第十一話
「まだ着かないのー?」
「まだだよ」
「遠くない?」
「我慢しろよ」
「うえー」
博麗神社を目指し人里から出発し、整備もろくにされていない道を歩いたことのない、温室育ちの雅嶺はダラダラと歩いていた。
「この階段を上ったらつくぞ」
「うえ、何段あるの。この階段」
「ほら、シャキッとしろよ」
「うえー」
~~
「長すぎだろ、この階段………」
「さてと、霊夢はいるかな?」
さっきからうだうだ五月蝿い雅嶺を有意義に無視して、この神社の巫女──博麗霊夢を探す。探すといってもどうせ縁側で茶を啜ってるだけだろうから、取り敢えずお賽銭をいれに行く。
「雅嶺ーお賽銭入れるけどお前は入れる?」
「え?あぁ、お賽銭ね。俺も入れようかな」
「お賽銭は多いに越したことはないぞ。どれだけの金額を入れるかによって、そこの階段から突き落とされるか、お茶を出してくれるかが決まると言っても過言ではない」
「え、お賽銭だけでそんな扱いが変わるの?」
「そういう人だから、ここの巫女は……」
そんな会話をして、二人ともお札を賽銭箱に放り込む。そのときに雅嶺が少し涙眼だったが気にしない。
お賽銭を入れれば貪欲な巫女──博麗霊夢が飛んでくる訳で……
「お賽銭!!」
……咲雅たちのことなど眼もくれず、早速、賽銭箱の中身を確かめている。
「!お札が二枚も!!キャー!!」
「なぁ、霊夢……」
「ウフフフフ。お札よ。お札♪」
お札を抱きしめ自分の世界へとトリップしてしまっている。咲雅が呼び掛けようとも、反応を示さない。
「(おい、咲雅。この人誰?)」
「(一応ここの巫女さんだけど、このとうりお金が大好きでな………)」
「(相当重症だな、これは………)」
「(あぁ)」
「ウフフフフ。あれ?咲雅じゃない。どうしたの?」
今までトリップしていた霊夢が咲雅の存在に漸く気付き、話しかけてくる。
「お賽銭入れたの俺たちだぞ」
「あら、そうなの。ありがとね♪そういえば最近いいお茶が手に入ったから飲んでいく?」
「あぁ、お言葉に甘えよう」
~~
お茶を出してくれた霊夢の横に咲雅は座り、その隣に雅嶺が座り、三人とも、縁側で寛いでいる。
「へー、貴方も外来人なのね」
「あぁ、紫さんに連れてきてもらった」
「ふーん」
雅嶺の自己紹介もあらかた終わり、縁側に座りボーっとする以外なにもすることが無くなったとき、異変は起こった。
一瞬で昼から夜へと変わり、月は偽りのものとなり、間欠泉が神社の近くに湧き、そこから大量の霊も湧き出て来る。季節も春から冬へと変わり、視界は紅い霧によって覆われ、幻想郷の各地で異常気象が起こる。
咲雅や雅嶺にとってみればこれが噂に聞いていた異変ってやつかー。と、その程度のものだったが、幻想郷を代表する異変の解決者である霊夢は、首筋に冷や汗をかいている。それもそのはず、今起こっている異変はすべて、過去に霊夢が体験した異変だったからである。
~~
霊夢が異変解決に向かおうとした時、天候が晴天から霧雨へと変わった。
「おい!霊夢!異変だぜ!」
霧雨に変わったと同時に魔理沙が箒に跨がり飛んでくる。
「えぇ、わかってるわよ。今までの異変と比べものにならない位ってこともわかってる」
「あぁ、どうするんだぜ?」
「どうしましょう。異変の首謀者もわからないし……」
「ウーン……」
と、霊夢たちが頭を捻っていると霧雨が止み、空は雲に覆われたまま、あたりは濃霧に包まれる。気候が変わったということは誰が近くにいる証拠だ。そう思い霊夢が辺りを見回すとレミリアと咲夜が空から舞い降りてきた。
「あら、レミリア。貴女も異変解決に?」
「私は妖怪。異変解決なんてしないわ」
「役にたたないわね」
「全くだぜ」
「その代わり、うちの咲夜が異変解決に協力するわ」
「心外だけど、お嬢様の命とあらば協力するわ」
「これで6人か………」
「え?今4人しかいないわよ?」
と、指摘され霊夢がさっきまで咲雅たちがいた場所に眼をやると咲雅と雅嶺の姿がない。
「……逃げ出したわね。あいつら……」
~~
魔理沙が飛んでくる少し前、咲雅と雅嶺はこんな会話をしていた。
「なぁ、咲雅。これって異変なんだろ?」
「たぶんな」
「じゃあさ、冒険しようぜ!冒険!」
「は?」
「早く!!」
そう言って咲雅の腕を引っ張って駆け出す。そして、階段を降りようとしたとき、目の前にスキマが開き、スキマに飲み込まれてしまう。
「へ?」
「ウワァァァァァ!?」
ドサリと鈍い音をたて、咲雅の見覚えのある屋敷の前に落ちた。
「イテテテテ」
体についた土を払いながら立ち上がる。
「咲雅。ココドコ?」
「紫の屋敷だと思う」
「咲雅ー、雅嶺君ー。中に入ってちょうだい」
咲雅の言うとおり、屋敷の中から紫が出てきて、中に入るよう言ってくる。
「「お邪魔しまーす」」
「咲雅。貴女たちには会って欲しい人がいるのよ」
そう言う紫の表情には、いつもの胡散臭さなど一ミリもなく、切羽詰まったかのように咲雅は思えた。
そして、会って欲しい人がいる。と言われ案内された部屋には、銀の髪に緋い眼の一人の青年が座っていた。
「おう、久しぶりだな。咲雅」
「え?伯父さん!?」