遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。 作:羽吹
今日はパーティーだ。
ドレスを着て、おめかしをして、と言ったようなパーティーではない。
そうではなく、もっとミクロなパーティー。
そう、私の遊勝塾入塾パーティーだ。
私は遊勝塾に入塾することにしたのだ。
「知ってるとは思うけど、俺は榊遊矢!
確か同じクラスの
そうだ、権現坂が言ってたんだけどさ、結ってデュエル強いんだって?」
「ああ、少し前に遊勝塾の近くでデュエルをしてな。ファンサービスだとか訳の分からん事を言ってはいたが、その実力は本物だった」
ゑ? あのデュエルで実力が測られた、だと?
私は公式戦での勝利を許されていないと言うのに。実力があるとかバレたら面倒くさいことになる。
「そんなことはない。あれは運が良かっただけ。
あんなものはデュエルなどとは呼べはしない! とは言わないけど、あれは私の実力じゃない」
もっと弱いんだ。私は。
と言い訳をしておく。嘘は言っていない。
あの時の私は融合もシンクロもエクシーズもしていないのだから。本気ではない。
「えーっ! でも私は楽しみにしてたのにっ!」
「そうだよ! しびれる~デュエルをしてくれるって思ってたのにーっ!」
「そうよ遊歌。やる前から弱気なんて良くないわよ! そうだ、今からデュエルしない?
遊勝塾の入塾記念デュエル! いいでしょ?」
えぇ……そういうことじゃないんだけど……。
まあいいか、負ければいいんだ。
負けるといっても、エンターティイ↑メントに負ける必要があるのだけど。
「それじゃ、ソリッドビジョンの用意をしてくるわね。ちょっと待ってて!」
「あ、うん。ゆっくりで良いからね。柚子」
アクションフィールドの準備だろう。
ここの施設はポンコツだ。急いで点検を怠ったらデュエルの途中で停止しかねない。
そんなのはエンターテイメントじゃない。
私のエンタメとはデュエリストが造り上げるデュエルそのもの。観客に向けるのではなく、相手に向けるのでもなく、自分に向けるものだ。
相手をリスペクトし、自分のデッキで答える。
そこに悲鳴と恐怖と必死さがあれば完璧だ。
ーーー
塾長は用事で居なかった。
どうしても外せない用事だったらしく、パーティーに欠席せざるを得なかったのだ。
だが柚子は塾長の手伝いでソリッドビジョンシステムを使い慣れており、問題なく起動できた。
フィールド魔法をオートで選択すると
《白銀の宮殿街ーマドリース》というアクションフィールドに決定された。特にこれといった癖の無いフィールドで、柚子はよしっと声を上げて皆の元に戻っていく。
「で、デュエルの相手って誰がやるんだ?」
「うん? 柚子では無いのか?
子供ではソリッドビジョンが固すぎる。それに結は女子だ。遊矢が相手をするよりも、同性である柚子の方が適任だろう」
「榊君、権現坂君。私は遊歌と呼ばれる方が良い。
できればそう呼んでくれると嬉しい」
そこでは遊歌デュエルの相手を相談しており、その結果柚子がデュエルの相手に選ばれていた。
当人である柚子は拒否をするつもりなどはなく、快く引き受けてアクションフィールドに遊歌と共に向かう。
その途中で柚子は何かに気づいたような顔をして、遊歌に少し申し訳なさそうな顔を向ける。
「そうだ、アクションフィールド!
勝手に《白銀の宮殿街ーマドリース》にしちゃった、ううん、なっちゃったんだけど、得意とか苦手とかってあったりした?」
「ううん、大丈夫。私の得意なフィールドでも苦手なフィールドでもない。問題なく戦える」
良かったとほっと一息をついて、柚子と遊歌の2人はアクションフィールドに入っていった。
「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「「見よ! これぞデュエルの最終進化系!」」
「アクション──」
「「──デュエル!!」」
「私の先行よ! まずは
手札から《幻奏の歌姫ソロ》を召喚!」
赤い衣装を着た歌姫が一人登場する。白銀の街に響くように声をあげてソロで歌を奏でていた。
オーバーチェアと言う名のソロパート。最初から自分の見せ場だと宣言しているようなものである。
「更に自分フィールド上に『幻奏』モンスターが存在する時、手札から《幻奏の音女ソナタ》を特殊召喚できる!
特殊召喚されたこのモンスターが存在する限り、自分フィールド上の天使族モンスターの攻撃力・守備力を500ポイントアップする!
カードを1枚伏せてターンエンド!」
そして次にソナタが奏でられる。ソロパートが終わり、クラシックが始まった。その歌声が自身のフィールドにいる天使に力を与え、ソロを奏でていた歌姫は下手な下級モンスターを凌ぐ攻撃力を得ている。
【ピンクの衝撃・柚子】
LP 4000
手札 2枚
場 攻撃力2100の《幻奏の歌姫ソロ》
攻撃力1700の《幻奏の音女ソナタ》
伏せカードは1枚
「私のターン。ドロー!
私はフィールド魔法《アンデットワールド》を発動する! このカードの効果によって、フィールド・墓地に存在するモンスターはアンデット族になり、アンデット族以外のモンスターをアドバンス召喚することはできない!
《幻奏の音女ソナタ》の効果対象は天使族。
アンデット族になったモンスターは効果を受けられない。これで貴女のモンスターの攻撃力は下がった」
白銀の宮殿に広がる街が、腐る。
所々から瘴気が立ち込め、街のあちこちに骸が産まれ、草木が枯れ、
「ここはアンデットの世界!
死してなお死なない世界!
この場所において死者以外の存在は許されず、新たに現れるモンスターもまたアンデットとなる!
さあ、化物の宴をご覧に入れよう!」
お楽しみは、これからよ!
と彼女は宣言をして、ギャラリーに手を振る。
「うわぁ……遊歌お姉ちゃん、これじゃ完全に悪役だよ~」
「しびれるくらい怖いぜ~」
子供組2人は彼女の発動したフィールド魔法と彼女自身のパフォーマンスに目を丸くして驚いている。
「これが、遊歌のエンタメデュエル……!
アンデット族なんてエンタメデュエルとは正反対のようなモンスターなのに……!」
「遊矢。それは偏見が過ぎるぞ。
どんなモンスターであろうと、それは使い手次第で良くも悪くもなる。ただモンスターの見た目だけで判断するものではない」
「あ……。うん、そっか。そうだよな。
俺が目指すエンタメとは違うかも知れないけど、これも1つのエンタメデュエルなんだ。
そっか、こういうエンタメもあるんだな……」
中学生の凸凹コンビも彼女のデュエルには少なからず驚いていた。それはそのはず、彼らが学んでいたエンタメデュエルとは、自身が主役になるエンタメデュエル。自分から悪役に成りに行くパフォーマンスは想定外だったのだ。もっとも当の本人である遊歌は、悪役に成ったつもりなど毛頭なくて自分のデュエルをしているだけであることには誰も気付いていなかった。
「っ! 凄い、迫力っ! まるで本物の裏デュエリストみたいな雰囲気ね! 見たこと無いけど!
良し、ならオペラ座の歌姫柚子ちゃんがアンデット族の化物退治よ! 皆、応援してね!」
「そして《ピラミッドタートル》を通常召喚!
バトル! 《ピラミッドタートル》で《幻奏の音女ソナタ》を攻撃! ピラミッド・タックル!」
「攻撃力は同じ1200! 相討ち狙い!?
だけど、私の歌姫は破壊なんてさせない! 永続罠発動よ! 《ガリトラップ-ピクシーの輪-》! この罠は私のフィールドに攻撃表示のモンスターが2体以上存在する場合、攻撃力の1番低いモンスターを攻撃することができない!」
幻奏の音女ソナタは光の塔に包まれた。ピラミッドタートルの体当たりはその光の輪に阻まれた。
攻撃を止められてどうすれば良いのか戸惑っているピラミッドタートルに遊歌は再度攻撃の指示を下す。
「構わない、攻撃を続行する。《ピラミッドタートル》で《幻奏の歌姫ソロ》に攻撃! ピラミッドタックル! 命中率95%じゃなくなった体当たり!」
「どこのポ○モンよ! って、自爆特攻!?
そんなことをして何の意味があるって言うの!?」
「当然、次への布石よ。《ピラミッドタートル》が戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスターを特殊召喚できる!
おいで《
破壊されたピラミッドから周りよりも濃い瘴気が吹き出し、その濃密な霧から赤い眼が現れる。次いで翼が、尾が、その体躯が現れる。
咆哮。
その口からは死臭が漂い、その体が既に腐りきっていることを証明していた。
「アンデットの、ドラゴン……!」
「そう、この姿は嘗て可能性を象徴した竜の成れの果て。腐り堕ちてさえ生きている、これこそが可能性!
私は《真紅眼の不死竜》で《幻奏の歌姫ソロ》に攻撃! アンデット・メガフレア!」
ソロで歌い続ける歌姫が、噛まれる。翼で押さえつけられ、尾で抜け出すことを禁じられ、まるで屍肉を貪るように啄まれていく。アンデットの竜はやがて満足したのか遊歌のもとに舞い戻り、その後には食い散らかされたソロだけが残っていた。
メガフレア要素は欠片も存在していなかった。
「くっ、《ソロ》……! だけど《幻奏の歌姫ソロ》が戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから《幻奏の歌姫ソロ》以外の『幻奏』モンスターを特殊召喚する!
来て! 《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》!」
「けど、この瞬間《真紅眼の不死竜》の効果も発動する! このモンスターがアンデット族モンスターを戦闘で破壊し墓地に送った時、そのモンスターを自分のフィールドに特殊召喚する。
私の元で歌え! 《幻奏の歌姫ソロ》!」
「だけど私のフィールドには永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》が存在する。この時、攻撃力の低い《幻奏の音女ソナタ》を攻撃することはできない!」
真紅眼の不死竜の効果による特殊召喚はバトルフェイズ中の行為。追加攻撃できる筈だった。しかし、新たに特殊召喚された幻奏の音女プロディジー・モーツァルトの攻撃力は2600。更に柚子の罠が追加攻撃を凌いだのだ。
(わぉ、藪から蛇だったね。知らないカードなんてここには山ほどあるから、仕方ないと言えばそれまでなんだけど。けど流石に堪えるわ……。
しかもリクルーターを特殊召喚しちゃったか。仕方ない。まだ早いけど、ここで使うか)
「メインフェイズ2に移行する。
今、私のフィールドにはアンデット族モンスターの《真紅眼の不死竜》とアンデット族と扱われている《幻奏の歌姫ソロ》の2体のモンスターが存在する。
この時、死者の骸を奪う化物が産まれる!
特殊召喚! 《火車》! そしてこのカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターを全てデッキに戻す! このカードの攻撃力はこの効果で戻したアンデット族モンスターの数×1000になる。よって《火車》の攻撃力は1000になる」
火車の効果はデッキに戻したモンスターの種族を参照する。アンデットワールドで変更されていたモンスターは数えることはできない。
「そんな! 私のモンスターがっ!」
「ふふっ、フィールドが寂しくなったわね。
カードを1枚伏せて、ターンエンド。
これにてオーバーチェアは閉幕。さあ、次の演目の時間。順当だと
火の車。嘆く死体が火の車輪を腕に変え、走る。ただただ走る。狂ったように走り続ける骸。
その叫び声がフィールドの全ての歌、声を掻き消してオーバーチェアが終わった。
【素顔の悪役・遊歌】
LP 3600
手札 2枚
場 攻撃力1000の《火車》
伏せカードが1枚
フィールド魔法
《アンデットワールド》
【オペラ座の歌姫・柚子】
LP 3200
手札 2枚
場 永続罠
《ガリトラップ-ピクシーの輪-》
(……強い! 権現坂に勝ったのは知ってたけど、ここまでなんて……。でも、負けてはいられない!)
「私のターン! ドロー!
来た! 魔法発動! 《独奏の第1楽章》!
このカードは1ターンに1度しか使えず、このターン『幻奏』モンスターしか特殊召喚できない。自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスターを特殊召喚する!
お願い! 《幻奏の音女アリア》!
特殊召喚されたこのカードがいる限り、自分フィールド上の『幻奏』モンスターは効果の対象にならず戦闘では破壊されない!
バトル! 《幻奏の音女アリア》で攻撃!」
独唱が声高く響く。火車がその歌声に嘆きを掻き消され、煙のように消えていった。
「これでユーカに600ポイントのダメージよ! これで貴女の残りライフは3000ポイントになった!
そして、守りを固める! 手札から《幻奏の音女カノン》を守備表示で特殊召喚! このカードは自分フィールド上に『幻奏』モンスターが存在する時、手札から特殊召喚できる!
更に《幻奏の音女カノン》の効果で《幻奏の音女アリア》を守備表示に変更する! 私はこれでターンエンドよ!」
(《アンデットワールド》! 厄介なカードね。アンデット族以外のアドバンス召喚の禁止。それにフィールド・墓地のモンスターは全てアンデット族に強制変更される。《トランスターン》すら封じられた! 手札には無いけど!)
【アンデット柚子】
LP 3200
手札 1枚
場 《幻奏の音女アリア》
《幻奏の音女カノン》
永続罠
《ガリトラップ-ピクシーの輪-》
遊歌の顔が微かに歪む。レベル8のモンスター《火車》を下級のモンスターで破壊されたからなのか、伏せられたカードに一瞬眼を移してデッキに手を掛ける。
「私のターン。ドロー。
私は手札からデュアルモンスター《業火の重騎士》を召喚する。デュアルモンスターはフィールド・墓地では通常モンスターとして扱われる。だけど、デュアルモンスターはもう一度召喚することで効果モンスターとして扱うことができる。その効果は《幻奏の音女アリア》では対処できない!
後1ターンでアリアは終幕。今は休憩時間。次は
カードを1枚伏せてターンエンド」
聞いているだけで分かる完全な悪役の台詞を吐いて、遊歌はターンを終了する。そのフィールドには炎を纏った重騎士が駆けており、歌い続けるアリアとカノンを見据えている。
【オペラの観客兼怪人・遊歌】
LP 3000
手札 1枚
場 《業火の重騎士》
伏せカードが2枚
フィールド魔法
《アンデットワールド》
「そんなことはさせない! アリアは私が守る!
私のターン! ドロー! ……っ、良し!
私は《幻奏の音女アリア》と《幻奏の音女カノン》を攻撃表示に変更! そしてバトルよ! 《幻奏の音女アリア》で《業火の重騎士》を攻撃! 亡き王女のためのアリア!」
アリアの歌声が炎を纏って疾走する騎士を捉えようとして──
「罠発動! 《分断の壁》!
相手の攻撃宣言時に発動できる! 相手攻撃表示モンスター全ての攻撃力は相手のモンスターの数×800ポイント下がる! これは対象に取る効果ではない! よって柚子のモンスターの攻撃力は1600ポイントダウンする!」
「そんなっ! 《幻奏の音女アリア》も《幻奏の音女カノン》も攻撃力は1600以下! 二人とも攻撃力が0に!
っ! ダメージステップ時手札から《幻奏の音女スコア》を手札から捨てて効果を発動する! ターン終了時まで《業火の重騎士》の攻撃力・守備力を0にする!」
「攻撃力0同士の攻撃ではモンスターは戦闘破壊されない。よって《業火の重騎士》は生き残る!」
アリアとカノンの声が消える。どれだけ声を出そうとその声帯から空気を震わせることはできない。
同様にスピードを無くした重騎士の攻撃は歌姫たちには届かず、お互いに損失はない。
(くっ! 《業火の重騎士》は次のターンには攻撃力が戻るけど、私の《アリア》と《カノン》は0のまま……。でも私には《ガリトラップ-ピクシーの輪-》がある! 同じ攻撃力のモンスターのみが2体以上攻撃表示で居る時、相手は攻撃できない!)
擬似的なロックを完成させた柚子は焼け野原になった遊歌のフィールドを眺めて次のターンの安全性を確認し、自分のターンを終了していいのかの確認をしていた。
【ゼロゼロック柚子】
LP 3200
手札 1枚
場 攻撃力0の《幻奏の音女アリア》
攻撃力0の《幻奏の音女カノン》
永続罠
《ガリトラップ-ピクシーの輪-》
「これで私はターンエンドよ!」
「私のターン! ドロー!
ふふっ、ロックを完成させても安心はするものじゃないわよ! それこそ『八咫ロック』位じゃないとね。あれは本当に何もできないから。
なにしろこのデュエルはただのデュエルじゃないのよ! アクション魔法発動《白銀の霧》! このターンのバトルフェイズ時、私のモンスターへの魔法・罠の効果は無効となる!」
骸骨が転がり、瘴気の立て籠る街に白銀の霧がかかる。瘴気と混ざりあって薄い雲が街全体を覆っているように作り替えられる。遊歌からは柚子が、柚子からは遊歌が何処に居るのかすら分からない、視覚に頼れない世界ができあがる。
「っ、アクション魔法! なら私もアクション魔法を探せばいい!」
(でもこの霧じゃまともに探せない上に、骸骨で足場も悪い。それにフィールド上のモンスターを強化する魔法を拾うと悲惨なことになる! 《アリア》で『幻奏』モンスターは効果の対象にできないから。加えて、相手のモンスターへの弱体も無意味。攻撃の時には全部無効になる! 遊歌のタクティクス、ここまで考えて構築されてる……!)
柚子は焦りながらアクションカードを探しているが、遊歌からは柚子を確認することはできず、自分が仕掛けた状況の影響を自身も受けていた。
(ここで《生者の書-禁断の呪術-》を使えばもう巻き返せないかな? ちょっとやり過ぎた? いやでもこの伏せカード使ってないんだけどなぁ……。
……うーん。温存しよっかな)
「バトル! 《業火の重騎士》で《幻奏の音女アリア》に攻撃! 地獄の業火に包まれるがいい!」
どこぞの働かない兄様のような台詞を吐いて重騎士がアリアに突撃する。しかしアリアの攻撃力は0であり、柚子にはダイレクトアタックと変わらない数値がライフポイントから引かれる。
「メインフェイズ2に移行。私は《業火の重騎士》をデュアル召喚。これでこのモンスターは効果を使用できる! 《業火の重騎士》が攻撃を行うダメージステップ開始時に相手モンスターを除外する。これも対象に取る効果ではない!
私はこれでターンエンド! さあ、これで霧が晴れる! 同時にオペラはクライマックスへ移行する!」
このデュエルは既に終盤だと宣言して遊歌は自身のターンを終了する。そのフィールドには忘れ去られたように伏せカードが1枚、始めのターンからずっと伏せられている。
【地獄の業火に包まれる遊歌】
LP 3000
手札 2枚
場 《業火の重騎士》
伏せカードが1枚
フィールド魔法
《アンデットワールド》
「私のターン! ドロー!
っ、打つ手がない……。けど、私は負けない!
カードを1枚セットして《幻奏の音女アリア》と《幻奏の音女カノン》を守備表示に変更。これで私のターンは終了する!」
(私の手札には《幻奏の音女エレジー》がある。だけど《アンデットワールド》がアドバンス召喚を許してくれない。裏守備表示でのセットすら許されない。次のターンであのカードが引ければ、まだ私に勝ち目はある! その為には《業火の重騎士》に《幻奏の音女アリア》を処理して貰わないといけない。ゴメン《アリア》! でも私は遊歌に勝ちたい!)
ライフは1400ポイント。アンデットワールドによって自分のメインエンジンは止められ、自分のモンスターの攻撃力は0にされた。圧倒的に不利な状態だが柚子の目は死んでおらず、次のターンにはキーカードを引いてやると言う意気込みに満ちている。
【ノ-ギブアップ柚子】
LP 1400
手札 1枚
場 攻撃力0の《幻奏の音女アリア》
攻撃力0の《幻奏の音女カノン》
伏せカードは1枚
永続罠
《ガリトラップ-ピクシーの輪-》
「その目、可愛い目をしているな。私は好きなんだ。怯えた小動物のような目をした人が……!
私のターン、ドロー。……バトル! 《業火の重騎士》で《幻奏の音女アリア》を攻撃! ダメージステップ開始時に《業火の重騎士》の効果を発動! 《幻奏の音女アリア》を除外! これで柚子のフィールドに効果の対象にできない効果と戦闘破壊の耐性は無くなった!
私はこれでターンエンド! さあ、貴女の番よ」
【オペラ座の歌姫ストロング柚子】
LP 1400
手札 1枚
場 《幻奏の音女カノン》
伏せカードは1枚
永続罠
《ガリトラップ-ピクシーの輪-》
「私のターン! ドロー!
……! アリガトウ、ワタシノデッキ!
私は《幻奏の歌姫ソロ》召喚する!
バトルよ! 《幻奏の歌姫ソロ》で《業火の重騎士》に攻撃! 終幕のオーバーチェア!」
柚子のフィールドに現れたソロの歌姫は地獄の業火に包まれて舞台の奈落へと落ちていき、そして舞台に新たな主役が登場する!
「戦闘で破壊された《幻奏の歌姫ソロ》の効果!
デッキから《幻奏の音女プロディジー・モーツァルト》を特殊召喚する! そしてこれが最後の楽曲! 罠発動! 《幻奏のイリュージョン》! この効果によって《幻奏の音女プロディジー・モーツァルト》は遊歌の魔法・罠の効果を受けず、このターン2度の攻撃ができる!」
その説明を聞いた遊歌は走り出した。これまでのデュエル中に見つけておいたアクション魔法を回収して、このターンを生き延びるためだ。重騎士に乗って疾走する彼女の目に迷いはなく、このアクションフィールドを既に掌握していることが見てとれる。
「《幻奏の音女プロディジー・モーツァルト》の攻撃力は2600! これで終わりよ! 《業火の重騎士》に攻撃! 交響曲第1番! グレイスフルウェーブ!」
声による空気の衝撃が目に見える形で重騎士に直撃する寸前──
「アクション魔法発動! 《奇跡》!
フィールド上のモンスター1体はこのターン戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる!」
「甘いわよ! アクション魔法発動! 《白銀の槍》! フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる! このターン対象のモンスターは魔法・罠の効果を受けない!」
重騎士はその衝撃を回避した、かに見えたが白銀の槍に貫かれて回避しきる事ができず、衝撃に打たれて消えてしまう。重騎士の上に乗っていた遊歌も当然宙に投げ出されて空を跳んだ。
「っ、ぅあぁあぁぁああああああっ!」
「そして、これで止めよ! 《幻奏の音女プロディジー・モーツァルト》で遊歌にダイレクトアタック! 交響曲第2番! グレイスフルウェーブ!」
容赦なく空中の遊歌にプロディジー・モーツァルトの追撃が仕掛けられる。衝撃を受けた遊歌は空から地面に叩きつけられてライフポイントは0になった。アンデットの化物は退治されたのだ。
それを示すようにアンデットワールドによって発生していた瘴気は消え去り、白銀の宮殿街マドリースは活気を取り戻して嘗ての美しさを存分に見せつけていた。
ーーー
「遊歌。強いわね、貴女」
「なん、だと……?」
自分の無能さを証明するためにデュエルをした筈なのに、真逆の感想を抱かれただと……?
そんな馬鹿な。ちゃんと負けたじゃないか。伏せてあった《業炎のバリア-ファイヤー・フォース-》は使わなかったというのに。使っていたら4ターン目には終わっていた。アリアを破壊して、次のターンに《火車》と《業火の重騎士》で攻撃すればいい。総ダメージは4000を越える。
「それよりデュエルの時の貴女のテンションおかしくない? かなり変なことも言ってたような気もするし……」
「気のせい。私は普通。何の問題もない」
そう? といって柚子は引き下がってくれた。
確かに私はデュエル中にテンションが上がりやすいけど、そんなにおかしいのだろうか。むぅ。
「でも、本当に私は強くなんて……きゃっ」
「遊歌お姉ちゃーん! あはははっ!」
「ちょっと、アユちゃん? どうしたの?」
「うん! あのね、伏せカードが気になったの。教えてほしいなって思って」
気付かなくても良いところを……!
「そう言えばそうね。ずっと伏せられてたけど、何だったの? 私にも教えてくれない?」
「えっと、その……。ひ、秘密?」
えーっ! と2人の声が重なって私の鼓膜を揺らした。それより近くで叫ばないで。耳が痛いから。
「えらいハリキリ☆ガールがやって来たな……」
「遊矢? どうした、何を言っている?」
「いや、変な電波を受信したみたいだ。もう大丈夫だ。何だったんだ……? 満足とか聞こえたんだが……」
ーーー
「謎の仮面デュエリスト、だと……?」
「はい、裏デュエル界最強の実力者だと謳われています。実際に融合、シンクロ、エクシーズの全ての召喚法を使いこなしているという報告があります」
資料を見ながら報告をしている中嶋を見つめて、赤馬零児は考える。裏デュエル界の人物なら噂にならなくてもおかしくはない、と。
「それに最近の事ですが、彼女とデュエルをしたデュエリストが何人か心神喪失状態になったと報告されています。事実確認は取れていませんが、確証は高いと思われます」
「……どういうことだ。分かるように説明しろ」
裏デュエル界では電撃デスマッチは当然のように行われている。それによる死者も少なからず出る。
「その中でも彼女が殺したデュエリストの数は異常でした。しかし最近になって、デュエル後に廃人になる報告が相次いでいます。不可解なダメージを負った人物も居ると……」
「成る程、確かに興味深い。良いだろう。近い内にその仮面デュエリストとの試合を組め」
「そんな! 危険です、社長! それに彼女は裏デュエル界の人物です! 彼女と試合を組むには裏デュエル界に赴く必要があります! 社長をそんな場所に行かせるわけにはいきません!」
裏デュエル界は無法地帯だ。いくらLDSの御曹司でも関係なく襲いかかられる。デュエルの実力だけが物を言うのだ。
「中嶋。私の実力を信じられないのか?
大丈夫だ。その仮面デュエリストを倒し、私自らその実力、不可解な現象の真相を確かめてやろう」
何故かarc-Vの人達は強キャラ感が無いんですよね。もっとデュエルをして欲しいと言うか、圧倒的なデュエルが少ないと言うか。駆け引きも楽しいんですけどね。
それはそうと、文体の変更とデュエルの書き方を少し変えました。今までは三人称と一人称が混ざってたりしてたからね……。