「咲夜、お願いだから
なぜ俺が声を大にしてこんなことを言っているのか……それはおよそ1時間ほど前に遡る。
~1時間前~
「おはよう。咲夜」
と、朝5時半頃に起きて来てキッチンで朝ごはんと学校に持っていく咲雅と咲夜の分のお弁当を作っている咲夜に、俺の家でまでも飯作ってるよ………職業病か?などと考えながらあいさつをする。そして、気になっていたことを質問する。
「なぁ咲夜?お前今日から学校行くんだろ?」
「えぇ、そうよ」
「うちの学校って編入試験受けなきゃダメなはずだけど………」
「あぁ、なんかやらされたわね。でも結構簡単だったわよ?」
結構簡単だったなどと軽く言ったが咲雅の通う高校は全国的に有名な私立高校で、偏差値は70代後半というメチャクチャ頭のいい学校である。そんな高校の編入試験を簡単だったなどと言う咲夜は一体何者なのだろうか……
「まぁいいか。じゃあ飯にしようぜー」
「はい。どうぞ」
「頂きまーす!」
~~
「ごちそうさまでした。よし、じゃあ着替えて、行くとしますか」
「急がないと、時間ないわよ?」
「うおっ!やべぇ。って咲夜もう着替えたのかよ!?早いな!」
「貴方がご飯食べてる間に着替えちゃったわよ」
「そういえばお前一応転入生だろ?」
「えぇ、どこのクラスかは分からない。みたいなことは言っていたけど」
「そうか。じゃあ行くぞ」
「えぇ」
と、咲雅も着替え終わり、玄関から外にでて咲夜は浮かび上がり空を飛んで登校しようとする。
「…………おい、待て待て待て!」
「なによ?」
「いや、あっちでは飛んで当たり前だろうけど、こっちでは普通は飛ばないから!」
「あら、そう」
と、納得したかのように思えたが、平然とまた浮かび上がる。
「咲夜、お願いだから
~~
「じゃあ私こっちみたいだから」
「おぅ、また後で」
という会話をして、咲夜と校門前で別れて咲夜は理事長室の方向へ咲雅は自分の教室へと向かう。
~~
「よう、咲雅久しぶり!」
「あぁ」
「おい聞いたか咲雅!今日うちのクラスに転入生が来るらしいぜ!」
「あぁ、そうか」
と、答えつつも咲夜はうちのクラスに来るんだ。と内心喜ぶ。
「相変わらずテンション低いなーお前」
「……相変わらずテンション高いなお前」
さっきから咲雅と話している、咲雅の前の席に座るテンションの高い男は、
「いやぁどんな人が来るのかなぁ?やっぱり可愛い娘がいいよな!」
「五月蝿い」
「酷いよ!?咲雅君!?」
と、ギャーギャー五月蝿い雅嶺を有意義に無視して少しの間ボーっとしていると、どうやらHRの時間になったらしく、ガラガラとドアを開け、ざわついていた教室に静寂をもたらす。
「ほれー、HR始めるぞー、席つけー」
先生がそう言うと、雅嶺が少し食いぎみに質問を投げ掛ける。
「先生!このクラスに転入生が来るって本当ですか?」
一瞬、間を置き教室全体がザワつき始める。
「よく知ってるな。ちょうどいい。紹介するぞ。入っていいぞー」
入っていいぞーと教室前方のドアに向かって声をかけると、ドアの向こうにいた人影───咲夜が教室に入って来る。
二度目のザワつき。
「はいはい静かにしろー。じゃあ紹介するぞ───」
と、咲夜の名前を黒板に書く。そして書き終わる同時に咲夜が自己紹介を始める。
「ルーマニアから来た、十六夜咲夜です。よろしくお願いします」
静寂
そして、可愛い、銀髪なんて珍しい、などとまたもやザワつき始める。
「じゃあ十六夜の席だが……お、ちょうど赤桜の隣が空いてるな。そこに座ってくれ」
そんな様子が面白く、つい、からかいたくなり、どうだいいだろう。と、そんな視線を向けてみるとますます悔しがった。
雅嶺との視線での
~~
昼休み、それは学問から解放される、部活と同等かそれ以上の至福の一時。昼休みをどう過ごすかは人によって様々だ。昼食をとったり、友人と会話したり、読書をしたり、暴れたり、人によって様々だ。
そんな中、咲雅と雅嶺は持ってきていた弁当を食べ終わり、雑談している。
「おい、咲雅、聞いたか?」
「どうした?」
「あの転入生の十六夜咲夜って娘、彼氏いないらしいぜ」
「それで?」
「俺にもチャンスありって訳だな‼」
「五月蝿い」
「酷いよ!?咲雅君!?」
「だって、五月蝿いんだもん」
~~
「よーし!この石、家まで蹴るぞー!!」
「「「ウェーイ!!」」」
何故、こんなにも盛り上がっているのか、それは雅嶺が率いる元帰宅部軍団の下校時恒例行事である、『家まで石蹴って遊ぶぞー』を行おうとしているからである。
「よし、一回目のキック行きます!」
そう言って蹴られた石は明後日の方向へと飛んでいき、近くの公園の中にある、池にポチャンと落ちる。
「………あーあ、ダメじゃないッスか~雅嶺さん」
「お、おい、そんなことより見てみろ、木村の奴、アイマスクつけながら歩いてるぞ!!」
「な、ナニィ!?じ、自殺行為だぞ!?」
「いや、あいつの様子をよく見てみろよ、しっかり歩いてるぞ」
「なんて奴だ!あいつ、下校しすぎて下校のルートが体に染み着いてるんだ!」
下校のしすぎってなんだよ?などと考えながら、いつもどうり騒がしい雅嶺たちの後ろをついて行く。
そして、咲夜も同じ帰り道だと今更知った雅嶺たちに咲夜が絡まれてるのを眺めて、思う。
「もっと静かにできないの?」
と。