魔法少女まどか☆マギカ クロスss/2つの風車と7つの宝石 作:がとーショコラ
では、第4話。お楽しみください!
*追記:加筆しました。魔女の性質及び名称、簡単な説明を加えました。
織莉子とキリカに会った日、志郎は風見野のホテルに泊まり、次の日の朝に出発した。
「風見野。そこそこ広いな・・・。」
GT750を走らせながらひとりごちる。
(少しペースを上げた方がいいか)
そう思いギアを上げようとする。が、
「ど、ドロボーーー!!!」
と、後方から聞こえた。
「泥棒?一応行くか。」
バイクを得意のUターンで急速に方向を変える。そのまま志郎は速度を維持したまま悲鳴のした方へ向かった。
風見野の繁華街から少し離れた廃ビルの影。少女ー赤髪で長髪ーはそこにいた。
「へっ!足で私に勝てるわけねーだろ。」
まさに余裕といった表情をする。その右手には大きく赤々としたリンゴが2つあった。
「ヘヘッ、久々の食事、だな。」
そう言って少女はリンゴにかぶりつこうとした。
「そのリンゴは盗んだものだろう?」
口を付ける直前、男の声がした。
バッ!とその向きに振り返る少女。そこには高身長のセミショートの男が立っていた。
「だったら何だよ?これはもう私のもんだ。」
どうせこいつは見掛け倒しで自分には勝てるわけがない。
そう高を括っていた。
「もう一度言う。それをあのおじさんの元へ返してこい。」
志郎は一歩近づいた。
それと同時に少女は反対方向に走り出した。
「じゃ!私はこれで!」
直後、男は高く跳躍して少女の行く手を阻んだ。
「んな!?あ、あんた人間かよ・・・!」
「一応な。それより、さっさとそれを返してきたらどうだ?」
「同んなじことを何回も!うるせぇんだよ!」
そう言って少女は殴りかかった。しかし男はそれを軽やかな動きで避け、少女を羽交い締めにし、一気に力を入れた。
「うぅ〜!!ギブギブギブ!!」
もう逃げないだろう。そう確信したのか男は少女の身体を解放した。
「あ〜、イテテ。私も焼きが回ったか?こんなおっさんに捕まるなんて。」
少女はさも悔しそうに言い、リンゴを渡した。
「なぜ盗みなんかを?」
「ああ?生きるために決まってんだろ?」
「親はいないのか?」
「・・・・・・。いねーよ。そんなもん。」
悲しそうな少女の声。男はかつての自分の姿を彼女に重ねた。
「そうか。すまない。」
「別に気にすることはないさ。それより、リンゴ持ってくんだろ?早く行けよ。」
そう言って少女は走り去った。その後ろ姿を見て、男はある決断をした。
「おい!」
ピタリ。少女が止まる。
くるりと振り向き、何だよ、と聞く。
「持ってけ。」
そう言って志郎はリンゴ1つと財布を投げ渡した。
「おい、どういうつもりだ・・・!こんなもん渡して、何が目的だ!?」
少女は犬歯をむき出しにしながら叫んだ。
「別に。どうという事はない。大した金はないがしばらくは生活できるだろう。盗みを止めるというならやるよ。」
「・・・・・・・・・。」
「どうするんだ?」
「・・・・・・分かった。」
まるで蚊のなくような声。しかし、男の耳には届いていた。
「そうか。じゃあな。」
その場を去ろうとする。だが、次は少女が呼び止めた。
「あ、あんたの名前、何ていうんだ!?」
「風見・・・志郎だ。お前は?」
「佐倉杏子だ!」
これが彼らのファーストコンタクトだった。
魔法少女まどか☆マギカ クロスSS
2つの風車と7つの宝石
ほむらやマミとの出会い、魔法少女と魔女の存在を知った次の日。まどかはいつも通りの朝を迎えていた。
定時に起き、父親に挨拶し、弟と共に母親を起こしに行く。その後着替え等を済ませ、家族4人で父親の作った朝食を食べる。
鹿目家では、夫は専業主夫、妻はキャリアウーマンという形で成り立っている。
そんな当たり前の日常。しかし、誰も知らないことを自分だけが知っている一種の疎外感をまどかは感じていた。
「んじゃ、そろそろ行くわ。」
まどかの母親ー詢子ーは立ち上がり、父親ー知久ーと弟ータツヤーとキスをした後、まどかとハイタッチをした。
「よっし!じゃ、行ってくる!」
「「「いってらっしゃーい!」」」
「ほら、まどかもそろそろ時間だよ。」
「ふぇ?あ、本当だ!行ってきまーす!!」
「「いってらっしゃーい!」」
「ハァハァハァハァハァ。」
まどかはさやかと仁美との待ち合わせ場所に向かって走っていた。
「お、来た来た。まどかー!おっそーい!!」
「ごめんね、さやかちゃん、仁美ちゃん!遅くなっちゃって。」
仁美は気にしないでくださいまし、と、さやかは早く行くよ、と言い、歩き始めた。
(ねぇ、まどか。昨日の、夢じゃないよね?)
仁美と話していると、不意に頭の中にさやかの声が響いた。
(え?どうしてさやかちゃんの声が?)
(僕が中継してるんだよ)
(ふぇ?)
まどかがふと左右を見ると遥か先にマミとその肩に乗ったQBを見た。しかし、彼女の近くを通る誰もがそれに気付ていないようだった。
(僕は素質のある娘にしか見えないからね)
まどかの疑問に答えるようにQBが言った。
学校に着いたまどかとさやかはマミから連絡を受けた。
それは、昼休みに屋上へと来るようにというものだった。ただし、ほむらは呼ぶなという条件付きで。
(やっぱりほむらちゃんがQBの事を嫌っているからかな?)
そんな事を思いながらまどかも了承した。
昼休み、まどかはさやかと共に屋上へと行った。そこではすでにマミとQBが待っていた。
「マミさん、お待たせしました!」
「私も今来たばかりよ。」
そこからマミ、まどか、さやかという順で並んで弁当を食べ始める。
「今日、2人を呼んだのはね。」
数分経った時、マミが口を開いた。
「今日、2人に集まってもらったのはもう少し魔法少女について詳しく話そうと思ったの。」
「もう少し詳しく、ですか?」
「ええ。昨日、帰りに美樹さんにも少し話したんだけどね。QBについても知ってもらいたいこともあるし。」
「だからほむらちゃんを?」
「暁美さんはQBの事嫌いみたいだから。」
クスクスと笑うマミ。
そこへさやかが不機嫌そうに口を挟んだ。
「ねぇマミさん。早く魔法少女について話して欲しいんだけど・・・。」
「あら、ごめんなさい。それじゃ、話すわね。」
コホン、と軽く咳払いし、真剣な表情で話し始めた。
「昨日話したように私たちはQBと契約することによって魔法少女になるの。そして、魔女を倒すことでえられるのがグリーフシード。これは魔法少女の命と言っても過言ではないの。これは暁美さんが昨日言ってたわね?」
まどかとさやかは頷いた。
「だからグリーフシードを巡って魔法少女同士で縄張り争いがあることも珍しくない、とも言ってました。マミさんも・・・。」
私も何度か戦ったことあるわ、とマミは悲しそうに笑いながら付け加えた。
「だからマミさんはほむらちゃんが一緒に戦おうって言ったとき・・・。」
「そう。私のようなタイプの魔法少女は少ないからね。驚いたのよ。」
マミとほむらが肩を並べて共に戦う。それはまどかにとって嬉しいことでもあった。
「私は、反対かな。マミさんと転校生が共闘するってのは。」
さやかが影を落としたような声で言った。
「だって昨日QB襲ってたじゃん。」
「さやかちゃん、それは」
「それは昔QBにひどい目に合わされたって言ってたって?
でもそれも本当かどうかなんて分かんないじゃん。それにQBは願いを叶えてくれるんでしょ?だったらあいつはそのチャンスを潰してるってことじゃん。それに」
「美樹さん。」
マミが険しい顔つきで止めた。
「いくらなんでも言い過ぎよ。」
「で、でもマミさん!」
「美樹さん。」
有無を言わさないほど強い口調。さやかはその気迫に黙るしかなかった。
「そ、そうだマミさん、今日からやる魔法少女体験講座って・・・。」
まどかがおどおどした様子で尋ねる。
「あら、そのことも話さないとね。一応放課後にって暁美さんと決めたんだけど、どうかしら?」
「放課後なら大丈夫です。さやかちゃんは?」
「・・・私も大丈夫。」
「それじゃ、放課後にまたね。」
マミがそう言った直後、予鈴がなり、3人は教室へと戻っていった。
この時、彼女たちは知らなかった。この日に起こる最悪のことを。いや、一人の少女を除いては。
(おかしい・・・・)
志郎は違和感を感じていた。風見野を出発して早3時間。すでに昼を回っていた。しかし、志郎は風見野に着かないでいた。
チラリとメーターを見る。出発前にリセットした針は90を指していた。
(デストロンにこんな能力を持った奴はいない。となると、別の組織の怪人か?)
バイクを止め仲間と連絡を取ろうとする志郎。
(こちら志郎。こちら志郎。聞こえるか?もしもし?もしもし!?)
結果から言えば音信不通となっていた。
「おかしい。通信は俺たちにとって基本設計だ。どこにいても届くはず。」
ここまで言ってあることに気付く。
「景色が変わっている・・・?」
その言葉を合図にしたかのように、志郎の周りの空間が揺れ、メルヘンチックなものへと構成されていく。それはまるでおもちゃ箱の中のような異様な空間だった。
何なんだここは、と不審に思った志郎に悲鳴が聞こえた。
思考を切り替え、GT750をその場所へと走らせた。
一人の幼女が、下半身が船、上半身が人間の化け物に襲われていた。
その化け物が口を開け、今にも幼女の頭にかぶりつこうとしたその時、一台のバイクがそれを引き飛ばした。
「お嬢ちゃん、大丈夫か!?」
そのバイクの運転手ー志郎ーが幼女に声をかける。
「あ、あ、あ、あ」
「ショックで声が出ないのか。仕方ない。」
志郎は一旦GT750から降り、その幼女をおぶった。その状態で、GT750に備え付けてある紐で自分の体を結んだ。
だが、そうしている間に周りには先ほどと似たような形の化け物が何十何百と出現し、今にも襲ってきそうな雰囲気だった。
「チッ、雑魚どもを相手にするほど暇じゃないんだがな。」
そう言って志郎は幼女に負担がかからない最小限の動きで化け物の攻撃を回避・反撃を始めた。
(チッ、何だこいつらは?組織の戦闘員というわけでもなさそうだし。それに)
そう思いながら志郎は高く跳躍し、化け物の攻撃を回避した。この時、化け物が直線的な攻撃しかしてこないことに気付いた志郎は自らの経験を生かし、このような行動をとっていた。
(こいつらの目的は何だ?人を殺すことか?)
そう考え、周りを見回しながら着地する。その目には無数の赤い液体と白い物体、そして、ソーセージのようなものが映っており、鉄のような生臭い臭いが充満していた。
何とかそれを幼女に知られまいとなるべく自分の背中に近づけ、視線を塞いでいた。
「ケホッ、ケホッ、ケホッ」
突如、幼女が咳き込んだ。
「大丈夫か?」
志郎の質問に大丈夫、と答える幼女。しかし、自分の身の回りで何が起きているのかは理解できているようだった。
(まずいな。このままだとこの娘の精神がやられてしまう。
それにこの状態では変身することもできない。)
ふと、横を見る志郎。視線の先には一つのドアがあった。
(あそこに行けば出られるか!?)
そう思い、全速力で駆けた。
「さて、魔法少女体験講座第1回、張り切ってやっていきましょうか。」
「イヨッ!待ってました!!」
見滝原のとある喫茶店。マミ、さやか、ほむら、まどかの4人は放課後、ここに集まっていた。QBは他の魔法少女候補の娘に会いに行ってくると言って居なかった。
「あなたたち、特に巴マミ、今から私たちがすることを分かっているのかしら?」
ほむらが厳しい口調で諌める。
「大丈夫よ、暁美さん。今の私にはこの娘達を何としても守るという使命があるもの。」
「そうだぞ転校生!あんたみたいなのとな違ってマミさんは正義の味方なんだから!!」
「はぁ。美樹さやか。あなた昨日巴マミと出会ったばかりでしょ?何故そんなに彼女を信用できるの?」
「あんたと比べたらはるかに信用できるでしょ!」
「さやかちゃんもほむらちゃんも止めてよ。これから一緒に戦うのに。」
さすがに見かねたのかまどかが止めに入った。
ほむらはさやかに即座に謝り、さやかは渋々といった感じでほむらに謝った。
「そ、それじゃ、行きましょうか。」
戸惑ったマミの一言で全員は店を出た。
「私たちはソウルジェムを使って魔女を捜すの。こんな風にね。」
マミはそう言い、ソウルジェムを卵型にして掌に乗せた。それは点滅を繰り返していた。
「この光を頼りにして魔女を追うの。」
「うわ、なんか思ってたのよりも地味。」
そうね、とさやかの反応に対してクスクスと笑いながらマミは答えた。
「ねえ、ほむらちゃん。魔女のいそうなところに目星はつかないの?」
「魔女は人の命を糧に生きているわ。つまり、自殺のしやすそうな所や人気のない所なんかはいることかは優先的にチェックすわるわ。ね、巴マミ。」
「そうね。さらに言えば病院なんかに着くと最悪よ。ただでさえ弱ってる人から生命力を無理矢理吸い取るのだから目も当てられない事になる。」
“病院”という単語を聞いた瞬間、さやかの体が一瞬ビクッとなった。それを見たまどかは不安そうに彼女を見つめていた。
「ッ!!」
魔女捜しをしてから30分。マミの顔が急に険しくなった。
「マミさん、どうしたんですか?」
まどかが不安そうに聞く。
「近いわ。暁美さん、準備しておいて。」
そう言ってマミは駆け出し、他の3人はそれについていった。
志郎はドアを思いっきり蹴ったくった。その勢いで中に入り、姿勢を整える。
「外に出、てはないか。」
忌々しそうに呟く志郎。その眼前には身長3mはある、大きな女の子の形をした何かが立っていた。
ーその魔女の名は「アルベルティーネ」。性質は「無知」。彼女は人を自分の遊び場へと誘いかくれんぼをする。だが、それは人にとって最後の遊びとなる。ー
「まさか親玉が出てくるとな。」
ドアの方をチラリと見るが、すでにそれは消えていた。
「キャハキャハキャハキャハキャハキャハ」
独特の笑い方をしながら近づくアルベルティーネ。
「このままだとヤバイ。どうする?」
焦る志郎を嘲笑するかのようにそれはさらに近づいた。
(やられるっ!)
しかし、それが攻撃してくることはなかった。彼とアルベルティーネの間に赤い色の編み込んだ結界のようなものができたからだ。
「ったく、私らしくねーな。一般人を助けるなんてよ。」
その結界ができると同時に降り立った一人の少女。その姿は赤いノースリーブの上着の下にスカートを履いたものだった。志郎は彼女の後ろ姿に見覚えがあった。
「佐倉、杏子。」
ゆっくりと確認するように言う。それに反応したのかその少女はバッと振り向いた。
「は!?志郎じゃねーか。なんであんたがこんなとこにいんだよ!?」
苛ついたような口調で杏子は聞いた。
「色々とあってな。それよりお前、その姿は」
「詳しい説明は後だ!!今は魔女を倒さなきゃならねーからな!!」
そう言って杏子は前面にいるそれー魔女ーを見据え、手に槍を持ちながら突っ込んだ。
「ハァァァァァァァァァ!!」
気合いを入れながら袈裟斬りにしようとする。しかし、アルベルティーネは素早い動きでバックステップを踏み、距離を取ることでかわした。
「さすがに一発じゃ倒せねーか。」
残念そうに言う杏子。彼女は次の一撃を撃つべく体勢を整えた。
「ギャハギャハギャハギャハギャハギャハ!!」
先ほどと違い、濁音の混じった笑い声を出したアルベルティーネはさらに下がり、無数の大きな箱を出した。そしてその陰に隠れ、‘何か’を始めた。
「何だ?」
杏子はそう言って魔女へと突っ込み、再び切ろうとした。しかし、突如アルベルティーネが何かをしていた地面から一体の化け物が飛び出し、杏子を襲った。
「うわぁぁぁぁ!」
吹き飛ばされ、結界へと激突した。余程強く打ったのか意識が朦朧としており、槍を支えとして立ったがフラフラしていた。
「キャハキャハキャハキャハ!」
アルベルティーネが笑いながらさらに大量の化け物を作り杏子へと攻撃を仕掛けた。
が、化け物たちが杏子を殺すことはできなかった。一台のバイクが杏子の前に来、翼の下にある2つのロケットを発射させたからだ。
アルベルティーネは箱の背後からひょこっと顔を出す。そして、戦慄した。
「もう、貴様らの好きにはさせん。」
一人の男の声。それは志郎が発したものだった。しかし、普通のそれとは違い、強大な殺気を纏っていた。
「覚悟しろ。ヌゥン・・・!」
そう言って志郎は両腕を右へ伸ばし、そのまま左斜め45°まで扇型に回し、右手を腰に付けた後、左手を腰に付け、右手を力強く左斜めに伸ばした。
「変っ身、V3ァァァァ!!」
その掛け声とともに腹部に現れたダブルタイフーンの風車が高速で回転し、志郎の体の構造を作り変えていく。
それが終わった時、そこには一人の戦士ー仮面ライダーV3ーがいた。
「仮面ライダーV3!!」
ポーズを決め、名乗りをあげる。
その後、杏子の作った結界を破壊した。
「杏子、大丈夫か?」
なお立ち続けていた杏子の身体を抱きかかえるように支え、そう尋ねた。
「あ、う、か、風見?」
戯言のように呟き、杏子は気を失った。
「いくらV3になったとはいえ、2人を庇いながら戦うのは少しキツイか。」
そう言って、杏子を抱えたまま幼女の元へと連れて行った。
「このお姉ちゃんの側にいてくれ。もし、怪物が襲ってきたら叫ぶんだ。必ず助けてあげるから。いいね?」
そう言ってV3はアルベルティーネの方を向いた。
「奴がどうやって化け物を生み出しているのかが分からなければ何もできん。ならば」
V3はベルトの左側に付いている筒を取り出した。
「V3ホッパー!!」
ピュルルルルル・・・・
と、高い音が鳴り、上空へと何かが打ち上げられた。
V3ホッパー。それはV3専用の偵察メカで、これを使うことにより、10km四方の情報がV3の超触覚アンテナへと伝へる。
「なるほど。奴は地面に絵を描くことで召喚しているのか。それに、数がどんどん増えている。ならば」
ダブルタイフーンが高速で回転する。
「レッドボーンリング!!」
技名を言った瞬間、V3が跳び、空中で高速回転した。それは赤いタイヤとなってアルベルティーネに突っ込んみ、その状態で体当たりを仕掛けた。
「キァァォァァァァァ!!」
まるで、本物の人間のような悲鳴をあげるアルベルティーネ。まるで痛みから逃げるように身体をくねらせるが、無意味だった。
10秒ほど拮抗した後、アルベルティーネは抵抗しなくなり、V3はその身体を真っ二つに粉砕した。
「グフゥッ!!まだ、だ・・・!」
技自体に相当負担がかかるためか、辛そうに息を吐きながら、次は再び杏子達の元へと向かった。
一瞬で2人の元へとたどり着いたV3は迫ってくる化け物を見て、あれを使うかと呟いた。
「逆ダブルタイフーン!!!!!」
ダブルタイフーンの2つの風車が逆向きに高速回転し、そのエネルギーを化け物にぶつけた。その威力は凄まじく、展開されていたメルヘンチックな空間そのものも破壊しているかのようだった。
シュゥゥゥゥ・・・・
逆ダブルタイフーンが終わった時、そこに立っていたのはV3ではなく風見志郎だった。この技、逆ダブルタイフーンはとてつもない破壊力を持つが、デメリットとして変身するためのエネルギーを全て消費してしまうため使用語3時間は変身できないといったものだ。
「何とか終わったか。」
ふぅ、とため息を吐き、後ろを振り返る。
杏子はまだ目が覚めておらず、幼女もまた何が起きたのか分からないといった感じだった。
「はぁ。仕方ない。見滝原に行くのは明日にするか。」
この状況からしてこうするのが一番だと判断した志郎は背中に杏子をおぶり、GT750を手で引き、幼女には座席に座ってもらった。
「そういえば、お嬢ちゃん。君の名前は何て言うんだ?」
志郎が思い出したように聞く。
「ゆま。千歳ゆま。」
「そうか。ゆまか。いい名前だな。俺は風見志郎だ。よろしくな。」
「うん。よろしく。志郎。」
いきなり呼び捨てか、と志郎は笑い、それにつられてゆまも笑った。改造人間と魔法少女、幼女のという異様な組み合わせの3人はホテルへと向かった。
マミ達は見滝原の廃ビルへと行った。そこに着いた瞬間、とあるものを目撃した。
「マ、マミさん!あれ!!」
さやかが切羽詰まったような声を出し、ビルの屋上を指を指す。その先には今にも飛び降りそうなOLがいた。
「大丈夫、任せて。」
マミはそう言い、魔法少女へと変身し、リボンで結界を作った。
それが完成した瞬間、まるで示し合わせたかのようにそのOLは頭から落ちた。しかし、結界がリボンでできている為か衝撃は少なく、怪我もせずに済んだ。
マミがOLの元へと向かい容態を確認する。
「マミさん、大丈夫なんですか?」
まどかが不安そうに聞いた。
「ええ。大丈夫。気を失ってるだけ。それより見て。」
マミはOLの首筋を見せた。そこにはバラのような模様があった。
「なんですかこれ?」
「何かのマーク?」
「これは魔女の口づけというものよ。」
「「魔女の口づけ?」」
「これをつけられた人間は死を選ぶの。そして、魔女の餌となる。」
「そんな・・・。」
「そのために私たちがいるのよ。ね、暁美さん。」
「ええ。安心して。何があっても守るわ。」
「ありがとう、ほむらちゃん。」
「さ、みんな行きましょ!」
マミの力強い一言を皆頷き、廃ビルへと入っていった。
廃ビルの中は異様だった。入った瞬間に魔女の結界へと変わったからだ。
「そうそう。美樹さん達は何か持ってる?」
唐突にマミが聞いた。
「私はバットを持ってきました!!」
補助バックの中からドヤ顔で金属製のバットを取り出すさやか。それに対してまどかは首を横に振るだけだった。
「そう。美樹さん、バットを貸して。」
さやかは頷きバットをマミに渡し、マミは魔力をバットに流し込んだ。するとどこにでもあるようなバットが可愛らしい棒状の物へと変わり、さやかへ返した。
「これで少しは自分の身を守れるはずよ。降れば微弱だけど結界を作ってくれるから。」
さやかはありがとうございますと言って受け取った。
「魔女はこの奥よ。早く行きましょう。」
冷静な声でほむらが言った。
結界の最深部へと向かって走る4人。時折襲ってくる化け物ー昨日まどか達を襲ったものと同じものーを相手に、マミとほむらはマスケット銃、マシンガンをそれぞれ撃ち、さやかはバットを振り回し、まどかはさやかの後ろに隠れていた。
「そ、そういえばマミさん。さっきから時々襲ってくる奴らは何なの?」
息を切らしながらさやかが尋ねる。
「あれは使い魔よ。簡単に言えば魔女の手下。でも放っておいたら人間を襲うし、成長すると元の魔女と同じ魔女になるからなるべく倒さなきゃダメなの。そして」
そう言うとマミはドアの前に一度立ち止まった。
それに続き立ち止まる3人。
「ま、マミさん。どうしたん、ですか?」
息も絶え絶えにまどかが聞いた。
「このドアの向こうに魔女がいるわ。」
瞬間、まどかとさやかは緊張した顔になる。
それを見たマミはクスリと笑って、怖いかしらと聞く。
「なんてことねぇって!」
「マミさんとほむらちゃんがいるから大丈夫です!」
とまどかとさやかが答える。
マミとほむらは一度視線を交わし、互いに頷いてからドアを開けた。
そこには粘液とバラにまみれた頭、ワンピースにも皮膜にも見える胴体、毒々しいまでに巨大な蝶の翅、下部の無数の触手という、女とは思えない醜怪な姿をしたものがいた。
ー魔女の名は「ゲルトルート」。その性質は「不信」。彼女の薔薇庭園を模した結界に足を踏み入れたならばそれを全力で排除しに来るだろうー
「うわっ、グロ。」
「あんなのと戦うんですか?」
さやかが感想を言い、まどかが心配する。
「ええ。大丈夫よ。負けるもんですか!」
そう言うとマミはほむら、まどか、さやかの3人の周りに結界を張った。
「ッ!巴マミ!?」
ほむらが驚愕したように言う。するとマミは微笑んで、
「ごめんなさい暁美さん。でも、今回は私一人で戦わせて欲しいの。」
「ハァ。危なくなったら私も参戦するわ。」
それは了承を意味する言葉。それを聞いたマミはありがとうと言ってゲルトルートに対峙した。
しかし、ゲルトルートの方はそれに気付いていない、もしくは気にしていないのか、はんのしなかった。
そこでマミは足元にいた小さな使い魔を1体踏み潰した。すると、ゲルトルートがゆっくりとマミの方を見、グォォォォォと雄叫びを上げた。
それに対しマミは臆することなくスカートの端をつかむ。するとそこから2丁のマスケット銃が出てきた。
魔女と魔法少女。その戦いの火蓋が今、切って落とされた。
先に仕掛けたのはゲルトルートだった。羽を大きく羽ばたかせ、マミに突進していった。だがマミはそれを華麗に避け、マスケット銃を召喚しては撃ち、召喚しては撃ちを繰り返した。しかし、ゲルトルートもそれを避けた為、壁や地面に穴ができるだけだった。そのため、互いに決め手を欠いていた。
「ッ!あら?」
着地した直後ゲルトルートの攻撃を回避するために跳躍しようとしたマミがある事に気付いた。足に無数の使い魔がおり、マミの動きを封じていたのだ。それが一本のロープのようなものとなり、端がゲルトルートと結合してマミを持ち上げてから地面に叩きつけた。
「マミさん!!」
まどかの悲痛な叫びが結界内を木霊する。
「大丈夫よ。」
マミはそう一言告げてから新たにマスケット銃を生成し、ロープを撃って分断した。
ゲルトルートはそれを見てさらなる攻撃を仕掛けようとする。しかし、
「無駄よ。」
とマミが言うと、先ほどあけた穴から無数のリボンが出てきてゲルトルートを拘束した。魔女はもがくがリボンが頑丈な為か一本も千切れずにいた。
「残念だったわね。」
マミはそう言い、一際大きなマスケット銃を召喚した。
「ティロ・フィナーレ!!!」
巨大な銃口から発射される巨大な弾。それがゲルトルートの身体を貫き、爆散させた。すると、魔女の結界は消え、また、マミの作った結界も消えた。
「勝ったの・・・?」
「す、凄い・・・!」
ささやかとまどかが震えた声を出す。
「3人共、大丈夫だったかしら?」
マミがまどか達に近づきながら聞く。
「大丈夫っすよ、マミさん!!」
「私も大丈夫です!」
まどかとさやかが安全を伝える中、ほむらだけが冷徹な表情を崩さないでいた。
「ほむらちゃん?どうしたの?」
心配そうにまどかが聞く。
「巴マミ、分かっているわね?」
まどかの質問には答えず、ほむらはマミに尋ねた。
「当然分かっているわ。そろそろ出てきたらどうかしら?」
とマミが言い、後方を振り向く。すると、物陰から‘何か’が出てきた。
「シャシャシャシャシャシャ!シャシャーーー!!魔法少女!!貴様らの戦い、見させてもらったぞ!?この女を殺されたくなければ俺と勝負しろ!!」
それは、磁石イノシシだった。磁石イノシシは右手で先ほどマミが助けた女性を引きずっていた。
「あら?人質をとっている割には面白い条件じゃない。ねぇ、暁美さん?」
マミがいつもと同じ口調で、しかし、顔を憤怒に染めながら言った。
「そうね。私たちと戦いたいだなんてね。」
「そんなことはどうでもいい。やるのかやらないのか答えろ!!」
磁石イノシシはしびれを切らしたのか大きな声で聞いてきた。
「答えは当然yesよ。でも、条件があるわ。先にその女性を解放しなさい。」
マミが言った。
「ふん!いいだろう!!」
磁石イノシシはそう言い、女性をマミ達の方向へと投げ飛ばした。
「美樹さんと鹿目さんはその人を連れて逃げなさい。」
「マミさん達は?」
「今のあなた達は邪魔よ。」
マミとほむらがそう告げる。
「う、うん。分かった。マミさんもほむらちゃんも気をつけてね。」
そう言ってまどかとさやかは2人で女性を抱え、逃げていった。
「さて、行くわよ暁美さん!!」
「ええ。足を引っ張らないでね、巴マミ。」
2人は磁石イノシシとの先頭を開始した。
助けられた女性は廃ビルを出た瞬間に目を覚まし、まどかとさやかに礼を言った。まどか達は一応それを受け取った。その後、廃ビル内で大きな爆発音が響き、3人は走ってその場を離れた。
「ねぇ、さやかちゃん、マミさん達大丈夫かな?」
「やっぱり不安だよね・・・。」
「戻ろうよ!」
「でもマミさんや転校生の邪魔になるだけだよ。」
「・・・・・。」
「今は2人を信じて待と?」
「・・・うん。」
廃ビルを離れて少し経った時2人はこのような会話をしていた。
マミ達に加勢したい。しかし、自分達には何もできない。
そんな無力を噛み締めながら。
ふと、まどかが遠くを指差す。
「あれ、ほむらちゃんとマミさんじゃない!?」
「本当だ!!やっぱり無事だったんだ!!」
おーいとまどかとさやかは走りながら近づいた。
魔法少女が負けるはずないんだ。そんな淡い期待を描きながら。しかしそれはものの無残に葬りさられた。なぜなら、ほむらとマミの制服は所々破れており、擦り傷や切り傷が至る所にあったからだ。
「マミ、さん?ほむら、ちゃん?」
まどか達に気付いたのかマミ達が近寄ってくる。
「ごめんなさい、2人とも。」
マミは目に涙を浮かべながら言葉を紡いだ。
「負けたわ。」
つづく
磁石イノシシに負けたマミとほむら。意気消沈している時にさらなる魔女が襲いかかる。そして、杏子から魔法少女について知った風見志郎。彼はその胸に何を想うのか。次回「機械と少女の出会い」ご期待ください。