魔法少女まどか☆マギカ クロスss/2つの風車と7つの宝石   作:がとーショコラ

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お待たせしました!第5話の後編に突入します!とは言っても今回は風見志郎及び仮面ライダーV3は出てきません・・・。多分第6話に行くのはあと2,3話ほどかかるかと。本当に申し訳ありませんm(_ _)m
それでは、第4話後編その1、お楽しみください。


第5話 機械と少女の出会い/後編 side魔法少女①

朝が来た。アラームが鳴り、まどかはむくりと体を起こした。

 

「ふわぁ〜」

 

大きな欠伸をしながらベッドから降り、下の階へと向かった。

そこからまどかはいつも通り母親を起こし、家族揃って朝食を摂っていた。しかし、彼女の顔は暗く、目の下も黒くなっていた。

 

「寝れなかったのか?」

 

そんなまどかの様子に気づいたのか、詢子が尋ねる。

 

「う、ううん。大丈夫だよ」

 

笑顔を作り、答えるまどか。しかし、すぐに顔を伏せてしまう。

詢子は基本的に娘であるまどかを全面的に信頼していた。

そのため、それ以降は何も聞かずに朝食を摂った。

 

 

 

「行ってきまーす!」

朝食を食べてすぐ、まどかは走って家を出た。時間はまだ余裕があったが、マミとほむらに早く会いたいという一心でこのような行動をとっていた。

 

(ほむらちゃんとマミさん、今日も魔女退治に行くのかな…)

 

一抹の不安を抱きながら、まどかは走り続けた。

 

 

魔法少女まどか☆マギカ クロスSS

2つの風車と7つの宝石

 

 

学校に着いたまどか達は教室へと向かっていた。途中、マミとほむらには合わなかった。

 

(さやかちゃん、さやかちゃん)

 

さやか、仁美と話している時にまどかはさやかにテレパシーを送った。

 

(とうしたの、まどか?)

(ほむらちゃんとマミさん、大丈夫かな)

(……。大丈夫じゃない?)

(でも、)

まどかが何かを返そうとするが、さやかが捲したてる。

(魔法少女なんだからさ。マミさんはきっと大丈夫。それよりも…)

(それよりも?)

(まどか、あの転校生に何か言われた?)

 

転校生、つまり、ほむらに対して急な質問をされ、その意図が分からないまま、まどかは言われてないと答えた。

 

(・・・そう、なんだ)

 

意味ありげにさやかが言った。

 

(どうしたのさやかちゃん?)

(いや、あのさ・・・)

 

「それは禁断の愛ですわーーー!」

 

さやかが途中まで言った時、仁美が大きな声でそう言ってひとり、走って教室へと向かっていった。

しまった、といった顔をする2人。知らぬうちに仁美を置いてきぼりにしていた事に気付いたからだ。もともと彼女はお嬢様育ちなので一般常識に疎く、思考が少し外れた所がある。

 

「禁断の愛、って言ってたね」

 

まどかが呟く。

 

「どんな勘違いしてるのやら」

 

はぁ、と溜息を吐きながら苦笑するさやか。

直後、2人は周りの生徒からの視線に気付き、顔を伏せ、そそくさとその場を去った。

教室に着いた2人はまず、仁美の元へと向かい誤解を解いた。最初こそは禁断ですわーや、愛に形なんて関係ありませんわーと言っていたが、さやかとまどかの必死の説明によりなんとか理解してもらえた。

 

(そういえば)

 

まどかはほむらの事を思い出し、教室を見回した。しかし、彼女はいなかった。

 

(ほむらちゃん、マミさん…)

 

 

同時刻、暁美ほむらは巴マミの家にいた。マミから紅茶を出され、舌鼓を打っていた。

 

「ふぅ、美味しいわね」

 

ティーカップを唇から離し、皿に置いたほむらは一言いった。

 

「暁美さん、どうしたの?そろそろ学校に行かないと…」

 

QBから魔法少女狩りの犯人がほむらの可能性があると聞いていたため、マミはすこし警戒しながら尋ねた。

 

「今日は学校に行かないわ」

「え?」

「あなたに言わなければならない事があるもの」

「今じゃなきゃいけない事?」

「ええ。今日しか機会がないの。お願い」

ふむ、と手を顎に当てたマミは少し目を瞑り、了承した。

 

「ありがとう。で、私が言いたいのは…」

 

彼女の口から言われたことを聞いたマミは目を見開き、口を手で覆った。

ほむらの口から言葉が出なくなってしばらく。そこには沈黙が訪れていた。マミの顔は青白くなっていて、震えていた。

 

「あ、暁美、さん…」

「……」

「今の話、本当かしら……」

「ええ。私の能力で分かったことだから」

 

ここで一旦区切り、ほむらは深呼吸をして、マミの顔を見つめこう言った。

 

「私の能力は80%の確率で2日以内に戦うことになる魔女の姿と能力を知ること。そして、今日病院に魔女が現れる。その魔女は貴女との相性がとても悪い。しかも、コンディションも最悪。このままだと、貴女はその魔女に殺されるわ。巴マミ」

「私が、死ぬ……」

「だから貴女に選んでほしいの」

「選ぶ…?」

「私と共にその魔女と戦うか、それともやめるか」

「暁美さん一人で大丈夫なの?」

「正直、キツイわ」

 

影を落とすマミ。

 

「キツイけど、私は戦うわ。みんなのために」

 

そう言ってほむらはスッと立った。

 

「ごめんなさい、急に押しかけて。私はこれで」

 

ほむらの去った部屋。マミは一筋の涙を零した。

マミは揺れていた。QBが言ったことはあくまで可能性の話だったからだ。もしQBが絶対と言ったのなら彼女はほむらの話は信じなかっただろう。しかし、何も分からないまま時間だけが虚しく経っていった。

 

「なんて、弱い娘なの。私……。どうしたら、いいのよ……。」

 

その声に応えるものはなく、ただ響くだけだった。

 

 

 

昼休み。まどかとさやかは共に屋上で昼食を摂っていた。結局ほむらは来ず、休みとなっていた。

 

「ムグムグムグ……んっ。仁美が委員会でよかったよ」

 

口に入れた肉団子を飲み込み、さやかがそう言う。

 

「そうだね……。さすがに仁美ちゃんの前じゃ魔法少女の話はできないもんね。」

「仁美にそんなこと知られたらまた変な誤解されるよ〜」

 

まどかはそれに対しそうだね、と相槌を打った。

 

「今日、マミさんいなかったね。それにほむらちゃんも。大丈夫かな」

 

まどかのその一言でさやかの箸がピタリと止まった。

 

「やっぱり昨日の怪我が」

「ねえ、まどか」

 

まどかの言葉をさやかが途中で遮る。

 

「ど、どうしたの?」

「あのさ、今日は体験講座お休みだよね?」

「え、う、うん。」

「だったらさ、少し付き合ってくんない?久しぶりに病院に行きたいし」

「う、うん。いいよ」

 

さやかの急な質問責めに、まどかは驚きながら答える。

 

「そ、それでさ、話を戻すけど、」

「あ、ごめん!まどか!あたし、ちょっと用事を思い出しちゃって!」

 

話題を戻そうとするまどかに対し、さやかは弁当を片付け始め、そう言った。

 

「それじゃ、まどが!」

 

そう言ってさやかは走って屋内へと帰って行った。一人残されたまどかは悲しそうな顔をし、ぽつりと呟いた。

 

「どうして、さやかちゃんはほむらちゃんのことがそんなに嫌いなの?」

 

その後、彼女は一人で弁当を食べ続けた。しかし、いつものものと変わらないはずなのに、それは美味しくないと感じた。

 

 

見滝原の繁華街。そこは街中と比べて再興は進んでいた。しかし、人はかなり少なかった。そして、その中に暁美ほむらはいた。

「まさか、私がこんな事をするなんてね」

 

呆れたような表情をして、自傷気味に笑う。

「でも」

 

ほむらは右手にはめられた2つの指輪を見る。

「これでいいのよね。まどか、リィズ」

 

 

 

学校が終わり、生徒たちは各々の行動を始めた。帰るものもいれば部活に行くものもいた。まどか達も例外ではなく、帰る支度をしていた。

 

「さやかちゃん、おまたせ」

 

準備を終えたまどかがさやかの元へと向かう。

 

「オーケーオーケー。あたしこそゴメンね。付き合わせちゃって」

「私はべつにいいよ。それじゃ、いこ?」

「おう!」

 

この日、志筑仁美は共に帰らなかった。親の仕事で手伝わなければならない事があると言って、先に帰ったからだ。

 

「上条君の所に行くの、久しぶりだね」

「うん。あいつ、元気かな〜」

 

上条恭介。それはさやかの幼馴染であるとともに、さやかの想い他人である少年である。彼は天才バイオリニストと謳われ、将来は世界で活躍するだろうと誰もが信じて疑わなかった。しかし、それはある事件により閉ざされた。

 

ーBADAN侵攻ー

怪人から逃げている途中に捕まり、右腕を潰されたのだ。それにより彼は左手しか動かなくなった。しかし、現在もまだ治ることを信じて入院し、リハビリを続けている。さやかはそんな恭介に対してせめて好きな音楽だけは聞かせてあげたいと思い、小遣いのほぼ全てを使ってCDを買い、お見舞いに行くたびに持って行っていた。

 

「まどかはさ」

 

さやかが聞く。

 

「まどかはさ、もう願い事、決めた?」

「私はまだ、かな」

「そう、なんだ」

「さやかちゃんはどうなの?」

「分かんない」

「どうして急にそんなこと聞いたの?」

「あのさ…」

 

さやかの言葉はそこで止まってしまう。しかし、まどかは彼女が何か重大なことを言おうとしているのはその様子から理解した。

 

「まどかはさ、魔法少女狩りって、QBから聞いた?」

「魔法少女狩り?何なの?それ」

 

さやかはチラリとまどかの顔を見る。言葉からその意味を察したのか、顔が青くなっていた。

 

「昨日、QBから聞いたんだ。最近魔法少女狩りがあるって。魔法少女が魔法少女を殺してるって」

「そ、そんな……」

「その、犯人がほむらかもしれないって」

 

まどかは目を見開いた。ほむらがそんなことをするとは思っていなかったからだ。しかし、疑問も生じていた。

 

「何で……?」

「ん?」

「何でQBは私に教えてくれなかったの?」

「まどかの家に結界が貼ってあるからだって」

「結界?」

「うん。それのせいでQBも魔女もまどかの家には近づかないんだって」

「それじゃ、それも」

「そう。あいつがやった可能性が高い」

「嘘……」

 

まどかは今にも泣きそうだった。しかし、さやかはそれに気づかないのか、もしくは気にしていないのか、さらに続ける。

 

「なんであいつがそんなにまどかに拘るか分かる?」

 

首を横に振るまどか。さやかは息を吸い、じっとまどかを見つめ、答えを言った。

 

「あんたがものすごい魔力の持ち主だからだって」

「えっ……?」

「だから、あんたはあたしやマミさん、転校生よりも強い魔力を持ってるんだって!まどかが魔法少女になったら誰にも負けないぐらい強くなるんだって!」

「え、そんな……」

 

未だに信じられないのか口をパクパク動かすまとか。

 

「あたしだって信じられないよ。まどかにそんなすごい素質があったなんて。でも、やっぱまどかは魔法少女にならない方がいい。なんでか分かる?」

 

まどかはろくに回らない頭で答えを導き出す。

 

「私が魔法少女になろうとしたらほむらちゃんが真っ先に殺しに来るから……?」

「そう。だから」

「分かってるよ、さやかちゃん。気をつけるね」

 

そこからは2人は何も話さずにただ目的地に向かって歩いた。

10分ほど経った時、

 

「あ、着いたね」

 

一言まどかが言う。

 

「うん。その、悪いんだけどさ」

「分かってる。待ってるね」

「ありがとう!!」

 

そう言ってさやかは小走りに病院内に入っていった。

 

「もう、さやかちゃんったら」

 

苦笑いと共にまどかも病院内へと入り、ロビーにあった椅子に座った。

 

 

 

ウィーーン、、、、、

 

音と共にエレベーターが動き、さやかの体に振動を伝える。彼女はそれを心地いいと思いながら鞄の中を確認した。

 

「よし。ちゃんとあるね」

 

さやかの視線の先。そこには1枚のCDケースがあった。

 

「恭介、喜んでくれるかなぁ」

 

この時、さやかの顔はにやけていた。

そんなことをしていると、エレベーターが止まった。

 

「あ、着いた♪」

 

最早天国にも昇るような気分でさやかは恭介の病室へと向かった。

 

 

 

ガチャリ・・・。

 

ドアが開き、さやかが入室する。

急な訪問者の登場に恭介は驚いた様子だった。

 

「久しぶりだね、さやか」

 

恭介が言う。

 

「うん、久しぶり。っていっても4日ぶりでしょ」

 

笑顔を絶やさずにさやかが答える。

 

「それだけだっけ?ははは、いけないな。どうも入院してると時間の感覚が狂っちゃって」

「もう、恭介ったら」

 

しばらく2人で笑いあった後、さやかが思い出したように言う。

 

「そうだ、今日、恭介にプレゼントがあるんだ」

そう言って鞄の中から持ってきたCDを渡した。

 

「いつもありがとう。さやかは珍しいCDを探す天才だね」

 

CDを受け取った恭介は嬉しそうにカバーを開け、近くにあったプレイヤーに入れた。

 

「さやかも聞いてみる?この人の演奏は本当に凄いんだ」

 

そう言って、イヤホンの片方をさやかに渡す恭介。さやかはそれを耳に挿れる。必然的に二人の顔が近くなり、さやかは平常心でいる事に努めた。

恭介がCDを流し始める。それはとても優しく、暖かい音色が流れる。

ふと、さやかは目を瞑る。瞼の裏にはまだ幼い頃、両親に連れられてきたヴァイオリンのコンサートで初めて恭介の演奏を聞いた時の映像が流れていた。

 

(あの頃からあたしは恭介が好きだったんだな…)

 

心が幸福で満たされ、さやかはこの時間がずっと続けばいいのにと願った。

しかし、それは止められた。隣で音楽を聴いている恭介の泣き声が聞こえたからだ。

 

(恭介……)

 

さやかは自分の無力さを悔やんだ。

 

 

 

さやかを待ち始めて1時間ほど経った。まどかはふと顔を上げ、さやかがまだ帰ってこないのかを確認すると、丁度エレベーターを降りたさやかを見た。

 

「あ、まどか。ごめん、お待たせ」

 

急ぎ足でまどかの元へ向かうさやか。

 

「ううん、いいよ。それより、もういいの?」

「うん。ありがとう、まどか」

 

そこから2人は病院を出た。さやかが一方的にまどかに話しかけるだけだったが、それでもまどかは楽しそうに聞いていた。

 

「ん?何?あれ?」

 

ふと、さやかが立ち止まり、病院の外壁を指差す。

そこには黒色の亀裂が入っていた。

 

「え、これってまさか、グリーフシード!?」

 

さやかの焦った声を聞き、まどかも焦り、ふとマミの言っていた事を思い出す。

 

(確か、病院に魔女がいると最悪だって……)

 

しかし、2人はマミと連絡を取る手段を有していなかった。

 

「このままじゃ」

 

さやかがそう言った直後、グリーフシードから黒色の光が漏れ、まどかとさやかを結界の中へと連れ込んだ。

結界内は前のものとは違い、お菓子の箱のようなものが大量に置かれている空間だった。

 

「どうしよう」

 

まどかがさやかに寄り添う。さやかもまどかの体に抱きつき、離れまいとする。

周りには丸い使い魔が何体もおり、まどか達に今にも襲いかかろうとしていた。

 

(助けて!誰かぁぁぁ!!)

 

目をつむり、心の中でまどかは叫んだ。

パァン・・・パァン・・・。パァン・・・。

刹那、乾いた銃声がいくつか響く。

 

「な、何が、あったの?」

 

まどかは目を開き、現状を確認する。するとそこには体に穴を空けられ、倒れこむ使い魔の姿が見えた。さやかも目をつむっていたようで、ようやく開き、その光景を見た。

 

「間に合ったわね。よかったわ」

 

後ろで聞こえる声。まどかとさやかが振り返る。そこには片手に拳銃を持ったほむらが、魔法少女の姿で立っていた。

 

「正直言って、焦ったわ。あなた達がこんなにも早く結界に取り込まれるなんて思ってなかったから」

「内心喜んでんじゃないの?」

 

さやかが皮肉を込めた口調で言う。

 

「何を言っているのかしら?」

「自分のない胸に聞いてみたら?」

 

『ない胸』というワードを聞いた瞬間、ほむらの額にスジができる。しかし、それを理性で押さえ込み、まどかに話しかけた。

 

「大丈夫かしら?怪我はない?」

「う、うん。大丈夫、だよ。あ、ありがとう」

 

それを聞いたほむらは、そう、とただ一言言って、微笑んだ。そして、

 

「あなた達がここから出るには魔女を倒すしかないわ。魔女の結界は完成されると内側から出る事は不可能よ。だから2人とも、私と一緒に来なさい」

「……本当かよ」

 

ボソッとさやかが言う。

 

「何が、かしら?美樹さやか」

「魔女の結界についてだよ。あんた本当は私達を魔女の餌にするつもりじゃないでしょうね?」

 

ほむらはハァと溜息をつき、さやかを睨んだ。

 

「そんな事をして私に何の利益があるのかしら?死にたいのなら勝手に死に……、いいえ。だめよ。絶対に死なせたくないのよ」

 

絶対零度のように冷たい声音は途中からは不思議と寂しそうなものへと変わった。

 

「ねぇ、さやかちゃん」

 

まどかが話しかける。

 

「ほむらちゃんの事、信じようよ」

「……。分かったわよ」

 

渋々といった様子でさやかは了承した。

そこからは非常に速く進んだ。そして、襲いかかってきた使い魔の体に、目にも留まらぬ速さで撃ち抜いていった。

 

「もうすぐよ」

 

進み始めてから約15分後。ほむらは急に立ち止まった。

 

「ここよ」

 

一言そう言い、ドアのようなものに手をかざす。すると、それが開き、中へと入れるようになった。

 

「注意だけしとくわ。危険だから変な事はしないで」

 

ほむらの警告を受けた後、3人は同時に魔女と対峙した。

 

 

 

(私は、今までなんの為に戦ってたの?)

 

マンションの一室ーマミの部屋ーで彼女は考えていた。

 

(私は、なんの為に魔法少女になったの?)

 

自問しても答えは出てこない。

「教えてよ、お父さん、お母さん……」

 

当然、それに答える者はいない。しかし。

 

コトン・・・。

 

マミの背後で何かが落ちた音が聞こえた。ゆっくりと振り返り、何が落ちたのか確認するマミ。それを見た瞬間、彼女はハッとした顔をした。

それは、一枚の写真だった。そこにはグリーフシードを手にしながらにっこりと笑っているマミがいた。

 

「これは、私が初めて魔女を倒した時の……。」

 

そう。その写真は彼女が魔法少女になって間もない頃、QBにアドバイスを貰いながらではあるが、魔女を倒した時のものだった。

 

「私は……。」

マミの心に光が差す。

「私は、皆を守りたいと思って……。」

 

(私の目的。それは、皆を守ることよ)

 

ふと、ほむらの顔が目に浮かぶ。

 

(私は、私は!!)

 

スクッと立ち上がり、駆け足で外へ出る。

 

(私は、鹿目さんを、美樹さんを、暁美さんを、皆を守る!)

 

強い意志と共にマミは変身し、病院へと急行した。

 

 

 

結界の最深部に辿り着いたほむらは、まどかとさやかを物陰へと隠れさせた。

 

「絶対に動かないでちょうだい」

 

ほむらが2人を、特にさやかを見ながら言った。そして、答えを聞かずに盾に収納されている拳銃を取り出して、魔女の元へと向かった。

彼女の視線の先には、袋付きキャンディのような形をした頭部にぬいぐるみのような体をした可愛らしい魔女がいた。

 

ーその魔女の名は「シャルロッテ」。性質は「執着」。彼女は常にチーズを求める。しかし、彼女の使い魔はそれを持ってくることが出来ない。ならば彼女は…ー

 

ほむらは容赦なく鉛玉を撃ち込む。シャルロッテも抵抗するわけでもなく、されるがままにされていた。

 

「あれ、余裕じゃない?」

 

その様子を見ていたさやかがボソッと言う。

 

「うん。でも、なんでだろう」

 

まどかが反論するように言う。

 

「嫌な、予感がする」

「嫌な予感って、何?」

「分かんない。でも」

 

事実、まどかはひや汗をかいていた。理由こそ分からないが、それが嫌なものだということは直感で分かっていた。

 

「そうなんだ。あ、決着が着いた!」

 

さやかがそう叫んだ直後、ほむらの放ったRPGがシャルロッテの身体を貫いた。

これで終わり。魔女の結界は崩れ去り、元の世界へと帰れる。

とは、ならなかった。

シャルロッテは一瞬、ムッとした表情をした後、大きく口を開けた。すると、中から巨大な“何か”が出てきた。

それは猛スピードでほむらに突っ込んでいった。その行動をほむらは紙一重で避ける。

 

「え?え?何?あれ?」

 

さやかが混乱しながらまどかに尋ねる。

まどか自身混乱しつつもそれを見つめた。その“何か”は大蛇のような黒く長い体に、頭部付近にある羽のようなもの。そして顔にはカラフルな目にパーティ帽のような鼻に鋭い牙のついた大きな口があった。

そして、まどかは“それ”が何をしたのかを理解した。ただ突っ込んだだけでなく、その口でほむらを喰い殺そうとしたという事を。

 

「ひっ……」

 

さやかが小さな悲鳴をあげる。すると、“それ”はまどか達の存在に気付いたのか、ジロリと睨む。突如それは口角を大きく上げた。

 

【イ タ ダ キ マ ス】

 

そんな表現が似合うほど嬉しそうに、口を開け突っ込む。

 

「いや、イヤァァァァ!!」

 

ドガーーーーン・・・!!

 

しかし、“それ”が喰らい付くより早く、RPGが着弾し、大きな爆発を起こす。“それ”は勢いよくその場に倒れた。

 

「や、やった・・・の?」

 

さやかが安心したように呟く。が、

 

「逃げて!!早く!!!」

 

ほむらのつん裂くような悲鳴が聞こえた。彼女の方に目をやると周りを大量の使い魔が囲んでおり、それを相手にしているだけで精一杯という具合だった。

 

「逃げよう!まどか!!」

 

我に返ったさやかがまどかの手を引き、その場を離れようとする。

 

「ほ、ほむらちゃん!!」

 

まどかが彼女の名を叫ぶのと、“それ”に変化が起きたのは同時だった。

“それ”は口を大きく開け、中から新しい“それ”が勢いよく飛び出してきた。

 

「あ、」

もう、死ぬのかな……。せめて……。

まどかは覚悟した。どうにかさやかとほむらに生きてほしいと願いながら。

 

しかし、

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

後方で声が聞こえ、巨大な鉛弾が“それ”を撃ち抜いた。

 

「え……?」

 

まどか達が呆然としながら振り返ると、そこには魔法少女姿のマミが大量のマスケット銃を召喚して立っていた。

 

「「マ、マ、マミさーーーん!!」」

 

2人が同時にその名を呼びながら彼女の元へと走り、その胸へと飛び込む。対してマミはそれをしっかりと受け止め、優しく肩を抱く。

 

「マミさぁん、マミさぁん」

「ふふ。心配かけてごめんなさいね。でも、もう大丈夫よ。それよりも今は……」

 

まどかとさやかを体から離し、魔法で作った結界で2人を囲んだ。そして、マスケット銃を一丁とって、未だに苦戦しているほむらへの援護射撃を開始する。それと同時に“それ”が復活しにくいように攻撃を続ける。

それが1,2分ほど続くと、ほむらの方があらかた片付いたのか、跳躍してマミの元に来た。

 

「助かったわ、巴マミ。まどか達を守ってくれて」

「どういたしまして。あなたも無事でよかったわ」

「その様子だと、もう大丈夫そうね」

「ええ。貴女のおかげよ、暁美さん」

「私の?」

「ええ。だって、貴女のおかげで私はまた戦う覚悟ができたんだもの」

「それって」

「『皆を守る』ってことよ」

「……そう」

 

ほむらはただ、一言そう言って盾の中から手榴弾を取り出す。

 

「どうやって倒すのかしら?」

「あいつの倒し方はでかい奴に攻撃をすると同時に向こうにいる本体にダメージを与えることよ」

「え?あれ?」

 

マミがある方向に指をさして聞く。そこには、ぬいぐるみのようなものが力なく横たわっていた。

 

「ええ。あいつよ」

「つまり、私たちが協力しなきゃ勝てないってことね」

「そうよ。だから」

「暁美さんは本体を倒してちょうだい。私があいつの気を引くわ」

「でも、あなたは!?」

 

ほむらが食ってかかる。しかし、マミは微笑み、

 

「大丈夫よ。私を信じて」

 

と力強い声で言った。

 

「……。分かったわ。貴女を信じるわ。」

「ありがとう、暁美さん。それじゃ、行くわよ!!」

 

合図と同時に攻撃を止め、マミは挑発するかのように“それ”の頭上を飛び越えた。また、ほむらは走って本体の元へと向かった。

弾を当てると共に攻撃を華麗に避けるマミ。そして、マミのことを信じてひたすら本体に向かって走るほむら。

 

「巴マミ!!準備できたわ!!」

 

1,2分経った時、ほむらが大きな声で告げた。

 

「OK、それじゃ、こっちも」

 

マミは“それ”の隙を突き、特大の銃を創る。

 

「ティロ・フィナーレ!!!!」

「これでぇぇぇぇぇ!!」

 

マミの最大魔力を使った砲撃とほむらの放ったマシンガンの弾が目標を撃ち抜く。

 

『・・・・・・さハ・・・・チーズガ食べタカっタダケナのデス』

 

何かを言い、魔女は消滅し、結界は消え、元の病院前へと戻った。

 

「た、倒したの?」

 

それまで固唾を飲んで見守っていたさやかが信じられないように呟く。その表情は安堵と喜びに満ち溢れていた。まどかも同様にして喜んでいた。

が、平和な一時は音を立てて崩れていった。

 

「シャシャシャシャシャ!!まさかあの魔女を倒すとはな!!だが魔法少女共、喜んでいられるのも今のうちだ!!」

 

後ろから声が聞こえ、全員が振り向くと磁石イノシシがいた。

 

「貴様ら全員殺して俺はさらなる進化をする!!さあ、行くぞ!!」

 

そう言って磁石イノシシは突進の態勢をとる。

 

「ま、待ちなさい」

 

ほむらが掌を前に出す。

 

「何だ?命乞いなら」

「違うわ」

 

磁石イノシシの言葉を遮るほむら。

 

「場所を、変えないかしら。そうね、昨日闘った場所に。ここでやると私達もあなたも目立つわよ」

 

すると、磁石イノシシは口角をわずかに開け、いいだろうと言った。そして、近くに止めてあった黒色のベンツに乗り、その場を去った。

ほむらは周りを確認する。運がいいのか、見ている人物は一人もいなかった。

 

「さて、」

 

一旦変身を解除したほむらがさやか達に向く。

 

「私とマミは今からあいつと闘いに行くわ。貴女達は帰りなさい」

「え?」

「なんでさ?」

 

まどかとさやかが何故といったふうに聞く。

すると、いつの間にか変身を解除したマミが答える。

 

「当然でしょ?貴女達は私達と違って戦闘能力を有していないわ。危険なだけよ」

「「でも、」」

 

まどかとさやかの声が重なる。

 

「美樹さん、鹿目さん」

 

少し怒ったような声をマミが出す。

 

「今は貴女達の我儘を聞けないの。だから、ね。お願い」

「……分かりました」

「でも、気をつけてください」

 

声を落とし、さやかとまどかが言う。

 

「もちろんよ」

「次は勝つから、安心してね」

 

ほむらとマミは口々にそう言い、昨日の廃ビルへと向かった。

 

「ねえ、まどか」

「何?さやかちゃん?」

「2人の後を追おう」

「……う、ん」

 

いつものまどかなら拒否したはずだが、ある思惑からさやかに従う。

 

「転校生の奴、怪人倒したらマミさんを殺るに違いない」

「そ、そう、だね」

 

さやかの怒りに近い声に同意するまどか。しかし、

 

(でも、私は違うと思うんだ。それに)

 

そこまで思考を纏め、一旦止める。

 

(それに、さやかちゃんが言ってたことが本当なら……)

さやかとはまた違う覚悟を胸にしてまどかは後を追った。

 

 

 




次回は魔法少女sideその2です。次は必ずV3とまどか達を合わせます!!
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