遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。 作:羽吹
私に勝利は許されない。
それが私に課せられた制約だ。
中学校に入学するにあたって、私には様々な事が決められた。
私はご主人様の奴隷歴が長く、ある程度の自由は与えられたが、それでも色々な制約が課せられた。
公式大会への出場、公式戦での勝利の禁止だ。
他にも色々あるが、つまりは目立つなと言うことだ。私はアングラの人間だ。それでいい。
また、塾に通うことを推奨された。
塾に通わないデュエリストは少ないからだ。
私はデュエリストだと周りに吹聴する気はないのだけれど。ご主人様はそう思わなかったらしい。
正直に言うとあまり楽しみではない。
中学校に通うとなると裏デュエルの回数は減ってしまうからだ。あそこにしか私に価値はないのに。
何人も壊し、殺した私は普通の生活は望んでいない。血を血で洗うインフェルニティループ並の生活が良い。
私は私が終わるまで止まらない。
アンデッドは死ぬまで動くのだ。死なないけど。
ーーー
ライディング・デュエル!
アクセラレーション!
それはスピードの世界で進化した決闘。
そこに命を賭ける今の私たちはDホイーラーだ。
アクセルを踏み込んだ。
グリップを握りしめて、前を睨む。
世界が揺らいでいく。
外から歪んで、ただ一点だけが明確になる。
体を倒してコーナーを曲がる。
タイヤがギシギシと軋み、熱を持った。
頬がつり上がって、仮面越しに笑みが浮かんだ。
「私のターン! ドロー!
罠発動! 《火霊術-「紅」》!
このカードは自分フィールド上の炎属性モンスター1体をリリースして発動できる。リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
私は攻撃力2600《スカル・フレイム》をリリース! よって、2600のダメージを与える!」
スカルフレイムが炎に包まれ、私のD・ホイールを包んだ。そうか、攻撃ね。
急激にブレーキを掛け、そしてアクセルを踏む。
狂いそうなD・ホイールを押さえつけて、左のグリップに力を流していく。
回転だ。180度の方向転換。私の体に急激なGが掛かる。未だ幼いこの体の節々が悲鳴をあげる。
「あ、ぁあぁああああああああああ!」
私の悲鳴が耳を揺らす。
左腕から嫌な音が聞こえる。折れたかもしれない。けど、スピードは緩めない。
急激な回転にD・ホイールまでもが悲鳴をあげる。ラジエーターがイカれた。
このまま続ければD・ホイールが爆発しかねないが、無視する。今はデュエル中だ。
「《火霊術-「紅」》の効果を処理する!
にゃぁあああああああああああああ!」
1オクターブ高い声と共に、相手のD・ホイールに突撃する。
私のD・ホイールの装甲が相手のD・ホイールにぶつかる! ぶつかった衝撃で前輪が浮く。
空中でグリップを持ち変える。
右のグリップを両手で持ち、全力で方向転換。
後輪が浮いた。
私のD・ホイールが斜めにズレる。
だけど、前輪はもう方向転換を終えている。
前輪が地面に着くタイミングで今度は左に前体重を掛ける。30キロあるか無いかだけど!
「ふおぉおおおおおおおおおおおっ!!」
必死。仮面越しに分かるほどに必死。
全力でD・ホイールのバランスを保つ。
戻ったぁ!
相手のD・ホイールは私の体当たりでバランスを崩し、スピードは出ていない。
十分に追い付ける! アクセルをベタ踏み!
ガクン、と体が一瞬後ろに逸れた。
「まだだ! 私は墓地に存在する《スカル・フレイム》を除外する!
手札の《スピード・キング☆スカル・フレイム》は墓地の《スカル・フレイム》を除外することで特殊召喚できる!」
風が吹き荒れる。スリップストリームのように前方の風が掻き分けられて、私が風になる。
後5メートル程で相手のD・ホイールに接触する。何故か私から距離を取るような走行をしているけど、どうしてだろうね。
ライディング・デュエルにおいてラフプレーは基本なのに。失礼しちゃうわ!
「私はアンデット族モンスターを特殊召喚した!
よって、永続魔法《不死式冥界砲》の効果が発動する。1ターンに1度、自分フィールドにアンデット族モンスターが特殊召喚された時、相手に800ポイントのダメージを与える!
不死式冥界砲、ヘル・チャージ!」
逃げようとするD・ホイールに食らいつき、今度は後ろから突撃する。ステンバーイ、ステンバーイ。
コースの内側に逃げたD・ホイールに追い付いた。不死式冥界砲によって強化された車体をぶつける!
更に内側に吹き飛ばされた相手は、しかしバランスを崩さない。800のダメージでは浅いか……!
ボッ、と音が聞こえてD・ホイールが微かに赤みを帯びる。ヤバイ、もう持たない。
「《スピード・キング☆スカル・フレイム》で攻撃! ダイレクトアタック!
貴方を守るモンスターは居ない! 手札にも、墓地にも! よって希望もない!
スピードに焼かれて崩れるが良い!」
ギャギャギャギャッ! とセーフティが働き、相手のD・ホイールが排気と共に停止する。
バギンっ! と甲高い音と熱が私を襲った。
「…………あっ」
ヤバイ。爆発する。
熱と摩擦がD・ホイールの全体に伝わり、ヤバイ感じの音が私の下から聞こえる。
足に力を入れる。ヘルメットに仮面がカチン、とぶつかった。
その数瞬後に、熱が暴走する。
「ぅああぁああああああああああああ!!」
D・ホイールからカードをもぎ取る。
そして、爆風に乗って私は空を跳んだ。
私は今、風になっている!
って、現実逃避してる場合じゃない!
私は回転しながら空に投げ出され、レースの外に張り巡らされている透明な壁にぶつかって止まった。
ーーー
全治2週間。
それが私の入院期間にもなった。
左腕に強い負荷が掛かり(折れてはなかった)、全身の打撲、擦り傷等々だ。
私はご主人様の計らいでまあまあ腕のたつ闇医者に診てもらい、安静を言い渡されたのだ。
闇医者に行ったのは正解だ。
私はバイクに乗って良い年齢では無いのだから。
バイクに乗って怪我をしましたなんて言えない。
そして、入院の期間は私の入学の時期と重なった。入学式は欠席である。まあ親は居ないので別に良いけれども。
そして、今日は私の初登校の日だ。
はぁ、と溜め息を着く。憂鬱だ。
暫くは裏デュエルが行えないのだ。
私が前回やらかした大怪我と入学が原因である。落ち着くまで謹慎していろ、とのことだ。
憂鬱だ。
今更私が普通になれるわけもないのに。
教室に入る。ガヤガヤとした人の音に溢れていた。目がこちらを向いて、私は無視した。
席次の書かれた紙を確認して、席に着く。
つまらない世界。私が無くした世界だ。
…………もうどうでもいいけど。
放課後。
私は町を歩いていた。
私は塾を探しにいく必要があったからだ。
色々な塾があった。
アンデット系専門塾を見に行ったが、つまらなかった。
竜骨鬼さんスゲー! 戦士と魔法使いキラーだ!
うん、そうだね。だからどうしたの。戦闘を介する破壊に価値はあんまりないと思うんだ。
大体こんなものである。それだけじゃない。
私の常識と世間には大幅なズレがあった。
融合を使うことは珍しいと始めて知った。
シンクロも、エクシーズも珍しいらしい。
融合の魔法カードが投げ売りされていたのを見て、即購入した位である。
私の知識には遊戯王Zexalまでの記憶がある。
加えて、地下に堕ちてくるデュエリストは強い人も多い。儀式、融合、シンクロ、エクシーズは少なくとも一つは使える人ばかりだった。
この違和感を拭うのには時間が掛かりそうである。
始めてダークロウを出されて、どうして良いのか悩むほどに私は陰鬱としていた。
ーーー
LDS。
レオ・デュエル・スクール。
デュエルモンスターズ産業の大手である、レオ・コーポレーションが経営する塾だ。
それは信頼を産み、人を集め、大きくなっていった。
この町最大のデュエルスクール、それがLDSだ。
その校舎は最新鋭のビル。
私はその中に入っていった。
私は怪我のせいでスタートが遅れた。
とは言えたった2週間だ。まだ説明会は開かれていた。
「我々LDSの目的はデュエルのレベル向上にある。
儀式、融合、シンクロ、エクシーズ。
それらを極め、組み合わせ、進化させ!
そして、新たなデュエルを作り上げる。
それがLDSの教育理念である。
それ故に、評価基準は強さで決まる。
他者を蹴落とし、糧として、自らを高める。
その結果として、プロへの進出、公式大会の出場を目指してもらう!」
ン熱血指導ゥを行いそうな顔がうるさい人がそう言った。
そして私は決める。この塾は却下だ。
公式大会になど出る気もない。
そもそも私は実力を高めるためではなく、
ただただ狂ったようにデュエルがしたいだけだ。
私が真に敗北するときは、即ち死ぬときだ。
この塾の教育理念と私の理念とは乖離しすぎているのだ。だから却下。
説明会に参加した私以外の人が入学を希望した。
まるで洗脳である。ドウイウコトナノ……。
人の波を縫ってビルから出ようとすると声を掛けられた。何の用?
「君は入塾しないのかな?
僕たちと一緒にプロを目指そうじゃないか!」
「結構です。プロに興味はありません」
そう言うと目の前の人が喚き出した。
なんでも僕の誘いを断るとか不敬らしい。
「だったらデュエルで決めようじゃないか!
僕が勝ったらLDSに入って、僕と一緒になろう!
さあ! さあ! 僕とデュエルぉおおお!」
へ、変態だー!
変態に絡まれた私は、撃退するために自然な流れでデュエルをすることになった。
負けたところで私は貴方の物にはならないけれど。私はご主人様の物である。
スタンディングデュエル。
LDSに所属していない私にアクションデュエルフィールドを使用する権限はないのだ。
「私の先行。裏側表示でモンスターをセット。
カードを一枚セットしてターンエンド」
本気は出せない。融合、シンクロ、エクシーズは禁止だ。習ってもないのに使ったら目立つ。
その上、私の今のデッキは裏デュエル用のデッキですらないのだ。
「僕のターン! 僕は《召喚師のスキル》を発動。
その効果により、デッキからレベル5以上の通常モンスターを手札に加える。
僕は《ダイヤモンド・ドラゴン》を手札に。
さらに《七星の宝刀》を発動。
手札・自分フィールドの表側表示のレベル7モンスター《ダイヤモンド・ドラゴン》を除外して2枚ドローする。
続けて《竜の霊廟》を発動する。
デッキからドラゴン族モンスターを墓地に送る。そのモンスターが通常モンスターならば、追加でもう一枚墓地に送れる。
僕は《エビルナイト・ドラゴン》を墓地に送る。通常モンスターなので、追加で《コドモドラゴン》を墓地に送る。
この瞬間《コドモドラゴン》は成長する!
《コドモドラゴン》が墓地に送られた場合、手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚出来る!
僕は《ドラゴン・エッガー》を特殊召喚する!」
インドネシアに生息するコモドドラゴンがモチーフであろうコドモドラゴンが墓地に送られ、卵の殻の着いたモンスターが現れた。
…………退化しているような気がしないでもないが、成長はしたのだろう。きっと。
「まだだ! 《復活の福音》を発動!
その効果により、墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。
舞い降りろ! 《エビルナイト・ドラゴン》!
まだまだ行くぜ! 《アームズ・ホール》を発動だ!
このターンの召喚権を放棄することで、デッキトップのカードを墓地に送って好きな装備魔法を1枚手札に加える。
《D・D・R》を加えて、発動する!
《D・D・R》は手札1枚をコストに除外されている自分のモンスターを1体特殊召喚出来る!
別次元より侵攻せよ! アカデミア、じゃなくって《ダイヤモンド・ドラゴン》!」
体をくねらせてスタイリッシュに青い竜が降りてきた。その竜は禍々しく戦慄く。
すると、相反するようなまばゆい光が降り注ぐ。ダイヤモンドでできた体を重たそうに揺らし、だが神々しく、泰然とそれでいて悠々と降りてくる。
ねぇ、ダイヤモンドってハンマーで割れるのよ。
「これで最後だ! 墓地の《カーボネドン》を除外する! 《カーボネドン》は自分のメインフェイズに墓地のこのカードを除外することで手札・デッキからレベル7以下のドラゴン族通常モンスターを守備表示で特殊召喚出来る!
僕はデッキから《ホーリー・ナイト・ドラゴン》を特殊召喚する!
そして《愚かな埋葬》を発動!
このカードはデッキから好きなモンスター1体を墓地に送るカードだ。
僕は《ADチェンジャー》を墓地に送る。
そして《ADチェンジャー》を墓地から除外して効果を発動! フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。
《ホーリー・ナイト・ドラゴン》!
その牙、いや顎かな。邪神○上並みのその鋭い凶器を振りかざせ!」
4体のドラゴンが私を見る。
その大きな体躯は小さい私には十分に凶器になるのだろう。その事を理解してか、威嚇するようにドラゴンは私に吼えた。
ソリッドビジョンの筈だというのに、その波動が私の髪を靡かせた。
「行くぞ! バトルだ!
《ダイヤモンド・ドラゴン》で伏せモンスターに攻撃!」
光輝くダイヤモンド・ドラゴンの口胞に力が溜まる。数瞬の後、その口からは光輝くブレスとなった。
「破壊された《ピラミッド・タートル》の効果。
戦闘で破壊され、墓地に送られた時、守備力2000以下のアンデットモンスターを特殊召喚できる。
《ピラミッド・タートル》を守備表示で特殊召喚」
「くっ、リクルーターか……っ!
まあいい《エビルナイト》! 《ドラゴン・エッガー》! 追撃だ! その亀を辱しめてやろうぜ!」
エビルナイトの攻撃でピラミッド・タートルはもう1体の自身を呼び、その亀もドラゴン・エッガーに辱しめられた。スッゴイカワイソ。
「《ピラミッド・タートル》の効果。
デッキから《馬頭鬼》を特殊召喚する」
「セオリー通りのアンデット使いだな!
それじゃあ僕には勝てないよ!
《ホーリー・ナイト》!
その顎で《馬頭鬼》にパイルドライバー!」
ぎゃぁあああああああああああ!
と叫び声をあげて馬頭鬼は消えていった。
うわぁ……。
「さあ、君のターンだ!
テンプレートのアンデットなど、僕の敵ではないけどね! 精々頑張ってくれたまえ!」
「ええ。ご要望通り、みっともなくあがいて見せましょう。
私のターン、ドロー。
手札から《闇の誘惑》を発動。
その効果によって私はカードを2枚ドローして、闇属性モンスター1体を除外する。
私は《ネクロフェイス》を除外する。
そして除外された《ネクロフェイス》の効果が発動。このカードが除外された時、お互いのデッキを上から5枚除外する」
きひっ。ひぃひひひひひひ。
とけたたましい笑い声とも叫び声ともとれるような声を発したネクロフェイスは、
「更に、罠発動。《闇次元の解放》!
このカードは除外されている自分の闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。
私が選択するのは《精気を吸う骨の塔》。
このカードがフィールドにある時に、アンデット族モンスターが特殊召喚されれば、相手の
ふふ、搾り取ってあげる。干からびるまで、ね」
「ま、まさか。デッキ破壊か……!」
相手は自分のデッキの枚数を確認し始めた。
温い。自分のデッキの枚数すら分かってないの?
後20枚。40枚のデッキなら、だけど。
「そして、攻撃力400のモンスターが特殊召喚された瞬間、手札から速攻魔法を発動する。
《地獄の暴走召喚》! このカードは攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚した時に発動できる。
その同名モンスターを手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する!
これで私のフィールドには《
そして《地獄の暴走召喚》のもう1つの効果!
貴方は自分のモンスター1体を選び、そのモンスターと同名モンスターを手札・デッキ・墓地から特殊召喚する。これは強制よ?
さあ、選びなさい。運が良いわね。それとも悪いのかしら。その4体の同名モンスターは貴方の墓地には無いし、除外もされていないわ」
墓地に送る手付きが大甘である。丸見え。
もしかして:露出狂?
「……くっ。《ドラゴン・エッガー》を選択する」
その言葉の後に、ドラゴン・エッガーが1体だけ転がり出てきた。2積みなのね。
「そして《骨の塔》が存在する時に
さあ、カードを2枚墓地に送って?
更に《異次元からの埋葬》を発動。
除外されている《ネクロフェイス》、《ゴブリンゾンビ》、《酒呑童子》を墓地に戻す。
《貪欲な壺》を発動。このカードは墓地のカードを5枚デッキに戻して2枚ドローするカード。
私は2枚の《ピラミッド・タートル》、《ネクロフェイス》、《酒呑童子》、《ゴブリンゾンビ》をデッキに戻して2枚ドロー。
そして《馬頭鬼》の効果を墓地から発動。
このカードを除外することで墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚する。
《ピラミッド・タートル》を特殊召喚」
地面が盛り上がり、大きな亀がそこから這い出して来た。
もうこの時点で対戦相手の目は死んでいた。
「私のフィールド上の《骨の塔》の効果が3枚とも発動する。合計6枚。墓地に送ってね。
そしてバトルフェイズ!
《ピラミッド・タートル》で《ダイヤモンド・ドラゴン》を攻撃。私は900のダメージを受けるけど、戦闘破壊された《ピラミッド・タートル》の効果も発動する。
《ピラミッド・タートル》を特殊召喚。
そして《骨の塔》の効果。6枚を墓地に。
《ピラミッド・タートル》の攻撃。破壊。
《ピラミッド・タートル》の効果。特殊召喚。
《骨の塔》の効果。6枚を墓地に。
これで貴方のデッキは破壊し尽くしたわ」
それじゃあ、と膝を着いた相手に挨拶をして。
そのまま私はLDSのビルを出ていった。
ーーー
はあ、困った。
所属したい塾がない。
どの塾も目指すものは公式大会ばかりである。
私は公式大会には出ないと言うのに。
別にデュエル塾に絶対に所属しなくてはいけないわけではない。
ゆっくり探していけばいいか。
そんな事を考えながら私は学校に向かっていた。
LDSに行ってから数日が経っていた。
相も変わらず一人で勉強をして、食事をして。
そして放課後。裏ではない通常のデュエル用のデッキをどうしようかと考えていると声が聞こえた。
デュエルをしているようである。
私は興味半分で見に行ってみることにする。
「レディース&ジェントルメーン!
今日は私達の塾『遊勝塾』の勧誘デュエルを!
皆さん! 楽しんでいってください!」
「デュエルの相手は私、柊柚子が務めさせていただきます! 皆様、よろしくお願いします!」
小さい歓声が上がった。
観客は数人しか居なかった。
私はその数人に近付いて、話を聞く。
「塾のプロモーションデュエル?
遊勝塾、って言ってたけど。教えてくれない?」
「遊勝塾に興味があるの?
止めといた方が良いわよ。
別に可笑しな塾じゃないんだけどね。
実績もないし、設立者が行方不明なのよ」
行方不明……?
遊勝という名前は裏でも聞いたことはない。
「設立者? 有名な人?」
「うん。榊遊勝って言ってね。
エンタメデュエルの先駆者だって言われてる。
遊勝塾はその志を継いだ場所でもあるの。
でも、本人が居ないんじゃねぇ……」
エンタメデュエル。遊勝塾か。
面白そうだと思う。
裏デュエルでも観客を沸かせる事は必須だ。
今までは全部独自に考えてやっていたのだけど。本格的に教わるのは悪くない。
特に良いのは実績がないこと。
目立つようなことは起きないだろうし、公式戦で負けても、大会にエントリーをしなくてもいいだろう。
なんて素晴らしいんだ! ビューティホー。
「私は《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の効果を発動!
私は1ターンに1度、手札から光属性の天使族モンスターを特殊召喚する!
来て! 《幻奏の音女エレジー》!
このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 自分フィールドの特殊召喚された『幻奏』モンスターは効果では破壊されない!
それだけじゃないわ! 特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの天使族モンスターの攻撃力は300アップする!
《モーツァルト》で《オッドアイズ・ドラゴン》に攻撃! グレイスフル・ウェーブ!」
うぁああああああああああ!
と、あざとい悲鳴をあげてトマトがケチャップになった。
悲鳴に心がない! と叫びたかったが、堪える。ここは地下デュエル場ではないのだ。
……遊勝塾。本当に大丈夫かしら?
仮面の出番が少ない! 何て事だ!
今回の遊勝塾プロモーションデュエルは予め勝敗の決まった出来レースです。だから悲鳴も演技なのです。
幻奏さん。融合がないと動きが決まり過ぎててデュエルが書きにくいのです。面白い動きとかないです?
【今回の演出】
本当は馬頭鬼効果。ピラミッド特殊召喚。
↓
異次元の埋葬、馬頭鬼を戻す。の方がいいです。
除外に必要なモンスターが減ります。
こうしなかったのは演出の都合なのです。
一気にデッキを削った方が格好良いのです。
たぶん!