魔法少女まどか☆マギカ クロスss/2つの風車と7つの宝石 作:がとーショコラ
「仮面ライダーに会っちゃった」
自宅に帰ってから、まどかはその事を含め様々な事を考えていた。人の姿はしていなかったが、優しい人物だということは直感的に分かった。
「そういえば、ママとパパに見せてもらった少年ライダー隊のメダルと似てたな………」
あれが、仮面ライダーV3。世界をBADANから守った戦士の一人。
その人物に会ったと考えるだけで、まどかは僅かな興奮を覚えた。
「また、会えるといいな」
そう願うまどか。しかし、彼女の心は嬉しさだけでなく、不安にも埋もれていた。
「さやかちゃん、魔法少女になっちゃったけど、大丈夫かな………。ほむらちゃんとの事もあるし、喧嘩しなきゃいいけど」
口ではそう言っておきながら、それは不可能だと断定できる自分がいる。
まどかは複雑な気分のまま夜を過ごした。
魔法少女まどか☆マギカ クロスSS
2つの風車と7つの宝石
ー朝ー
マミはベッドの上で目を覚ました。
「あれ?私、いつの間に寝ちゃったんだろう?」
重い瞼を擦りながらリビングへと向かう。
それと同時に、芳ばしく、甘い匂いが鼻を突き抜けた。
「あ、風見さん、おはようございます」
志郎のエプロン姿を見て、朝食を作っていたのだと理解したマミは挨拶をした。
「ああ。おはよう」
志郎はマミをチラッと一瞥して卵をボールの中に入れてかき混ぜ始めた。
「あ、手伝います」
さすがに同居人に食事を作ってもらって自分は何もしないというのはマズイと思ったのだろう。マミは棚からプレートを出した。
「すまないな。だが、今日も学校だろう?先に着替えてきな。準備はしておくから」
「ですが」
「いいから。こっちは同居させてもらってる身なんだ。これくらいさせてくれ」
反論しようとするマミに志郎は微笑みながら言った。
「分かりました。お願いします」
これ以上何か言っても志郎は譲らないだろう。ここで彼とするしないを言い合っている暇があったら別の事を有効活用した方がいいだろう。
そう判断し、マミは再び寝室へと向かった。
10分ほど経って、マミは制服を着、髪を整えて戻ってきた。すると、テーブルの上にはモーニングで出るような豪華な朝食が並んでいた。
「凄い………」
それを見てマミは素直にそう思い、座った。
「冷蔵庫にあった物を勝手に使わせてもらったがな」
志郎がそう言って、マミの向かいに座った。
「あれ?」
ふと、マミはある事に気付く。
「これ、一人分しか………」
「ああ。俺はもう食べたからな。いらないんだ」
そう言って志郎はその場を離れた。
(そんなに風見さんって早く起きたのかしら?)
不思議に思いながらもこんがり焼けたトーストを口に運ぶマミであった。
「それじゃ、風見さん、行ってきますね!」
朝食を食べ終え、出発の準備を終えたマミが靴を履きながら言った。
「ああ。俺もその内行く」
「はい。鍵はお願いします」
「分かっている。あ、少し待て」
志郎は何かを思い出したかなようにリビングへと戻った。
マミが首輪傾げていると、数秒ほどで戻ってきた。
その他には薄い青のチェック柄のテーブルクロスに包まれた箱状の物があった。
「弁当を作っておいた。よかったら食べてくれ」
志郎は少し恥ずかしそうにマミに渡した。
「あ、ありがとうございます!」
突然の事に驚きながらも、マミは喜んで受け取った。
「それじゃ、今度こそ行ってきます」
マミは玄関から出た。
「さて」
その様子を見送った志郎は呟いた。
「連絡を入れるか」
志郎は他のライダーへと電波を飛ばした。
『こちら風見志郎。皆、聞こえるか?』
すると、すぐに全員から返信が来る。
『いくつか情報を共有しておきたいと思ってな。他の皆の情報も欲しいから頼む』
志郎はそこから現状を話し始めた。
魔法少女狩が行われていること、スプレーネズミとクサリガマテントウとの戦いのこと、新しく魔法少女になった人物がいること、魔法少女である巴マミと同居を始めたことなど、最近起こった出来事を全て話した。
『風見さんの所も同居始めたんですか』
そう言ってきたのは神敬介だった。
『俺も?どういうことだ?』
『実は俺も今同居してるんです』
『何?』
敬介からの衝撃の事実に驚く志郎。
『リィズって娘なんですけどね、ドイツから引っ越してきた魔法少女なんです』
『そうか。他の皆はどうだ?』
すると、他はホテルなどを取ってそういった事はしていないとの返事が来た。
『つまり、今魔法少女に一番近いのは俺と敬介という事になるな。他に何か新しく分かった事や変わった事はあるか?』
『ああ、実は』
今度は村雨良が話し始めた。
『《ワルプルギスの夜》って魔女がこっちに来るらしい』
『ワルプルギスぅ?なんだそりゃ?』
城茂が興味津々そうに聞いた。
『なんでも最強最悪の魔女らしく、魔法少女なら知らない奴はいないと聞いた』
各々から驚嘆の声が上がる。
『勝てそうなのか?』
本郷が聞く。
『正直、分からない、というところですね』
『そうか………』
村雨良は全てのライダーを遥かに超えるスペックを持っていた。それに加え、戦士としての覚悟を持った彼であれば負ける事は滅多にない。
仮面ライダー達の認識としてはそうなっていた。
つまり、その村雨良でさえ勝てるかどうか分からない魔女が存在する、という事を意味していた。
『だが』
ここで志郎が一つの疑問を投げかける。
『何故来ると分かっているんだ?魔女は結界の中に潜んでいるんだろう?』
『ああ、それなんだが、強すぎるが故に結界を作る必要がないらしい。奴が来るときは嵐と共にやって来るとも聞いたな』
『そんな奴がいるなんて………』
沖和也が呟く。
『こっちはできるだけの事はやる。通信も常時送っておく。万が一の事があったら、頼む』
村雨良の言葉に全員、了解と答え通信を切った。
「さて」
志郎はチラリと時計を確認した。
「そろそろ行くか」
「ええ。ですのでまた病院に行って検査ですの」
「うへー、休めばよかったのに」
「そんな事したら家の者が余計に心配して面倒ですわ」
「うはー、やっぱ優等生は違いますわ〜!」
「あはは、さやかちゃんってば」
同時刻、教室でまどか、さやか、仁美の3人は昨日の事について話していた。仁美の安全を確認できた2人はとりあえずホッとした。
「でも、どうしてさやかさんとまどかさんがご存知ですの?通報してくださった方は殿方とお聞きしましたし」
仁美がごく普通の質問をする。しかし、まどか達は一瞬ドキッとしながら
「いやー、偶々小耳に貰ってね」
「さやかちゃん、それ、小耳に挟むだよ」
「もう、美樹さんったら」
3人の中に笑いが起こった。
何とか誤魔化した事に2人は安堵した。
「自分が教師、ですか?」
用務員室に着いた時、志郎は和子という教師に呼ばれた。何かと思って行ってみると、なんでも昨日、本来の体育教師が集団幻覚に掛かったらしく、暫く学校に来れないとの事だった。
廃工場事件ー志郎が勝手に命名したーの被害者の一人にいたのだろう、と予測した。
「今、器械体操をしているんです。そこで、過去にやっていた風見さんにお願いしたいのです………」
「ですが、自分は教員免許を持ってないですし、他に体育教師がいるのでは?」
「それが、あれから2年経ったにも関わらず、未だに教員が集まらないんです。特に体育教師が不足してまして、あの先生しかいなかったんです」
「そうなんですか………」
(おそらく、BADANは再生怪人軍団を作る為に無作為に攫ったと見せかけて、できるだけ素体がいい人間を選んでいた、ということか)
「ダメ、でしょうか?」
「いや、構いませんよ。自分でよければ喜んでやらせて頂きます」
「まあ、それではお願いします!」
和子はそう言って頭を下げた。
律儀な人だなと思い、フッと志郎は笑った。
「それで、お礼と言ってはなんですが」
頭を上げた和子が少々恥ずかしそうに言った。
「よろしければ今晩、一杯どうですか?いいお店知ってますよ?」
和子はクイッとグラスを仰ぐ仕草をした。
「すみませんが、それはお断りします」
志郎はただそう言って職員室を出た。
(俺は、昔みたいにもう酔えないもんな………)
人間であった頃に感傷を覚えつつ、志郎は用務員室へと向かった。
一方、職員室ではショックに打ちひしがれる和子がいた。今日、まどか達の朝の会が
「今日は皆さんに大事なお話があります!女性からの誘いは断るべきですか!?それとも断らないべきですか!?はい、中沢君!!」
という和子のヒステリックな声から始まる事が確定した。
あれから2時間が経過し、志郎はスケジュールを確認した後体育館へと向かった。
(さて、そろそろ行くか)
そう思った志郎は服を脱ぎ捨て、備え付けのジャージに着替えた。
「この時間は、ほむらのクラスか」
自分が教える立場とはいえ、器械体操をもう一度やる機会ができた事に志郎は喜び、鼻歌を歌いながら向かった。
キーンコーンカーンコーン………
10分後、授業開始を告げるチャイムが鳴った。
生徒達は体育館のステージの前に集まった。
志郎は体育館に入り、自己紹介を始めようとした。
「あー、今日からしばらく君達の体育を見ることになった」
「あーーーーー!志郎!?え!?何で!?どうして!?」
が、途中で聞き覚えのある声が聞こえ、それは中断された。
「はぁ………」
志郎は溜息を吐いた。
(このクラス、ほむらだけじゃなくてさやかもいるのか………。それによく見たらまどかと、あの仁美って娘もいるな。 密度濃すぎないか?)
と、志郎は内心で突っ込みつつ、さやかに自己紹介中に茶々を入れるなと注意した。
「で、だ。何で俺が皆の体育を見ることになったかというと………………というわけだ」
志郎は事情をあらかた説明した後、ちょっとした質疑応答に入った。
質問は中学生らしく何歳だとか何処に住んでいるだとかそう言ったものが主だったが、改造人間かつマミの家に居候している身である志郎は適当に答えをはぐらかすことしかできなかった。
そんな中、さやかがある質問をした。
「志郎は彼女いるのー?」
「それを聞くか。残念ながらいないぞ」
ザワザワザワ………
急に生徒達ー主に女子ーが騒めき始めた。
「さて、そろそろ終わって授業に入るぞ。と言っても俺は教えるのは初めてだから今日は皆がいつもやっている事をやってくれ」
その後の志郎の、解散、という合図に合わせて生徒達は準備をして競技を始めた。
〜30分後〜
「そろそろか」
時計を見た志郎はそう呟いた。
「皆、集まってくれ!」
体育館に響くように志郎は言った。
生徒達は1分足らずで志郎の前に集まる。
(本当にいい子達だな)
内心、感心しながら志郎はある決意をした。
「今日の授業はここまで。授業終了まで15分あるわけだが、ここで皆に見本を見せたいと思う」
志郎がこう告げると、生徒達は驚いた。
「風見先生って器械体操できるのか!?」
男子生徒が質問する。
「まあな。これでも学生時代はやっていたんだ」
「おお〜!」
「すげ〜!」
「素敵〜!」
男女構わず色々な生徒から驚嘆の声が上がった。
志郎はそれを一身に受け、準備を始めた。
「さて、始めるぞ」
手始めに志郎は“ゆか”から始めた。
キーンコーンカーンカーン…………
授業の終了を告げるチャイムが鳴った。体育館内は静寂に包まれていた。
皆の視線はただ志郎にのみ集まっていた。
かつて『マットの白い豹』の異名を持っていた彼だ。この程度は朝飯前だった。
「さて、これで終わる。各自解散だ。器械は片付けなくていいぞ。あ、あと鹿目まどかと美樹さやかは昼放課時に用務員室に来るように」
志郎はそう言って、志郎は体育館を後にした。そんな彼の背中を盛大な拍手が見送った。
次の時間、志郎はマミのクラスの授業をした。
昼休みを告げるチャイムが鳴った。
志郎は用務員室でまどか達が来るのを待ちながら神敬介と連絡を取り合っていた。
『なるほどな。そのリィズって娘はそんな能力を持っているのか。それで、そんな願いをしたからあんな事が起きたのか』
『ええ。俺達の知らない所で、案外魔法少女に助けられてるのかもしれませんね』
『確かにな。敬介、他に何か分かったことはあるか?そっちでも魔法少女狩がある、とか』
『いえ、ないですね。ただ、少し気になることがあるんです』
『気になること?』
『ええ。ソウルジェムのことなんで』
敬介がここまで言った時、用務員室の扉が大きな音を立てて開いた。
「ヤッホー!志郎、さやかちゃんが遊びに来てやったぞー!」
と、さやかが勢いよく入って来て、その後ろからまどかが来た。
『すまん敬介。用事ができた。一旦切るぞ?』
『分かりました。それではまた後で』
志郎は通信を切ってからまどか達の方を向いた。
「さて、君たちを呼んだのは他でもない。魔法少女についてだ。とは言っても、ここじゃ大きな声で話せないからな。2人ともマミの家を知っているか?」
「おうともさ!でも、何でマミさんの家なの?」
「そこの方がいいだろう?17時に集合でいいか?」
「もちのろん!!」
胸を張るさやか。しかし、まどかが遠慮がちに
「さやかちゃん、補習があるんじゃ………」
と言った。
「ガーーーーーン!そうだった………」
そう言って、先ほどとは変わってヘタリ込むさやか。
「何の教科がかかったんだ?」
志郎がまどかに聞く。
「英語と数学です。さやかちゃん、2つとも赤点だったんです」
「マジか………」
驚きのあまり、志郎の口調が崩れた。
「補習なんて物がなければ………!」
さやかは本気でショックを受けているようだった。
その様子を見た志郎がため息をつきながら
「さやか、お前、昼飯は食べたのか?」
と聞いた。
「え?うん。何で?」
「5時間目まで40分ある。俺ができる限り教えるよ」
「うそっ!?」
「本当だ。嫌ならいいが」
「やるやる!是非やらせていただきます!!」
そう言ってさやかは猛スピードで用務員室を出て行った。
「はあ、元気がいいというか、表情がコロコロと変わるやつだな」
「あはは」
志郎の言葉にまどかは苦笑しながら頷いた。
あれから1、2分後にさやかが両手いっぱいに教材を抱えて帰ってきた。
「それじゃ、志郎!お願い!!」
「ああ。見せてみろ」
さやかは志郎にワークとテストを渡し、対面に座った。
「さやか、お前、テストの時何かあったのか?」
心なしか、テストを見た瞬間志郎の顔が青ざめたかのように見えた。
「な!?さやかちゃんは必死にやってこれだぞ!?」
志郎の言葉が心外なのか、さやかが反論する。
「だが、これは、なぁ………」
志郎の目には
『数学 美樹さやか 15点』
『英語 美樹さやか 20点』
の文字が映っていた。
(これは徹底してやらんといかんな)
そう思う志郎であった。
予鈴が鳴った。
「今日はこれまでだ。ここまでやれば補習も何とかなるだろう」
そう言って志郎は席を立ち、スケジュールを確認した。
「し、しんらうぅぅ………」
かなりの量を詰め込まれたのか、さやかは頭から湯気を出しながら机に突っ伏していた。
「さて、と。俺は今から授業があるから行くが、君達も早く帰れよ?」
「あ、はい」
それまで志郎のレッスンをさやかの横で聞いていたまどかが返事をして、さやかに肩を貸して用務員室から出て行こうとした。
「うひ〜、ひろう、ありあほね〜」
呂律が回らないさやかが何とか感謝の意を志郎に伝える。
「ん、まだ礼を言ってもらうには早いぞ?帰りの会から補習までに40分あるからな。もう30分やるぞ。内容は、さっきやった所の確認だな」
瞬間、さやかは真っ白な灰になって崩れ落ちた。
志郎は体育館へ向かうべく廊下を歩いていた。
「!?出てきたらどうだ?」
何かに気付いたのか、足を止め、ゆっくりと振り向く志郎。すると、物陰からほむらが出てきた。
「生きてたのね」
冷たい口調でほむらが言う。
「まあな。誰かさんが解毒剤をくれたから再変身できた」
「そう………。風見志郎、貴方は何者なの?」
志郎の目を真っ直ぐ見据えながら質問するほむら。
「俺は俺だ」
「適当に答えないで。貴方の目的は何なの?何故この見滝原にいるのかしら?」
「それは答えれないな。だが、君達の敵になるつもりはない。むしろ味方のつもりだ」
「…………。簡単に味方だとか口走らないでもらえるかしら?そういった事を軽く言う奴ほど信用できないのは身にしみて分かっているから」
「これは厳しいな」
肩を竦める志郎。
「だが、少なくとも俺たちはどこまでいっても人間の味方だ。それが魔法少女だろうが関係ない」
「本気で言ってるのかしら?」
「本気だ」
「…………。そう」
「簡単に信用できないのは分かっている。だが、俺達は人間の自由と平和のために戦ってきたことは事実だ。これだけは忘れないでほしい」
「分かったわ」
そう言って、クルリと反転し、志郎に背を向けるほむら。
「風見志郎、明日の夜、風見野に行く事を勧めるわ」
「ほう。それは何故だ?」
「秘密よ」
ほむらはそう残し、文字通りその場から消えた。
キーンコーンカーンカーン………
それと同時に授業開始を告げるチャイムが響く。
「風見野、か。たしか、杏子がいた所だな」
そう呟く志郎であった。
つづく
ここにきて話のペースがかなり落ちました………。
この第7話だけがあと何回続くのか………。