では、どうぞ
俺が目覚めた時には、知らない和室に寝かされていて、周りで知らない妖怪たちが数人、酒を飲んでいた。
そのなかには霊夢や魔理沙、咲夜などの顔見知りもいる。
まだ少しだるいが、俺は体を起こす。
「よいしょっと……」
「あ、起きた。霊夢ー、紫ー、咲雅が起きたぜー」
体を起こした俺を見て、魔理沙が紫たちに俺が目覚めたことを報告するために紫たちを呼びに俺から少し遠ざかる。それとは対照的に、咲夜はこちらへとよってくる。
「咲雅、おはよう」
「おはよう、って時間でもないけどな」
「そうね。もう体のほうは大丈夫なの?」
「あぁ、問題ない」
俺と咲夜が会話をしていると、
「咲雅ー起きたならお前も呑めー」
「うわっ、酒臭っ!」
すっかり酔っぱらってしまい間延びした口調で、魔理沙が絡んでくる。
「乙女に酒臭いとは失礼なー」
………乙女なのだろうか?そう思ったが、あえて声には出すまい。
「ところで魔理沙さんよ。この宴会は何なのかね?」
「えーと、お前たちの自己紹介兼、顔合わせみたいな感じだな」
「ふーん、なるほどな」
そう言いつつ周りを見ると目を覚ましたときより、人が増えている。そして雅嶺も起きていた。
「雅嶺も起きたし、これで全員揃ったかな?」
そう魔理沙が呟く。
魔理沙の呟きを聞いた紫が、前に立ち、持っていた酒の入った器を掲げ広い和室に響き渡る声で言う。
「異変解決と、咲雅、雅嶺の幻想入り、緋露と嵐の復活を祝って、かんぱーい!!」
~~
俺は一通り自己紹介やら、顔合わせやらを済まし、魔理沙に勧められ、今まで飲んだことのなかった酒を、飲んでいた。
「………うまい」
始めて酒というものを飲んだが、これがまたうまい。どう表せばいいかわからないが、兎に角うまい。
「どう?幻想入りしてみて」
紫が横に座り突然そんなことを問いかけてくる。
「そうだな……楽しいよ」
「本当?それは良かったわ」
「賑やかだしな、人里も活気があるし」
「確かに賑やかかも知れないわね。あら、あっちで雅嶺が天狗たちを巻き込んで騒ぎ始めてるわよ?」
そう言う紫の視線の先には、確かに天狗と騒ぐ雅嶺の姿がある。
「まざってきたら?」
「面白そうだな。じゃあ行ってくる」
紫に断ってから雅嶺の元へと向かう。雅嶺はどうせ、巨乳がいいか、貧乳がいいかでもめているのだろうけど………
「絶対に巨乳だ!!」
「いや、貧乳が最高だ!!」
やっぱり………あいつが騒ぐときは70パーセントの確率で巨乳がいいか貧乳がいいかの揉め事になる。他に話題とかはないのだろうか。
こんな争いに近づくと絶対に巻き込まれる。とりあえず、別の場所に行こう。そう思いフラフラしていると──
「ちょっと取材いいですか!?」
──Yシャツ風の服に黒いスカート、黒いリボンを首もとに付け、赤い帽子をかぶった、黒い翼を生やした少女が話しかけてきた。
「取材?いいですけど……」
「ほんとですか!?ありがとうございます!あ、申し遅れました、私、文々。新聞という新聞を発行してます、鴉天狗の、
「で、取材って何をするんですか?」
「そうですね…では、まず質問から、お名前は?」
質問か、まじめに答え過ぎるとつまらなそうだな。よし、適当に答えよう。そうしよう。誰だー今適当に答えるなんて最低ーって言ったやつ。後で体育館裏に来いよ。
「名前は赤桜咲雅だ」
「赤桜嵐さんの息子さんなんですよね?」
「そうですけど」
「やっぱり!嵐さんには、昔いろいろお世話になったんですよー。では、次の質問です好きな食べ物は?」
おぉ、かなりありきたりな質問だな。
「そうですねー人里で売ってる団子ですかねー」
「もしかして大通りに面したお店ですか?」
「そうです」
「あそこのお団子は美味しいですよね!私もよく行くんですよ───
と、文の質問は続き、
──では、最後の質問です!咲雅さんの理想の女性ってどんな人ですか?」
最後の最後で難しいのがきたな…
「んーそうだなー真面目で、料理ができて、家事万能で優しい、咲夜みたいな人かな?」
そう咲雅が言ったとたん、咲雅の話に耳を傾けていた咲夜の顔が真っ赤に染まる。
「おっと!これはいいこと聞いちゃいましたねー!明日の見出しは『紅魔館のメイドに春到来!?』これで決定ですね!!」
「さ、ささささきっ咲雅!?じょじょ冗談よね!?」
咲夜がかなり取り乱しながらさっき言ったことの真偽を確かめてくる。
「いやー、割りと本気だぞー」
「えええぇ!!?」
咲夜の顔がますます真っ赤になった、面白い。
「あらあら、輝夜、紅魔館のメイドに咲雅をとられちゃうわよ?」
今までの様子を見ていた永琳が輝夜を茶化す。
「ほんとに!?大変!私も家事できるようにならなくちゃ!」
こんな様子を見ていて咲雅は幻想郷は面白いなとつくづく思うのであった。
余談だが、この次の日の文々。新聞の見出しが本当に『紅魔館のメイドに春到来!?』だった。そして、その紅魔館のメイドは恥ずかしさのあまり、この日だけ、部屋から出てこなかったらしい。