遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。   作:羽吹

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【注意】この話はフィクションです。
 東映版遊戯王風の1話に仕上げました。
 よってギャグ成分少なめ。次からは元に戻るよ!
 それではシュールギャグをお楽しみ下さい。


その儀式は、仮面。

「力が欲しいか?」

 

 声が聞こえる。

 

「闇のアイテムが欲しいか?」

 

 はっきりと聞こえる。

 

「闇のデュエルとはお互いにとって大切なものを賭け、壊し、失い、嬲る闇のゲーム。

 それはデュエルだけには留まらない。

 だが貴様はデュエルを望んでいる!」

 

 おどろおどろしい声が、私に届く。

 一面は闇。だが私はエジプトに居た筈なのだ。

 

 遡ること1週間前。

 私は闇のアイテムを探し求めていると、LDSの周辺から錬金術の怪しい噂を嗅ぎ付けた。

 その噂を裏世界で調べ、(クイーンの)権力を使って噂の出所に辿り着いた。

 権力って奴だ。恐らくLDSは辿り着けてはいないだろう。その証拠に途中からLDSの名前を聞かなくなった。ただの噂だと断定したのだろう。

 相当に危ない橋を何度も渡り、そして私はその起源をエジプトに見出だした。

 

 原作の知識がなければ辿り着けなかった筈だ。

 だが、私は千年アイテムの原材料までは知っている。精錬方法は分からないのだが。

 そして辿り着いた私(ご主人様同伴)はエジプトを訪れ、連絡を取った闇ブローカーを幾人も介してとある地下に訪れていた。

 

 そこには一人だけが居た。

 その人物が立ち上がった。

 

 ただそれだけの行為で周りの燭台に火が灯っていき、地下の一部屋が照らされていった。

 

「力が欲しいか? 闇のアイテムが欲しいか?

 闇のアイテムは闇のゲームを行う為のアイテム。

 闇のゲームとは、儀式だ!

 殺し、助け、嬲り、見つけ、失い、得る!

 それが闇のゲーム! 何故貴様は求める!?」

 

 一喝。声が私を襲った。

 体が竦み上がる。意思に反して震え、寒くなどはないのに体が徐々に冷えていく。

 

「そこに私が居るからよ!

 私には価値はない。意味もない。

 だが私はここにいて、息をしている」

 

 私にはその意味が分からない。

 

「私はこの世界が嫌い。大嫌い。

 だけど、壊したいとは思ってはいない。

 そして生きている実感を得たいわけでもない。

 私は自分の幸せを諦めた。生の実感(そんなもの)は要らない。

 私には救いなんて必要ない!

 私が欲しいのは意味であり価値よ!」

 

 そして命のやり取りに。そう。

 

「闇のゲームに私の意味を見出だした!

 私が壊れてもいい。死んでもいい。

 そこ(命のやり取りの場)でないと私は私ではいられない!

 さあ! 私に闇のアイテムを!」

 

 目の前の人物が揺らめいた。

 影が幾つにも分かれ、体が炎のように翳る。

 

「よかろう! その狂気、その覚悟!

 我らの神の生け贄になるに相応しい!

 だが、しかし! 貴様は知っている筈だ!

 何かを得たいのなら、犠牲が必要なのだと!」

「良いだろう! ならばデュエルよ!」

 

 デュエルディスクを構える!

 さあ、始めての闇のデュエルを!

 

「デュエル! それは最も神聖な儀式の一つ!

 だが、闇のゲームはデュエルだけではない!

 貴様はここを見つけ出した! それすらゲームだったのだ! まだまだ我らのゲームに、儀式に付き合ってもらうぞ!」

 

 そして、消える。

 幾つかに分かれていたその人物が消え、私の前には扉がある。ゲームへの招待状だろう。

 

「あれ? ご主人様が居ない……。

 成る程、ここは現実の空間じゃないのね。

 恐らく、闇のアイテムが作り出した架空世界!

 いや、誰かの心の部屋なのか……?」

 

 扉を開ける。そこは闇だ。

 何もない世界。先の見えない世界。

 

「暗い。なのに陰鬱さや不気味さが無い。

 どういうこと……。まるで意味が分からんぞ!」

 

 歩いてみる。カツン、と音が響いて。帰ってこない。かなり広いのか、外なのか、どちらかだろう。

 進んでみる。何もなかった。

 ただただ闇が広がっているだけ。

 前の景色が変わらない。横の景色が変わらない。

 後ろを向いた。潜ったはずの扉がない。

 

「ここは、いったい……。

 ……考えろ。私は何をすれば良い?

 そもそもこれは何のゲームなの? いったい私の何を計っているというの?

 考えろ。これはゲームよ。必ず私にも勝つ道がある筈なの。探せ。考えるんだ」

 

 目を瞑る。景色が変わらない。

 そう、まるでこの世界には光がない。

 どこまでも続く、終わらない地獄。

 意味の無い歩み、結果の無い努力。

 苦痛がなくなり、希望を無くして。

 蟻地獄のように堕ちてきた人間を喰らう化物()

 

 それは、私だ。

 始めに感じた通りの答え。

 

「ここは、私の心の部屋だ!」

 

 ぱきん、と空間が割れた。

 ばらばらと空間が崩れていき、私は降り立った。

 

 ここは儀式の間だろう。

 壁一面にウジャトとペル・エム・フル(死者の書)が記された部屋。入り口、そして出口すら存在しない。

 遺跡の中だ。だが風化も経年劣化もしていない刻まれた装飾が、ここが現実では無いことを示している。

 

「よくぞ自身の心を打ち破った」

 

 落ち着いた声。

 それが奥から聞こえる。

 そこには木乃伊(ミイラ)があった。その前に小さなテーブルと椅子が置かれており、その椅子にはローブを纏った人物が佇んでいた。

 

「あら、覗いていたの? 悪趣味ね」

「そんなことはしておらん。いや、出来ぬ。

 我らが闇のアイテムは相手に自身の心を見せ、体感させただけだ。私に閲覧の権利など無い」

 

 ローブをはためかせ、その人物は立ち上がる。

 緩慢な動作だが、そこに一切の無駄がない。

 

「次のゲーム(儀式)だ。この部屋を見ろ。

 ここには入り口がない。出口がない。

 刻まれた祈りを見よ。その奥の木乃伊を見よ。

 この内に3つの間違いがある。それを探し、見つけ、暴き、私に示せ。制限時間は10分だ」

 

 次の闇のゲームは間違い探しなのね。

 

「私に墓荒らしをしろと?」

「そうだ。墓には意味がある。

 我らにとって墓とはただ死者を安置する場所ではない。その墓を荒らすことは重大な罪だ。

 だが、安心しろ。ここにその意味は既に無い。

 我らは神に会い、測られ、生き、そして!

 いや、これは分かるようなことではない。

 私が許そう。この墓は暴いてよい」

 

 ……アヌビス神に会い、マアトの羽で測られ、オシリス神と会い、死後を生き、ということね。

 この人、まさか……。いや、確証はないか。

 

「まず一つ、右の壁画ね。枷の無いアポピスよ。

 蛇が、アポピスが枷もなく描かれることはない。

 『描かれたものはそのままの姿で存在する』、そういった宗教観においてアポピスは必ず調伏されて描かれる。

 もう一つ。口の閉じられた木乃伊。

 これもおかしい。木乃伊には口開けの儀式が行われる。口は開けられていなければおかしいの」

 

 もう一つ。何処?

 流石に、私には読めないペル・エム・フル(死者への祈り)に手を加えるとは思えない。それはアンフェアだ。

 ゲームとは双方が勝つ可能性があって始めて成立するものだ。一方的であってはならない。

 

「その通り。ゲーム(儀式)とは平等でなければならぬ。

 だからこそ、これは言わねばならない。

 貴様は自身の手では墓を暴けぬようだからな」

 

 少し呆れたような声だ。

 だが、その声の裏側にはどこか優しさがあった。

 

「ああ、成る程。それは申し訳ないわね。

 少しゲームの難易度を下げたかしら。

 でもいいわ。その言葉が既にヒントよ」

 

 仕方の無いことだと思う。私に墓は荒らせない。

 私にとって、それはできないことなのだ。

 

「……一応、礼は言っておくわ。ありがとう。

 最後はその木乃伊の中よ。

 恐らくだけど、その木乃伊には心臓がない。

 木乃伊には心臓だけは残すものだからね」

 

 マアトの羽で測るためだ。

 死者への審判。心臓とマアトの羽の重さを比べ、心臓が重ければその人生に罪があったことになる。

 

「良かろう。貴様の知識を認める。

 死者への尊敬、思い、理解。そして我らが宗教についての知識。信仰しては居らぬようだが、それは構わぬ。強制するような事ではない」

 

 ふう、と息を着く。

 取りあえずの試練は終わった。

 恐らく、次は私が望んだ闇のゲームになる。

 

 そう、デュエルだ。

 

 ーーー

 

「貴様には資格がある。

 闇のアイテムを持つ資格だ。

 求める意味。私を見つけ出した能力。

 自身を見つめる強さ。死者への祈り。

 最後に残されたものは、その実力だ」

 

 それを私に示せ、と。ローブは言った。

 つまりは『おい、デュエルしろよ』と言うことだ。その言葉に少女は当然のように応える。

 

「けど待って欲しい。私がこの空間に来た時には、デュエルディスクを着けていなかった。

 私はどうやってデュエルをすれば良い?」

 

 この不思議空間に転移したときからだ。

 その時には既にデュエルディスクは無かった。

 

「難しくはない。石板を使えば良いのだ。

 それでは闇のアイテム継承の儀式を行う!」

 

「「ディアハ!」」

 

 闇のゲームが、始まった。

 それと同時に天井しかない筈の上から石板が降ってくる。これがカードなのだ。遊戯王では良くある。

 

「私の先行! 私は《手札抹殺》を発動する!

 この石板はお互いの手札を全て捨て、その枚数だけドローする効果を持っている。

 この瞬間、墓地に送られた《ワイトプリンス》の効果が発動する! この石板は墓地に送られた場合、デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る。

 そして《冥界騎士トリスタン》を召喚。この石板が召喚に成功したとき、墓地から守備力0のアンデット族モンスターを手札に加える。私は墓地の《冥界の麗人イゾルデ》を手札に加え、効果を発動する。この石板は自分のフィールドに《冥界騎士トリスタン》が存在する時、手札から特殊召喚出来る!

 そしてレベル4《冥界騎士トリスタン》と《冥界の麗人イゾルデ》でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚! 《フレシアの蟲惑魔》!

 石板を1枚伏せてターンエンド」

 

 うふふ、と綺麗に笑う蟲惑魔が現れる。

 いつ見ても本体がどちらか分からない。

 

【美少女仮面デュエリストの場】

 LP4000

 手札2枚

 場 《フレシアの蟲惑魔》

   伏せ石板が1枚

 

「私のターン、ドロー。手札から《墓守の司令官》を墓地に送って効果を発動。

 デッキから《王家の眠る谷ーネクロバレー》を手札に加え、そのまま発動する。

 この石板によってフィールド上の『墓守』モンスターは攻撃力、守備力共に500アップする。

 だがそれだけではない! このフィールド魔法は、貴様にとって天敵と言っても良い! これより墓地に効果の及ぶ石板の効果を無効にする!

 そして、墓地からの石板の除外を禁じる!

 何人たりとも、墓を暴くことは許さぬ!」

 

 ウジャトとペル・エム・フルの部屋は掻き消え、日の光りが眩しい王の墓に姿を変える。

 これで、お互いに墓地()の干渉は禁じられた。

 

「私は石板を1枚セットする。

 これで私のターンは終了する」

 

 静かな立ち上がり。墓で騒ぐことは許されないような、静謐とした雰囲気が彼にはあった。

 

【ローブの男の場】

 LP4000

 手札4枚

 場 裏守備モンスター

   フィールド魔法 

   《王家の眠る谷ーネクロバレー》

 

(《ネクロバレー》! かなり厄介ね。

 アンデットのマトモな動きが全くできない。

 でも、ある程度は読んでいた。私がイメージしたこのデッキは《ネクロバレー》が有っても動ける。

 DMでもGXでも、闇のアイテムの関係者と言えば大体が墓守だと決まっているからね!)

「私は手札から《ゴブリンゾンビ》を召喚!

 そして《フレシアの蟲惑魔》の効果を発動する。 この石板は1ターンに1度、エクシーズユニットを1つ取り除いて発動する。

 自分のデッキから『落とし穴』通常罠を墓地に送って効果を肩代わりする。

 私が墓地に送るのは《狡猾な落とし穴》!

 その効果によって、フィールド上のモンスター2体を破壊する! 相手の伏せモンスターと《ゴブリンゾンビ》を破壊するわ!

 墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果!

 墓地からの効果は無効にされないので、この効果は発動できる。よってデッキから守備力1200以下のアンデット族モンスターを手札に加える。

 私は《冥界騎士トリスタン》を手札に加える。

 そして《闇の誘惑》。デッキから2枚ドローして、手札の闇属性モンスター1体《トリスタン》を除外する」

 

 フィールドのゴブリンゾンビの足元が突然陥没し、その余波で伏せモンスターも落ちていった。

 

「更に《愚かな埋葬》を発動する!

 これはデッキからモンスターを1体墓地に送る石板。よって《ワイトプリンス》を墓地に送る。

 《ワイトプリンス》の効果。この石板が墓地に送られた時、手札・デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る。私はデッキからこの2枚を墓地に送る。

 そして、石板を1枚セットして《命削りの宝札》を発動する! この効果によって手札が3枚になるようにドローする。

 ただし、このターンに特殊召喚は出来ず、エンドフェイズに手札を全て墓地に送る。

 ……石板を2枚伏せてターンエンド。

 この時、手札を全て墓地に送る」

 

 ドーン、と音をたてて残った手札の1枚の石板が砕けて消えていった。

 どうでも良いことだがかなり派手な演出だ。

 

【命を削ったデュエリストの場】

 LP4000

 手札命の代償

 場 《フレシアの蟲惑魔》

   伏せ石板が4枚。

 

「私のターン、ドロー。

 随分と慎重なターンの進め方をするな。

 闇のアイテムを求める者とは思えぬ程だ。

 私は《墓守の石板》を発動。《ネクロバレー》に妨害を受けずに墓地の『墓守』モンスターを手札に加える。そして『トレード・イン』を使う。手札のレベル8《墓守の大神官》を墓地に送り2枚ドローする。

 良かろう、まずはその花を取り去ってくれよう!

 手札から《クロス・ソウル》を発動する。この効果により《フレシアの蟲惑魔》は私の生け贄として使用できる!

 行くぞ! 《フレシアの蟲惑魔》を生け贄に捧げ、現れよ《墓守の長》!

 この石板は通常召喚に成功した時、墓地から『墓守』モンスターを特殊召喚する。

 来い! 《墓守の大神官》!

 そして《墓守の大神官》は墓地に存在する『墓守』モンスターの数×200ポイントの攻撃力を上げる。

 墓地には5体の墓守が居る。《王家の眠る谷ーネクロバレー》を合わせて攻撃力は3500だ!

 だが《クロス・ソウル》を使ったターンは攻撃をすることはできない。私は石板を1枚伏せてターンエンドだ」

 

 墓守に伝わるであろう呪文を唱えた墓守の長は、静かに目を開ける。そこには墓から甦った大神官の姿があった。

 

 その大神官はアヌビス神を模した仮面を被り、ゲンドウポーズで杖を持ち周りに威厳を示していた。

 

【魂を交差させたローブさんの場】

 LP4000

 手札3枚

 場 《墓守りの長》

   《墓守りの大神官》

   伏せ石板が1枚

   フィールド魔法

   《王家の眠る谷ーネクロバレー》

 

「私のターン。ドロー。

 随分と余裕ね。でも、闇のゲームに安全圏なんて無いのよ。それを証明してあげる。

 私は伏せ石板をリバース! 永続魔法《奇跡のピラミッド》! この石板は、自分フィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力を相手フィールド上のモンスターの数×200ポイントアップさせる効果がある。

 そして《ワイトキング》を召喚!

 《ワイトキング》の元々の攻撃力は墓地に存在する《ワイト》、《ワイトキング》の数×1000になる。そして《ワイトプリンス》も《ワイト夫人》も墓地では《ワイト》として扱われる。

 よって《ワイトキング》の攻撃力は6400よ! 貴方の《墓守の長》の攻撃力は2400! 丁度4000のダメージが入るわね!

 バトルよ! 《ワイトキング》!

 《墓守の長》に王の力を見せてやりなさい!」

 

 襤褸を纏う骸の王。その誇りは死者への悼み。

 例え王の墓であろうと死者は変わらないのだ。

 

「むぅ! そんな事はさせん! 速攻魔法発動! 《ディメンション・マジック》! その効果によって《墓守の長》を生け贄に捧げ、手札から2体目の《墓守の大神官》を守備表示で特殊召喚する!

 それだけではない! フィールド上のモンスター1体を破壊できる! 《ワイトキング》! 王よ! 今一度王墓にお戻りいただきたい!」

「残念だけど、その懇願は聞き入れられないわ。

 この瞬間《奇跡のピラミッド》の隠された効果が発動する! 自分フィールド上のアンデット族モンスターが破壊される場合、この石板を代わりに墓地に送ることができる!

 そして、バトルは巻き戻る!

 《ワイトキング》! 攻撃表示の《墓守の大神官》に攻撃! 王の惨劇! -子供の力を借りて-!」

 

 ワイトキングが墓守の大神官に襲いかかる!

 それはまるで王の乱心のように、特に理由のない理不尽な暴力が墓守の大神官を襲った。

 

「だが、私は手札から『墓守』モンスターを捨てることで《墓守の大神官》の破壊を無効にする!

 ぬ、ぅおおぉぁあああああああああっ!」

 

 2300ポイントのダメージ。

 闇のゲームなので、ダメージは当然のように本人の精神をダイレクトに攻撃する。

 

「さあ、これで私のターンは終了する!」

 

【王が席巻するフィールド】

 LP4000

 手札無し

 場 攻撃力6000の《ワイトキング》

   伏せ石板が3枚

 

【大神官2人による儀式の場】

 LP1700

 手札2枚

 場 《墓守りの大神官》×2

   フィールド魔法

   《王家の眠る谷ーネクロバレー》

 

「私のターンだ! ドロー!

 私は手札から《墓守の石板》を発動し、墓地の『墓守』モンスターを2枚手札に加える。

 そして《闇の誘惑》! 石板を2枚ドローし、手札から闇属性モンスター1体を除外する。

 王よ! その乱心、私自らが静めて見せよう!

 私はフィールドの2体の《墓守の大神官》を生け贄に捧げ《墓守の審神者》を、私を召喚する!

 私の効果! 私は生け贄に捧げられた《墓守》の同胞の数まで効果を使える!

 1つ! 私の攻撃力は生け贄に捧げられた同胞の星の数×100の攻撃力を得る!

 私の生け贄に捧げられた星の数は16だ!

 よって攻撃力は《王家の眠る谷ーネクロバレー》を含めて4100ポイントになった!

 ぬぅぉおおおおおおおおおおおお!

 2つ! 相手フィールド上のモンスター全ての攻撃力・守備力を2000ポイント下げる!

 ぜぇぁああああああああああああ!

 これで王の攻撃力は4000ポイントになった!」

 

 突如としてローブを脱ぎ捨てた彼は、弾けた。

 筋肉が急激に盛り上がり、今まで着ていなかった筈の装束が出現し、持っていなかった筈の金で出来た杖を取りだし、王に向ける。

 叫び声と共にその杖から閃光が発し、ワイトキングは膝をついた。攻撃力が下がったのだ。

 

「私の攻撃! 王よ! お許しください!

 ぬぅおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 ドゴン、と音を立ててワイトキングの腹に穴が開いた。彼の抜き手が決まったのである。

 

「ぐっ、ぅく! っ! この衝撃……!」

「そうだ。これが闇のゲーム。

 王の痛みが貴様にも伝わった筈だ!

 さあ、私のターンは終了する! 次は貴様のターンだ。この程度では終わるまい!」

 

 よろよろと立ち上がった彼女は当然と言わんばかりに空に手を翳すと、石板が降ってくる。

 

「私のターン! ドロー!

 っ、《馬頭鬼》を召喚! 更に罠発動! 《魂の転身》! この石板は自分フィールドに特殊召喚されたモンスターが居らず、通常召喚されたレベル4のモンスターをリリースして発動できる。

 私は石板を2枚ドローする!

 そして石板を1枚伏せてターンエンド!」

(ここに来て《王家の眠る谷ーネクロバレー》が痛い。《ワイトキング》も《ワイトプリンス》の効果も使えない。……流石にアンデットには厳しい場所ね)

 

【クイーンの場】

 LP3900

 手札1枚

 場 伏せ石板が3枚

 

【墓守の審神者の場】

 LP1700

 手札2枚

 場 攻撃力4100の《墓守りの審神者》

   フィールド魔法 

   《王家の眠る谷ーネクロバレー》

 

「私のターン! ドロー。

 そして、私の攻撃! ボディブロー!」

「罠発動! 《リジェクト・リボーン》!

 この石板は相手の直接攻撃時に発動できる。バトルフェイズを終了させる! 墓地のモンスターの蘇生効果は条件を満たさないために使用しない!」

 

 墓守の審神者が私に迫る。残像を残すほどの速度で近付き、私の鳩尾にボディブローが決まる瞬間、彼の体が止まる。リジェクト・リボーンによって止められたのだ。

 

「1ターン延命したか! だが守ってばかりでは私に勝つことはできない!」

「っ、私のターン! ドロー!

 ……そうね、私の勝利には女神が微笑んでくれる必要があるのかも知れないわ。

 だけど、私はアンデッド。女神には頼らない!

 私は伏せ石板オープン! 永続魔法《ミイラの呼び声》! この石板は自分フィールド上にモンスターが居ない時、手札からアンデット族モンスターを特殊召喚できる!

 その効果で手札より《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚! 更に《冥界の麗人イゾルデ》を通常召喚!

 そして《イゾルデ》の効果! アンデット以外の特殊召喚権を犠牲に、自分フィールドのアンデット族モンスター2体のレベルをターン終了まで5~8までの好きな数にする!

 私はレベル6を選択するわ!

 そしてレベル6となっている《ゴブリンゾンビ》と《冥界の麗人イゾルデ》でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚! 《巡死神(ピルグリム)リーパー》!」

 

 赤い目が現れる。次いで白い髪だ。

 幽鬼のように佇むその体躯は異様に細い。

 

「ぬぅ、またえくしーず召喚とやらか……!」

「ええ、まさか卑怯とは言わないでしょうね?」

 

 挑発するようなその言葉に、彼は返す。

 

「当然だ。それが今の世のデュエル。

 これから先に更なる改革があったとしても、それを否定することはできん。

 時は流れ、人は移ろい、物は変わるのだ。

 それがこの世界。私はもはや時代遅れなのだ」

「……それは。きっと、私もそうでしょうね。

 過去に囚われ、進化を拒み。

 一分先が、一秒先が怖くて仕方がない。

 自分で自分を追い込んで、だからこそ。私は闇のゲームに意味を見出だした。壊れるように、狂うように、そうじゃないと、私は、もう……。

 《巡死神リーパー》の攻撃力は、お互いの墓地の闇属性モンスターの数×200ポイントアップする。

 よって、今の攻撃力は3200ポイントよ。

 そして《巡死神リーパー》の効果。

 オーバーレイユニットを1つ取り除いて、お互いのデッキから石板を5枚墓地に送る。

 この中に4枚の闇属性モンスターがあれば、《リーパー》は貴方の攻撃力を越えることができる!」

 

 1枚目《馬頭鬼》。2枚目《ワイトキング》。

 3枚目《墓地墓地の恨み》4枚目《ユニゾンビ》。5枚目《生者の書-禁断の呪術-》

 

「私からは2枚の闇属性モンスターが墓地に送られたわ。貴方はどうかしら?」

「貴様の強運、認めざるを得んな。

 私からも2枚。《墓守の暗殺者》と《墓守の偵察者》が墓地に送られた」

 

 これで巡死神リーパーの攻撃力は4200ポイントにアップした。

 ギラリと、死神の赤い目が光る。

 

「《巡死神リーパー》で《墓守の審神者》を攻撃!」

 

 そして、その鎌で審神者の首を掻き切った。

 

「ぐ、ぅおおおおおおおおおおおおおお!

 はっ、づぅ、くっ、流石はここまで来た人物だ。

 まさか私が破壊されるとは思わなかったぞ!」

「生きていたのね。それじゃ、当然続けるわね。

 私はこれでターンエンドよ」

 

 息を切らして喘いでいるローブに対して、情けも容赦も無しにターンを渡す鬼がいた。

 これは闇のゲーム。どちらかが死ぬか、決着が着くまでは終わらないのだ。

 

「っ、私のターン。ドロー!

 ……! これは、そうか。神の意思か……!

 私は手札から《神竜 ラグナロク》を召喚する!

 更に速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》を発動! この効果により、デッキから《ハネクリボー》の石板を特殊召喚する!」

 

 闇のアイテムを求めるものよ。

 最後に、話さねばならぬ事がある。

 ローブはそう言ってプレイを一旦中断する。

 

「貴様は闇のアイテムまで後1歩という所まで来ている。しかし、貴様に足りていないものが1つだけある。

 それは、結果だ!

 闇のアイテムの所持者は主に二通りの結末を辿る。

 何かを成し得るか、破滅するかだ。

 私の役目はその結果を見定めることではない。

 私は審神者だからな。ただ闇のアイテムに相応しい人物かどうかを見極めるだけだ。

 だが、貴様の未来を測れと神は言っている。

 オトウトノカタキは取らなくても良いが、私が貴様の未来を測ってやろうではないか。

 自分フィールドに存在するドラゴン族、光属性モンスター1体と、天使族、光属性モンスター1体を墓地に送り、この石板を特殊召喚する!

 降臨なされよ! 《マアト》!」

 

 ネクロバレーが、照らされる。

 その光は神々しく、何人にも汚すことのできない程の清廉さと、圧迫感が存在する。

 そこに居るのはモンスターではない。神だ!

 

 そう、神なのだ。

 死者に審判を下す為の羽。真実であり、秩序。

 太陽の娘である、女神がそこにあるのだ。

 

「さあ、神よ。この者の未来を測りたまえ!

 ……! なっ! で、ではこの者は……!

 神が託されたのは《フォース》、《タイムカプセル》、《破滅へのクイックドロー》の3枚だ。

 そして、当然デッキの3枚の石板はこの3枚だ。

 …………貴様、名は何と言う?」

「わ、私の名前は(つむぎ)遊歌(ゆうか)、で、す」

 

 その言葉の後、彼女ははっとした顔をする。

 答えるつもりなどなかったのだろう。

 だが、神の前ではそのような不敬は許されない。

 

「そうか、結遊歌よ。貴様の未来は破滅だ。

 神が、そう託されたのだ。それをしかと心に刻み、これから先を生きて行くといい!

 私は捲られた3枚の石板を手札に加え、その枚数×1000が神の攻撃力になる。

 よって、神の攻撃力は3000だ。

 だが、私には貴様の力の象徴《フォース》の石板がある。この石板は、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を半分にし、私のフィールド上の神にその数値を加える。

 行くぞ! 己自身の力で滅ぶがいい!

 魔法発動! 《フォース》!」

「私の未来。例えそれが破滅でも、私は構わない!

 だが。しかし! 私は仮面デュエリスト!

 その素顔で戦いはしない! それも私だ!

 カウンター罠発動! 《ツタン仮面》!

 フィールド上のアンデット族モンスターを対象とする魔法・罠の発動を無効にして破壊する!」

 

 死神を襲うフォースの力は、しかし仮面によって弾かれた。

 自身の力を仮面で止めたのである。

 

「そうか。貴様はその未来を知ってなお、闇のアイテムを求めるのか。

 …………良かろう。私のターンは終了する。

 その死神で神を倒し、私の屍を越えて行け!」

「私の、ターン! ドロー!

 《巡死神リーパー》の効果! お互いのデッキから5枚の石板を墓地に送る!

 私のデッキからは《ワイト夫人》と《ワイトプリンス》が墓地に送られた!

 貴方のデッキからも2枚の闇属性モンスターが墓地にいった!

 よって《巡死神リーパー》の攻撃力は5400ポイント!

 バトル! 《巡死神リーパー》で(マアト)を攻撃!」

 

 ブオン、と死神の鎌が神を捉えようとして、その身に着けた千年アイテムが光る!

 閃光が、視界の全てを埋め尽くした。

 強烈な閃光が目を焼き、堪らずに2人のデュエリストは膝をついて目を覆う。

 

 その閃光が晴れた後、そこに神の姿はなかった。

 いや、神だけではない。死神の姿さえなかった。

 既にデュエルは終わっていた。

 少女のライフは残っており、ローブのライフは既に0を示していた。少女の勝ちである。

 

 ーーー

 

「貴様の勝ちだ。墓を荒らせぬ墓荒しよ。

 最後まで《王家の眠る谷ーネクロバレー》を破壊せずにデュエルをしよって。

 破壊さえすればもっと楽に倒せたであろうに」

「死者には尊敬を持って然るべき。私はそう思う。

 だから、私は墓を荒らさない。

 アンデットは、アンデッドだもの。

 彼らは死んでいないの。だから例外」

 

 完全に屁理屈だった。

 自分さえ納得していれば良いのだろう。

 

「そうか、ならば貴様はこのデュエルの勝者だ。

 その証として闇のアイテムを1つくれてやろう。

 溶かすも良し、研究するも良し、それで闇のデュエルを繰り返すも良しだ。

 貴様がこのアイテムの所有者だ。好きに使え。

 ただし、貴様は闇のアイテムに慣れておらん。闇のアイテムが貴様を主人だと認めるまでは闇のゲームの度に貴様に激痛が走るだろう。覚悟しておけ」

 

 そう言って、彼は1つの闇のアイテムを取り出した。

 

「そうだな、このブレスレット型の闇のアイテムが貴様の元に行きたいそうだ。

 ラッキー闇のアイテムだ。持っていくがいい」

 

 そうして彼女はブレスレットを着ける。

 その瞬間彼女の顔が歪む。苦痛の表情だ。

 闇のアイテムから激痛が走っているのだろう。

 

 そして闇のアイテムが光る。

 小さく彫られたウジャトの眼が光り、空間を白く染め上げていった。

 

 ーーー

 

「こ、こは……。元居た地下……?」

 

 私は戻ってきていた。

 近くにはご主人様も居る。

 

「あれ? ローブの人が居ない……?

 燭台すらないなんて……。これが闇の力!」

 

 架空空間に行く前にはあった筈の燭台すらなく、ここにはご主人様以外は誰も居ない。

 

「っ、腕が……!」

 

 痛い。激痛が走っている。

 この場所に戻ってくるために自身の力を使ったのだ。その代償として、私に激痛が走っている。

 

「でも、闇のアイテムを手に入れた。

 これで、私はもっと…………」

 

 エジプトの地下はただただ静かだった。

 

 ーーー

 

「力が足りん! 戦力が余りに少ない!」

 

 緋色のマフラーをはためかせ、精密機器の筈のコンピュータを音を立てて叩いた。

 

「何と言うことだ……! 中島、もう一度だ! ……いや、何度やってもこの結果は変わらないか……!」

 

 シュミレーションだ。

 これからのLDSの実力を計算し、とある次元からの侵略にどれ程の間耐えられるかを計算したのだ。

 

「これでは手詰まりに近い。

 一刻も早く力のあるデュエリストを探さなければならない。しかし、LDSでは……」

 

 風魔忍者とは既に連絡をつけた。

 他のLDS分校の目ぼしいデュエリストも既に精査済みだ。

 

 圧倒的に、戦力が足りないのだ。

 

「くっ、私自ら戦力の確保に出向くしかないか……

 プロデュエリスト、裏デュエリストを問わん。

 実力のあるデュエリストを探し、ピックアップしろ。私がその実力を確かめに行く!」

 

 今は一人でも仲間が欲しいのだ。

 




 闇堕ち系最終版。その命を懸けて。
 続きは劇場版になりまーす。
 うん、次からはちゃんと遊戯王arcVになる筈。
 そろそろ話を動かさないと。

 ちゃんとシュールギャグになってるかなぁ……。
 かなり難産だったので不安です。
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