第七話
幻想郷に来たときと同じように、紫のスキマをくぐり抜けて咲雅の自宅に帰ってくる。部屋は暫く家を空けていたせいか、少し埃っぽい。
「ふ~、帰ってこれた」
ドサッと、咲雅は自室の布団に倒れこむ。
「今年の夏はいろいろあったな……幻想郷か……夢じゃないよな……」
「夢じゃないわよ」
夢じゃないわよ。と聞こえたかと思いきやいきなり、咲雅の目の前にスキマが開き、ドサッという音と共に、ナニかが落ちて来る。実はこのとき、咲雅の腹部に直撃したのだが、彼はまがりなりにも男だ。ここで情けない声を出してはいけないと思い、ぐっとこらえる。
「ごきげんよう咲雅」
「咲夜……」
「フフフ、びっくりした?」
びっくりした?と、突然現れた咲夜は可愛らしく首を傾げる。
「あぁ、びっくりした……それより………そこどいて……そろそろ苦しい………」
咲雅が苦しいと言うのは、咲夜が咲雅の鳩尾のあたりに跨がっていたからである。
「あら、失礼」
そう言って咲夜は咲雅の上から降り、咲雅の寝ている布団の側に座る。
「どうして咲夜がここに?」
咲雅は体を起こして咲夜に問いかける。
「そうね、咲雅と一緒に居たかったからかしらね」
「…………」
咲夜がそういうと咲雅は黙り咲夜をじっと見つめる。それに耐えられなくなった咲夜が口を開く。
「………なによ」
「………鼻血出た……」
「………はぁ?」
~~
「で、これからどうするんだ?咲夜は」
咲雅はティッシュを詰めた鼻を気にしながらも、咲夜に問いかける。
「私も咲雅と一緒に学校とやらに行くわ」
「マジか!? 手続きとかどうしたんだよ!?」
驚いた拍子に鼻から血がまた出てくるが、この際気にしない。
「スキマ妖怪を洋菓子で釣ったら簡単に引き受けてくれたわ」
「………さいですか。 ……じゃあ学校に行くならその服着替えないとな」
咲雅が着替えないとな。と言うのも当然のこと。咲夜はいつも着ている、メイド服で
「そうね、学校で着る制服?は貰ったけどそれ以外の服は持ってきていないわ」
「どうするかな………」
「貴方の服でいいじゃない」
貴方の服でいいじゃない。と咲夜がとんでもない爆弾発言をしたおかげで鼻から出る血の勢いが増すが、この際気n(ry
「流石に俺の服はまずいから買いに行くぞ」
「何で?貴方の服でいいのに」
頭の上に“?”を浮かべる咲夜を横目に見ながら、こいついつもは凄いのにどこか抜けてるんだよなぁ。などと考えつつも、服を買いに行く準備を始める。
~~
咲雅たちは近くのAUだか、EUだか、GUだか、そんな名前の小洒落た服屋に来ていた。が、咲夜は服が多くかなり迷っている様子だ。
「
「あぁ、
「どれにしようかしら」
「店の人に選んで貰えば?」
「そうするわ」
「すいませーん」
と、咲夜の服を選んで貰うべく、店の人を呼ぶと、咲雅の知り合いでもある中年の店主の女性が飛んでくる。
「どうしたの?咲雅ちゃん?
あぁ、なにも言わなくていいわよ、隣の娘の服を選べばいいのよね。もしかしなくてもその娘、咲雅ちゃんの
店主は
「いや違いますよ。とにかく選んでやって下さい」
と、すぐさま否定して早く選ぶよう催促する。
この店主、テンションはあれだが服を選ぶセンスは間違いないので安心していいだろう。と、そんなことを思いつつ咲雅は咲夜の服選びを眺めていることにした。
~~
かなりテンションの高い店主に弄られ咲夜がいろいろ困ったりなどしたが、無事に買い物を済まし、今は帰路についていた。
「なぁ咲夜?」
「何かしら?」
「紅魔館は咲夜がいなくても大丈夫なのか?」
「えぇ、ちゃんとお嬢様に許可とってきたし、雑用とかは美鈴がやってくれるから」
「えっ!?美鈴家事とかできるのか?」
「えぇ、できるわよ。私が紅魔館に来る前は美鈴が全て家事やら門番やらをやっていたみたいだから」
「マジか、実は美鈴ってすごいんだな」
などと雑談しながら歩く咲夜の衣装は服屋に向かうときのメイド服とはちがい、青を基調としたワンピースだった。そして、それを身に纏っている咲夜はどことなく嬉しそうで鼻歌を口ずさんでいた。
~~
家に着いた咲雅たちは、荷物をおろし、咲夜の入れたお茶を飲んですっかり寛いでいた。
「なぁ咲夜~」
「なによ」
「こうしてると俺ら夫婦みたいだよなぁ~」
「へ? えぇっ!?ば、バカじゃないの!?別にうれしいかと聞かれればうれしいと答えるけど………」
「咲夜がデレたー‼ごちそうさまです‼あ、やべ、鼻血また出た…」
と、咲夜が珍しく取り乱すところを見て咲雅はまたもや鼻血を出す。
このあと咲雅は咲夜にからかうなと鉄拳制裁という名の拷問を受けたらしい。
………ともあれこうして、二人の外の世界での生活はスタートしていくのであった。
どうも、agiesです。最後まで読んで頂きありがとうございます。次の投稿ですが、3月3日に雛祭り特別企画を投稿したいと思います。
それではまた次回お会いしましょう。