遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。   作:羽吹

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【注意】
・中島さんが壊れました。
・私は素良君も(キャラとして)好きです。
・これでもソリティアは抑えたんだ……信じてくれよぉ!


その邂逅は、仮面。(vs素良)

 

 大量のモニター画面が私を映していた。

 

「お待ちしておりました、仮面デュエリスト・ユーカさん。素敵な仮面ですね。光っています。それでは、こちらへどうぞ。社長がお待ちです」

「お疲れさまです。中島さん。仮面が光っているように見えるのは、光が反射しているのか幻覚を見ているかです。ここはモニタールームなので後者でしょう。真剣に有給を取ることをお勧めします」

 

 そう言いつつモニタールームの奥で大量の書類を処理している社長のもとに案内される。私が到着したことに気づいた赤馬社長は、一旦書類を机の上に置いて私を見上げる。素敵な眼鏡ですね。光っています。

 

「ようやく来たか、仮面デュエリスト・ユーカ。

 早速だが、呼び出した理由を説明しよう」

 

 中島、写せ。と赤馬社長が命じる。

 

「はい。こちらになります」

 

 私たちの近くの大きなモニターに電源が入る。100インチはありそうな巨大なモニターが音もなく立ち上がり、その繊細な映像が……

 

『マル秘映像! LDS理事長☆HMKちゃんのシャ○ー映像☆ ノーカットでお送りするぞっ☆』

 

 背景にハートマークが散りばめられた、明らかに個人製作のような映像が写される。なかなかに凝った音楽が私の鼓膜を叩いて、嫌にピンク色の多い映像が網膜に写し出され、脳に送られるパルスが狂う。私の脳が理解を完全に拒否した。

 私はきっと幻覚を見ているのだろう。

 

「間違えました」

「っ、待て中島。なんだ今のは!」

「間違えました。こちらになります」

「待て、どうして自宅のシャワー室の映像が!?」

 

 赤馬社長が珍しく取り乱す。目が限界近くまで開かれ、額に冷や汗が流れている。可哀想に。

 

『ダメダメ! このペンデュラムカードは君たちの物じゃない。これはね、僕のカードなんだ!』

 

 画面にドアップで写るのは、この前に対戦した沢渡。それと一時間程前に別れた榊君と柚子たち。

 

「これは……。どういうこと……?」

「そんなことはどうでもいい。中島、先程の……」

「間違えました」

「内容のことを言っているっ!」

 

 まだやってたのか、この二人は。

 だが珍しく声を荒げる赤馬社長は見ていて楽しいので、止めるつもりなど毛頭ないが。

 

『アクションフィールド、セットオーン!

 《ダークタウンの幽閉塔》発動! ギャラリーの皆さんは囚われのお姫様の気分を体験できるぜ! 俺ってファンサービス精神に溢れてる~っ!』

 

 そんなこんなでデュエルが始まった。榊君のペンデュラムカードを沢渡君が奪ったままの状態。

 つまり。

 

「ペンデュラム召喚の他者による実践……」

「そうだ。ペンデュラム召喚とは、召喚法だ。それは一人が独占していられるようなものではない。

 時代とは、常に変動しているものなのだ」

「何一つとして、変わらないものなどない」

 

 その変化の良し悪しさえ気にも止めずに。淡々と、粛々と。ただただ時間だけが過ぎていく。

 私は歩いていないのに。世界だけが、ずっと。

 

 そしてデュエルが終わった。囚われた柚子たちを助けに行こうとして赤馬社長に止められたり、中島さんが過労で倒れたりと色々あって、結果は榊君が勝った。ペンデュラム召喚について理解を深められるデュエルだったように思います(小並感)。

 

 ーーー

 

 榊君に追っかけができた。素良君という。

 LDSでのデュエルの後に、LDSに見学に来ていた素良君が榊君を気に入った結果である。だが、何故か榊君はせっかくできたファンを追い払おうとデュエルを始めた。受け入れればいいのに。

 ここは遊勝塾。LDSでの騒動の次の日。私は榊君と素良君とのデュエルを見学している。

 あ、オッドアイズが破壊された。

 

 そして、大事なことはそこではない。素良君が融合を使ったことだ。それも私の知らないカードだった。その上、素良君の故郷では皆が融合召喚を使っていたと言う。導き出せる結論は、素良君アカデミア出身の疑いがあると言うことだ。これが私の関係のない人物であればスルーするのだが、素良君は遊勝塾と入ると言い出した。

 これ、絶対赤馬社長から何か言われるじゃないか。あの人、いま中島さんのことでかなりピリピリしてるのに。ああ、憂鬱だ。

 

「ねぇ。僕がこの塾に入るのはいいんだけどさ、だったら他の人ともデュエルさせて欲しいな! 遊矢のデュエルは分かったけど、ここの人たちがどんなデュエルをするのか、僕ぜんぜん知らないもん!」

 

 いいでしょ? と素良君は榊君と塾長にせがむ。

 駄々っ子のような口調で捲し立ててはいるが、その内容は可笑しな事ではない。デュエルの塾に入るなら知っておきたい情報だろう。

 

「分かった。入塾してくれるって言うなら、いいぞ! 俺が許す! 柚子、遊歌ちゃん、いいかな?」

 

 私たちに後付けで了承を取りながら、塾長は許可を出す。融合使いを塾に引き込むことに躍起になっているのだろう。声が軽く上擦んでいた。

 必死である。まあ、経営難とか色々あるのだろう。私が口出しする問題ではない。

 

「じゃあ、背の低い方から!」

「背の低……、まあいいけど。私は(つむぎ)遊歌(ゆうか)。結と呼ばれるのは嫌だから、遊歌と呼んで欲しい」

「いいよ! 宜しくね、遊歌!」

 

 素良君は柚子と遊歌を交互に見た後、私に挑戦状を突きつける。私と変わらない身長の癖に生意気なっ。

 

 ーーー

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形!」」

「アクション──」

「「──デュエル!!」」

 

「今回のフィールドは、さっきと同じ!

 《スウィーツ・アイランド》! 甘いあまーい、スウィーツの世界! 糖分多目のアクションデュエルをお楽しみください! ン熱血だぁ!」

 

 

「それじゃ、先攻はあげるよ!」

 

 素良君は私に向かってそう言い放った。

 デュエルモンスターズと言うゲームにおいて、先攻は非常に有利だ。マスタールールが3に移行して、先攻のドローができなくなった今でさえその傾向は強い。

 手札消費の激しい(例外も多数存在する)融合デッキだからこその言葉である可能性もあるのだが、それにしては先ほど榊君を相手にしたデュエルでは手札に余裕はあったように思う。

 つまり。

 私を相手に始めから本気で戦う気が無いということだ。

 

「ふーん、本当に良いの? 私を相手に先攻を譲っても。後悔しても知らないわよ?」

「いいよ。勝つのは僕だからさ」

 

 当然のように宣言する。まるでバニラアイスとカスタードプリンは融合するべきと言うような口調。

 違うよ。カスタードプリンは生クリームと融合するべきなんだ。そちらの方が攻撃力(満足)が高い。満足(インフェルニティ)的に言えばトリシューラではなくオーガドラグーンを選択するのと同義。ジャスティス。

 でもプリンが二つ(シンクロキャンセル)があれば悪の道に堕ちたとしても……。

 はっ、ダイ、エット、し、な、きゃ……。

 

「くっ、私をダイエットの道に引きずり込むなんて……。素良君、なんて恐ろしい相手!」

「なに言ってるの?」

 

 カルマです。

 もしくは逃れられない運命。

 

「私の先攻! モンスターを1体セットして、カードを2枚伏せる。これでターンエンド」

「僕のターン! ドロー!

 まずは僕の玩具(おもちゃ)を引かなきゃね! 手札から《ファーニマル・ベアー》を墓地に送って、デッキから《トイポット》をセットするよ!

 そして《トイポット》を発動! 手札を1枚墓地に捨てて、僕はレバーを回すんだ!

 この瞬間が楽しいんだよねっ! 何が出るかワクワクドキドキ! ねっ、そう思わない?」

「…………ごめん、ちょっと分からないかな」

 

 素良君には悪いが、私はパックを買ったことがないのでその感情は分からないのだ。アンデットたちは定期的に落ちてるし、ご主人様からもたまに貰える。嬉しい。

 でも、ギリギリの時のドローの緊張感と似たようなものなのかな? どうだろう。

 

「えーっ!? ノリ悪いなぁっ! この楽しさが分からないなんて、絶対人生損してるよ。

 それじゃあ、引くよ! ふふん、来ちゃった! 《ファーニマル・ドッグ》を引いたよ!

 この瞬間《トイポット》の効果発動! このカードの効果で『ファーニマル』モンスターを引いた時、手札からモンスター1体を特殊召喚できる!

 僕は《ファーニマル・ドッグ》を特殊召喚して、効果を使っちゃうよ! このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《エッジインプ・シザー》を手札に加えることができるんだ!」

 

 『ファーニマル』モンスターも手札に加えることはできるけどね、と素良君は続ける。

 それでも《エッジインプ・シザー》を手札に加えたと言うことは、恐らく融合が来ると言うこと。

 裏デュエルで相手をして以来の融合召喚。それも知らないカード。楽しみに胸が踊る。さぁ、どんなモンスターが出てくるのかな。

 

「もしかして期待しちゃってる? ならその期待には応えないとね! 僕は《エッジインプ・シザー》を召喚して、魔法カード《縫合蘇生》を発動。墓地から《ファーニマル・ベアー》を特殊召喚する!

 さあ、行くよ! 魔法カード《置換融合》発動!

 悪魔の爪よ! 野獣の牙よ! 今一つとなりて、新たな力と姿を見せよ! 現れ出ちゃえ!

 ──融合召喚! 全てを切り裂く戦慄の(ケダモノ)

 来い! 《デストーイ・シザー・ベアー》!」

 

 熊のぬいぐるみからハサミが突きだし、愛嬌と不気味さが調和したモンスターが現れる。

 ぬいぐるみの中から光る目を確認して、私は素良君に分からない程度に薄く笑う。私の想定した通りの布陣を敷いてくれた、と。そう思って。

 

「さあバトルだよ! 僕は《デストーイ・シザー・ベアー》でセットモンスターに攻撃!」

「《ゴブリンゾンビ》が破壊されたことで、デッキから《ゾンビ・マスター》を手札に加える!」

 

 お菓子の世界には不衛生なモンスターがジュースの海に落ちていき、シザー・ベアーがゴブリンゾンビのリンゴジュース添えを美味しそうに食べる。

 多分、お腹壊すと思うんですけど(名推理)

 

「だけど、遊歌も知ってるよね。《シザー・ベアー》の効果をさ! 僕は戦闘で破壊した《ゴブリンゾンビ》を《シザー・ベアー》に装備させる!

 この効果で装備したモンスターは『1000ポイントの攻撃力を上げる』効果になるよ!

 そして僕のバトルはまだ終わってない! 《ファーニマル・ドッグ》でダイレクトアタック!」

「っ、きゃっ、んっ!」

 

 ファーニマル・ドッグが私に体当たりをして、バランスを崩した私は近くのマカロンの上に着地する。

 素良君はシザー・ベアーに乗ったまま私を一瞥して、悠々とディスクにカードを差し込んだ。

 

「僕はカードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

【遊歌】

 LP2300

 手札3枚

 モンスター

 Φ

 魔法・罠

 伏せカードが2枚

 

【素良君】

 LP4000

 手札1枚

 モンスター

 《デストーイ・シザー・ベアー》/ATK3200

 《ファーニマル・ドッグ》

 魔法・罠

 永続魔法《トイポット》

 装備魔法《ゴブリンゾンビ》

 伏せカードが1枚

 

「私のターン。ドロー。

 まずは罠発動《レインボー・ライフ》。手札を1枚捨て、このターン私はダメージを受ける変わりにその数値分回復する」

「ライフ回復の罠……? 何か嫌な予感がするんだけど。凄くするんだけど」

(僕の伏せカードは相手の展開を阻害するカードじゃない。止めることはできない。

 でもこれはチャンスだ。ペンデュラムじゃないこの次元の戦い方を見ることができるんだから!)

 

 私はマカロンから飛び降りて着地する。雲のように柔らかい地面が体重で軽く凹んだ。

 私はそんなに重くない。3○キロもないのに。と小さく愚痴りながらモンスターを召喚する。

 

「手札から《ゾンビ・マスター》を召喚して効果を発動。《ゾンビ・マスター》を手札から墓地に送り、墓地から《ゾンビ・マスター》を特殊召喚する。

 更に特殊召喚された《ゾンビ・マスター》の効果を発動。手札の《馬頭鬼》を墓地に送って、墓地から《ボーンクラッシャー》を特殊召喚する。

 この時《ボーンクラッシャー》の効果が発動する! このカードがアンデット族モンスターの効果によって墓地から特殊召喚された時、相手の魔法・罠カードを1枚破壊する!

 私は《ゴブリンゾンビ》を破壊して、墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果を発動する!

 デッキから《不知火の宮司》を手札に加えて墓地の《馬頭鬼》の効果を発動。自身を除外して、墓地から《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚する」

 

 瞬く間に私のフィールドにアンデット族モンスターが4体もフィールドに並ぶ。この展開力こそアンデット族の真骨頂である。骨しかないけど。

 驚いている素良君には悪いけど、このターンの地獄はこれから始まる。まだ入り口に過ぎない。

 

(僕の《シザー・ベアー》の効果を逆手に取られた! 《ゴブリンゾンビ》で2回サーチする為に、わざと装備させたんだ!

 でも、タネが分かればどうってことないね!)

「やってくれるね、遊歌。僕の玩具をおもちゃするなんてさ。でも、もう引っ掛からないよ!」

 

 ゴブリンゾンビは装備させない。それだけで対策できちゃうんだよね、そのコンボはさ。

 素良君はそう続ける。確かに間違ってはいないのだ。()()()()()()()()()()

 

「バトルの時間よ! 《ゾンビ・マスター》で《デストーイ・シザー・ベアー》を攻撃する!

 この瞬間罠発動! 《アルケミー・サイクル》!

 私のフィールドのモンスターの攻撃力を0にして、この効果を受けたモンスターが戦闘破壊される度に私はカードを1枚ドローする!」

 

 私の回りを彷徨っているゾンビたちがシザー・ベアーへと向かっていく。シザー・ベアーに腕を切られて咀嚼され、足を切られてもぐもぐと。

 骸骨をガリっと。目玉をちゅるっと。内蔵はどくどくで。爛れた皮膚はパリパリと香ばしい。ふぅっ、と一息ついて。ごちそうさまでした。

 

(アンデット族モンスターを墓地に送るのは不味い。ライフは回復されるけど、ここは装備が正解!)

「僕は破壊した《ゾンビ・マスター》を《シザー・ベアー》に装備させ、攻撃力を1000上昇させる!」

 

 ぐぐっ、とシザー・ベアーが一回り大きくなる。

 いっぱい食べれることが嬉しいのか、シザー・ベアーのハサミがチョキチョキと音を立てた。

 

「なら、たーんといっぱいお食べなさい!

 《ゾンビ・マスター》・《ボーンクラッシャー》・《ゴブリンゾンビ》のゾンビと骸骨のソテー ~キャンディーを添えて~!」

 

 たーんと、いっぱいは同じ意味だけど! などとセルフで解説をしながら料理をサーブする。

 ソテーよりマリネの方が群隊感あったかな。

 

「くっ、ライフが17100ポイントまで……!」

「御粗末様でした。《アルケミー・サイクル》と《レインボー・ライフ》の効果で、私のライフは14800ポイント回復して、4枚ドローしている!

 更に墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果で、デッキから《タスケルトン》を手札に加える。

 悪夢はまだ終わらない。速攻魔法《魔力の泉》を発動! 素良君のフィールドには《トイポット》《ゾンビ・マスター》が2枚に《ボーンクラッシャー》の4枚が表側表示で存在する。

 よって4枚ドローして1枚捨てる。

 そしてこれが最後のメニュー! 速攻魔法《造反劇》発動! 素良君の《デストーイ・シザー・ベアー》のコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る!」

 

 ふ、ふふふ。と俯いていた素良君が笑い出す。

 

「随分と好き勝手に動いてくれたね!

 でも! それも! これで終わりだよ!

 カウンター罠! 《デストーイ・マーチ》!

 僕のフィールドの『デストーイ』モンスターへの魔法・罠・モンスター効果を無効にして破壊する。

 でもね、それだけじゃないよ! 対象となった『デストーイ』モンスターを墓地に送ることで、エクストラデッキからレベル8以上の『デストーイ』モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!

 もうアンデット族モンスターを墓地に置きたくない、とか甘いことは言わないよ! 自分の力で。遊歌、君を切り刻んであげる!

 ──擬似的融合召喚! 現れ出ちゃえ!

 《デストーイ・サーベル・タイガー》!」

 

 熊のぬいぐるみが裂ける。青い猫のようなぬいぐるみが中から食い破って顔を出した。

 つぶらな赤い目の直上からサーベルが突き破って角を形成し、口許から大量の刃物を覗かせていた。

 

「この瞬間《デストーイ・サーベル・タイガー》の効果が発動する! このカードが融合召喚に成功した時、自分の墓地から『デストーイ』モンスター1体を蘇生できる!

 僕は《デストーイ・シザー・ベアー》を特殊召喚するよ! そして《サーベル・タイガー》がフィールドに存在する限り、僕の『デストーイ』モンスターの攻撃力は400ポイントアップする!」

 

 再びフィールドに熊のぬいぐるみが出現する。

 ぬいぐるみに囲まれながら私を見る素良君は幼そうに見えるが、その表情は先程よりも必死だ。

 本気になったのだろう。

 なら、私も準備をしなければね、と呟いて闇のアイテムに精神力を注ぎ込んでいく。ウジャト眼が妖しく光って、軽く闇の瘴気が吹き出していく。貪欲に私から精神力を奪おうとする闇のアイテムを気合いで押さえつける。今日は闇のデュエルじゃないのだ。抑えぎみでいい。

 

「私は、カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

【遊歌】

 LP17100

 手札5枚

 モンスター

 Φ

 魔法・罠

 伏せカードが2枚

 

【素良君本気モード】

 LP4000

 手札1枚

 モンスター

 《デストーイ・サーベル・タイガー》/ATK2800

 《デストーイ・シザー・ベアー》/ATK2600

 《ファーニマル・ドッグ》

 魔法・罠

 永続魔法《トイポット》

 

 ーーー

 

「何やってるのかぜんぜん分かんなーい!」

「そうだそうだ! もっと分かりやすくして欲しいぜ~! 頭が痺れちまうぅ~」

「二人とも……。そこまで難しくはないですよ。

 でも、カードの使い方が尋常じゃない。これが中等部のデュエル。僕はまだまだ、なのかな……」

 

 何やら騒がしい小学生3人の話し合い。先程の遊歌のタクティクスを説明するタツヤ君とそれを聞くアユちゃんとフトシ君の図式だ。

 だが質問攻めにされているタツヤ君は可哀想なことになっているが。

 

「……融合の魔法カードを使わない融合……。

 成る程、そういう召喚方法もありなんだ……」

「あれ? ねぇ遊矢、遊歌のブレスレット光ってない? それになんか黒い霧みたいなの出てない?」

「そんな訳ないだろ。見間違いだって」

「う、うん。そうよね。疲れてるのかな、私……」

 

 目を擦りながらデュエルフィールドを見入る柚子と何か悩んでいる遊矢のペア。

 そして塾長はソリッドビジョンシステムの前に座っており、新調された機械の軽快な駆動音を聞いていた。

 その時。

 その駆動音に微かにノイズのようなものが混じる。始めは気のせいだと塾長は判断したが、それが断続的に続くのを聞いて違和感を覚える。

 

「……まさか、初期不良、何てことないよな?」

 

 そう言いながらも、塾長は機械の点検を始める。

 何の異常もないのにノイズの音量が無視できなくなるまで大きくなるのは、もう少し後のこと。

 

 ーーー

 

「僕のターン! ドロー!

 墓地から《エッジインプ・シザー》の効果を発動するよ! 手札を1枚デッキトップに戻して、墓地からこのカードを特殊召喚する。

 そして永続魔法《トイポット》の効果を発動! さっきデッキに戻した《ファーニマル・オウル》を引いて、特殊召喚するよ!

 そして《ファーニマル・オウル》が手札から召喚・特殊召喚した時、デッキから《融合》を手札に加える」

 

 フクロウが素良君のデュエルディスクに舞い降りる。コンコン、と嘴でディスクを叩くと、デッキから1枚のカードが競り出してきて、素良君はそのカードを手札に加えた。

 どこかのBFでも見たような演出である。

 

「更に墓地から《ファーニマル・ウィング》を除外して効果を発動! 墓地の《ファーニマル・ベアー》を除外して、カードを1枚ドロー。そして僕のフィールドの《トイポット》を墓地に送って、更にもう1枚ドローする!

 墓地に送られた永続魔法《トイポット》の効果も発動だよ! デッキから《ファーニマル・ドッグ》1枚を手札に加える!

 そして魔法カード《アドバンスドロー》を発動! 《デストーイ・サーベル・タイガー》を墓地に送って、カードを2枚ドローする!

 まだだよ。墓地の《置換融合》を除外。《デストーイ・サーベル・タイガー》をエクストラデッキに戻して、もう1枚ドローする!」

 

 合計5枚のドローと1枚のサーチ。流石は融合使い。ドロー加速が半端じゃない。既に初期手札を越える枚数を保持している。

 これで素良君の手札は充分に潤った。となれば来るのだろう。素良君の本気の融合が。

 

「さあ、その精神ごと切り刻んであげる!

 手札から魔法カード《置換融合》を発動!

 フィールドの《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・オウル》で融合召喚を執り行う!

 悪魔の爪よ! 煉獄の眼よ! 神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ! 現れ出ちゃえ!

 ──融合召喚! すべてを引き裂く密林の魔獣!

 来い! 《デストーイ・シザー・タイガー》!」

 

 緑色の虎のぬいぐるみが私の近くで地面に転がっている。覗き込んでみると、突然その布を突き破ってハサミが突き刺される。

 転がるように避けたが、服が少し切られた。肩の部分で、それもソリッドビジョンなので空気を読んではだけることはないが、少しだけ肌は見える。むぅ。

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》がモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの『ファーニマル』と『デストーイ』モンスターの数×300ポイントアップする!

 また、このカードが融合召喚に成功した時、素材にしたモンスターの数までフィールドに存在するカードを破壊することができる!

 僕はその2枚の伏せカードを破壊する!」

「罠発動! 《ダメージ・ダイエット》!

 このターン、私が受けるダメージを半減する!」

 

 ハサミで私のフィールドの伏せカードが切り刻まれる。と言うか何て効果だ。ワンターンキル前提の効果じゃないか!(偏見)

 

「っ、流石に34200ものダメージを1ターンで与えるのは……くっ、厄介なことを……っ!

 僕は《ファーニマル・ドッグ》を通常召喚する!

 そして《ファーニマル・ドッグ》の効果で、デッキから《ファーニマル・ラビット》を手札に加え、魔法カード《融合》を発動! フィールドの《デストーイ・シザー・ベアー》と手札の《ファーニマル・ラビット》《ファーニマル・キャット》の3体で融合召喚!

 ──現れ出ちゃえ! 全てに牙むく魔境の猛獣!

 来い《デストーイ・サーベル・タイガー》!」

 

 先程も出てきた青い猫型のロボット、じゃなくてぬいぐるみ。サーベル・タイガー=サンである。

 ドーモ、サーベルタイガー=サン。ユーカです。

 

「《サーベル・タイガー》の効果を発動! 墓地から《シザー・ベアー》を特殊召喚する!

 そして融合素材になった《ファーニマル・ラビット》と《ファーニマル・キャット》の効果も発動。墓地から《エッジインプ・シザー》と《融合》を手札に加えて、そのまま《融合》を発動しちゃうよ!

 僕はフィールドの《ファーニマル・ドッグ》2体と手札の《ファーニマル・ライオ》《ファーニマル・シープ》と《エッジインプ・シザー》の5体で融合召喚しちゃうよ!

 ──融合召喚! 全てに噛み付く青き野獣!

 来い! 《デストーイ・シザー・ウルフ》!」

 

 狼。青い狼のぬいぐるみが吼える。

 腹から突き出るハサミを地面に突き刺して、私に噛み付こうと今かいまかとその目が嗤う。

 

【遊歌】

 LP17100

 手札5枚

 モンスター

 Φ

 魔法・罠

 Φ

 

【素良君】

 LP4000

 手札キャンディーのみ

 モンスター

 《デストーイ・サーベル・タイガー》/ATK4000

 《デストーイ・シザー・ベアー》/ATK3800

 《デストーイ・シザー・タイガー》/ATK3500

 《デストーイ・シザー・ウルフ》/ATK3600

 魔法・罠

 Φ

 

「さあっ! 楽しいたのしいバトルフェイズだぁ!

 まずは《デストーイ・シザー・タイガー》で遊歌の右腕にダイレクトアタック!」

「っ、くっ、ぅっ、っ!」

 

 右腕がハサミで拘束される。後ろのタルトの壁にハサミは深々と刺さっており、逃げることはできそうにない。

 

「次は左腕だよっ! 《デストーイ・シザー・ベアー》で遊歌にダイレクトアタック!」

「あっ、かっ、っ、くぅっ!」

 

 左腕は肘の辺りをハサミが押さえつける。私の左腕は人形のように力なく釣り下がる。

 

「次は足を切ろうかなっ。《デストーイ・サーベル・タイガー》で遊歌にダイレクトアタック!」

「はっ、っ、づっ、っ"、ぅくっ!」

 

 サーベル・タイガーが動けない私の足を噛み砕く。あっ、足の健が動かな……っ!

 

「これで最後だよっ! 《デストーイ・シザー・ウルフ》で遊歌にダイレクトアタック!」

「っ、ぁああぁぁあああぅ、っぁあぁあああっ!」

 

 噛み付かれる。ソリッドビジョンが痛覚にダイレクトに働きかけて、激痛が走るのに体が拘束されて踞ることもできない。

 声にならない声をあげて、しばらくすると痛みは消えていった。

 

「やっと終わった、何て思ってないよねぇ!

 《デストーイ・シザー・ウルフ》の効果! このモンスターは、融合素材にしたモンスターの数だけ攻撃することができる!

 そうっ! 後4回も攻撃できるんだよぉ!」

 

 楽しいよねぇ、と言って素良君が笑う。

 

「さあ、最後はまだまだ続くよ! 《デストーイ・シザー・ウルフ》で遊歌にダイレクトアタック!」

「っ、にゃぁああぁぁああっ! んっ、っぅ!」

 

 右脇腹に衝撃。思わず顔が横を向いて。

 

「3回めの攻撃だよっ! 《デストーイ・シザー・ウルフ》で遊歌にダイレクトアタック!」

「あ"ぁ"っ、ぁぅっ! んくっ、づぅっ!」

 

 胃がっ、タルトに拘束されてるのに胃がっ! 圧迫、されてっ……!

 

「左腕が軽く痙攣してるよっ! でも攻撃! 《デストーイ・シザー・ウルフ》でダイレクトアタック!」

「んっ、くっ、ぅぁ、っぁ、っぅ、ぅ!」

 

 左脇腹に衝撃。左右の両方に衝撃が走って、痛みに軽く目を閉じて、顔を俯かせて人形ポーズ。

 

「ラストだぁ! 《デストーイ・シザー・ウルフ》で遊歌にダイレクトアタックっ!」

「っ、ぅあぁぁあああぁああああぁあああっ!」

 

 最後は鳩尾に衝撃が走った。一瞬呼吸が止まって、体がくの字を描いて倒れる。いつの間にか拘束は外れていて、私はゾンビのようにゆらゆらと起き上がる。

 纏めていた髪が少しほどけて顔を覆って、私はゆっくりと緩慢な動作で髪をもう一度纏める。髪型は秘密。日によって違うけど。

 いつものようにデッキトップのカードを傷つけないように爪で弾いて、静かにドローする。

 

【遊歌】

 LP2450

 手札5枚

 モンスター

 Φ

 魔法・罠

 Φ

 

【素良君】

 LP4000

 手札0枚

 モンスター

 《デストーイ・サーベル・タイガー》/ATK4000

 《デストーイ・シザー・ベアー》/ATK3800

 《デストーイ・シザー・タイガー》/ATK3500

 《デストーイ・シザー・ウルフ》/ATK3600

 魔法・罠

 Φ

 

「私の、たーん。ドローっ!

 ……ふふっ、ようやく準備が整ったみたいね」

「えっ? 何か言った……?」

 

 じじぃっ、とノイズと共にソリッドビジョンにラグが走る。色とりどりなキャンディーやお菓子の世界がモノクロの世界に移り変わって、緑と赤色がグチャグチャに入れ混じっていく。

 所々で甲高い悲鳴のような雑音が聞こえるが、まあ始めてのオカルト式システムハッキングにしては上出来な方だろう。

 これでこのデュエルフィールドは軽い異世界になった。柚子たちからは見えないだろうし音も聞こえない。当然、デュエルが終わるまでは出入りもできない。ここはそういう世界だ。

 

「何、ここ……? 配色は最悪だし、子供の悲鳴のような声も聞こえるし……。ソリッドビジョンは? ねぇ、遊歌。どうなってるの?」

「さあ、私にもさっぱり分からないわね。

 でも、ソリッドビジョンは消えてない。と言うことはデュエルが続行できると言うこと」

「うん、そうだね。まずはデュエルだよ。難しいこと(脱出とか)はデュエルが終わってから考えればいいや!」

 

 当たり前のようにデュエルを再開する。デュエルは何よりもまず優先されるのだ。当然である。

 

「よし。始めに手札から《封印の黄金櫃》を発動!

 デッキから《ネクロフェイス》を除外して、お互いのデッキからカードを5枚除外する。更に装備魔法《D・D・R(ディファレントディメンジョンリバイバル)》を発動。手札の《不知火の隠者》を墓地に送って、除外されている《蒼血鬼》を特殊召喚!

 次に《不知火の宮司》を召喚する。このカードが召喚に成功した時、手札・墓地から『不知火』モンスターを特殊召喚できる。私は墓地から《不知火の隠者》を特殊召喚して効果を発動。自身をリリースして、デッキからアンデット族チューナー《ユニゾンビ》を特殊召喚する。

 《不知火の宮司》の効果で特殊召喚したモンスターはフィールドから離れる場合除外される。よって《不知火の隠者》は除外される。

 そして除外された《不知火の隠者》の効果を発動。除外されている《不知火の武士》を特殊召喚する」

 

 私のフィールドにはレベル4のモンスターが3体、レベル3のユニゾンビが彷徨っている。

 何故か背景と違和感のないモンスターが私のデッキから出てくるけど、これはきっと偶然だよね。ねっ。

 

「チューナーモンスター? っまさか、シンクロ召喚? でも、今までエクストラデッキなんて……」

遊勝塾(クラス)の皆には、内緒だよ?

 私はレベル4《不知火の宮司》と《不知火の武士》の2体でオーバーレイネットワークを構築!

 ──エクシーズ召喚! フィールドを照らせ! 《ライトロード・セイント ミネルバ》!」

 

 モノクロ世界が光に染まる。悲鳴すら光に押し流されて、世界が一色に変えられていく。

 それは統一で。それは厳粛で。それは破滅。

 

「っ、エクシーズモンスター? チューナーモンスターが居るのに!? ……まさか、エクシー……党? でもチューナーモンスターが……」

 

 素良君が何かを呟いて考え込む。

 私はその様子を観察しながらもデュエルのプレイは淀みなく行っていく。今回は確認も兼ねてエクシーズをメインで展開しようと思う。

 

(……この子、やっぱりアカデミアと関係が……?)

「《ライトロード・セイント ミネルバ》の効果を発動! オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキトップからカードを3枚墓地に送る。

 そして《蒼血鬼》の効果を発動。オーバーレイユニットを一つ取り除いて、墓地からレベル4のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。

 私は《不知火の宮司》を特殊召喚して、次に《ユニゾンビ》の効果を発動。デッキから《馬頭鬼》を墓地に送って《ユニゾンビ》のレベルを1つあげる。

 そしてレベル4となっている《ユニゾンビ》とレベル4《不知火の宮司》《蒼血鬼》の3体でオーバーレイネットワークを構築!

 太陽を司る女神! 妙なる調べを以て顕現せよ!

 ──エクシーズ召喚《武神姫ーアマテラス》!」

 

 光が降ってくる。

 ミネルバが照らすフィールドを更に明るくアマテラスが照らす。柔らかく包み込む神の威光がフィールドを席巻して、しかし統治しない。

 

「この時、私のフィールドにはエクシーズモンスターが2体存在している。よって手札から魔法カード《エクシーズ・ギフト》が発動できる!

 私は《武神姫ーアマテラス》のオーバーレイユニットを2つ取り除いて、カードを2枚ドローする。

 そして墓地の《馬頭鬼》を除外することで、墓地から《妖刀ー不知火》を特殊召喚して《武神姫ーアマテラス》の効果を発動! オーバーレイユニットを1つ取り除いて、除外されている《馬頭鬼》を特殊召喚!

 お待ちかねのシンクロ召喚よ! レベル4《馬頭鬼》にレベル2《妖刀ー不知火》をチューニング!

 ──シンクロ召喚! 《瑚之龍(コーラル・ドラゴン)》!」

「っ、シンクロ召喚……! やっぱり遊歌はこの次元の人だってことだね。エクシーズの……がシンクロ召喚なんて使う……ないんだから!」

 

 一人でうんうん、と頷いた後に、今までと変わらない表情で素良君はデュエルディスクを構えた。

 

「何やら吹っ切れたみたいね。でも、うかうかしてると喰らい尽くすわよ。私のようなアンデットを相手に余所見なんてお勧めしないから。

 手札から魔法カード《招来の対価》を発動。

 このターンのエンドフェイズにリリースしたモンスターの数に対応する効果を適用する。そして《エクシーズ・シフト》を発動。自分の場のエクシーズモンスターをリリースして、そのモンスターと同じ種族、属性、ランクでカード名の異なるモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する。

 私は《武神姫ーアマテラス》をリリースして《武神帝ーツクヨミ》を特殊召喚する!」

 

 RUM(ランクアップマジック)の下位互換のような効果。黒咲はRUMを使っていたけど、それはエクシーズ次元のお話。この次元にはRUMはなかった。まあバリアンやアストラル世界に関わってくるものだから無くて当然なのだけど。だから『No.』も存在しない。

 因みに《九十九スラッシュ》などのカードはイラストが違うのだ。ホープは描かれていない。

 

「っ、エクシーズモンスターが入れ替わった!? 何、この戦法……。こんなの、僕は知らない!

 これがこの次元のデュエルなの? でも、LDSの見学じゃこんなデュエルは見られなかった!」

「さあ、どうかしらね。それは自分の目で確かめるものよ。《エクシーズ・シフト》は発動後に《武神帝ーツクヨミ》のオーバーレイユニットになる。

 そしてオーバーレイユニットを1つ取り除いて《武神帝ーツクヨミ》の効果を発動! 手札を全て墓地に送ってカードを2枚ドローする!

 《瑚之龍》の効果を発動! 手札を1枚捨てることで、相手のフィールドのカード1枚を破壊する!」

 

 瑚之龍の口胞が肥大する。肺が持ち上がり、空気の振動が停止する。龍のブレスがフィールドを割いたのだ。

 

「《デストーイ・サーベル・タイガー》は3体以上のモンスターを素材として融合されている場合、戦闘・効果では破壊できない!」

「っ、そんな! だが対象は《デストーイ・シザー・タイガー》! そのモンスターに耐性はない!」

「くっ、んっ、っぅ! ……やってくれるね!」

 

 そんな台詞を吐いている素良君だが、その表情に怒りはない。純粋にデュエルを楽しんでいた。

 だから、私も同じような表情を素良君に返す。

 

 お互いに色々と事情はあるだろう。これから、いつかと同じようにデュエルをした時に、同じように楽しむことはできないかもしれない。

 1つのデュエルに、自分の全てを賭けることも、誰かの想いを賭けることもある。だからこそ、デュエルはどんな時も、誰が相手でも楽しいだけじゃないんだ。

 それでも、デュエルには意味がある。

 違う人たちが、立場が、想いが。『相手を倒す』という共通性を持って、対話して、否定して、理解して、繋げる儀式。それがデュエル。

 だから。

 だから、今は。

 皆と、笑って、デュエルを。

 

「それでも世界は止まってくれない。いつか、きっと。終わりは来る。

 ……私はエクシーズモンスター《武神帝ーツクヨミ》とシンクロモンスター《瑚之龍》の2体で融合召喚を執り行う! この召喚には《融合》のカードは必要なく、該当するモンスターを自分のフィールドから墓地に送った場合にのみ特殊召喚することができる。

 ──融合召喚! 《旧神ヌトス》!」

 

 古い、ふるい、神。過去の象徴。

 槍を持ってローブをはためかせ、静かに現れる。

 

【遊歌】

 LP2450

 手札1枚

 モンスター

 《旧神ヌトス》

 《ライトロード・セイント・ミネルバ》

 魔法・罠

 Φ

 

【素良君】

 LP4000

 手札0枚

 モンスター

 《デストーイ・サーベル・タイガー》/ATK2800

 《デストーイ・シザー・ベアー》/ATK2600

 《デストーイ・シザー・ウルフ》/ATK2400

 魔法・罠

 Φ

 

「次はシンクロモンスターとエクシーズモンスターの融合……。さあ、次はどう攻めてくるの?」

「……まずは《瑚之龍》の効果。シンクロ召喚されたこのカードが墓地に送られた場合、カードを1枚ドロー。そして魔法カード《貪欲な壺》を発動して《武神姫ーアマテラス》《武神帝ーツクヨミ》《瑚之龍》《ゾンビ・マスター》2体をデッキに戻して、カードを2枚ドローする。

 魔法カード《禁断のトラペゾヘドロン》を発動。自分の場にエクシーズ、融合モンスターがいる時、エクストラデッキから『古神』シンクロモンスターを特殊召喚する。

 デュエルを侵略せよ! 《古神クトグア》!」

 

 クトゥルフ神話の一柱。フォーマルハウトに住む神。

 私のSAN値は始めっから地の底にあるのでチェックは必要ないのだ。いあ くとぅるふ!

 

「更に速攻魔法《聖蛇の息吹》を発動する。自分の場に儀式、融合、シンクロ、エクシーズモンスターの内、2種類以上存在する時、その数によって効果を選択して適用する。私は2種類のモンスターが存在する時に選択できる『墓地または除外されているモンスター1体を手札に戻す』効果を使用。除外されている《馬頭鬼》を手札に加える。また、3種類以上存在する時『墓地の罠カード1枚を手札に戻す』効果も使用できる。私は《ワンダー・エクシーズ》を手札に加える。

 そして《旧神ヌトス》の効果で、手札から《ゾンビ・マスター》を特殊召喚して効果を発動。手札の《馬頭鬼》を墓地に送って、墓地から《酒呑童子》を特殊召喚する。

 レベル4《旧神ヌトス》と《古神クトグア》の2体でオーバーレイネットワークを構築する!

 ──エクシーズ召喚! 《外神ナイアルラ》!」

 

 今度は融合モンスターとシンクロモンスターによるエクシーズ召喚。儀式とペンデュラム以外の召喚法を多用するデュエル。遊勝塾では見せられないデュエルである。

 本当は儀式も使いたいのだが、残念ながら専用構築にする必要があるので、機会があれば《冥界の宝札》型のアンデットデッキで使うと思う。この予定は未定だけど。

 

「《古神クトグア》をオーバーレイユニットとするエクシーズ召喚に成功した時、カードを1枚ドローする。そして、墓地から《シャッフル・リボーン》を除外して効果を発動。フィールドの《ライトロード・セイント・ミネルバ》をエクストラデッキに戻して1枚ドローする。更に《酒呑童子》の効果で、墓地の《ボーンクラッシャー》と《蒼血鬼》を除外して1枚ドロー。

 墓地から《馬頭鬼》を除外することで、墓地より《ユニゾンビ》を特殊召喚。効果を発動。手札を1枚捨てて《ユニゾンビ》のレベルを1つ上げる。

 そしてレベル4《酒呑童子》にレベル4となっている《ユニゾンビ》をチューニング!

 ここから始まるスペクタクル! マジック、トラップ大いに結構! 捩じ伏せますので!

 ──シンクロ召喚! 《戦神ー不知火》!」

 

 2刀を持ったサームラーイが空から飛び降りてくる。赤と青のコンチェルトが白黒の世界によく映える。

 

「《戦神ー不知火》の効果。このカードが特殊召喚に成功した場合、墓地の《不知火の宮司》を除外してその攻撃力を自身の攻撃力に加える。

 そして除外された《不知火の宮司》の効果で素良君の《デストーイ・シザー・ベアー》を破壊する」

「くっ、でも僕には《デストーイ・サーベル・タイガー》がいる! 戦闘でも効果でも破壊できない僕の切り札が!」

 

 どこかでキマイラさんが泣いている気がする。キマイラさんが誰なのか私には全く分からないけど。

 

「速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動して、2体の《馬頭鬼》と《不知火の隠者》を墓地に戻す。そして《馬頭鬼》を除外して、墓地から《不知火の武士》を特殊召喚する。

 さて、ごめんね。長かったでしょう。お疲れさま。でもこれで終わり。さあ、バトルの時間よ!」

 

【遊歌】

 LP2450

 手札2枚

 モンスター

 《不知火の武士》

 《ゾンビ・マスター》

 《戦神ー不知火》/ATK4500

 《外神ナイアルラ》

 魔法・罠

 Φ

 

【素良君】

 LP4000

 手札0枚

 モンスター

 《デストーイ・サーベル・タイガー》/ATK2800

 《デストーイ・シザー・ウルフ》/ATK2400

 魔法・罠

 Φ

 

「《不知火の武士》で《デストーイ・サーベル・タイガー》を攻撃! 不知火流 一刀舞踊!

 そしてダメージステップ開始時に効果発動! 墓地の《ゴブリンゾンビ》を除外して、このカードの攻撃力を600ポイントアップする!」

「足りないよ? それに、そもそも戦闘破壊はできないんだって! そう言ってるでしょ!」

 

 不知火の武士が刀を一閃する。赤と青の光に、偶然にも背景から緑色の光が射して、刀の軌跡は白色を描いた。

 その軌跡が物理的に裂け、その穴にデストーイ・サーベル・タイガーが飲み込まれていく。ハサミを地面に突き刺して抵抗してはいたが、やがて空間の狭間に吸い込まれていった。

 

「えっ? そんなっ!? どうして?」

「《不知火の武士》の効果が発動していた場合、このカードと戦闘を行ったダメージステップ終了時に、そのモンスターを除外する。破壊を介さずに、ね。

 もっとも、私は戦闘ダメージを受けるのだけど」

 

 私のデッキで、あの耐性をすり抜けるカードは多くない。その内の1枚が不知火の武士だったのだ。

 

「そして《戦神ー不知火》で《デストーイ・シザー・ウルフ》を攻撃! 不知火流 二刀の舞!」

「づぅ、くっ、ぅぁあぁあああああっ!」

 

 これで素良君のフィールドにモンスターは居なくなった。魔法・罠カードも存在しない。絶好のダイレクトアタックチャーンス。パネルの真中を打ち抜くのだ!

 え? 違う?

 

「これで最後よ! 《ゾンビ・マスター》で素良君にダイレクトアタック! アンデット・マリオネットリボーン!」

「そうはいかないよ! 墓地から永続罠発動! 《光の護封霊剣》! この効果によって、このターンのダイレクトアタックを封じる!」

 

 光の剣がゾンビに突き刺さって浄化する。恐ろしい剣だ。私も浄化されるかも知れない。

 それにしても、秀逸な防御策だ。素良君がこのカードを墓地に送れるチャンスは《トイポット》のコストだけ。ファーニマル・ウィングを鑑みると、捨てたのは4ターン目。あの布陣を敷いておきながら、覆されることを想定していたのである。

 

「私はカードを2枚セットしてターンエンド!

 そして、このエンドフェイズに《シャッフル・リボーン》の効果を発動。その後に《招来の対価》の効果を適用して、墓地から《不知火の武士》と《ユニゾンビ》を手札に加える」

 

【遊歌】

 LP2050

 手札2枚

 モンスター

 《ゾンビ・マスター》

 《戦神ー不知火》

 《外神ナイアルラ》

 魔法・罠

 伏せカードが2枚

 

【素良君】

 LP1500

 手札0枚

 モンスター

 Φ

 魔法・罠

 Φ

 

「僕のターン! ドロー!

 墓地から《置換融合》の効果を発動! 墓地の《デストーイ・シザー・タイガー》をエクストラデッキに戻して、カードを1枚ドローする!

 来たよ。僕は魔法カード《魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)》発動! 自分フィールド・墓地から融合素材を除外して融合召喚を執り行う!」

 

 デストーイ・シザー・タイガーを融合召喚するのだろう。8体ものモンスターを除外すれば、私のフィールドは焼け野原と化すことは間違いない。

 だけど。そうはならない。

 

「残念。罠発動! 《ワンダー・エクシーズ》!

 このカードの効果で、私はこのタイミングでエクシーズ召喚を行う! ランク4《外神ナイアルラ》でオーバーレイネットワークを再構築!

 万物の王である盲目にして白痴の神よ!

 ──エクシーズ召喚! 《外神アザトート》!」

 

 黒い泥の塊のようなモノが顕現する。

 何もない黒い塊に口が産まれる。手が突き出て、黄色く濁った目玉がぎょろりと回りを見渡して。耳障りな程に音を外したフルートの音色が絶えず頭に響く。

 

「この場面でエクシーズ召喚……? 何かあるんだろうけど、僕の方はもう止められない!

 墓地のモンスター全てで融合召喚!

 来い! 《デストーイ・シザー・タイガー》!

 遊歌のフィールドの全てを切り刻んじゃえ!」

 

 だが、虎のぬいぐるみからハサミが突きでない。ぬいぐるみは焦ったように自分の腹部をまさぐっているが、一向に刃物は現れず、ただの動くぬいぐるみになっていた。

 

「《外神アザトート》がエクシーズ召喚されたターン、相手はモンスターの効果を発動できない!」

「っ、なん……だって……! そんな馬鹿げた効果が……っ! くっ、でもそのモンスターが封じるのはモンスター効果のみ! それだけじゃ僕を止められないよ!

 《デストーイ・シザー・タイガー》で《外神アザトート》に攻撃! この瞬間、速攻魔法《決闘融合ーバトル・フュージョン》発動! 《外神アザトート》の攻撃力を《デストーイ・シザー・タイガー》に加える! これで攻撃力は4600! 2200のダメージを遊歌に与えて、僕の勝ちだ!」

 

 ぬいぐるみが襲ってくる。巨大化したぬいぐるみによるタックルは、小さい子が見たらトラウマものである。

 

「トラウマは嫌よ。助けて《タスケルトン》!」

 

 たーすけーるとーん、とつい最近も助けられた声がディスクから聞こえてきて、私に向かって突進するぬいぐるみに発射された。

 そのままぬいぐるみが爆発して素良君に向かって飛んでいき、シザー・タイガーの攻撃は終わる。

 

「……僕はこれでターンエンド」

「私のターン、ドロー!

 《外神アザトート》の効果を発動! このカードが融合・シンクロ・エクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、オーバーレイユニットを1つ取り除いて相手フィールドのカードを全て破壊する! プリミティブ・カオス!

 そして《戦神ー不知火》で素良君にダイレクトアタック! 不知火流 二刀の舞!」

 

 【素良君】 LP1500→0

 

 ーーー

 

 摩天楼を見上げると、壊れていない世界がある。

 薄暗い路地裏で擦りきれたコートを纏って、黒咲は機械的にデュエルディスクを操作する。ディスクの拡張機能によってここがエクシーズ次元ではないことを確認したのだ。

 そして、長らく使われることのなかったとある人物の連絡先をタップする。危険な戦いになることは分かっている。だからこそ、本当は巻き込みたくなどない。大切な友人なのだ。

 だが、彼女は瑠璃の友人でもある。

 

「待っていろ、瑠璃。必ず、必ずっ! アカデミアから助け出して見せる!」

 

 しばらくして、デュエルディスクから一年ぶりに聞く友人の驚いたような声が聞こえてきた。

 

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