第十八話
「親父からこの屋敷を譲り受たはいいが広い。広すぎる」
そう、広いのだ。兎に角広い。掃除をするのに丸一日かかるくらいに広い。一人暮らしでこれは広すぎる。何でこんなに広い家を作ったのかこの家を作ったやつに聞いてみたい。まぁそんなことより掃除だ。
~~
ふと、咲雅が外を見るともう
「もうこんな時間か。片付けないとな」
そう言って掃除用具を片付け始める。
「よしっと。片付け終わり。さて、飯にしようかなー」
どうしてだろうか。周りに人がいないと、ひとり言が多くなるような気がする。
兎に角、飯の用意だ。嗚呼、台所までが遠い………そして飯の用意も面倒だ。能力で食べ物がない事実を奪って昼飯を創り出せないかと昼に試して成功したもののあまりにも食べられる代物ではなかった。だから飯は自分で用意しなきゃならない。
「……独り暮らしって大変だなー………」
独り暮らしを始めてまだ一日。早くもめげそうになる咲雅だった。
~~
独り暮らしの大変さを改めて知った一昨日。前の日の疲れで何も出来なかった昨日。そして、何をしようかと悩む今日この頃。今で茶を啜る咲雅の傍らには────
「なんだ、嵐さん博麗神社に行っちゃったんですか」
───天狗たちのトップ、天魔の彗が座っていた。
何で天魔様がこんなところにいるんですかねぇ。うちの親父目的ですか。そうですか。ですが残念、親父は博麗神社に行っちゃいました。だからお帰りください。
「しょうがない。今日は咲雅君と寝るしかないですね!」
おい。どういうことだ。しょうがないってなんだ、しょうがないって。しかもまだ昼時だぞ。昼間っから寝るって……もしかしてこの人アホなのだろうか。
「寝るのは却下です。俺、出かけたいんです」
こんなことを言ったが、まだ出かけるところなんて決めてない。
「えー。やだ!」
我が儘か!
「私、咲雅君と寝たいですー」
「我が儘言わないでください」
「出かけるって言ってましたけど咲雅君行くとこ決めたんですか?私がここに来たときに咲雅君は『どこ行こうかなー』って呟いてましたよ?」
「………」
くそっ。聞かれてしまっていたか。つーか声真似矢鱈うまいな。
「やっぱり決めてないじゃないですかー。あ、じゃあ、私の屋敷に行きましょー!そうすれば、咲雅君も出かけられて、私も咲雅君とお昼寝できますっ!これがいっせきにちょーってやつですね!さっすが私!頭いいっ!」
「………」
あぁもう。なんか疲れた。好きにして。
「その無言は肯定と見なしていいですね?それではれっつごー!!」
そうして俺は彗さんに引きずられて(物理的に)彗さんの屋敷に行くことになった。
~~
「うぇるかむです!さぁさぁ寝て寝て」
そう言って彗さんは布団をぽふぽふと叩いて、早く寝ろと言うかのように手招きする。
というか、こんな昼間っから寝るって、本当にこの人はアホなのだろうか。
「寝ませんよ」
「え?寝かせませんよ。って言いました?」
間違いない。この人アホだ。
「やだなぁ、そんな昼間っから~咲雅君そんなこと考えてたんですか~?」
考えてねぇよ。お前の聞き間違いだよ。
「でも仕方ないですよね。咲雅君もそういうお年頃ですもんね」
「………さよなら」
もうやだ、ぼくかえる。
「え、あ、待って下さい~!あやまります。あやまりますから~!」
あやまったってむだだよ。ぼくもうかえるもん。
「今度人里のお団子奢ってあげますから帰らないでください~」
………むっ!団子?
「お団子いくらでも食べていいですから~」
団子が食べ放題?
「彗さん、一緒に寝るだけでいいんですね」
「はいっ!私の抱き枕になってくれるなら!」
むっ、抱き枕か、まぁ俺には団子が待っているんだ。背に腹は代えられない。
「天魔様~!言われてた書類出来ました………よ……」
彗さんと寝ようと一緒に布団に入ろうとしたとき。射命丸さんが扉をあけて部屋に入ってきて──
「あ、あやややや…………し、失礼しましたァ!」
──持っていた書類を全部ぶちまけて、勢いよく部屋から出ていった。
書類がヒラヒラと部屋の中を舞う。
しまった……間違いなく誤解されたな。誤解されるのもしょうがないか、だって彗さんが俺を抱き枕にしようと俺に抱きついていたからね。誤解されてもしょうがないよ。
「ありゃりゃ……文ちゃーん!待ってー!誤解ですよー!」
彗さんが射命丸さんを追いかけに行ってしまった。部屋には乱雑に敷かれた布団と散らばった書類。そして独り残された俺だけ。射命丸さんと彗さんを待ってる間に書類でも拾っておこうかな。
~~
「まったく、こんな昼間っから何をやってるんですかあなた方二人は!」
彗さんと射命丸さんが戻ってきたと思ったら、射命丸さんにそんなことを言われてしまった。
そんな射命丸さんも落ち着いて、今は三人で茶を啜っている。
「暇ですね~何しましょうか~」
「確かに暇ですね。 あ、このお茶おいしい」
「ふわぁ、眠ぃ………」
さっきまでドタバタしていて疲れた。なんか眠い。
「え、咲雅君眠いんですか?だったら私と一緒にお寝んn「天魔様いい加減にしてください!怒りますよ!」ふぇぇ、もう怒ってるじゃないですか~」
上司が部下に怒られている。こんなことは天狗の里では日常茶飯事なのだろうか。もしそうだとしたら、天狗の里は大丈夫なのだろうか。まぁそうだとしても、何だかんだうまくいってるだろうな。なんてことを考えつつ、騒いでる二人の方を見やる。
目の前で喧嘩している二人は自分と違って妖怪。天狗だけど、
「咲雅君愛してますよ~!」
「この期に及んでまだ言うかこのバカ天魔ァ!」
「ひぇぇ、おち、落ち着いてぇ!落ち着いて文ちゃーん!」
───紫さん、楽しいとこだな。
物語を一旦落ち着かせる。そんな話にしたい!と思ってたら一ヶ月もたっていた……投稿遅れてすいませんでした。一ヶ月投稿していなかった間にUA数が2700を超え、お気に入り登録者数も十件と、本当にありがとうございます!これからも頑張っていきます。
次回は咲雅君が人里でなんやかんやするお話みたいです。それでは、また次回。