魔法少女まどか☆マギカ クロスss/2つの風車と7つの宝石   作:がとーショコラ

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お久しぶりです!
漸く完成しました!
スローペースではありますが執筆は続いているので気長に待っていただけると幸いです。
では、お楽しみください!


第9話 魔法少女の真実 ②

「志郎さんはああ言ったけど………」

 

マミは夕食を作りながら考え事に耽っていた。

 

「美樹さん、心配だわ」

 

コトコト、と鍋の中のシチューが美味しそうな匂いを出す。

 

「志郎さんもまだ帰ってきてないし………」

 

マミが鍋の中を確認しながらそう言い、皿を出そうとした時、急にテレパシーが入った。

 

(マミ、大変だ!さやかと杏子が戦闘を始めそうなんだ!!)

 

(え?美樹さんと佐倉さんが?)

 

(そうなんだ!早く来てくれ!!)

 

(分かったわ。今行く。場所を案内してちょうだい!!)

 

マミは火元を止めた後、窓から飛び出して現場に向かった。

 

魔法少女まどか☆マギカ

クロスSS 2つの風車と7つの宝石

『魔法少女の真実、美樹さやか崩壊の章』

 

杏子とさやかは人通りの少ない歩道橋の上にいた。

先ほどから空気は張りつめていて、正に一触即発の状態だった。

 

「テメーから売った喧嘩だ、後悔すんじゃねーぞ」

 

杏子はさやかを睨みつけながらそう言った。

 

「だから何?人の道を外れた外道が何言っても怖くないんだけど?」

 

さやかはさらに挑発するように杏子をバカにした。

 

「おい、そろそろいい加減にしとけよ。あたしにも限界ってのがあんだぞ?」

 

杏子が殺気を込めて言うが、さやかは全く怖気付かず欠伸をする動作をした。

 

(こいつ、あの坊ちゃんの家の前にいた時とまるで様子が違う……)

 

不気味さを覚えながら、杏子はソウルジェムを構えた。

 

「やれるもんならやってみなさいよ」

 

さやかもそう言いながらソウルジェムを構えた。

それを見た時、杏子はさやかのソウルジェムに異変を感じた。

 

(あいつのソウルジェム、魔女に近い………?いや、そんなはずは………。でも、あの感じは魔法少女じゃねぇ)

 

杏子は嫌な予感がしながら魔法少女に変身した。

 

「アハッ!あんたが初めての獲物かぁ!!いいよ、私の方が格上だって事、教えてあげる!!!」

 

さやかは狂ったようにそう言うと魔法少女に変身した。

しかし、その姿は昨日とは打って変わるものだった。

白色だったマントは黒とのグラデーションがかかった色になり、髪も美しい青から端々が黄色に変色し、目の色も黄色へと変色していた。

 

「な、お前、その姿………!」

 

杏子は目を見開いた。

彼女がこれまで会ってきた魔法少女にたった1日でここまで変化した魔法少女を見た事が無かったからだ。

 

「すごいね、これ!力がどんどん湧いてくるよ!!アハハハハハ!」

 

そのさやかのような者はそう笑いながら刀を構えた。

杏子もそれを見て槍を構えた。

 

「それじゃ………行くよ!!」

 

さやかはそう言い、杏子に突っ込もうとした。

が、さやかの後ろで一発、銃声が響いた事により彼女は止まった。

 

「そこまでよ、二人とも」

 

それはマミだった。

魔法少女姿に変身し、周りには3丁の銃が出されていた。

 

「貴女達、いい加減に………!」

 

マミがさやかと杏子を説教しようとした時、さやかの変化に気付いたマミは杏子と同様、驚きを隠せなかった。

 

「美樹さん、貴女、その姿は一体?」

 

「ああ、それですか?」

 

さやかはそれを聞き、その場でクルリと一回転して言った。

 

「私、二重契約したんですよ。それで誰よりも強い魔法少女になったんですよ」

 

それを聞き、マミと杏子は信じられないというような顔をした。

 

「二重契約って、何だよ?」

 

殺気を込めながら杏子が聞いた。

 

「ん〜?簡単だよ?QBに願い事をもう一つ叶えてもらうんだよ。二重契約したいって」

 

さやかはケラケラ笑いながら答えた。

 

「それで凄い力を手に入れた。だから、今のあたしは誰にも負けないんだわ」

 

さやかはそう言うとダガーを一本召喚し、マミに投げた。

それは、魔法少女になったばかりの彼女とは思えないほど無駄のない動きだった。

 

「!?」

 

マミは咄嗟にそれを躱すとマスカット銃を構えた。

 

「美樹さん、貴女、今自分が何をしたか分かっているのかしら?」

 

マミは怒気を含ませながらそう聞いた。

 

「ええ。簡単ですよ。私より強い、目障りな奴を殺そうとしたんですよ」

 

さやかはそう言いながら今度はダガーを2本召喚し、マミと杏子に投げた。

 

「クッ………!」

 

「うおっ!?」

 

マミは跳躍し、杏子は伏せてそれを躱した。

 

「おい、マミ!こいつはヤベェ!あたしらで何とかすっぞ!!」

 

杏子はそう叫ぶと、マミもそれに応えた。

 

 

 

 

ほむらと別れた後、志郎はデストロン戦闘員の邪魔により学校から出れないでいた。

 

「フンッ!」

 

志郎は気合と共に100体目の戦闘員にトドメを刺した。

倒しては少し進み、また倒しては少し進みを繰り返していた。

しかし、それでも戦闘員の数は減らず、むしろ増える一方だった。

 

(こいつら、無尽蔵に湧くな。何か理由があるのか?)

 

戦闘を始めて6時間。志郎は息を多少切らしながら考え始めた。

が、その間にも戦闘員は襲ってくる為思考がまとまらないまま時間だけが過ぎていった。

 

「チッ………」

 

志郎は舌打ちをしながら周りを見て、打開策を一つ思いついた。

 

(窓までの距離は約10m。そしてここは3階。行けるか?)

 

志郎は再び状況確認を済ませると窓に向かって戦闘員を倒しながら進んだ。

 

「許せよっ………!」

 

何とか窓まで到達した志郎は周りにいる戦闘員を回し蹴りで突き飛ばし、その衝撃を利用して窓にアタックした。

パリンという音を立てながら窓は割れ、志郎は重力に従って地面に落下した。

 

(これで、何とかなるな)

 

が、着地した直後、表現のしようがない不安が彼を襲った。

それは、哀しさであって辛いような、怒りであって喜びのような、何とも言えないものだった。

 

「嫌な予感がする」

 

志郎はそう呟き、上空にV3ホッパーを飛ばした。

ホッパーから、さやかがマミと杏子に襲いかかっている映像が流れてきた。

 

「何をしているんだ、あいつは………!」

 

志郎は若干の怒りと焦りを含みながらV3に変身し、ハリケーンで現場に向かった。

 

 

 

 

「志郎さん、私も戦えるようにするって言ったけど、どうするのかな?」

 

まどかは自室の机に向かいながら、独り言を漏らした。

が、そんな考えは一瞬にして消えた。

それは、強烈な寒気が走ったからだった。

 

「何、これ………?」

 

ふと、手を見る。

それは、無意識のうちに震えていた。

今までであれば布団に潜り、震えが収まるのを待っていたであろう。

しかし、この数日でまどかは大きく変わっていた。

 

「嫌な、予感がする」

 

根拠は無いが、そう思ったまどかは親にバレないように家を出た。

 

 

 

 

 

「ぐっ!」

 

さやかに蹴り飛ばされ、杏子は呻き声を上げた。

杏子は何とか体勢を空中で立て直し、マミの近くに着地する。

が、これまでのダメージが大きいのか、二人ともボロボロだった。

 

「おいマミ………!こいつ、結構ヤバいぞ………!」

 

杏子が息を切らしながら言った。

 

「ええ、そうね」

 

マミもそれ以上は話すことが辛いといった様子でマスケット銃を杖代わりにして立ち上がった。

 

(美樹さんの言っていた二重契約………。それが何かは分からないけど、今の美樹さんは普通じゃない)

 

マミはそう思いながら、さやかをキッと睨みつけ、マスケット銃を召喚しようとした。

しかし、何も出ず、マミは膝から崩れた。

 

「お、おい、マミ!?」

 

杏子が足を引きずりながらマミの元へと寄る。

彼女の上半身を抱え、頭に付いているブローチ型のソウルジェムを見た。

それは本来の輝きを失い、今にも濁りで埋め尽くされそうなほど消耗していた。

杏子は舌打ちしながら懐からグリーフシードを取り出し、マミのソウルジェムに当てた。

それにより、ある程度は回復できたが、ソウルジェムはまだかなり濁っていた。

 

「あれ?マミさんもう動けないんですかぁ〜?」

 

その様子を見てさやかがケタケタと笑う。

 

「さやか………。テメェ………!」

 

杏子がフラフラしながら立ち上がり、槍を構える。

 

「あれ!?杏子ちゃん、まだやるちゅもりでちゅか〜?もうやめた方がいいんじゃないんでちゅか〜?」

 

さやかが嬉しそうに言う。

その目には優越感があった。

 

「誰が、テメーみたいな奴に………!」

 

杏子は力いっぱい槍をさやか目掛けて投擲した。

 

「はっ!?何してんの!?」

 

さやかはそれを余裕といった様子ではじき返した。

が、次の瞬間、さやかの目の前に杏子が現れ、さやかに飛びつき、右手を持って関節技をかけた。

 

「なっ!?あんた!」

 

さやかの顔が驚愕に染まる。

 

「ああ、そうさ!さっきの槍はただの囮さ!あんたをこうして捕まえるためのな!!」

 

 

「これでテメェも動けねぇだろ!二重契約の事、さっきの事、洗いざらい吐いてもらうからな!!」

 

さやかは一瞬だけ反省した。

こんな奴に遅れを取ったと。

槍に気を取られすぎたと。

が、それを終えた後、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ふふふ………」

 

「な、何がおかしい!?」

 

「あんた、何か勘違いしてない?」

 

「は!?何」

 

杏子が喋り終わる前。

それは、ほんの一瞬だった。

さやかは掴まれている腕を無理矢理脱臼させた。

それと同時に杏子の手が緩んだ隙を見逃さずに体を無理矢理捻って腕を抜き、その反動を利用して上半身だけを器用に捻り、左手を振るうと共に刀を精製した。

 

「なっ!?」

 

そのままさやかは反応が遅れた杏子の右腕を肩から切り落とした。

杏子は傷を庇いながら後方へと跳んだ。

 

「あっははははははは!!ねぇ杏子ぉ!!気分はどう!?昨日まで圧倒してた私に負けるって!!!!」

 

さやかは半狂乱に笑いながら小躍りした。

 

「あ、そうだった」

 

さやかは何かを思い出したのか、踊るのをやめた。

 

「こんなんじゃ使えないもんね」

 

そう言うと、脱臼した右腕を無理矢理押し込んだ。

ゴキッという鈍い音と共に戻す。

 

「こんなもんかな〜」

 

さやかはそう言うと再び刀を精製した。

対して杏子は力が入らないのかその場にへたり込み、動けないでいた。

 

「いや〜、二重契約してよかったよ。まさかこんな力が手に入るなんてね〜」

 

トドメを刺そうとしたのか、杏子に一歩一歩近付く。

杏子は動かず、その瞳はさやかを捉える。

1、2分かけて漸く杏子の目の前に立ったさやかは刀を振り上げた。

 

「これで、私の勝ちィィィィィ!!!」

 

刀が杏子に向かって振り下ろされる、はずだった。

さやかはピタリと動きを止め、背後に現れた人物に話しかけた。

 

「遅いよ〜、志郎〜」

 

「さやか、お前…………」

 

V3は信じられないと言った声音で言った。

ホッパーから送られてくる映像でこれまでの状況は全て確認していたが、それでも信じれないでいた。

 

「何故、こんな事を………」

 

「は?簡単だよ。あたしはね、二重契約して誰よりも強くなったんだ。マミさんよりも、杏子よりも。そして志郎、あんたよりもね」

 

「それを示すためにこんな事をしたのか?」

 

V3の手に徐々に力が込もる。

 

「それ以外に何があんの?」

 

「そうか…………。分かった」

 

V3はそれだけ言うと、さやかに近付き始めた。

 

「お?志郎もやる気?いいよ!ここに転がってる雑魚2匹と同じようにあの世に送ってあげるよ!!」

 

さやかはそう言うと、地面を蹴って腰を屈めてV3に一気に接近した。

 

「これで腕一本!!」

 

V3の右腕を斬り落とすべく、刀を振り上げた。

が、それは空を切った。

 

「あれ?」

 

頭に?マークを浮かべるさやか。

が、次の瞬間、背後に回っていたV3に殴り飛ばされた。

数m飛んだところで漸くさやかは止まった。

 

「志郎、本気でやるなんて、そんなに怒った?ねぇ、怒ったの?」

 

口から血を流しながらさやかが聞いた。

それに対しV3はグリーフシードを取り出し、マミと杏子のソウルジェムの浄化を行なっていた。

 

「ふぅ」

 

浄化し終えたV3は、二人を安静な場所へ置き、ため息を吐きながら腰に手をやった。

 

「お前相手に本気を出すわけにはいかん。それに、これがあればいいしな」

 

V3はそう言ってもう片方の手にある物を見せた。

 

「はっ!?あんた、何して………!」

 

それを見た時、さやかは演技ではなく本当に焦りだした。

V3の手の中にはさやかのソウルジェムがあったからだ。

 

「まさか、カウンターと同時に取るなんて………!」

 

予想もできなかった出来事に、さやかはただ狼狽するだけだった。

 

「………。それが、今のお前の実力という事だ」

 

間を開け、V3が話し始める。

 

「さやか。二重契約だかなんだか知らんが、そんなもので付けた強さは所詮付け焼刃だ。本当の強さじゃない」

 

「だったらあたしにやられたこいつらは何だってのさ!?」

 

「こいつらが本気でやってお前に負けると思っているのか?」

 

「なっ!?」

 

V3のその言葉がさやかの神経を逆撫でした。

V3に勝てると思った幻想を壊され、マミと杏子は手加減していたという事実を突きつけられたからだ。

 

「ふざけんな!あたしがまだこの二人よりも弱いっての!?危険な橋渡って二重契約までしたのに!!」

 

「それが間違いなんだよ、さやか」

 

V3は尚も説得を続ける。

 

「さやか。本当に強くなりたいなら焦る事はない。一歩ずつ前進していけばいい。最初から強い奴なんて誰もいないんだ。俺だって、こいつらだって」

 

「……………」

 

さやかは押し黙った。

 

「さやか、お前は何の為にその力を手に入れたんだ?仲間を傷付けるためか?己が力を誇示するためか?考え直せ」

 

V3はそう言い、さやかに近付いてソウルジェムを手渡しした。

 

「こいつらは俺が面倒を見る。お前はもう帰れ。そして、俺の言った事をよく考えてみろ」

 

V3はそう言うとさやかに背を向け、杏子の元へと向かった。

 

「……………う」

 

ふと、さやかが震えた声で言い始める。

 

「これ………違う…………。あたし…………じゃ………ない」

 

「さやか?」

 

不思議に思った志郎が振り向いてさやかに声をかける。

さやかの眼は普段の青色に戻っていて、変身も解けていた。

そして、何よりも志郎が驚いたのはさやかが震えている事だった。

 

「どうした?」

 

「あたし、こんな、こんな事…………」

 

さやかはそれだけ言うとその場を走って離れていった。

 

「おい、さやか!?」

 

その様子に異常を感じ取った志郎は急いでマミと杏子を抱え、彼女の後を追おうとした。

しかし、そこへ影が一つ。彼の前に現れた。

 

「ここから先は通しませんよ?」

 

「貴様………」

 

志郎の前に現れた影。それはネクスト・デストロンの怪人だった。

それは黒いハット帽を被り、全身外骨格に覆われている、アリに模した怪人だった。

 

「自己紹介をしておきますね。私の名はハンドアリ。盗み専門の怪人なんですがね、今回はとある方の依頼で貴方のお相手をする事になりました」

 

「すまないがお前に構っている暇はない」

 

「あぁ、さやか嬢の事ですか?御安心なさい。我らが同士が迎えに行っている途中ですから」

 

「もう一度言う。そこをどけ」

 

「お断り致します」

 

志郎はこれ以上は無駄だと悟り、溜息を吐いて杏子とマミを地面に寝かせた。

一瞬で二人の状態を確認し、先程よりも顔色が良くなったのを確認した。

フッと、安堵の表情を浮かべた後、ハンドアリを睨みつけ、変身の構えをとった。

 

「おっと、待ってください。これをよく見てください」

 

ハンドアリはそう言うと右手に握った物を志郎に見せた。

 

「そ、それは!?」

 

そこには赤い卵型のソウルジェムがあった。

それは杏子の物と見て間違いなかった。

 

「いつの間に……!」

 

「言ったでしょう?盗み専門の怪人だと」

 

志郎は変身するにも出来ず、身動きが取れないでいた。

 

「ふふふ、いい判断です。もし変身していたらこれを粉々にしている所でしたよ。さあ、構えを解いて降参しなさい」

 

「くっ」

 

志郎は構えを解き両手を挙げた。

 

「さて、次は貴方の命をいただきますか。じっくりとね」

 

ハンドアリはそう言い、ゆっくりと志郎に近付き、残った3本の手で殴りかかった。

 

 

 

 

「はぁはぁはぁはぁはぁ」

 

さやかは無我夢中に走っていた。

あの場所からなるべく早く、なるべく遠くに行きたかった。

杏子と共に橋に登ってから意識を失い、気が付いたら悲惨な状態のマミと杏子、そして自分に対峙するV3がいた。

 

「はぁはぁ、はぁはぁ」

 

ずっと走っていて疲れたのか、さやかは一旦立ち止まった。

呼吸を整えようと深呼吸をする。

が、うまく出来ずに噎せてしまい、その勢いで胃の中のものを吐き出した。

幸い周りには誰もいなかったが、ツン、とした臭いがさやかの鼻を擽った。

 

『二重契約して手に入れた力はどうだい?』

 

そんなさやかに、どこから現れたのか、QBが話しかけてきた。

 

「なん、なの、あれ?」

 

息も絶え絶えに、さやかは聞いた。

 

『僕自身、二重契約して貰ったのは初めてだったからね。まさかこんな事二重契約なるなんて思ってもいなかったよ』

 

「だから、何が、あったの」

 

『こんなに凄い力なら他の娘にも薦めてみるのも手だね』

 

「QB!!」

 

さやかの質問をのらりくらりと躱すQBに苛ついたのか、さやかがQBに距離を詰めた。

 

「だから!二重契約って何があったの!?」

 

『簡単だよ、美樹さやか』

 

QBはやれやれと言った感じでさやかの顔を見上げた。

 

『君の魂が二分割されて新しい君が生まれたのさ。今まで抑圧されてきた人格が、魂の分離によって新たな生を受けたと言ってもいい』

 

「どういう、こと………?」

 

事務的な説明。だが、予想もしなかった答えにさやかはたじろいた。

 

『君たち魔法少女のソウルジェムは君たち自身の魂なんだ。1回目の契約は契約者の魂をソウルジェムへと変換して魔法少女にするんだよ』

 

「嘘、でしょ?」

 

そうであって欲しい。そう願いながらさやかは聞いた。

 

『事実だよ』

 

が、その一言で希望が打ち砕かれた。

 

『そして、2回目の契約。これは今回分かった事なんだけど、魂を半分にして、そこに今までさやかが隠してきた“自分”に与えられた。隠してきた“自分”。人間風に言うと《醜い自分》だったり《知られたくない自分》といった物を顕在化したんだ。君で言うとマミや杏子、志郎に抱いていた劣等感によって生じた、歪んだ新しい自分が精製された。ただ、生まれたばかりで人間的倫理観が無いから優越感を覚える為だけに戦う、まるで狂戦士のような人格だけどね』

 

「あ、う、う、嘘、うそよ、そんな、そんなの」

 

足元がふらつきながらさやかは言った。

 

『事実だよ。現に君は自分が何していたか分からなかった。それはさやかの肉体が新しく生じたさやかの人格に使われていたからさ』

 

さやかは何も言えなかった。ただ、目を見開き過呼吸に陥っていた。

 

『ソウルジェムを卵型にして見てみるといい。今のさやかのは青と黄色が混ざったグラデーションのかかったものになっている。黄色の部分は君の新しい人格の部分を表している』

 

ここでQBは一呼吸置いて、さやかに一つ質問した。

 

『二重契約して手に入れた力はどうだい?気に入ってくれたかい?さやか』




二重契約。
ソウルジェムの正体。
次々と知らされる事実に、さやかの心は疲弊していく。
そんな時、親友の志筑仁美から告げられた言葉にさやかは……。

次回『彼女の人生』
ご期待ください。
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