俺は今後、抱き枕を使うことはないだろう。なぜならば、抱き枕がいかに辛いかがわかってしまったからだ。なに?なんでそんなことを言ってるかって?それは今から三十分前のこと………
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宴会を始めてからけっこうな時間がたち、始める頃にはまだ明るかった空も、月が昇り、星が瞬いてる。辺りを見回すと、天狗たちと雅嶺がイビキをたて、まだ幼いフランや魔理沙がスウスウと可愛らしい寝息をたて、そばで寝ている。
今起きているのは、俺と霊夢と紫、咲夜とレミリア、永琳と輝夜、それに親父と叔父さん、あとは桃色の髪をした和服を着た女性………西行寺幽々子さんだっただろうか、とその従者らしき少女の数名だけだ。
起きているのも少数なので残ったつまみを肴に残った酒をちびちび飲んでいた。最初はつまみも酒も大量にあったが、酒は天狗たちの、つまみはほとんど西行寺さんの胃袋に収まってしまった。あの量を食べてあのスタイルの良さを維持できるとは……世界中の女性が羨むだろう。
俺と紫が駄弁っていると、「……ふわぁ………」と、誰かが小さく欠伸をする。それにつられ起きていた皆が欠伸をする。それもそのはず、そろそろ日付が変わってもおかしくない時間帯だ。欠伸のひとつやふたつ出るだろう。
「皆、眠いようね。嵐?お布団あるかしら?」
紫が欠伸をしている周りの様子を見て、嵐に尋ねる。
「おう、あるぞ。ちょっと待ってろ」
親父が布団を取りに押入れのある方へと歩いて行く。
「さあさあ、嵐がお布団を用意してくれている間に皆さんも寝る用意をしちゃって下さーい」
そう紫が言った瞬間、
「嵐!なんで私を呼んでくれなかったの!?」
突然襖をパァンと開け放ち、少女が飛び込んできた。
ん?親父の名前を呼んでるってことは、親父の知り合いなのだろうか。
「おや?お前がこんなところに来ていいのかい?」
どうやら知り合いみたいだ。
「五月蠅い!なんで下の奴等がここで好き勝手騒いで私は来れないのよ!」
そう言って少女はそこで転がっている天狗共を指差し、頬を膨らませ、そっぽを向いてしまう。
「だってお前天魔じゃないか、一応妖怪の山の長だろう?職務とか色々あるじゃないか」
「ぶー」
少女は膨らませていた頬をさらに膨らませる。
「ははは、相変わらずだな、
と緋露が懐かしむように笑う。彗と呼ばれた少女は妖怪の山を統べる天狗のトップ、天魔であるらしい。
「彗、俺達はもう寝るんだが、お前はどうする?」
「私?それじゃあ嵐と寝ようk「おい、咲雅、彗が一緒に寝たいとさ」
「え゙?」
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そんなわけで俺は天狗のリーダー、天魔の彗さんの抱き枕となった。
この体勢はヤバイ。ちょうど俺の顔のところに彗さんの胸がくる。しかも、彗さんは非常にスタイルがいい。強く抱き締められたりなんてされたら目の前の谷間へまっ逆さまである。それはそれで嬉しい。嬉しいが、それは果たしていいのだろうか………いや、考えるのはもうよそう。諦める。諦めて意識を手放そう。そうしよう………
………あ………いいにおい…………………
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翌朝。俺が起きると。目の前に酒瓶が何本も転がってる。まぁ、宴会のあとだからと思い、ふと、左に視線を移すと、大人が正座して少女に説教されているという外の世界ではまず、見られないだろう光景が広がっていた。
「なんで貴方たちは私を宴会に誘ってくれなかったんですか!なんなんですか?いじめてるんですか?いじめられてるんですか?私」
天狗たちは気まずそうにしている。そりゃそうだ。天狗の長を、自分たちの直属の上司をすっかり
「もういいです!貴方たちは一週間お酒抜きです!」
「「「「えーそんなー!!?」」」」
さて、天狗たちのコントも終わったし、片付け手伝うか…
「咲夜ー片付け手伝うよー」
俺が咲夜に声をかけるとムスッとした顔で
「じゃあ、そこの酒瓶全部こっちに持ってきて…」
「もしかして怒ってる?」
「怒ってないわよ」
「どうしたの?」
「……………」
急に抱きつかれた。射命丸が写真を撮りまくっているが、俺はこのとき困惑していたのでまったく気づかない。
「え?ちょ、咲夜さん?」
「
「え?」
「なんでもないわ!気にしないで!」
このとき、この様子を見ていたレミリアは思った。
「(あ、咲夜がデレた。めずらしい。今日は雨かしらね?そういえば傘持って来てなかったわ)」と。
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宴会の片付けも色々と一悶着あったが、無事終わり、それぞれ自らの家へと帰っていった。天狗たちは終始、五月蠅かったように思える。今まで騒がしかったからか、この屋敷がやけに静かだと感じる。
今、この屋敷にいるのは、俺と雅嶺と紫と親父と叔父さんだけ。五人、ちゃぶ台を囲み茶を啜っている。話す話題は特にない。が、親父が口を開く。
「これから咲雅たちはどうするんだ?」
「どうするって?」
「家だよ、家。住む場所がなかったら暮らすことも儘ならないだろ?」
家か、そういえば俺、家がなかった。ずっと居候だったり泊まらせて貰ったりしてばっかりだった。
「どうしようかなー」
「俺らは一応神さまだし、神社にいたほうがいいかなって思って博麗神社に行くからこの屋敷が空くけどどうする?」
「じゃあ、ここに住もうかな。雅嶺はどうするんだ?」
「んー、人里に店でも構えようかな」
「店?」
「うん、よく漫画とかであんじゃん何でも屋みたいなの」
「うん」
「そんなのをやってみたいなーって」
雅嶺の話が終ると紫はパンと手を叩き、笑顔で言う。
「じゃあ決まりね♪雅嶺君の件は人里のお偉いさんに言っておいてあげるから。それと、咲雅はここで住むなら外の世界にある荷物をこっちに持ってきてあげるから。雅嶺君の荷物も一応この屋敷に持ってくるわ!」
「わざわざすまないな」
「ありがとうございます」
こうして、本格的に俺と雅嶺の幻想郷での生活が幕をあけた。この先どうなっていくのだろうか。