遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。   作:羽吹

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【注意】
原作とは微妙に違うデッキです。
後、少しソリティア要素があるかもしれません。
私は沢渡さんは(キャラとして)好きです。


その調査は、仮面。(vs沢渡)

「召喚反応と言うものがある」

 

 落ち着いた声が部屋に響いた。

 

「デュエリストの実力とは、純粋にデュエルの勝敗、タクティクスによって証明される。同じデッキを使っていたとしても、実力の差は現れるものだ。

 しかし、例外が存在しないわけではない」

 

 そう言うと彼はおもむろにデッキからカードを引き、デュエルディスクに差し込んだ。

 

 部屋の中に巨人が出現する。

 禍々しいオーラを放つ蒼い巨人がリアルソリッドビジョンで表現され、その体重で床が微かに凹み、部屋が少し揺れた。

 

「……《DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク》。

 忌々しいカード。デッキに戻してくれない?」

 

 別にそのカードに罪があるわけではないが、ドラゴネクロを奪われた恨みは簡単に消えてくれない。

 

「いいだろう。では次だ。

 中島、このカードをディスクにセットしろ」

 

 赤馬社長はカエサル・ラグナロクをディスクから引き抜き、中島さんへと投げ渡した。

 中島さんは戸惑いながらもディスクを起動し、カエサル・ラグナロクをセットする。

 先程と同じように部屋に蒼い巨人が出現した。

 

「これを見ろ。融合モンスターを召喚した時にディスクが感知するデュエルエナジーのグラフだ。

 私はこれを召喚反応と呼称することにした。

 一目瞭然だと思うが、同じモンスターを召喚したにも関わらず、中島よりも私の方がデュエルエナジーの感知量が遥かに多い。

 召喚反応は個々人に差があり、それがデュエリストとしての実力の差だと考えて()()

 

 グラフを確認する。確かに赤馬社長の召喚反応は中島さんの比ではなかった。

 

「だけど私の戦闘記録を解析してみると、融合次元での融合召喚反応、エクシーズ次元でのエクシーズ召喚反応が桁違いに高かった」

 

 この話の結論を推測で述べる。

 自信はないけど、恐らくは間違ってはいない。

 そして、その事実は別次元からの侵攻の予知、探査などに役立つだろう。

 

「その通りだ。だが君の記録は裏付けでしかない。

 私も過去にアカデミアとはデュエルをした事がある。その時の記録から推測は立ててはいたのだ。

 ……少し話は逸れるが、君には話しておこう。融合次元、アカデミアを率いているのは、他でもない私の父、赤馬零王だ。

 動機は分からない。目的も不透明。だが、赤馬零王は既にエクシーズ次元へと侵攻している。

 私はこれを止めなければならない。スタンダード次元の人間として。赤馬零王の息子として。

 そして、君にもこの次元を護って欲しい」

 

 真摯な声だった。その裏に悲痛な叫びが含まれていることも私は感じ取っていた。

 

 だけど。

 

 ーーー

 

 補習なんて嫌いだ。大嫌いだ。

 そんなことを脳内で叫びながら山積みになっている課題のプリントを片付けていく。

 殆ど流し読みだけど、私にはそもそも知識が残っているので問題なく解ける。詰まることもない。

 

 これは1ヶ月間もの無断欠席の穴埋めだ。

 私がこの次元に帰ってきたのは8月の月初。つまり夏休み。私は期末テストをボイコットしたのだ。

 

 当然その報いは受けることになる。

 2学期の初日に呼び出され、夏休みの宿題など比べ物にならない量のプリントの山を受け取ったのだ。

 

 何故か課せられた読書感想文5冊分を学校の図書館で書き上げて、私は遊勝塾に向かっていた。

 その道中でデュエルディスクが通信を知らせる。

 

「もしもし、仮面デュエリスト、ユーカか?

 私だ。中島だ。赤馬社長が君に……」

 

 切った。私は疲れているのだ。厄介事に自分から飛び込んでなどいかない。

 私は赤馬社長に顎で使われる謂われなど無いし、本人から掛からない電話など大した話でもない。

 それよりもマカロンでも食べに行きたい。この前に柚子とピ○ール・エ○メに行って……。

 

 ピリリリ、と耳障りな音が鳴る。ブツッ、と音が響いて。またピリリリ、と音が鳴り響いた。

 中島さんからの電話が百回目を迎える頃になって、ようやく赤馬社長が直々に電話を寄越してきた。

 

「結遊歌。君に頼みたい仕事がある。LDSの本社の来て欲しい。なお、君の主人にも話は通した。

 断れるなどとは思わないことだ」

「そんな名前は人物は知らないわね。

 まあ、仮面デュエリストとしてその仕事は受けましょう。断れそうにはないでしょうから」

 

 卑怯にも私から逃げ場を無くした赤馬社長の声はどこか苛立っており、私の着信拒否には意味があったらしいことが伺える。

 少し可笑しくなった私は、遊勝塾に欠席の連絡を入れてからLDSへと足先を向けるのだった。

 

 

「パパは次期舞網市長、そして容姿端麗成績優秀。LDS総合コースにおいてその人ありと謳われた、世界最強の完璧なデュエリスト!

 この沢渡の力を見せてあげようじゃないか!」

 

 じゃじゃーん! 俺☆沢渡!

 などと何処かのバリアン七皇の一人が名乗る時に使いそうな文句を垂れ流している人物がいる。

 

 恐らく今の私は竜の渓谷(実家)を奪われたドラグニティ達と似た顔をしているだろう。

 つまり諦めの境地。最近はレヴァンテインと巨竜の聖騎士とか使うデッキもあるけど。

 え? ダークマターでいい? 聞こえない。

 

 出来れば関わらずに、メイトリクスから逃げるように『7時半に空手の稽古があるの……』と言いたいところなのだが、そうはいかない理由がある。

 

「お前が今日の対戦相手か! 赤馬社長直々のデュエルの依頼だってのに、何で仮面つけてるんだ?」

「私は仮面デュエリストだから」

 

 赤馬社長に呼び出された私は、初めに召喚反応についての講義を聞いた。

 そして私の召喚反応の測定、召喚法による変化などの測定の為のテスターを頼まれたのだ。

 

 自分だけでは採れるデータに偏りが出るのだろう。他の人のデータが欲しいのは分からなくもない。が、何で私なんだ。

 LDSにはたくさんサンプルは居るだろうに。

 

「そ、そうか。まあいいか。それじゃあ始めようか! この沢渡の華麗なデュエルを!」

 

 ーーー

 

「それじゃあ、俺が先攻を貰うぜ。

 華麗なデュエルを見せてあげようじゃないか!

 俺は手札から《テラ・フォーミング》を発動。その効果により、デッキから《真帝王領域》を手札に加えて、そのまま発動する!

 このカードは自分のエクストラデッキにカードが存在せず、自分フィールドにのみアドバンス召喚したモンスターが居るとき、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 それだけじゃない。自分のアドバンス召喚したモンスターの攻撃力は、攻撃するダメージステップの間だけ8・0・0・ポイントも! アップする!」

 

 暗い世界。先の見えない闇に白い瘴気が立ち上ぼり、フィールドを覆い尽くしていく。

 奥に鎮座するエレボスが仮面少女を見つめて。だけど仮面から覗く眼はその帝王に親しみを持っているように感じられた。

 

「更に《帝王の深怨》を発動。手札の攻撃力2800、守備力1000の《冥帝エレボス》を見せることで、デッキから『帝王』魔法・罠カードを手札に加える。

 俺は《汎神の帝王》を手札に加えて、発動!

 手札の《真源の帝王》を墓地に送って2枚ドロー。更に墓地から《汎神の帝王》を除外して効果を発動。デッキから3枚の『帝王』魔法・罠を選択し、相手に見せる」

「そして、その3枚の中から私が選択したカードを貴方は手札に加え、残りはデッキに戻す。

 私は3枚の《帝王の烈旋》の中から、パラレルレアのカードを選択する」

 

 仮面少女の周りに3枚のカードが現れる。シークレット、レリーフ、パラレルと並ぶ中から、パラレルレアのカードがつつかれる。

 そのカードが沢渡の手札へと飛んでいき、他のカードはデッキに戻っていった。

 

「よーし。俺はモンスターを1枚セットして、カードを2枚セットする。これでターンエンド。

 どうだ、俺の華麗な1ターン目は! って今日は誰も居ないんだっけか……」

 

 慣れた動作で誰も居ない場所を振り返り、息を着く。数秒ほど目を瞑り、沢渡は仮面少女へと目を向けた。

 

【沢渡】

 LP4000

 手札2枚

 場 裏守備モンスター1体

   フィールド魔法

   《真帝王領域》

   伏せカードが2枚

 

「始まりましたね。しかし、どうして彼を?」

「これは召喚反応の調査だ。相手が特殊な召喚法を使用すれば、測定の精度が低下する」

 

 ここはモニタールームだ。デュエルフィールドをガラス越しに俯瞰できるようになっており、声は届かない。

 中島と零児は沢渡たちのデュエルを観戦しながら、召喚反応を示すモニターを確認していた。

 

「私のターン。ドロー!

 ふふっ。フィールド魔法にはフィールド魔法で対抗しようかしら。手札から《混沌空間(カオス・ゾーン)》発動!

 このカードはモンスターが除外される度に、1体につき1つカウンターを置いていくの。

 そして《手札抹殺》を発動して、お互いの手札を入れ換える。貴方の《帝王の烈旋》ごとね!」

「だ、が! 俺のもう1枚の手札は《冥帝エレボス》だ。このカードは墓地に居る時、手札から『帝王』魔法・罠カードを墓地に送って、墓地の攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターを手札に加えられるカード。

 墓地に送っちゃって良いのかな?」

 

 そう言って沢渡は不敵に笑う。

 だが仮面少女はまるで動じておらず、この2人は対照的な反応を示していた。

 

「私がアンデット族モンスターの効果を把握していないとでも? とんだロマンチストね。

 私は手札から《闇の誘惑》を発動する。2枚ドローして手札から《ネクロフェイス》を除外。

 《ネクロフェイス》が除外されたのでお互いのデッキから5枚のカードを除外する。私のデッキから除外されたモンスターは5枚。貴方は3枚。《ネクロフェイス》を合わせて9個のカウンターが《混沌空間》に置かれる。

 除外された《不知火の武士》と《不知火の宮司》の効果。貴方の《真帝王領域》を破壊して、墓地から《不知火の隠者》を手札に加える。

 そして《生者の書-禁断の呪術-》を発動。

 私の墓地から《ゾンビ・マスター》を特殊召喚して、貴方の墓地から《冥帝エレボス》を除外する」

「っ、俺は《冥帝エレボス》の効果は使わない!」

 

 手札とにらめっこをしながら一人で百人相を演じていた沢渡は、結局エレボスの効果は使わなかった。

 

(と言うよりも使えねぇ。俺の手札に『帝王』カードはねぇし、今《冥帝エレボス》を手札に戻しても次に繋がらない……!)

「《冥帝エレボス》が除外されたことで《混沌空間》に10個目のカウンターが乗る。

 そして特殊召喚された《ゾンビ・マスター》の効果。手札の《不知火の隠者》を墓地へ送り、その《不知火の隠者》を特殊召喚する。

 《不知火の隠者》の効果を発動。自分フィールドのアンデット族モンスター、今回は《不知火の隠者》をリリースして、デッキから守備力0のアンデット族チューナーを特殊召喚する。

 私はデッキから《ユニゾンビ》を特殊召喚。

 《ユニゾンビ》の効果で、デッキから《馬頭鬼》を墓地に送り、自身のレベルを1つ上げる。

 更に墓地に送られた《馬頭鬼》を除外して、墓地から《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚する。

 そしてレベル4《ゴブリンゾンビ》にレベル4になっている《ユニゾンビ》をチューニング!

 ここから始まるスペクタクル! マジック、トラップ大いに結構! 捩じ伏せますので!

 ──シンクロ召喚! 《戦神ー不知火》!」

 

 口許を微かに吊り上げて仮面少女は笑う。

 楽しそうに歌うように口上を述べて、エクストラデッキの上から2枚目のカードを見もしないで引っ張り出す。

 

「《戦神ー不知火》が特殊召喚に成功した時、墓地からアンデット族モンスター1体を選択して除外し、そのモンスターの攻撃力を《戦神ー不知火》に加える。

 私は墓地から《不知火の隠者》を除外。

 そして《ゴブリンゾンビ》が墓地に送られたことでデッキから《火車》を手札に加える。

 この瞬間、除外された《不知火の隠者》の効果が発動する。このカードが除外された場合、除外されている《不知火の隠者》以外の『不知火』モンスターを特殊召喚する。

 次元の狭間より帰還しろ! 《不知火の武士》!

 《馬頭鬼》と《不知火の隠者》が除外されたので《混沌空間》のカウンターは12個になった。

 《混沌空間》はカウンターを4個以上取り除き、取り除いた数と同じレベルを持つ、ゲームから除外されているモンスターを特殊召喚する。

 私は《混沌空間》から7個のカウンターを取り除き、レベル7の《赤鬼》を特殊召喚する!」

 

【遊歌】

 LP4000

 手札4枚

 場 ATK3500

   《戦神ー不知火》

   《赤鬼》

   《ゾンビ・マスター》

   《不知火の武士》

   フィールド魔法

   《混沌空間《カオス・ゾーン》》C5

 

 レベル7 ATK2800 《赤鬼》

 

「っ! 何て召喚反応の高さだ……! 社長とそう変わらない数値を叩き出すなんて……!」

 

 まるで化物を見るかのように中島は仮面少女を見下ろし、もう一度モニターを確認する。

 余程信じられない結果だったのだろう。零児ですら見たことがないほどに動揺していた。

 

「ふむ。まあ想定通りの結果になったか。だが、計器の方が心配だな。最後までもてばいいが……」

 

 コンピューターが発熱している。仮面少女の高速連続召喚によって多大な付加がかかっているのだ。

 このままでは熱暴走により、最悪の場合爆発しかねない。

 

「さあ、バトルよ! まずは小手調べ!

 《ゾンビ・マスター》で伏せモンスターに攻撃。アンデット・マリオネットリボーン!」

「くっ! 俺のモンスターは《ネクロ・ガードナー》、守備力1300。よって破壊される!」

 

 アンデット族のような戦士が沢渡を守るように出現する。しかし、ゾンビ・マスターの操る糸に絡め取られ、不気味に踊り出す。

 関節が折れるように右腕が反対側に折れ、左腕が捻じ曲がる。股関節が砕けるまでの開脚されたネクロ・ガードナーはそのまま動かなくなった。

 

「これで貴方のフィールドはがら空きになった。

 《戦神ー不知火》でダイレクトアタック!」

「それは通せねぇぜ! 罠発動! 《ガード・ブロック》! このバトルで発生するダメージを無効にして、カードを1枚ドローする!」

 

 がら空きになったフィールドを勇猛果敢にも一人で突撃する。だがその攻撃は、沢渡を覆う透明な囲いに邪魔をされて届かなかった。

 

「その足掻きがいつまで持つかしらね!

 《赤鬼》で攻撃! ダイレクトアタック!」

「墓地から罠発動! 《真源の帝王》!

 墓地の《真帝王領域》を除外して《真源の帝王》を通常モンスターとして特殊召喚する!」

「だけど、その守備力は2400。そして1ターンに1度しか使用することはできない。

 《赤鬼》! 《真源の帝王》を叩き潰して!

 そしてこれでこのターンの攻撃は最後よ! 《不知火の武士》で貴方にダイレクトアタック!」

 

 武士が踏み込む。最初は軽く、まるで歩くように動き始め、次の瞬間には沢渡の懐に居る。

 沢渡は驚きながらも、冷静にデュエルディスクに手を伸ばし、罠を発動させる。

 

「おおっとぉ! そんなに簡単に俺のライフを削れるなんて思わない方がいいぜ!

 罠発動! 《トゥルース・リィンフォース》!

 このカードは、このターンのバトルを放棄する代わりに、デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する!

 こいこーい! 《天帝従騎イデア》!

 このカードが特殊召喚された時、デッキから攻撃力800、守備力1000のモンスターを特殊召喚する!

 こいこいこーい! 《冥帝従騎エイドス》!」

 

 小さなモンスター2体が沢渡の周りに現れる。

 

「構わない。行け《不知火の武士》!

 そして《天帝従騎イデア》を攻撃するダメージステップ開始時に《不知火の武士》の効果を発動!

 墓地の《ユニゾンビ》を除外してこのカードの攻撃力を600アップさせる! それだけじゃない! この効果を発動している場合《不知火の武士》とのダメージステップ終了時に、そのモンスターを除外する! 墓地には送られない!

 よって、墓地に送られた場合に発動する《天帝従騎イデア》の効果は発動できない!」

 

 武士の持つ刀が薄く光る。光の軌跡を描きながら空を切る刀は、切られたことすら知覚させる事はない。

 痛みもなく、苦しみもなく。その魂ごと切り裂き、死と生の境目、次元の狭間へと送るのだ。

 

「何っ!? これじゃあ、除外されてる《真帝王領域》も《汎神の帝王》も回収できねぇ……。

 だが、モンスターは1体残った!

 『帝王』デッキなら充分に挽回できる!」

 

 仮面少女にカードを突きつけて、沢渡はそう宣言した。

 

「デッキを信じられているのならできるかもしれないわね。だけど、貴方は本当にデッキを信頼しているの? レアリティとデッキパワーに頼りきっていない?

 カードはレアリティだけじゃないし、デッキは自分の力を誇示する為の物じゃないのよ」

「……言ってくれるじゃねぇか。

 デッキを信頼してるか、だと……?

 そんなの、信頼してるに決まってるだろうが!

 このデュエルでそのことを証明してやる!」

 

 沢渡の雰囲気にどこか真剣さが加わった。

 取り巻きが居ないこともこのデュエルを零児が見ていることも忘れて、ただただ集中する。

 その様子を見た仮面少女は微かに笑ってデュエルを続行させる。

 

「私は手札から《七星の宝刀》を発動。フィールドの《赤鬼》を除外して2枚ドローする!

 更に《トレード・イン》を発動。レベル8《火車》を墓地に送って2枚ドローする。

 私は《馬頭鬼》を召喚。レベル4《馬頭鬼》《ゾンビ・マスター》《不知火の武士》の3体でオーバーレイネットワークを構築!

 太陽を司る女神! 妙なる調べを以て顕現せよ!

 ──エクシーズ召喚《武神姫ーアマテラス》!」

 

 仮面少女は腕を翳して眼に影を作った。それと同時にフィールドを光が席巻する。

 全ての光をその背に受けて、神が降臨した。

 

「《武神姫ーアマテラス》の効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、除外されているレベル4以下の自分のモンスターを特殊召喚する。

 帰っておいで《馬頭鬼》。そして墓地に送られた《馬頭鬼》を除外して、墓地から《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚する。

 レベル4《馬頭鬼》と《ゴブリンゾンビ》でオーバーレイネットワークを構築!

 ──エクシーズ召喚《フレシアの蟲惑魔》!

 カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

【遊歌】

 LP4000

 手札1枚

 場 《戦神ー不知火》

   《武神姫ーアマテラス》

   《フレシアの蟲惑魔》

   フィールド魔法

   《混沌空間》C9

   伏せカードが3枚

 

【沢渡】

 LP4000

 手札3枚

 場 《冥帝従騎エイドス》

 

「俺のターン! ドロー!

 速攻魔法《帝王の烈旋》を発動する!

 このカードは1ターンに1度しか発動できない。このターン自分のアドバンス召喚の時に1度だけ相手のモンスター1体をリリースできる!」

 

 前のターンに手札抹殺で捨てさせられたカードと同名カード。沢渡は先程引いたばかりのこのカードをディスクに叩きつける。

 必要なカードを引いてくる運命力の高さ。それはデッキを信じている証拠なのだろう。

 

「《武神姫ーアマテラス》の効果。1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使って、除外されているレベル4以下の自分のモンスターを手札に加える。

 私は《馬頭鬼》を選択する。そして次に墓地から罠カード《仁王立ち》をチェーン発動する。この罠は()()()に墓地から除外する。

 このターン、貴方は《フレシアの蟲惑魔》以外は攻撃できない。直接攻撃も含めてね。

 まだよ。《フレシアの蟲惑魔》の効果をチェーン4で発動する。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから『落とし穴』通常罠を墓地に送り、効果を肩代わりする。

 私は《狡猾な落とし穴》を墓地に送る。

 このカードは自分の墓地に罠が存在しない時、フィールドのモンスター2体を選択して破壊する効果を持っている。私の墓地には《仁王立ち》が除外されたことで罠は存在しない。発動条件は満たしている。

 対象は《冥帝従騎エイドス》と《戦神ー不知火》。ゴメンね《戦神ー不知火》」

 

 仮面少女の言葉に、戦神は目を伏せる。

 そして光の粒子に変わってフィールドから居なくなる。遺された二振りの刀が地面に落ち、乾いた音を鳴らして消えていった。

 

 チェーン1 《帝王の烈旋》

 チェーン2 《武神姫アマテラス》

 チェーン3 《仁王立ち》

 チェーン4 《フレシアの蟲惑魔》

 

「そして、墓地に送られた《戦神ー不知火》の効果が発動する。このカードが戦闘・効果で破壊され墓地に送られた場合、除外されている守備力0のアンデット族モンスターを墓地に戻す。

 私は《妖刀ー不知火》を墓地に戻す!」

「だけど《帝王の烈旋》の効果は有効だぜ!

 俺は永続魔法《帝王の開岩》を発動する!

 そしてぇ。お前の《フレシアの蟲惑魔》をリリースして《光帝クライス》をアドバンス召喚!

 《光帝クライス》は召喚、特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを2枚まで選んで破壊する! そして破壊されたカードの枚数だけ、そのカードのコントローラーはドローする!

 俺は《武神姫ーアマテラス》と《帝王の開岩》を選択。そして《帝王の開岩》がチェーン発動!

 《帝王の開岩》はアドバンス召喚に成功した時、デッキから攻撃力2400・守備力1000のモンスターか、攻撃力2800・守備力1000のモンスターのどちらかを手札に加えられるのさ!

 俺は《天帝アイテール》を手札に加える!

 更に《光帝クライス》の効果で1枚ドロー!」

 

 光の帝王が上空に手を翳す。すると空から雷がアマテラスに降り注ぐ。

 それはまるで神の裁きのように神々しく、例え神であろうと抗えない死の運命を突き付ける。

 

「《武神姫ーアマテラス》は私のモンスター。

 よって《光帝クライス》の効果で1枚ドロー!」

「へへーん、俺ってやっぱカードに選ばれてるぅ~。手札から《強欲で貪欲な壺》を発動!

 デッキトップから裏側表示で10枚のカードを除外して、カードを2枚ドローするぜ!

 カードを3枚セットしてターンエンドだ!」

「エンドフェイズに速攻魔法発動。《デーモンとの駆け引き》! レベル8以上のモンスターがフィールドから墓地に送られたターンに発動でき、デッキから《バーサーク・デッド・ドラゴン》を特殊召喚する!

 悲鳴を。《バーサーク・デッド・ドラゴン》!」

 

【遊歌】

 LP4000

 手札3枚

 場 《バーサーク・デッド・ドラゴン》

   フィールド魔法

   《混沌空間》C9

   伏せカードが2枚

   残りデッキ 13枚

 

【沢渡】

 LP4000

 手札0枚

 場 《光帝クライス》

   伏せカードが3枚

   残りデッキ 5枚

 

「……これが、社長と引き分けたデュエリスト。

 凄い。エース級のモンスターが次々と……ん? 何か焦げ臭いような……? 気のせいか?」

「沢渡のデッキは残り5枚。ユーカ(仮面デュエリスト)が《ネクロフェイス》を除外している事を忘れているな。

 しかし、彼女の伏せカードは恐らく……。なら、警戒すべきは《ネクロフェイス》よりも……」

 

 デュエルに見入る中島とは対照的に、零児は考え込む。自分が対戦相手だった場合のシュミレーションをしているのだ。

 

「貴方のデッキは残り5枚。裏側表示で除外されたカードを確認しないでいいのかしら? 始めの《ネクロフェイス》で《光帝クライス》は除外されているのよ。手札に《天帝アイテール》を握りながら、デッキに『帝』が居ないなんて、笑い者にもならないわよ」

「言っただろ。俺はデッキを信じてるってな。

 だから確認する必要なんてねぇ。俺のデッキには『帝王』魔法・罠カードは2枚以上残ってるし、当然残り1枚の《光帝クライス》もデッキに眠ってる。そう信じてる」

 

 言い切った。沢渡は真っ直ぐに仮面少女を見る。その瞳には迷いは微塵も感じられない。

 ただただ自分のデッキへの信頼だけが伺える。

 

「いいでしょう! その信頼に貴方のデッキが応えたのなら、私はそのデッキに敬意を持って全力で丁寧に捩じ伏せてあげる!

 私のターン! ドロー! 手加減はしない!

 フィールド魔法《混沌空間》の効果を発動する! 私はカウンターを7個取り除き、除外されている《赤鬼》を特殊召喚する!」

「この瞬間、俺は手札から《天帝アイテール》の効果を発動! このカードは相手のメインフェイズにアドバンス召喚できる!

 そしてこのカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる!

 俺は《光帝クライス》をリリースして、手札から《天帝アイテール》をアドバンス召喚!」

 

 閃光。これまでフィールドを席巻していた光など児戯にも等しい程に、光がフィールドに()()()()()

 質量を持った閃光をその手で弄んで、その帝王はフィールドに君臨する。

 

「チェーン処理の都合で、先に《赤鬼》が特殊召喚されてから《天帝アイテール》の効果が発動する。

 私のフィールドに君臨しろ《赤鬼》!」

「そして《天帝アイテール》の効果が発動する!

 このカードがアドバンス召喚に成功した時、手札・デッキから『帝王』魔法・罠カード2種類を墓地に送ることで、デッキから攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターを特殊召喚する!

 ……来たぜ、来たぜぇ! デッキから《真源の帝王》と《帝王の溶撃》を墓地に送って、デッキから《光帝クライス》を特殊召喚する!

 そしてぇ! 《光帝クライス》の効果が発動!

 このカードが召喚・特殊召喚した時、フィールド上のカードを2枚まで選択して破壊する!

 《赤鬼》と《バーサーク・デッド・ドラゴン》!

 お前らは奈落の世界にご招待してやるぜ!」

 

 5枚中3枚。必要なカードを全てデッキに揃えることは、なかなかできることではない。

 だと言うのに。それを成し遂げて尚、当然であるかのような態度で自慢すらしていない。

 沢渡は紛れもなく、本物のデュエリストなのだ。

 

「まだだぁ! 更に俺は罠カード《グリザイユの牢獄》を発動! このカードは自分フィールド上にアドバンス召喚・儀式召喚・融合召喚されたモンスターのいずれかが存在する時のみ発動できる!

 相手は次のターン終了時まで、シンクロ召喚・エクシーズ召喚は行えず、フィールド上のシンクロ・エクシーズモンスターの効果は無効化される!」

「《光帝クライス》の効果で、破壊された2枚分、私はデッキからカードをドローする。

 ……《天帝アイテール》の効果をデッキ5枚から成功させ、私はこのターンのシンクロ召喚・エクシーズ召喚を封じられた。

 なら、約束通り私の全力を見せてあげる!

 墓地から《馬頭鬼》を除外して《不知火の武士》を特殊召喚する。更に《異次元からの埋葬》を発動して、除外されている《馬頭鬼》《不知火の宮司》《ネクロフェイス》を墓地に戻す。

 そして《不知火の武士》の効果。墓地の《不知火の宮司》を除外して、攻撃力を600アップさせる。

 《不知火の宮司》が除外された場合、相手フィールドの表側表示のカード1枚を破壊できる!

 私は《天帝アイテール》を破壊する!」

 

 圧倒的に不利な条件に立たされている筈の仮面少女は、しかし笑みを崩していなかった。

 この程度の逆境なんて既に慣れていると言わんばかりに、躊躇も淀みもなくカードを繰る。

 

「そんな簡単に俺のエースモンスターは破壊させねーよ! 速攻魔法《禁じられた聖衣》を発動する!

 《天帝アイテール》の攻撃力を600ポイント下げることで、このターン効果では破壊されない!」

「私はもう一度墓地から《馬頭鬼》を除外することで、再び《赤鬼》を特殊召喚する。

 更に墓地の《妖刀ー不知火》の効果を発動! このカードと墓地のアンデット族モンスターを除外することで擬似的なシンクロ召喚を行える! これはシンクロ召喚ではないので《グリザイユの牢獄》では封じられていない!

 レベル4《ネクロフェイス》にレベル2《妖刀ー不知火》をチューニング!

 死せども積もる思いを。嘆き、叫べ!

 ──シンクロ召喚《デスカイザー・ドラゴン》!

 そして《ネクロフェイス》が除外された瞬間、お互いのデッキからカードを5枚除外する!」

 

【遊歌】

 LP4000

 手札5枚

 場 ATK2400

   《不知火の武士》

   《デスカイザー・ドラゴン》

   《赤鬼》

   フィールド魔法

   《混沌空間》

   伏せカードが2枚

   残りデッキ 5枚

 

【沢渡さん】

 LP4000

 手札0枚

 場 ATK2200

   《天帝アイテール》

   《光帝クライス》

   伏せカードが1枚

   残りデッキ 0枚

 

「お、俺のデッキが! ぜ、ゼロ。ゼロだとぉ!」

「そう。ゼロ。ラグナでもインフェルニティでもないわね。これで貴方の信じるデッキは破壊した。

 だけど、まだデュエルは終わっていない!

 言った筈よ! 全力で丁寧に捩じ伏せると!

 私はこのターンで貴方のライフを0にする!

 バトル! 《赤鬼》で《光帝クライス》を粉砕し、続けて《不知火の武士》で《天帝アイテール》に攻撃! 不知火流 一刀舞踊!」

 

 デッキが無くなれば敗北になるのではない。ドロー時にドローするカードが無かった時点で敗北になるである。ドローフェイズではないことには注意なのです。

 

 不知火の武士の持つ刀が光輝く。禁じられた聖衣を纏って動きの鈍った天帝に武士が肉薄し、腕を引く。体のバネを最大限に活かし、最短距離を最速で突き抜け、天帝に刀を突き出す。ここに下克上が、

 

「罠発動! 《無力の証明》!

 自分フィールド上にレベル7以上のモンスターが存在する時、相手フィールド上のレベル5以下のモンスターを全て破壊する!

 これで《不知火の武士》は破壊される!

 《グリザイユの牢獄》の効果で《デスカイザー・ドラゴン》は攻撃すらできない!

 ライフを削りきるだと? 夢物語だ! 夢は寝てる時にしか見れないものだぜ!」

「夢を叶えようと邁進できるのは、いつだって起きている時なのにね。本当、皮肉なものよ。

 罠発動! 《バスター・モード》!

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動する。デッキからリリースしたモンスターの『/バスター』モンスターを特殊召喚する!

 死者の嘆きを、悲鳴を。今こそ叫べ!

 泣け《デスカイザー・ドラゴン/バスター》!」

 

 神々しい光が君臨するフィールドに蒼炎が灯る。

 小さな一つの炎を中心にして点灯していく蒼炎は、やがてフィールドの全てを覆い尽くしていく。

 その火は揺らいでいる。ユラユラとゆらゆらと曖昧に揺れて。死と生の概念すら歪ませていく。

 

 やがてその火はデスカイザー・ドラゴンを包み込み、清めるかの如く竜を焼き尽くしていく。

 悲鳴。

 それは嘆きだ。泣き声だ。恨んだ声が。掠れた声が。乾いた声が。そして燃える声が。

 全てが混ざって咆哮となり、蒼炎は竜を産む。

 顔だ。

 その胴体には顔がある。全てを恨むかのような赤い眼が産まれる。同時にぐちゃりと胴体が裂けて、それは口になった。

 それは嘆きだ。死者の思いを、想いを嘆いている。叶わない願いを泣きながら叫ぶ、憐れな表情。

 

「《デスカイザー・ドラゴン/バスター》の効果!

 このカードが特殊召喚に成功した時、自分または相手の墓地からアンデット族モンスターを任意の数だけ自分フィールドに特殊召喚する!

 冥界の扉は開かれた! 《不知火の武士》《ゾンビ・マスター》《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚!

 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される」

 

 曖昧になった生と死の狭間から3体ものアンデットが湧き出して、仮面少女のフィールドをうろつく。

 ゾンビが獲物を求めるように彷徨うフィールドはバイ○ハザードの再現染みていた。

 

【遊歌@バイ○ハザード】

 LP4000

 手札5枚

 場 《デスカイザー・ドラゴン/バスター》

   《赤鬼》

   《不知火の武士》

   《ゾンビ・マスター》

   《ゴブリンゾンビ》

   フィールド魔法

   《混沌空間》

   伏せカードが1枚

 

「さあ、バトルの続きを始めましょう。

 《デスカイザー・ドラゴン/バスター》で《天帝アイテール》を攻撃する!」

「そうは行くか! 墓地から《ネクロ・ガードナー》を除外することで攻撃を無効にする!

 これでお前のモンスターは俺の《天帝アイテール》の攻撃力を超えることはできない!」

 

 デスカイザー・ドラゴン/バスターが放つ蒼炎をネクロ・ガードナーが受け止める。

 何度でも受け止めてやる。全部吐き出せ! お前の悲しみを! と言いたげなネクロ・ガードナーは残念ながら除外されるので、もう攻撃は受け止められないのだ。

 

「それはどうかな? 速攻魔法《瞬間融合》発動!

 自分フィールドのアンデット族モンスター《デスカイザー・ドラゴン/バスター》と《ゴブリンゾンビ》の2体を墓地に送って融合召喚を執り行う!

 私の全てを! 私の全霊を!

 ──融合召喚! 《冥界竜 ドラゴネクロ》!」

 

 地の底から咆哮が聞こえる。

 それは痛みで。それは嘆きで、それは悲鳴。

 冥界竜ドラゴネクロが仮面少女のフィールドに顕現した。

 

「融合召喚まで使うのかよ。《グリザイユの牢獄》で無効にするのはシンクロ召喚とエクシーズ召喚のみ。融合召喚は阻害しない……」

「墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果でデッキから《酒呑童子》を手札に加える。

 《冥界竜 ドラゴネクロ》! 《天帝アイテール》を噛み砕け! ソウル・クランチ!」

 

 天帝アイテールの首に冥界竜ドラゴネクロが噛みついた。暴れるアイテールを押さえつけ、その魂を噛み砕いて奪っていく。

 魂を奪い取られたアイテールは虚ろな目で虚空を見つめ、生気をまるで感じさせない。

 

「《冥界竜 ドラゴネクロ》は戦闘で相手を破壊することはなく、そのモンスターの攻撃力を0にして、(痛み)を奪い取る!

 よって、私のフィールドに《天帝アイテールトークン(ダークソウルトークン)》を特殊召喚する!

 このトークンは元の魂の攻撃力・レベルを得る。なので《天帝アイテールトークン》はレベル8、攻撃力は2800ポイントよ。

 このトークンは、貴方の驕りの象徴。他者より上で、自分は特別。そんな思いの集合体。

 味わうといい。《天帝アイテールトークン》で《天帝アイテール》を攻撃。ソウル・リバイヴ!」

 

 天帝アイテールトークンは自身の持つ光の矛で天帝アイテールを貫くと同時に消えていった。

 天帝アイテールの貫かれた筈の胸は無傷で、なのにアイテールは胸を押さえて苦しみだした。

 しばらくもがいたアイテールは次に蹲り、まるで嘆くように姿を消したのだった。

 

「ぅおぉぁああぁぉぁああぁあああああっ!

 がはっ、っぅ! だが、俺は死んでない! ライフはまだ400ポイントも残ってるぜ!」

(危ねぇ……。《光帝クライス》が攻撃表示だったならジャストキルされてたじゃねぇか……)

「バイバイ。《天帝アイテール》。

 そして何を勘違いしているのかしら。まだ私のバトルフェイズは終了していない!

 手札から速攻魔法《Re()()BUSTER(バスター)》発動!

 このカードは墓地の《バスター・モード》を除外することで発動する。自分フィールド上のモンスターを全て破壊し、墓地から『/バスター』モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する。

 ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、リリースできず、フィールドから離れる場合除外される」

 

 デスカイザー・ドラゴン/バスターの効果で特殊召喚したモンスターはまだ攻撃はしていないのだが、仮面少女はお構いなしにReーBUSTERを発動した。

 

「更に永続罠! 《ディメンション・ゲート》!

 このカードの効果により、自分フィールドのモンスター1体をゲームから除外する。

 私は《冥界竜 ドラゴネクロ》を除外する!

 チェーンは逆順処理される! よって《冥界竜 ドラゴネクロ》が除外された後、私のフィールドのモンスターを破壊して墓地から《デスカイザー・ドラゴン/バスター》を特殊召喚する!」

 

 再びフィールドに蒼炎が灯っていく。

 しかしデスカイザー・ドラゴン/バスターも完全な復活ではないのか、その炎は弱く、生と死の境界を揺らすことはできなくなっていた。

 

「さあ、追加攻撃よ! 《デスカイザー・ドラゴン/バスター》でダイレクトアタック!」

「墓地から罠発動! 《真源の帝王》!

 1ターンに1度墓地の『帝王』魔法・罠カードを除外して、このカードを通常モンスター扱いとして守備表示で特殊召喚する!」

 

 デスカイザー・ドラゴンが沢渡に向かって蒼炎を吐くが、それは突然現れた帝王によって阻まれる。

 

「これが最後のカード! 手札から速攻魔法《サイクロン》発動! 自分フィールドの永続罠《ディメンション・ゲート》を破壊する!

 そして、フィールドから表側表示の《ディメンション・ゲート》が墓地へ送られた場合、このカードの効果で除外したモンスターを特殊召喚できる!

 これが全力よ! 《冥界竜 ドラゴネクロ》!

 《冥界竜 ドラゴネクロ》でダイレクトアタック! 私の全てをかけて! ソウル・クランチ!」

「っ、ぬぅわぁああぁぁぁああぁああああっ!」

 

 【沢渡】 LP400→LP0

 

「爆発します! 君たち、早く退避を……!」

「ゑ?」

 

 デュエルの決着が着くと同時に、中島さんがデュエルフィールドに飛び込んで来て叫んだ。

 そして仮面少女と沢渡がその意味を理解した時、

 轟音が響いた。

 モニタールームの遮音ガラスが粉々に砕け、爆風がデュエルフィールドに押し寄せてくる。

 

「んっ! ぅあっ、ぁあぁぁあああぁあああっ!」

「らぅぁああぁぁぁああああぁぁあああああっ!」

「うおぉおぉぉおおおぉおおおおおおおおおっ!」

 

 ーーー

 

 吹き飛ぶ。

 私は風と一体になり、空に投げ出された。

 

「っ、お願い! 《冥界竜 ドラゴネクロ》!」

 

 闇のアイテムに精神力を注ぎ込んでドラゴネクロを実体化しようとして、ここはまだデュエルフィールドの影響下にあることを思い出して止める。

 リアルソリッドビジョンのドラゴネクロに沢渡と中島さんを助けに行かせ、私はデスカイザー・ドラゴン/バスターに手を伸ばす。

 

「無事か。仮面デュエリスト、ユーカ?」

 

 だがそれは無意味に終わる。

 そこには何故か浮いたDDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロクに乗った赤馬社長が居たのだ。

 

「中島に避難を呼びかけるように頼んだのだが、やはり間に合わなかったか……。だが、あの二人は私が救助に入る前に《ドラゴネクロ》に助けられたようだな。

 礼は言っておこう。そして不手際に巻き込んですまない。医者は手配する。一応検査は受けていけ」

 

 カエサル・ラグナロクに受け止められた私は、この前のデュエルでドラゴネクロを奪われた事は水に流してやろうかと、そう思うのだった。

 

 ーーー

 

『断る。私はこんな世界がどうなろうとどうでもいい。例え滅びようが統一されて消えようがね』

 

 その瞳は一切揺れなかった。

 それは彼女の中で既に決定された解答を述べているに過ぎないことを証明していた。

 

「その思想は、危険だ」

 

 深夜。爆発騒ぎを新しいソリッドビジョンシステムの調整ミスだと公表し、その事後処理を一先ず片付けた後に零児は呟いた。

 

「それは許容ではなく、希求ではないのか?」

 

 そうなれば、それはもう破滅願望だ、と続ける。

 社長室には既に誰も居ない。零児の言葉を聞く者は本人以外には存在しない。つまり独り言だ。

 

「経歴を鑑みれば、彼女が世界を恨む理由は無数に存在するだろう。そのいずれかに起因する感情なのか? ……駄目だな。分からない」

 

 あれほどの実力があれば戦うことは可能なのに。抗って立ち向かうことができる筈なのに。

 

「だが、一つだけ分かっていることもある」

 

 それは。

 

「一歩でも踏み外してしまえば、彼女はアカデミア側につく危険性が有ると言うことだ……」

 

 はあ、と溜め息を着いた。

 そこまで見越したからこそ、彼女の召喚反応を測定したのだ。願わくはこのデータを敵の召喚反応としては見たくない、とそう零児は思うのだった。

 




※この小説は娯楽小説(のつもり)です。なのでシリアスにはなりません。よかれと思って宣言しました!

妖仙獣沢渡さんは書きたかったです(過去形)。

最近は一話毎のテーマが曖昧です。今回はGXで前回はDMだったのです。分かった人はいるかな?
え? 分かるわけないだろって? あ、あははは。
ごめんなさい反省してます許してください。
?<許してくださいってかぁ? (無言の手刀)
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