そうね、後で調べてみましょう」
~~
「フワァァ~……よく寝た」
コンコンとドアがノックされる乾いた音が部屋に響く。
「んっ? どーぞー」
「失礼します。咲雅様、朝食の準備ができましたので……」
「アイヨー、今行く。後、様付けはやめて」
「わかりま「後、敬語も禁止ね~」……わかったわ。これでいいかしら?」
「うむ、それでよいのじゃ、それで」
~~
「いやぁ~悪いねェ~本当、朝食までいただいちゃって……おかわりっ!」
「本当に悪いと思ってる人は6杯目のおかわりなんてしないわよ……はい、どーぞ」
「ムグムグ……そんなこと言いつつも、ちゃんとご飯をよそってくれる咲夜ちゃんは可愛いなぁ」
「五月蠅いわよ……」
「あら、貴方たちいつの間にそんな仲良くなったのかしら?咲夜、惚れたの?」
「お、お嬢様ぁ!」
咲夜の怒声を無視してレミリアは至って普通に朝食を食べている。
「そういえば、咲雅?」
「んっ?なんだ?………おかわりっ!」
「よく食べるわね……貴方、能力について何か知ってる?」
「ん~…能力?………そういえば、昨日、湖に落ちる前になんかポンっと頭に浮かんできたけど」
「能力持ちか……そう、ありがとう」
「いきなりどうした」
「いえ、何でもないわ。それより、貴方、咲夜を悲しませたりしたら、タダじゃおかないわよ?」
「お嬢様ぁ!ですから私は……」
「えっ咲夜僕のこと嫌いなの?咲雅悲しい」
「バカじゃないの?」
「そういうことをしれっと言うな!しれっと!傷つくぞ」
「五月蠅いバカ」
「なんだと?!バカって言った方がバカなんだぞ?」
「バーカ」
「バーカ」
「バーカ」
「うるさいわね。咲夜と、咲雅…だったかしら?夫婦喧嘩は外でやりなさいな。
レミィもからかわないの」
と、レミリアの親友パチュリー ノーレッジが、仲裁する。
「「「すいません」」」
「ねぇねぇ?咲雅お兄さんってさぁ?」
「ナニ?えーと……」
「フランドール スカーレットよってまだ全員の自己紹介してなかったっけ?」
「あら、そういえば、自己紹介したの私と咲夜だけね。あらためて……
私は気高き吸血鬼レミリア スカーレット
ここの主よ。で、こっちが妹の────
と、自己紹介を含めた朝食を済まし、咲雅はレミリアの部屋に呼ばれていた………