遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。   作:羽吹

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 全編通してデュエルですよ、デュエル!


その人物は、仮面。

 

 生きるということは、戦うということ。

 

 ーーー

 

 地下世界。その中でも大規模に運営されているこの場所は、未だマイナーと呼ばれるライディング・デュエルのステージだ。

 ライディング・デュエルとは4年ほど前にアングラの世界で生まれた新しいデュエルの形式だ。

 とある少女が提案したなどと言われてるが、真実は分からない。

 

 ライディング・デュエルはバイクに乗って行うデュエルという性質上、免許が必要になると思われるかもしれない。

 だが、裏で行われているライディング・デュエルにそんなものはない。

 

「今日のデュエルはぁ!

 裏デュエル界最狂のデュエリスト!

 美少女仮面・ユーカちゃんの復帰デュエルだ!

 彼女は一月前にD・ホイールをクラッシュさせて大怪我を負ったが、その不屈の執念でこの地下デュエル場に舞い戻ってきたのです!」

 

 ライディング・デュエルはリスクが付きまとう。

 D・ホイールが開発されたとはいえ、オートパイロットなどは未だに搭載されていない。

 しかも、レース並の最高速に達することすらあるのだ。死と隣り合わせのデュエルである。

 

 そんなスピードの世界で進化したデュエルを行うのは、何と子供だった。

 未だ10歳辺りの年齢であろうその少女の背丈は小さく、膨らみは何も確認することができない。

 仮面を着けた彼女の表情は読み取れないが、露出した口許や頬は笑っていた。

 小さいその体躯に合わせてチューニングされているバイクに跨がり、彼女は腕を上げ指を天に翳した。

 

「私が(裏デュエル界の)クイーンだ!」

 

 意味不明の発言だった。

 

「ようこそっ、私のステージへ!

 今日の裏デュエルは、電撃デスマッチを複合したライディング・デュエルよ!

 意識が飛ぶような電撃を浴びながらD・ホイールを制御する、デスマッチの完成形の一つ!

 とても楽しいことになるでしょうね!」

 

 最高のデュエルにしましょう!

 と彼女は笑った。

 

「それでは、クイーンに挑むチャレンジャーの紹介だぁ!

 何となんと、今回のチャレンジャーは女性だ!

 若干16歳! 元プロデュエリスト!

 事務所が不祥事を起こしてプロ歴1年でデュエル界から追放された薄幸の美少女!

 プロ時代は数多の強敵と戦い、未だに不敗!

 そして裏デュエル界においても未だに不敗!

 このライディング・デュエルは美少女仮面・ユーカちゃんにとってクイーン防衛戦でもあるのだ!

 それでは登場して頂きましょう!

 第2の美少女仮面・ミアちゃんの登場です!」

 

 ごぅ! と爆音が会場を支配する。

 ドドドドッ、と音が世界を覆って。

 

「あたしが(裏デュエル界の)クイーンを奪う!」

 

 D・ホイールが空を跳んだ。

 純白のD・ホイール。

 真っ白な軌跡を遺して、華麗に。それでいて優雅にD・ホイールが動き、一切の無駄のないターンを決めて、美少女仮面・ユーカちゃんのD・ホイールの横に着ける。

 

 ヒラヒラと、ひらひらと服が揺れた。

 装飾過多ともとれるような服は、しかしD・ホイールの走行に邪魔にならないように調整されていた。

 白い服。だというの綺麗で清楚というよりは、どちらかというと可愛い系だ。

 しかし太ってはおらず、むしろ痩せている。それを示すかのように、胸の膨らみは感じられない。

 美少女仮面・ユーカちゃんがそのまま成長したかのような、そんな容貌だった。

 

「貴女がクイーンね。

 ここに立った以上、誰でも容赦はしないわ。

 さあ、楽しいたのしいデュエルの時間よ!」

「ふふっ、いいわね。貴女。楽しそう。

 ねぇ、お願い。このデュエルで死なないでね?

 貴女とはもっと沢山デュエルをしたいわ」

 

 楽しそうにチャレンジャーとクイーンが会話のキャッチボールで暴投をしていると、試合開始のカウントダウンが始まる。

 ピッピッピッ、とカウンターが減り。

 ピー、という長音と同時に2台のD・ホイールが動き出した。

 

「「ライディング・デュエル!

      アクセラレーション!」」

 

「始めのコーナーをとった方が先行の権利を得る!

 うぉおぉあぁぁあああああああああああっ!」

 

 小さな仮面少女が普通の仮面少女に車体をぶつける。始めからラフプレー全開である。

 

「あはっ。あははっ! あははははは!

 読めていたわ! 今度はこちらから行くわよ!

 やぁああぁあああああああああああああっ!」

 

 D・ホイールを一瞬減速させた、白い仮面。

 小さい仮面少女のチャージを避わして、追撃を仕掛けようとして。

 

「甘い! 避けられることは前提条件よ!

 これでコーナーの内側に入り込めた!

 先行はもらうわよ!」

「なっ! 無理よ! その速度でコーナーが曲がれるわけがないじゃない!」

 

 返事はない。

 代わりにD・ホイールが異常に傾いた。

 体重の移動を最大限に利用して曲がるつもりなのだろう。カスタマイズされているからこそできる荒業だった。

 

「あぁあぁぁぁああああああああ!」

 

 後輪が浮いた。安定しないD・ホイールを気合いで持ち直して、仮面少女は走行する。

 

「曲がり、きった……。

 流石にライディング歴が違うわね。

 D・ホイール操作に慣れを感じる……。

 いいでしょう! 先行はあげるわ、クイーン!」

 

 後続のD・ホイールが華麗にコーナーを曲がり、クイーン仮面少女に続いた。

 

「私の先攻! 私は永続魔法《ミイラの呼び声》を発動! この効果により、1ターンに1度自分のフィールドにモンスターがいない時、手札からアンデット族モンスターを特殊召喚できる!

 私は《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚!

 更に《ユニゾンビ》を通常召喚する!

 《ユニゾンビ》の効果。フィールドのモンスター1体を対象にして発動する。

 デッキからアンデット族モンスターを墓地に送ることで、そのモンスターのレベルを1つ上げる。

 デメリットとして、このターンはアンデット族モンスター以外は攻撃できないけど、先攻1ターン目はそもそも攻撃できない!」

 

 2体のゾンビが楽しそうに踊って、その度に腐った肉が飛び散っていく。

 

「私はデッキから《妖刀ー不知火》を墓地に送る。

 そしてレベル4の《ゴブリンゾンビ》に、レベル4に上がった《ユニゾンビ》をチューニング!

 ここから始まるスペクタクル! トラップ、マジック大いに結構! 捩じ伏せますので!

 ──シンクロ召喚! 《戦神-不知火》!」

 

 2刀をもった戦の神が舞い降りる。

 赤色と青色の光に照らされて、その戦神は揺らいでいた。実体が薄いのだ。

 

「墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果。

 このカードがフィールドから墓地に送られた場合、デッキから守備力1200以下のアンデット族モンスターを手札に加える。

 私は手札に《馬頭鬼》を加える。

 まだよ。《ソウル・チャージ》を発動。

 このカードは、バトルフェイズを犠牲に墓地のモンスターを任意の数だけ特殊召喚する。

 甦れ! 《ゴブリンゾンビ》、《ユニゾンビ》、《妖刀ー不知火》!

 そして蘇生したモンスターの数×1000ポイントのダメージを私は受ける!

 ぁあ! っあぁあぁぁあああああああああああ!

 あっ、うっ! くっ、んっ、ひゃっ……!」

 

 D・ホイールに電流が走る!

 チリチリとゴムの焼ける音と、排気される煙が光った。

 

「っ、力が、入らな、まずい、曲がれない!

 るぅわぁあぁぁぁあああああああ!

 私は! 私はぁ!

 死んでなんてあげるかぁぁああああっ!」

 

 力が入らないのなら、体重で運転する!

 レースの障壁に乗り上げたまま、速度は緩めない。

 内側に反りだしている障壁にそって、あえてアクセルを踏む。飛翔せよ! 私!

 

 まるで曲芸のように空に飛び出した頃には、握力は何とか持ち直していた。

 空中で一回転、そしてコースをショートカットする! 両足でD・ホイールをしっかりと固定して、衝撃に備える。

 

 ガコォン、と轟音と共に私はステージに文字通り舞い降りる。

 D・ホイールが衝撃で跳ねながら、私は必死でグリップを握り込み、車体を制御する。

 私が着地したステージが少し凹んだ。

 

「……よし、デュエルを続行する!

 私は《ユニゾンビ》のもう一つの効果を発動する! フィールドのモンスター1体を対象に発動!

 手札を一枚墓地に送って、レベルを1つ上げる!

 私は《妖刀ー不知火》を選択!

 そしてレベル3の《ユニゾンビ》とレベル3になった《妖刀ー不知火》でオーバーレイ!

 生と死の狭間こそ、今私たちがいるこの境界線!

 エクシーズ召喚! 《彼岸の旅人 ダンテ》!」

 

 月桂冠が煌めく。

 生と死の狭間の旅人がフィールドを歩く。

 そう、そここそが彼岸。ライディング・デュエル!

 

「《彼岸の旅人 ダンテ》の効果!

 オーバーレイユニットを1つ使うことで、自分のデッキからカードを3枚墓地に送る。

 このカードの攻撃力はターン終了まで送った数×500アップするが、《ダンテ》は守備表示。その効果は特に意味はないわ」

 

 何事も無かったかのようにデュエルを進める小さい仮面に声が掛かる。

 

「随分と墓地にご執心ね!

 そんなに悔やみきれない事でもあったのかしら!

 過去ばかり見ていても、何も得られないわよ!」

「…………。例えそうだとしても。過去とは軌跡。

 今を形作る自分自身! 否定なんてできない!」

 

 2台のD・ホイールがツーリングをするように並走する。仮面少女が仮面少女を見た。

 それは過去で。

 それはあり得たかもしれない未来。

 

 二人の仮面がステージの証明に照らされて光る。

 

「墓地の《馬頭鬼》の効果! 自身を墓地から除外することで墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚する!

 彼岸より来たれ! 《ゾンビキャリア》!

 そして私はレベル4の《ゴブリンゾンビ》にレベル2の《ゾンビキャリア》をチューニング!

 死せども積もる想いを。嘆き、叫べ!

 ──シンクロ召喚! 《デスカイザー・ドラゴン》!

 そして墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果! 守備力1200以下のアンデット族モンスターを手札に加える。

 《ゾンビ・マスター》を手札に加える」

 

 蒼白い炎が灯っていく。

 静かに、しずかにともった炎の道の最奥に。

 それはいる。

 重苦しく腐った体を横たえて。しかし中央の赤色だけはおどろおどろしく光る。

 ぎゃあぁあああああああ!

 と哭いているのは帝王(カイザー)

 デスカイザー・ドラゴンがそこにいた。

 

「私は《闇の誘惑》を発動する。

 カードを2枚ドローして、闇属モンスター《ゾンビ・マスター》を1体除外する。

 カードを2枚伏せる。これでターンエンド。

 さあ、貴女のターン。その不敗神話最後のデュエルの1ターン目よ。精々派手に動いて欲しいものね!」

 

 小さい仮面少女のフィールドにはモンスターが三体いる。

 レベル8《戦神-不知火》。

 レベル6《デスカイザー・ドラゴン》

 ランク3《彼岸の旅人 ダンテ》。

 

 《ダンテ》だけが守備表示である。

 

「流石はクイーン! 1ターン目から派手ね。

 じゃあ、あたしもお姫様を揃えるわよ!

 あたしのターン! ドロー!

 まずは《森羅の施し》を発動するわ!

 デッキからカードを3枚ドローして、『森羅』モンスターを含む2枚のカードを好きな順番でデッキに戻す!

 あたしが選択するのは《森羅の姫芽君 スプラウト》、《ダンディライオン》の2体。

 この2体をデッキトップに戻す!

 そして《森羅の水先 リーフ》を召喚。このカードが通常召喚に成功した時、デッキトップから2枚のカードを捲り、その中にある植物族モンスターを全て墓地に送る!

 あたしが捲ったのは当然《森羅の姫芽君 スプラウト》、《ダンディライオン》の2枚!

 そして墓地に送られたその2枚の効果が発動する!

 まずは《ダンディライオン》! このカードが墓地に送られた場合、自フィールドに綿毛トークン2体を特殊召喚する!

 次に《森羅の姫芽君 スプラウト》の効果を処理する。このカードが効果で捲られて墓地に送られた場合、1~8までの任意のレベルを宣言する。そしてこのカードを墓地から特殊召喚して、このカードは宣言したレベルになる!

 あたしはレベル3を宣言する!」

 

 葉っぱが現れた。

 同時に辺りには水が展開され、そこから綿毛が飛んでくる。

 2毛の綿毛がまるでゲートのように設置され、その中から小さなお姫様が現れた。

 ふにゅーとお姫様は暢気に葉っぱで遊んでいた。

 

「そして永続魔法《超栄養太陽》を発動!

 このカードは自分フィールド上のレベル2以下の植物族モンスターをリリースして発動する!

 リリースしたモンスターのレベル+3までの植物族モンスターを特殊召喚する。

 そして、このカードが破壊されたときにそのモンスターを破壊し、そのモンスターが破壊されたときにこのカードを破壊する。

 あたしは《綿毛トークン》をリリース!

 デッキから《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚! このカードは1ターンに1度、自分フィールド上の植物族モンスターをリリースすることで、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する!

 あたしは《ローンファイア・ブロッサム》をリリースして《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚!

 もう一度! 《ローンファイア・ブロッサム》をリリースして《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚!

 最後! 《ローンファイア・ブロッサム》をリリースする。

 まずは1輪目のお姫様よ!

 その赤色は、あたしの誇り!

 特殊召喚! 《椿姫ティタニアル》!」

 

 赤色が花開く。

 緑色の側葉がまるでドレスのように開き。

 花の中央にお姫様が鎮座していた。

 小さな姫芽のお姫様は興味深そうにティタニアルを観察していた。かわいい。

 

「さあ、ここからは速度を上げるわよ!

 《フレグランス・ストーム》を発動! このカードはフィールド上に存在する植物族モンスターを破壊して、カードを一枚ドローする!

 あたしは《綿毛トークン》を破壊して、1枚ドロー!

 あたしがドローしたカードは《姫葵マリーナ》! 《フレグランス・ストーム》でドローしたカードが植物族モンスターだった場合、お互いに確認することでもう1枚ドローする!」

 

 フレグランス・ストームの効果で微かな香水の香りのある追い風が仮面少女のD・ホイールを後押しして、(物理的に)スピードが上がる。

 だが先を走る小さな仮面少女はまだ先の世界にいる。これだけでは追い付けない。

 

「そして《ワン・フォー・ワン》を発動!

 このカードは手札のモンスター一体を墓地に送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する!

 おいで! 《グローアップ・バルブ》!

 あたしはこのカードをデッキから特殊召喚したわ。

 そしてこうよ! レベル3の《森羅の姫芽君 スプラウト》と《森羅の水先 リーフ》でオーバーレイ!

 森に木霊(こだま)する木霊(もくれい)よ! 今ここに!

 エクシーズ召喚! 《メリアスの木霊》!

 《メリアス》の効果を発動! このカードは1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地から植物族モンスターを守備表示で特殊召喚できる!

 あたしが選択するのは《ワン・フォー・ワン》のコストで墓地に送られた《薔薇恋人》!

 レベル1の《グローアップ・バルブ》と《薔薇恋人》でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚! 《森羅の姫芽宮》!

 このカードには2つの効果があり、それぞれ1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ取り除いて効果を発動できる。

 あたしは《薔薇恋人》を墓地に送って効果を発動! デッキトップのカードを捲る!

 そのカードが魔法、罠だった場合、手札に加える。違った場合は墓地に送る。

 あたしが捲ったカードは《世界樹》。魔法カードよ。

 よって、そのカードを手札に加える!」

 

 あーれー、と言いながら小さなお姫様は遊んでいた葉っぱと共に黒い何かに吸い込まれていった。

 そして現れた○ァイナルファンタジーに出てきそうなモンスター。

 そのモンスターの持つ薄く光る葉が一輪の薔薇を指し示す。その薔薇に導かれるように少女が現れた。

 

 そして、その少女に植え付けられる種。

 事案である。一つ目の種が彼女をまさぐって成長していく。

 そして、彼女はお姫様に変わった。

 な、何をいっているのか分からないと思うが、プレイされた内容をただなぞっただけなんだ。

 本当だよ?

 

「コストで墓地に送られた《薔薇恋人》の効果!

 墓地のこのカードを除外することで、手札から植物族モンスターを特殊召喚できる!

 この効果で特殊召喚したカードはこのターン罠の効果を受けない!

 その黄金は、あたしのひた向き!

 特殊召喚! 《姫葵マリーナ》!」

 

 黄金が花開く。

 黄色の花弁が太陽に向かって開き、輝く。

 その中央にお姫様が佇んでいた。

 

「最後よ! 手札から《継承の印》を発動!

 自分の墓地に同名モンスターが3枚存在する時に発動できる。その内の1体を自分フィールドに特殊召喚して、このカードを装備する!

 過労死するほど花開け! 《ローンファイア・ブロッサム》! そして《ロンファ》(面倒臭くなって遂に略した)の効果!

 その薄紅は、あたしの純潔!

 特殊召喚! 《桜姫タレイア》!」

 

 薄紅が花開く。

 それを合図に森が色付いた。

 光って笑うように、花が咲いていく。

 その中心にお姫様が優雅に振る舞っていた。

 

「あたしのフィールドには!

 《椿姫ティタニアル》、《姫葵マリーナ》、《桜姫タレイア》の3輪のお姫様!

 さらに《森羅の姫芽宮》と《メリアスの木霊》のエクシーズモンスターが2体!

 さあ! バトルよ、クイーン!

 どうやって耐えるのかあたしに見せてみて!」

 

 遠かったはずの、先に進んだはずの小さな背中が、近い。

 フレグランス・ストームで加速して、3輪の姫が仮面少女に力を与えていた。

 

「《桜姫タレイア》で《戦神-不知火》を攻撃!

 チェリーブロッサム・フレグランス!

 《桜姫タレイア》の攻撃力は自分フィールド上の植物族モンスターの数×100ポイントアップする!

 攻撃力は3300よ! クイーン! 貴女には300ポイントのダメージを受けてもらう!」

 

 桜吹雪。春に見られる、最も美しい光景の1つ。

 だが、その花弁の1つ1つが鋭い針となって不知火を貫いた。

 

「っあぁ! くぅっ!」

 

 小さなD・ホイールがその衝撃によってスピンする。斜めに揺れるD・ホイールは、しかし重量は余りないのかそれほどの苦労もなく元の状態に戻る。

 

「だけど《戦神-不知火》の効果が発動!

 このカードが戦闘・効果で破壊されて墓地に送られた場合、除外されている守備力0のアンデット族モンスターを対象に発動し、そのカードを墓地に戻す!

 私は《ゾンビ・マスター》を墓地に戻す!」

「それがどうしたの! 《椿姫ティタニアル》!

 そのレベル6、攻撃力2400の癖に偉そうな《デスカイザー・ドラゴン》を粉砕しなさい!」

 

 先程とは違う赤色の花吹雪。

 デスカイザー・ドラゴンの腐った体が崩れ落ち、一鳴きした後に消えていった。

 

「っ、ぁああ! ふふ、まだ私は生きているわよ?

 もっと、もっと激しく攻めてきなさい!」

 

 D・ホイール同士には通信がある。

 会話をするのならその回線を使えばいい。

 だと言うのに、小さい仮面少女は怒鳴った。

 回線を使わずに直接相手に言葉を叩きつけたのだ。

 

「上等よ! 《姫葵マリーナ》で《ダンテ》に攻撃!

 貴女のフィールドを壊滅させてあげるわ!」

 

 仮面少女も回線を使わずに言い返した。

 つくづく似ている2人だった。

 

 そして、黄金の花吹雪が乱れる。

 彼岸を旅していた彼は帰らぬ人になった。

 

「これで貴女のライフはたった300ポイントよ!

 クイーン! そのリバースカードは飾りかしら!

 止め、行くわよ!

 《森羅の姫芽宮》! ダイレクトアタック!」

 

 桜の花吹雪を着物に乗せて遊んでいたお姫様が小さな仮面少女に向かっていく。

 彼女がその腕を小さなD・ホイールに向ける。

 

 その時、大きい方のD・ホイールが遂に小さい方のD・ホイールを追い抜いた。

 

 そして、

 ふふ、ふふふふ、と笑い声が響く。

 

「そう、私は生きている。

 痛みを感じて、悲鳴をあげている。

 だから。

 私の人生に感情を頂戴。

 痛みを感じて、悲鳴をあげて!

 その為に私は私の全てを捧げましょう!

 その為には私は悪魔とも駆け引きをするわ!

 速攻魔法発動! 《デーモンとの駆け引き》!

 このカードはレベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地に送られたターンに発動することができる!

 手札・デッキから《バーサーク・デッド・ドラゴン》を特殊召喚する!

 さあ、もっと狂いましょう!

 狂えるのは人間の特権なのよ!

 特殊召喚! 《バーサーク・デッド》!」

 

 叫び声が聞こえる。

 それがどうして叫んでいるのか。

 それがどうして哭いているのかは分からない。

 

 ただただ、ひたすらに。狂うほどに。

 叫び声が、聞こえる。

 

「《バーサーク・デッド・ドラゴン》!?

 ここで、そんな。連続攻撃なんて……!

 くっ! バトルは中断! メインフェイズ2へ。

 そして《森羅の姫芽宮》のもう一つの効果!

 1ターンに1度、このカード以外の手札・自分フィールドの植物モンスター1体を墓地へ送り、自分の墓地の『森羅』モンスターを特殊召喚する!

 あたしは《メリアスの木霊》を墓地に送る!

 墓地から甦って。《森羅の姫芽君 スプラウト》! 守備表示で特殊召喚!

 更に手札から永続魔法《世界樹》を発動! このカードはフィールド上の植物族モンスターが破壊される度にカウンターを置くカードよ。

 カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 手札を全て使いきって、苦い顔をしている仮面少女をもう一人の仮面少女が見つめていた。

 

「私のターン! ドロー!」

(《アドバンスドロー》! 墓地の不知火の効果を使えば《デスカイザー》か《アンデットスカル》が呼べる。

 それで攻撃が通れば私は勝てる。

 だけど、あのリバースカードは十中八九攻撃を止めるかモンスターの特殊召喚するカード。

 そうなれば、次のターンに《世界樹》で姫を特殊召喚されて私は負ける。

 なら、ここは温存! 急ぐ必要なんてない。

 なぜなら私はクイーンだからね!

 ……流石にそれは冗談だけど。増長なんて出来る立場でもないんだから。慎重に行く!)

 

 数瞬間D・ホイールで走り、プレイを続行する。

 

「……。バトル!

 《バーサーク・デッド・ドラゴン》は相手フィールド上のモンスター全てに1回ずつ攻撃ができる!

 そして、その攻撃力は3500!

 《森羅の姫芽宮》が居て良かったわね! いなかったらこのターンで終わっていたわよ!

 《バーサーク・デッド》! 《姫葵マリーナ》に攻撃! バーサーク・ストラグル! 第1打ァ!」

 

 ぎぃぁぁあああああああ!

 と言葉にならない叫び声を上げて。骨が露出して既に息絶えながらもドラゴンはもがく。

 その腕の一振りは空気を割き、その翼は痛々しく自身を削る。長い尾が地面を(こそ)ぎ取り、その目は乾きながらも泣いていた。

 

「チャレンジャー! 貴女に700のダメージ!

 さあ、電撃を浴びなさい!」

「っ、ぁああぁぁぁあああああ!

 あうっ、っ、うぅ、くっ! こんなもの!」

 

 大したことないわ! と咆哮。

 

「その言葉! 最高ね、貴女!

 さあ、もっと私とデュエルをしましょう!

 《バーサーク・デッド》で《椿姫ティタニアル》に攻撃! バーサーク・ストラグル! 第2打ァ!」

「っぁ、ぁあああああ! くっ、まだまだぁっ!」

 

 そう言いつつもD・ホイールが少し揺れる。

 電撃によって腕の筋肉が軽く麻痺をしている。

 

「次は守備モンスターに行くわよ!

 《バーサーク・デッド》、《森羅の姫芽君 スプラウト》に攻撃! バーサーク・ストラグル! 第3打ァ!」

 

 ぇえ! た、助けて!

 と自分の主人を見るが、主人は仮面越しに目を瞑った。無理だと言う合図である。

 そーんーなー! と叫びながらバーサーク・デッドの尾に当たって小さなお姫様は消えていった。

 

「さあ、悲鳴をあげなさい!

 《バーサーク・デッド》で《森羅の姫芽宮》に攻撃! バーサーク・ストラグル! 第4打ァ!」

 

 先姫芽君を見ていたからか、既に諦めていた大きくなったお姫様は先程と同じように尾に当たって消えていった。

 

「ぐぅっ、づぅ、ぁ、ぁあぁぁああああああああ!

 あぁ、ぁ"、あ"、ぁぁあああ! っ、!」

 

 1700ものダメージは、D・ホイールのバランスを奪い、スピンさせた。

 バーサーク・デッドの攻撃による衝撃が強すぎたのだ。コースの障壁すれすれといったタイミングで、仮面少女の握力が回復した。

 

「っ、らぁあぁあああああああああああ!」

 

 全力で前輪を浮かせた。

 後輪だけではスピンはしない。数瞬間後輪のみで走行して、前輪を戻す!

 彼女のD・ホイールは何とか安定を取り戻した。

 

「流石ね! 素晴らしいわ!

 さあ、これでこのターンの攻撃は最後よ!

 《バーサーク・デッド》! 《桜姫タレイア》に攻撃! バーサーク・ストラグル! 第5打ァ!」

 

 美しい桜吹雪には悲鳴が似合う。

 そう言いたくなるほどにふつくしい風景。

 バーサーク・デッドに蹂躙され、散り行く様は美しい! と、どこかの仮面少女なら言うだろう。

 

「ぅあぁぁあああっ! きゅっ、っう!

 や、やってくれるじゃない!

 でも、これであたしの《世界樹》にはカウンターが5つ貯まったわ! 覚悟しなさい!」

「ああ、ふつくしい……。

 桜が散っていく光景はいつ見ても美しい!

 さあ、これで私と貴女のライフは共に300ポイントになった! これからがデュエルの勝敗を分けるわ!」

 

 お互いに会話の暴投を繰り返して、少しの間ツーリングフェイズを行う。

 

「メインフェイズ2に移行する!

 私は手札から《アドバンスドロー》を発動!

 自分フィールド上に存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースして発動する!

 デッキからカードを2枚ドローする!

 私は《バーサーク・デッド・ドラゴン》をリリースして、デッキからカードを2枚ドローする!

 そして《貪欲な壺》を発動する!

 私は《バーサーク・デッド・ドラゴン》、《彼岸の旅人 ダンテ》、《ゾンビ・マスター》、《ユニゾンビ》、《ゾンビ・キャリア》をデッキに戻してカードを2枚ドローする!

 私は永続魔法《ミイラの呼び声》の効果を発動!

 自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札からアンデット族モンスター1体を特殊召喚できる!

 手札より現れ出ちゃえ! 《地獄の門番イル・ブラッド》! 守備表示で特殊召喚!

 更に《地獄の門番イル・ブラッド》をデュアル召喚! これで《イル・ブラッド》は効果を使える!

 《イル・ブラッド》は1ターンに1度手札・墓地からアンデット族モンスターを特殊召喚できる!

 私は墓地より《デスカイザー・ドラゴン》を特殊召喚! 守備表示!」

 

 腹からチャックが開いている。

 その中は冥界。暗い闇からドラゴンの腐った体が這い出してくる。デスカイザー・ドラゴンだ。

 その竜の周りには蒼白い炎が渦巻いていった。

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

 これで小さい方の仮面少女のフィールドには、モンスターが2体いる。

 《地獄の門番イル・ブラッド》

 《デスカイザー・ドラゴン》の2体だ。

 そして永続魔法《ミイラの呼び声》。

 加えて伏せカードが3枚存在する。

 

 対する普通(平均よりは低い)の大きさの仮面少女のフィールドにはモンスターが居ない。

 だが、伏せカードが1枚と。

 カウンターが5つ乗った《世界樹》がある。

 

 手札はお互いに満足(ゼロ枚)

 ライフも同様にお互い300。

 次のドローで全てが決まる!

 

「あたしのターン! ドロー!

 始めに、邪魔で悪趣味なモンスターを駆逐する!

 永続魔法《世界樹》のカウンターを2つ取り除く! 《世界樹》は自身のカウンターを2つ取り除くことで、フィールドのカードを1枚破壊できる!

 《イル・ブラッド》! 邪魔よあなた!

 そして《イル・ブラッド》がフィールドから離れた時、その効果で特殊召喚していたモンスターも破壊される!」

 

 フィールドに聳える世界樹から、光の奔流が迸る。その光がイル・ブラッドを包み込もうとした時。

 

「目の付け所が素直ね! だからこそ甘い!

 罠発動! 《バスター・モード》!

 このカードは自分フィールドに存在する特定のシンクロモンスター1体をリリースして発動する罠よ!

 リリースしたカード名が含まれる『/バスター』モンスター1体をデッキから特殊召喚する!

 死者の嘆きを、悲鳴を。今こそ叫べ!

 《デスカイザー・ドラゴン/バスター》!」

 

 え? 俺じゃないの?

 と言いたげにイル・ブラッドは仮面少女を見たが、目を逸らされた。デジャヴである。

 

 そして、フィールドの一点に蒼炎が灯る。

 その炎を中心にしてフィールドが炎に犯される。

 その蒼い炎が一つの大きな塊を作り、それはデスカイザー・ドラゴンを包み込んでいく。

 咆哮。

 一際大きな咆哮が聞こえて、蒼炎の中からドラゴンが現れる。

 その身は未だに腐り炎に焼かれていると言うのに、その竜は意にも介さずに叫ぶ。

 その叫びと共に体に顔が産まれる。

 目に赤い光が灯り、口がぐちゃりと割けた。

 嘆きだ。

 その顔は、嘆き。死者の痛みを、悼みを、傷みを体現したような。その表情は何を思うのか。それは誰にも分かるようなことではなかった。

 

「そして《デスカイザー・ドラゴン/バスター》の効果が発動される!

 このカードが特殊召喚された時、自分・相手の墓地からアンデット族モンスターを任意の数だけ特殊召喚する!

 この効果は強制発動よ! タイミングは逃さない! それがクイーンのデュエル!

 ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される!

 現れろ! 《ゴブリンゾンビ》、《戦神-不知火》、《妖刀-不知火》!

 効果処理の都合上《イル・ブラッド》の特殊召喚は行うことができない!」

 

 蒼炎の中から死者が甦る。

 蒼い炎は生と死の境界を曖昧にしていた。

 4体のモンスターが小さいD・ホイールを囲むように存在していた。

 

「くっ、あたしのターンにやってくれるわね……!

 だけど、これで貴女のリバースカードは2枚!

 1ターン目から伏せられているカードはタイミングを逃しているとは言わないの?

 それでもクイーンのデュエルかしら!」

「そう思うのなら私を殺して(倒して)みるといい!

 貴女なら不可能とは言わないわ!

 それでも、私が勝つのだけれどもね!」

 

 矛盾していた。

 だけど、彼女の中ではそれが正しい理論らしい。

 

「ふふ、でも楽しいわ! 本当に楽しい!

 短いプロ生活でも、裏デュエル界でも、こんなに楽しいデュエルは始めてよ!

 だからこそ勝ちたい! 貴女に! クイーンに!

 あたしの希望! 行くわよ!

 墓地の《グローアップ・バルブ》の効果を発動!

 自分のデッキトップのカードを墓地に送ることで、墓地のこのカードを特殊召喚する!

 お願い! あたしのデッキ! 応えて!

 墓地に送られたカードは《薔薇恋人》!」

 

 ポンっ、と地面から小さい種が産まれる。

 それは希望の種。先程姫に巻き付いて事案を発生させた張本人とは思えないモンスターだ。

 

「更に 《世界樹》の効果を発動!

 カウンターを3つ取り除くことで、自分の墓地の植物族モンスターを1体特殊召喚する。

 あたしが選択するのは《姫葵マリーナ》!

 そして、手札から魔法発動。 《フレグランス・ストーム》! 自分フィールドの植物モンスターを破壊してデッキからカードを1枚ドローする!

 破壊するのは《グローアップ・バルブ》!

 あたしが引いたのは《コピー・プラント》!

 植物族モンスターを引いたので、もう1枚ドローできる!

 この時《姫葵マリーナ》の効果が発動する! このカードが自分フィールドに存在する時にこのカード以外の植物族モンスターが破壊されて墓地に送られた場合、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる!

 《ゴブリンゾンビ》! あなたを破壊する!」

 

 蒼い炎に包まれていたゴブリンゾンビは、突然現れた黄金の花弁に吸い込まれて消えていった。

 

「墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果。

 デッキから守備力1200以下のアンデット族モンスターを手札に加える。

 私は《酒呑童子》を手札に加える!」

「そして、墓地の《薔薇恋人》の効果を発動!

 1ターンに1度このカードを墓地から除外することで、手札の植物族モンスターを特殊召喚する。

 現れて! 《コピー・プラント》!

 そして《コピー・プラント》の効果を使うわ。このカードは自分フィールド上のこのカード以外の植物族モンスターを選択して、そのモンスターと同じレベルになる。

 あたしが選択するのは《姫葵マリーナ》! これによって《コピー・プラント》はレベル8になる!

 更に罠発動! 《ライバル登場!》!」

「えっ、……《ライバル登場!》……!?」

 

 小さい方の仮面少女が小さく唸る。

 それもそうだろう。

 《ライバル登場!》は相手フィールドに表側表示で存在するモンスターを選択して発動するカード。

 そのモンスターと同じレベルのモンスターを手札から特殊召喚する効果をもっている。

 

 前のターンの普通の大きさの方の仮面少女の手札は満足していた。つまりはハンドレス。

 それは、ブラフだったということ。

 

(だけど、その程度(読みを半分ほど外した)で負けてはいられない。私はクイーンなのだから)

 

 仮面少女に不敵な笑みが浮かんだ。

 それは、自信から来ているのか。

 それとも狂喜のなれの果てなのか。

 きっとそれはどちらも正しいのだ。

 

「《ライバル登場!》の対象はレベル8《デスカイザー・ドラゴン/バスター》よ!

 よってあたしは手札からレベル8のモンスター1体を特殊召喚する!

 その紅葉は、あたしの思い出!

 特殊召喚! 《紅姫チルビメ》!」

 

 紅色が花開く。

 その紅色は過去の象徴。

 辛い日々、苦しい環境。それらが色鮮やかな紅色を造り出したのだ。

 

「そしてこれが《デスカイザー・ドラゴン/バスター》へのあたしの解答!

 レベル8の《紅姫チルビメ》とレベル8になった《コピー・プラント》でオーバーレイ!

 大いなる森の守護神よ! 今ここに!

 エクシーズ召喚! 《森羅の守神 アルセイ》!」

 

 巨体。

 世界樹が聳え、蒼炎が靡くこのフィールドでは、生半可なモンスターでは意味をなさない。

 だが、そんな魔境においてさえ巨大と言わざるを得ない体が現れた。

 それは神だ。

 かつて神と呼ばれた亀ではなく、戦神でもない。

 人々に。獣達に崇められ。その巨体は既に自身が自然として顕現している証である。

 

「あたしは《アルセイ》の効果を発動する!

 カード名を1つ宣言する。デッキの一番上のカードを捲り、そのカードが宣言したカードなら手札に加え、違う場合は墓地に送る。

 あたしが宣言するのは《薔薇の刻印》!

 …………捲られたカードは《アームズ・ホール》。

 よってそのカードは墓地に送られる。

 この瞬間《アルセイ》の効果が発動する!

 《アルセイ》はカードの効果によって自分のデッキからカードが墓地に送られた場合、オーバーレイユニットを1つ取り除いて発動できる!

 フィールド上のカード1枚を選択して持ち主のデッキトップかデッキボトムに戻す!

 あたしが選択するのは《デスカイザー・ドラゴン/バスター》! 破壊を介さない除去よ!

 よって《デスカイザー・ドラゴン/バスター》が持っている『/バスター』の共通能力、《デスカイザー・ドラゴン(バスター化する前のモンスター)》を特殊召喚する効果は使用できない!」

 

 その威信は言葉では言い表せない程に神々しく。

 そして、その体が動いた。

 咆号したわけではない。

 その動きが素早かった訳でもない。

 だが、しかし。

 その動きには進化したデスカイザー・ドラゴンですら反応が出来るようなものではなかった。

 

「この解答はそれだけじゃないわよ!

 《ゴブリンゾンビ》は死んだ! もう居ない!

 だからね、次のターンまでクイーン、貴女のデッキはもうシャッフルはされない!

 《アルセイ》の効果!

 《デスカイザー・ドラゴン/バスター》はデッキトップに戻す! そう、貴女の次のドローカードよ!」

(そう、これでいい。だから先に《ゴブリンゾンビ》を破壊したのよ。

 ……《世界樹》のもう1つの効果。

 カウンターを1つ取り除いて《姫葵マリーナ》の攻撃力を3200まで上げる。そして攻撃力2900の《デスカイザー・ドラゴン/バスター》を攻撃すれば、ライフダメージは丁度300。

 だけど、彼女にはまだリバースカードが2枚もある。どうせ攻撃なんて通りっこない。

 放っておいてもエンドフェイズには他のモンスターは《デスカイザー・ドラゴン/バスター》の効果のデメリットで破壊される。クイーンのフィールドは焼け野原になる。

 そう。だから、これでいいの。いい筈よ。

 なのに、どうして間違った解答をしてしまったような気がしてならないのっ!?)

 

 今までフィールド席巻していた、おどろおどろしい雰囲気は消えていた。

 蒼い炎はひとつと残らずアルセイに駆逐された。

 

 フィールドには神々しく、悠然とアルセイが君臨している。

 世界樹が聳えたまるで神界の森の雰囲気だった。

 

「こ、これであたしはターンを終了……」

「駄目よ。まだ貴女のターンは終わらせない。

 メインフェイズ終了時に速効魔法発動! 《瞬間融合》! このカードは自分フィールド上のモンスターで融合召喚を行うことができる! もっとも、融合召喚したモンスターはエンドフェイズには破壊されるのだけど。

 私は自分フィールド上にいる《戦神-不知火》と《妖刀-不知火》を墓地に送る!

 そう。これだけは私自身のモンスター。

 私の全てを! 私の全霊を!

 融合召喚! 《冥界竜 ドラゴネクロ》!」

 

 痛みの竜だ。

 腐った肉が狂ったように蠢いて。

 生きている筈なのに死んでいる。

 

 それはアンデッドで。

 故に、私は生きているのだ。

 

(やっぱり《デスカイザー・ドラゴン/バスター》を処理するカード! それと同時に相手の攻撃も防ぐことが出来る。流石はクイーンね)

 

 気付けば2人のD・ホイールの速度はほぼ同じで、まるでツーリングをするかのように並走していた。

 

「だけど、それがどうしたって言うの!

 エンドフェイズに自壊することに変わりはないわよ!

 あたしはターンエンド!」

「そのエンドフェイズに答えがわかるわ。

 私が始めのターンに伏せたカード。

 確かに貴女の言う通り始めは伏せるのを躊躇ったわ。だって、あの場面じゃ使い道がなかったもの。

 でもね、私は何となくだけど、使う機会があるって思ったのよ。

 理屈じゃないの。女の勘って物よ。

 でも、やっぱりこうなった。

 速効魔法発動! 《次元誘爆》!」

 

 冥界の竜が。

 痛みの竜が。消える。

 

「《次元誘爆》……!?

 でもそれじゃあ、この状勢は覆らないわよ!」

「それでも、次には繋がるわ。

 私は私のデッキを信じているの。

 だから、これでいい。これでいいの。

 《次元誘爆》。自分フィールド上に存在する融合モンスター1体をエクストラデッキに戻して発動するカード。

 お互いに除外されているモンスターを2体まで選択して、それぞれのフィールドに特殊召喚する」

 

 小さい仮面少女のフィールドには馬頭鬼が1体。

 普通の大きさ方の仮面少女のフィールドには2体の薔薇恋人。

 これで彼女のフィールドには。

 ランク8《森羅の守神 アルセイ》。

 レベル8《姫葵マリーナ》。

 レベル1《薔薇恋人》が2体。

 

「私のターン! ドロー!

 ふふ。《デスカイザー・ドラゴン/バスター》を引いちゃった。どうしようかしらね。

 私は《酒呑童子》を召喚!

 《酒呑童子》には2つの効果がある。

 1つは除外されている自分のアンデット族モンスターをデッキトップに戻す効果。

 そしてもう1つ。自分の墓地に存在するアンデット族モンスター2体を除外して、カードを1枚ドローする効果よ。

 私は後者の効果を使うわ。

 墓地の《戦神-不知火》と《デスカイザー・ドラゴン》を除外して、1枚ドロー。

 まだ。私はレベル4の《馬頭鬼》と《酒呑童子》でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚! 《外神ナイアルラ》!

 そして《ナイアルラ》の効果を発動するわ。

 このカードがエクシーズ召喚に成功した時、手札を任意の枚数捨てて発動できる。私は1枚捨てるわ。よって《ナイアルラ》のランクが1つ上がる。

 まあその効果は今回は良いの。

 必要なのはこっち。オーバーレイユニットを全て取り除き、墓地のモンスターを選択して《ナイアルラ》のもう1つの効果を発動する。そのカードを《ナイアルラ》のエクシーズユニットにして、その種族、属性を得る。

 私はさっき墓地に捨てた《デスカイザー・ドラゴン/バスター》を選択。《ナイアルラ》はアンデット族、炎属性を得るわ」

 

 大量の口が現れた。

 蛸のような吸盤と腕のようでいて撓垂れた木の枝のようにもみえるといった、形容しがたいモンスターが現れた。

 

「そして、墓地に送られた《馬頭鬼》の効果。

 自身を墓地から除外することで《酒呑童子》を特殊召喚する。

 そして《酒呑童子》の効果を使うわ。

 墓地の《妖刀-不知火》と《イル・ブラッド》をゲームから除外して、1枚ドローする。

 そして《闇の誘惑》を発動。

 このカードはデッキからカードを2枚ドローして、闇属性モンスター1体を除外するカード。

 あら。2枚とも魔法カードじゃない。

 しかも、これは…………。

 取り合えず《闇の誘惑》の効果を処理する。

 私は《バーサーク・デッド・ドラゴン》を除外」

(私が引いたカードは、この前に投げ売りされていた《融合》と《()()()》。

 そう、私が使えなくなったカード。

 護れなかった場所の形見。私の、大切な……)

 

 小さい方の仮面のプレイが止まる。

 数秒間D・ホイールで、ただただ走る。

 そして。

 

「…………私は《融合》を発動!

 《酒呑童子》とアンデット族となっている《ナイアルラ》を融合素材として墓地に送る。

 私の全てを! 私の全霊を!

 融合召喚! 《冥界竜 ドラゴネクロ》!」

(そう、別に除外する必要なんてない。

 《龍の鏡》があれば、まだ動けるかもしれない。

 ……。言い訳ね。でも。今はまだ、使えない)

 

 痛みの竜。

 だけどそれはどこか怯えているようにも見えた。

 黒い体躯が震えて。腕を広げて空を仰いだ。

 

「さあ、バトルよ!

 《ドラゴネクロ》! 《姫葵マリーナ》に攻撃!

 私の全てをかけて! ソウル・クランチ!」

 

 黄金色が、その輝きが犯された。

 中央の姫と花弁を同時に噛み砕きその魂を奪う。

 マリーナの悲痛な叫びはドラゴネクロの腹の中で虚しく響く。しかし噛み砕かれた筈のマリーナは無傷で、それでいて無気力だった。

 

「っ、きゃっ!」

 

 仮面少女は200ポイントのダメージを受け、残りライフポイントは100にまで減った。

 

「《ドラゴネクロ》の効果!

 《ドラゴネクロ》は戦闘で相手を破壊しない。

 そして貴女の痛みを貰ったわ。

 ダメージステップ終了時《姫葵マリーナ》の攻撃力を0にして、元々のレベル・攻撃力をもつ《ダークソウルトークン》が特殊召喚される。

 これは《姫葵マリーナトークン》と(勝手に)呼称する。

 貴女の敗因は過去を象徴する《紅姫チルビメ》をオーバーレイして、前を向くひた向きを象徴する《姫葵マリーナ》を残したこと。

 《森羅の守神 アルセイ》も2体の《薔薇恋人》も守備表示なのに《姫葵マリーナ》だけは攻撃表示なのが貴女を象徴しているわ。

 でも、だからこそ負ける。

 貴女に責任なんてなくても、貴女は失敗を重ねて来たのね。

 沢山、たくさん失敗して。

 何回も泣いても。それでも前を向いてきた。

 貴女は。きっと。私のあり得た1つの……。

 ううん、過去を否定しちゃいけないわね。

 …………。心から言うわ。死なないでね。

 またいつか。私とデュエルをしましょう!

 《姫葵マリーナトークン》で《姫葵マリーナ》を攻撃! 貴女の全てをかけて! ソウル・リバイブ!」

 

 黒い姫葵マリーナが黄色のマリーナトークンを抱き締めて、大声で泣いた。

 そして黄金色は黒に侵されていき、その全てが墨染めに咲き、散っていった。

 

 大きい方のD・ホイールが光った。

 電流に晒されて、車体の数ヵ所が煙を上げる。

 

「っ、づ"ぁああぁあああああああああああ!

 あっ、くゅ、っぐ、はっ、うぅぁああああ!

 ぁあ! っ、ぅくっ! あっ、ひゃぅっ!」

 

 大きい方のD・ホイールのバランスが崩壊する。

 車体が斜めに揺れるが、握力の入らない腕とクラッシュ寸前のD・ホイールには成す術はなかった。

 小さい方のD・ホイールが煙幕を自動展開しているD・ホイールに車体を向けてアクセルを踏み込む。

 

「ぁああぁあああああああああああああ!」

 

 それは爆心地へ突撃しているのと同義だ。

 だけど、恐怖を咆哮で誤魔化して。

 小さいD・ホイールは一直線に大きいD・ホイールに向かっていく。ただひた向きに。前へ。

 

 そして2つのD・ホイールが重なりあったその数瞬後に大きなD・ホイールが爆発する。

 

「「ぅぉおおおぁあああああああああああ!」」

 

 爆風に乗って2人の人間が吹き飛ばされていく。

 2人ともしっかりと自分のデッキを抱えて、2人で纏めて吹き飛ばされていた。

 恐らくは爆発の数瞬前に大きなD・ホイールから小さいD・ホイールに飛び移ったのだ。

 その後にD・ホイールが爆発し、2人は纏まって吹き飛ばされたのだろう。

 

 最後まで良く似た人達だった。

 




 爆発落ちなんてサイテー!
 遊勝塾なんて言葉すら出てきてないという悲劇。
 話が進まない! 何故だ! 
 デュエルしているからだ! ……あれ?

【自己満足の懺悔室】
・デュエルでの間違いがありました。
 《森羅の姫芽宮》の自分以外の植物族モンスターをリリースして、墓地の『森羅』モンスターを特殊召喚する効果にオーバーレイユニットは必要ありません。これは修正しました。
 もう一つ。これは大きなミスなのですが《メリアスの木霊》は地属性モンスターに素材が限定されています。
 修正として先に墓地の《薔薇恋人》を使い《姫葵マリーナ》を出してランク3の《虚空海竜リヴァイエール》を守備表示で出せば修正できます。ですが、()()()()()()()()()()()()
 というか出来ません。デュエル上の問題ではなく、演出の問題です。
 本当に申し訳ありません。それでも変えた方が良いと思われる方は居れば、その旨をお伝えいただければ後日書き直します。

・本当に自己満足の懺悔
 彼岸は使いたく無かったよ瑠璃ぃいいいい!
 だって強すぎるんだよあの子。
 デュエルがこれまで以上にご都合主義で自己満足になるじゃないか……!
 アンデットのエクシーズをもっと下さい(切実)

 そして、実はどのカードがどのタイミングでどの順番でドローしたのかは決まっています。
 それでプレイングも変化しています。
 貪欲な壺とかが顕著に現れていますね。
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