東方心奪録   作:Agies

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第九話

 秋も深まり、太陽が頭の上にある時間でも少し、肌寒くなってきた頃、咲雅は肺の空気を一度、全て吐きだすかのような、深い、深いため息をついていた。

 何故、ため息などをついているか。それは、目の前のカオスな状況に呆れ果てているからだ。

 そのカオスな状況とは一体なんなのか。それは──

 

「オーラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 ──雅嶺とアイマスクをつけて下校したという伝説の木村が殴りあっているのである。殴りあっている理由。それは──

『巨乳って最高だよな!!』

『いや、貧乳だろ』

 

『は?』

『あ?』

 ──こんな会話から始まった些細な喧嘩のせいである。

 

 

 ガシャン

 とうとう椅子まで投げ始めた。この男たち、教室を破壊してまで巨乳と貧乳の優劣をつけたいのだろうか。全く馬鹿なことをする。

 

「おい!咲雅は巨乳派だろ!?」

「………」

「いや!貧乳派だろ!?」

「………」

 

 とうとう自分まで巻き込まれた咲雅は、左手で顔を覆い、もっと平和な昼休みを過ごしたい。と、現実から目を背けていた。咲雅の隣で雅嶺と木村をはじめ、騒ぎまくる男子たちをゴミを見るような目で見る咲夜にたいして、ありがとうございます!!と叫ぶ声も今の咲雅には聞こえない。

 そして、誰かが投げた靴がちょうど咲雅の弁当にクリティカルヒットしたとき、咲雅のナニかがプツリと音をたてて切れた。

 

 

 

「お前らの血は何色だァァァァァ!!」

 

 

 

 

 このあと教室に入ってきた教師はこう語ったという。

「動物園だっけ?ここ?」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少々時は遡り、咲雅が5000体の妖怪と対峙する前、咲夜は、永琳に()()()のことについて聞いていた。

 

「えぇ、それで、()()()とやらの正体を教えて頂戴」

 

「そうね、貴女になら話していいかしら………

 

 

 

 

 

 

 

 それは遠い昔の話───

 と、永琳は静かに目を閉じ、話を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今から140年ほど前、博麗大結界が張られる頃の話。

 八雲紫には二人の友人がいた。その二人のうちの一人は咲雅の父である、赤桜(せきおう)(らん)、もう一人は咲雅の叔父の赤桜(せきおう)緋露(ひろ)。二人とも、10億の時を生きる博麗神社に奉られる神である。

 その二人は紫が結界を張るのを手伝い、幻想郷を創るのに大きく貢献したという。

 

 そして、事件が起こったのは今から14年前、咲雅が4歳のときだった。

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

「ふー。今日もお賽銭無かったわー」

 そう言って茶を啜るのは、歴代最強といわれる先代博麗の巫女であり、咲雅の実の母、博麗(はくれい)霊綺(れいき)である。

「ちゃんと仕事をすればお賽銭も入ると思うけどなァ」

 と、咲雅の父の嵐が呟く。

 

「五月蝿いわねー仕事なんて妖怪退治か、境内の掃き掃除くらいしかないじゃない」

 

「そうだけど………」

 

「あ、妖怪退治で思い出したわ。今日、人里で人を襲ってる馬鹿な妖怪がいたから退治したのよ。人里で人を襲うなんて命知らずよねー」

 

「人里も最近物騒だなぁ」

 と、こんな会話をして二人は布団に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、境内を掃除していた霊綺は血塗れの状態で倒れていた。人里へ散歩に行っていた嵐が発見したときにはもう、息をひきとっていた。

 死因は出欠多量。腹部に爪で抉られたような跡が残っていた。霊綺を殺した犯人は前日、霊綺に退治された妖怪で、霊綺に逆恨みして、霊綺が油断した隙に襲ったらしい。

 犯人がわかってしまった嵐はその妖怪を惨殺し、それでも足りず、罪のない妖怪を殺して暴れまわっていたところを紫の手によって魔界に封印された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、あの人………いや、赤桜嵐について、私が知っていること全てよ」

 そう言って永琳は静かに目を開ける。

「話はだいたいわかったけれど、何故、咲雅に話さなかったの?」

 

「このことを話したら、確実にあの子は魔界に行こうとするわ。けど魔界はかなり危険なところ。あの子に危険な目にあってほしくなかったのよ。それに、今はおそらくまだ嵐の精神は不安定なはず、今暴れたりなんてしたら確実に幻想郷は崩壊するわ」

 

「そう」

 

「そうだ、貴女、咲雅の面倒を見ていてくれないかしら?」

 

「面倒?」

 

「ええ、あの子はこれから何をしでかすかわかったもんじゃないわ。だから、あの子を見張っていてほしいのよ」

 

 と、最後に、それに貴女も咲雅の隣にいたいでしょ。と、付け足して永琳の話は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 今、咲雅と咲夜は、巨乳派VS貧乳派の戦争が終結し、無事授業も終わり家で寛いでいた。

 

「咲夜~レディグレイをアイスで頂戴~」

 

「わかったわ」

 

 咲夜に紅茶を淹れてもらい、茶菓子をつまみながら、ボーっとしていた。

 暫くボーっとしていると、咲夜が話かけてくる。

 

「ねぇ、咲雅?貴方と一緒に居れて嬉しいわ」

 

「え?どうしたの急に?」

 

「ふふっ♪なんでもないわ」

 

「咲夜ー今日一緒に寝ようぜー」

 

「馬鹿じゃないの?」

 

 

 馬鹿じゃないの?といいつつ、寝るときになると、布団に入ってきたのでやはり咲夜はツンデレなのだろう。次の日、起きるとお互いにはだけていて、かなり焦ったが、どうやら大丈夫だったようだ。

 

 

 

 

 

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