それでは、第二十話、どうぞ。
昨日はバカ天魔の屋敷へ行ったり人里で小町さんと出会ったりして濃い一日だった。疲れて家に帰り、倒れるようにして布団に入ると───
「おかえりなさい。咲雅君」
半裸のバカ天魔がいた。なんなんだこの人。なんで俺の家にいるの。しかも布団に。鍵かかってた筈なのに……恐い。つーか服着ろ。
「さあさあ、一緒に寝ましょ?」
はい?いきなり何なの?一緒に寝ましょ?って。しつこすぎるぞ、このストーカー。
「…………」
「さあさあ」
「やだ」
「強情ですね」
「うん」
「………」
「帰って下さい」
「やだです」
「帰って」
「やだ」
「…………」
「…………」
いかんこのままじゃ埒があかない。このままこれと睨みあってても夜が明けちまうだけだ。どうする………
あ、そうだ、もう一つ布団を敷いてそっちに寝かせればいい。そうすれば、あれも俺と一緒に寝れて俺も抱き枕にされない。
そうと決まればさっそく実行に移すのみだ。さっさともう一つ布団を敷いてそれにあれを寝かせればミッションコンプリートだ。
「彗さん、もう一つ布団を敷くのでそっちに寝てくれません?」
「えー………しょうがないですねー。でも今回だけですよ。次からは一緒のお布団ですっ!」
「次はないですよ?」
「え゛?」
「え?」
~~
朝起きて
隣に天狗
もう嫌だ 咲雅心の俳句。
…………ん?俳句じゃないな。季語がないから川柳だ。まぁいい。兎に角このバカを起こさねば。そう思いバカの上半身を起こし、前後に揺さぶる。
「おい、起きろー。さっさと起きろー。そして帰れ」
暫くバカを揺さぶっていると、バカの首からパキリという聞きなれない音───例えるなら小枝を折った時に聞こえるような乾いた音───が聞こえてきた。
…………もしかして揺さぶっていた震動で首が曲がってはいけない方へ曲がってしまったのではないだろうか………いやいや、頑丈な妖怪の体だ。そんなことがある筈が………
「んにゃ?ふぁ……あ、おはようございます咲雅君……あれ?首痛い」
~~
「あーん……むぐむぐむぐ。んー、おいしいっ」
俺は今彗さんのご飯を彗さんに食べさせている。所謂“あーん”ってヤツだ。
「…………」
「すいません。食べさせて貰っちゃって。首が痛くて………」
いや、彗さんが謝る必要は無いのだ。朝彗さんを起こそうとして彗さんの体を揺さぶり首を変な方向に曲げちゃったのは俺だからな。ほんとに申し訳ない。
~~
朝、いろいろとあったが過ぎてしまえば早いもので、もう日は沈もうとしている。
彗さんは昼頃には首が治り帰っていった。流石妖怪、治りが早い。
まぁ、それはおいといて、夕飯は何にしようか。食材はまだあっただろうか。不安だ。見に行くか。
「………! あ、やっぱりなんもない………」
食材が置いてある冷暗所を見てもあるのは大根くらいだ。大根だけ食べるわけにも行かない。ヘルシーすぎる。
仕方がない。人里まで買いに行くか。ついでに雅嶺の様子も見に行こう。
~~
人里までやって来た。団子屋に行きたい昂る気持ちをなんとか抑え、八百屋へと歩を進める。
「はて、何を買おうか」
今日の夕飯をまだ決めていなかった。簡単な野菜炒めでいいか。
「おっちゃんそこの人参とピーマンと、んー、そこのキャベツをください。あ、あともやしも」
「はいよっ!」
ここの八百屋のおっちゃんは気前がいい。俺がよく行く店ベスト3には入るだろう。まぁ、普段行く店なんてここの八百屋を含め、あと二つくらいしかないが。
礼の言葉を述べ、おっちゃんにお金を渡し、店を後にする。よし、次は雅嶺の家だ。
………あ、俺雅嶺の家の場所しらねぇ。どうしよう。
「おい、そこの君、どうしたんだ?そんな道の真ん中で立ちすくんで」
突然声をかけられ驚き、辺りを見回すと後ろに特徴的な帽子をかぶった女性が立っていた。
「あ、ちょうどいい。すいません、清宮っていう男知ってます?」
「え、ああ清宮君か、知っているぞ。里の外れで何でも屋をやっている清宮雅嶺君だろ?」
「!そうです。そうです。雅嶺です。あいつの家知ってます?俺、あいつの友達なんですけど」
「あぁ、もちろん知っているぞ。清宮君には世話になっているからな。案内しようか?」
「! いいんですか!?お願いします!」
誰だか知らないがとてもいい人に出会った。
~~
雅嶺の家に着いた。雅嶺の家は人里から少し離れたところにひっそりと佇んでいる。隠れ家チックな雰囲気を醸し出している。個人的にはとてもいい物件だと感じる。羨ましい。
俺を案内してくれた女性、上白沢慧音さんはどうやら寺子屋で教師をしている人らしい。とてもいい人だった。
とりあえず、雅嶺を呼び出すか。そう思い扉をノックする。
コンコン
静寂。
「はーい?って咲雅か。久しぶり」
「おう、遊びに来たぜ」
「立ち話もなんだ。まぁ、入れよ」
「ん、おじゃましまーす………おお、なかなか広いな」
「だろ?人里から結構離れてるから物価も安いんだ」
「へぇ、いいな」
「ところで、俺まだ飯食ってないんだよ……」
そう言いつつ、雅嶺は野菜が入った袋をじっと見ている。つまり、そういうことだろう。
「わかったよ。俺がつくる。野菜炒めでいいか?ってまぁ、野菜炒めくらいしか材料的にできないけど」
「おぉ、流石咲雅。わかってるじゃないか。よきにはからえー」
「まったく………」
こんなやり取りがあって俺は雅嶺の夕飯をつくることになった。材料を多めに買っておいて良かった。ギリギリ二人ぶんある。
はぁ、友人に夕飯をつくらせるとは……やっぱり
次の投稿も遅くなるかもしれません。一ヶ月以内に投稿できるといいなぁ……