遊戯王ARC-V Undead Duelist 仮面を添えて。 作:羽吹
「次元領域デュエル……!?」
「違う。何を聞いていたんだ。
エキシビジョンデュエルだ」
苛立ちと呆れの混じった声が私の鼓膜を震わせ、目の前の男性の眉間に普段よりも濃い皺がよる。
私は彼の様子に少し申し訳なさを感じるが、彼の望む反応を返すことはできない。私は別のことを考えていて話を聞いていなかったからだ。
……うん、完全に私が悪いな!
けどこれには理由がある。瑠璃だ。
昨日、瑠璃は私を寝かせてくれなかったのだ。
主にデッキの調整と愚痴に付き合わされたのである。私にはそれを断ることはできない。瑠璃は素性が確かではない私を信用して、同棲させてくれているのだ。邪険に扱えるわけがなかった。
ちなみに兄の黒咲は別の場所である。
瑠璃と私の出会いはこの次元に来てすぐの事だ。
順を追って語ろう。アカデミアを撃退した私は共闘した二人にできる限りの情報を話した。眼鏡マフラーさんとのデュエルなどについてだ。
相当に胡散臭い話だったこともあり、黒咲は私に反発した。そこで信用を勝ち取るために、私たちはデュエルを行うことになった。
眼鏡マフラーさんが言うには、私たちが居た次元はスタンダード次元と呼ぶらしい。
私はスタンダードの出身であることを証明する為に、この次元には存在しないらしいシンクロと融合を用いて闘ったのだ。
問題は融合だった。融合はアカデミアの使う召喚法だ。私にとって儀式、融合、シンクロ、エクシーズはどれも平等だったが、黒咲たちにとっての融合の価値観は敵の召喚法でしかなかった。
つまり、黒咲はキレた。
融合次元の手先めっ! と怒号を発し、RUMを使用して墓地からエクシーズ召喚を行ったのだ。
当然私は驚いた。しかもあろうことか黒咲はドラゴネクロを破壊した後に侮辱をしたのだ。
今考えればあれは融合自体への悪態だったのだけど、その時の私はアドレナリンが暴走していた。
つまり、私もキレたのだ。
当然別の次元に放り込まれ、変態とデュエルをさせられ、挙げ句の果てには
私は弾けた。戦神とブラムを使って、廃墟の街を瓦礫の山に変えてフィールを高めながら黒咲と闘った。
ユートは私たちを止めようとデュエルに乱入しようとしたのだが、私も黒咲も邪魔をするなと怒鳴り、どうしてこんなことに……。と呟いて周囲への被害を最小限に留めていた。
ターニングポイントは襲撃だった。
突然私の背後の建物が爆発したのだ。私は自身に迫る瓦礫を紙一重で避わして、建物が爆破した原因を見つけた。
柚子だった。
いや、間違えた。瑠璃だった。
柚子!? どうして柚子がここに?
逃げたのか? 塾長が暑苦しかったのか!?
等と驚いていると、瓦礫の山から黒咲が飛び降りて、私に無言の攻撃を叩きつけた。
吹き飛ばされた私に向かって、黒咲は一言。
彼女は柚子ではない。瑠璃だ。
と、そう私に告げた。
そんな彼女はデュエルディスクで私に斬りかかってきた。デュエルディスクは盾であり剣なのだ。
私はその斬撃を自分のデュエルディスクで受け止め、弾き飛ばして私から斬りかかった。
夜の廃墟の街で屋上から屋上へと飛び回り、パルクールをしながら何合かの打ち合いの果てに勝負は着かなかった。
今度はアカデミアが乱入したのだ。
青い服を着て仮面を被って私たちに襲いかかってきた。しかし、あの仮面には心がない。仮面を着ける時にはそこに自分のプライドを賭けるべきである。
なので私も仮面を着けてアカデミアを打ち倒した。貴様らの仮面、狩らして貰おう! と叫びながらデュエルを行い、仮面を数十個回収した。
N(長く)K(苦しい)T(戦いだった)。
私は黒咲兄妹を助けたり助けられたりしながら戦い、夜明けと共に最後に残った黒咲とのラストデュエルを瓦礫の山の上で執り行った。
勝敗は語らない。だが黒咲はドラゴネクロへの侮辱を撤回し、私はそれを受け入れた。
その後にキャンプに到着し、私は瑠璃に連れられて案内を受けることになったのだ。
そして今に至る。
あれから一月程は過ぎている。私や瑠璃は襲ってくるアカデミアを打ち倒し、炊き出しや孤児になった子たちの面倒を見るなどの手伝いをしながら過ごしていた。
闇のアイテムも順調に回復しており、もうすぐ帰れるだろう。この次元に心残りが無いと言えば嘘になるが、私はここの住人ではない。帰るべきなのだ。
ーーー
「遊歌、君は近い内に帰ると言っていたな。
隼も瑠璃も悲しむだろう。だが、遊歌には遊歌の世界がある。それは仕方の無いことだ。
そこでだ、君も知っているだろうが近い内にチャリティーイベントが催される。そのエキシビションデュエルに出てくれないか?」
一つの思い出になってくれれば良いと思ってな。
ユートは少し笑って、申し訳なさそうに言う。
「すまないが、融合は使わないで欲しい。
このイベントは心に傷を負った子供たちを勇気付ける為のものだ。遊歌は親を亡くした子供たちの所には良く行っていただろう? その子たちに融合のカードを見せたくないんだ。構わないだろうか?」
「それは良いんだけど、相手は誰なの?」
即答する。私に断る気は無かった。
「瑠璃がやりたがっていたから、瑠璃とは当たるだろうな。だが、子供たちの強い希望で遊歌だけは二戦する予定なんだ。隼か俺が相手になるだろうが、まだ決定してない」
それじゃあ、準備はしておいてくれ。
そう言い残してユートは去っていった。
恐らくこのデュエルが私のこの次元での最後のデュエルになるだろう。楽しみだ。
それが数日前のこと。
今日はイベントの当日。簡易に作られたステージに私とユートが立っており、観客の子供たちに手を振っていた。
「皆、ようこそ。私のステージへ!
さあ、エキシビションデュエルが始まるわよ!」
「今回の相手は俺が務める。皆、楽しんでくれ!」
私とユートが向き合う。
お互いにカードを5枚ドローして、デュエルが始まった。
「俺の先攻だ! 手札から《手札抹殺》を発動!
お互いに手札を全て捨て、その枚数分ドローする。俺は4枚捨て、その枚数分ドローする。
そして墓地の《
《
《幻影剣》を墓地に送り、1枚ドロー。
更に墓地から《幻影騎士団ダスティローブ》の効果を発動。このカードを除外し、デッキから『ファントム』モンスターを手札に加える。俺は《幻影騎士団サイレントブーツ》をサーチする。
行くぞ! 俺は《幻影騎士団ラギッドグローブ》を召喚。そして手札から《幻影騎士団サイレントブーツ》を特殊召喚! このカードは自分フィールドに『幻影騎士団』が居る時、特殊召喚できる。
レベル3《幻影騎士団ラギッドグローブ》と《幻影騎士団サイレントブーツ》でオーバーレイ!
戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ! エクシーズ召喚! 戦場を駆け抜けろ! 《幻影騎士団ブレイクソード》!」
蒼炎。
馬に騎乗する騎士が戦場を駆け抜ける。
鎧から覗く蒼炎が残滓を描いて、折れた剣を肩に担いでその騎士は悠然と構えている。
「《幻影騎士団ラギッドグローブ》の効果!
このカードをエクシーズユニットとした時、そのエクシーズモンスターは攻撃力を1000アップする効果を得る! これで《ブレイクソード》の攻撃力は3000にアップした!
カードを3枚セットして、墓地の《幻影騎士団クラックヘルム》の効果を発動。このカードを除外し、エンドフェイズに墓地の『ファントム』カードを手札に加える。
俺は《幻影剣》を手札に加え、ターンエンド!」
ランク3 ATK2000
《幻影騎士団ブレイクソード》
【ユート】
LP4000
手札2枚(1枚は《幻影剣》)
場 ATK3000
《幻影騎士団ブレイクソード》
伏せカードが3枚
「私のターン、ドロー。
1ターン目から飛ばすわね! 息切れしても知らないわよ!
手札から《闇の誘惑》を発動! カードを2枚ドローし、手札から闇属性モンスターを除外する。
私は《ネクロフェイス》を除外! そして《ネクロフェイス》が除外された時、お互いはデッキトップからカードを5枚除外する」
ユートはデッキからカードを除外して訝しげな顔をする。まさかデッキ破壊か、とでも考えているのだろうか。
安心して欲しい。今回はデッキ破壊をするつもりはない。
「除外された《不知火の武士》の効果で墓地の《不知火の宮司》を手札に加え、《手札断殺》を発動。お互いに手札からカードを2枚墓地に送り、2枚ドローする。《幻影剣》は捨てて貰うわよ!
そして《不知火の宮司》を召喚! 《不知火の宮司》は召喚に成功した時、手札・墓地から『不知火』モンスターを特殊召喚できる! 墓地から復活せよ《不知火の鍛師》!
そして墓地から《馬頭鬼》を除外して、墓地から《ゾンビ・マスター》を特殊召喚。《ゾンビ・マスター》は手札のモンスターを捨てることで自分の墓地からレベル4以下のアンデット族モンスターを特殊召喚できる。《妖刀ー不知火》を特殊召喚!」
これで私のフィールドにはレベル4のモンスターが3体にチューナーが1体。
「チューナーモンスター。……シンクロ召喚か」
目を細めてそう呟いたのは黒咲だ。
皆知っているだろうが、前回のデュエルではシンクロモンスターは黒咲を苦しめたのだ。
「レベル4の《不知火の宮司》、《不知火の鍛師》、《ゾンビ・マスター》の3体でオーバーレイ!
太陽を司る女神! 妙なる調べを以て顕現せよ!
──エクシーズ召喚《武神姫ーアマテラス》!」
太陽神。エジプトではラーが挙げられるが、日本の神話ではアマテラス大御神だ。
神の名を冠するだけはあって、その効果は非常に強力である。
ランク4 ATK2600
《武神姫ーアマテラス》
「《武神姫ーアマテラス》の効果。自分のターン、オーバーレイユニットを1つ取り除き、ゲームから除外されているレベル4以下の自分のモンスターを特殊召喚する! 戻ってきて《馬頭鬼》!
そしてレベル4《馬頭鬼》にレベル2《妖刀ー不知火》をチューニング!
──シンクロ召喚! 《刀神ー不知火》!」
ブレイクソードと同じ蒼い炎を発する刀を握りしめて、武士は騎士を睨み付けた。
レベル6 ATK2500
《刀神ー不知火》
「《刀神ー不知火》の効果! 1ターンに1度、除外されている自分のアンデット族モンスターをデッキに戻し、その攻撃力以下の相手フィールドのモンスターを守備表示に変更する!
私は《バーサーク・デッド・ドラゴン》をデッキに戻し《幻影騎士団ブレイクソード》を守備表示に変更!
これで《ブレイクソード》は破壊できる! 《刀神ー不知火》で《幻影騎士団ブレイクソード》を攻撃!」
「罠発動! 《幻影翼》! この効果により《ブレイクソード》はこのターンに1度だけ破壊されない!」
白刃が走る。騎士の騎乗する馬を切り裂き、バランスの崩した騎士の甲冑に刀が突き刺さる、寸前。
倒れ伏した馬から幻影の翼が現れて騎士を包み込む。刀の通過した後、騎士はその幻影に守られて無傷だった。
「奇跡は2度も起こらない!
《アマテラス》で《ブレイクソード》を攻撃!」
「《
破壊された《ブレイクソード》の効果! エクシーズ召喚されたこのカードが破壊された場合、墓地から同じレベルの『幻影騎士団』を2体特殊召喚する!
今一度立ち上がれ! 《幻影騎士団ラギッドグローブ》、《幻影騎士団サイレントブーツ》!
この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がる! よってレベルは4になる!」
アマテラスによってブレイクソードは破壊され、しかしブレイクソードは場に2体の幻影騎士団を残す。
モンスターが入れ替わり立ち代わりするデュエルに、子供たちだけではなく大人たちもデュエルに見入ってくれている。その期待には応えなければならない。
「私はカードを4枚伏せてターンエンド!」
【遊歌】
LP4000
手札0枚
場 《刀神ー不知火》
《武神姫ーアマテラス》
伏せカードが4枚
【ユート】
LP4000
手札2枚
場 レベル4《幻影騎士団ラギッドグローブ》
レベル4《幻影騎士団サイレントブーツ》
伏せカードが2枚
「俺のターン! ドロー! 行くぞ!
漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!
──エクシーズ召喚! 今、降臨せよ! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」
黒い竜だ。
「《武神姫ーアマテラス》の効果。相手のターンにオーバーレイユニットを1つ取り除いて、ゲームから除外されているレベル4以下の自分のモンスターを手札に加える。
私は《ネクロフェイス》を手札に加えるわ!」
「《幻影騎士団ラギッドグローブ》の効果で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力は1000ポイントアップする!
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果! オーバーレイユニットを2つ取り除いて、君の《武神姫ーアマテラス》の攻撃力を半分にして、その数値分《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力を上げる!
これで攻撃力は4800になった!
バトルだ! 《ダベリオン》で《アマテラス》を攻撃! この時、罠発動! 《タイラント・ウィング》!」
「遂に略したわね……。罠発動! 《捨て身の宝札》! 私の場の表側表示のモンスターが2体以上存在し、その攻撃力の合計が相手フィールドの一番攻撃力の低いモンスターの攻撃力以下の場合、2枚ドローする!
《ダベリオン》は4800、《アマテラス》と《刀神ー不知火》の攻撃力の合計は3800! 条件は満たす!」
神々しい光を放つアマテラスがくすみ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの顎に貫かれた。
その攻撃力の差は3900。私の残りライフは100になり、デュエルディスクに赤い光が灯る。
「《タイラント・ウィング》はドラゴン族モンスターを対象に発動できる。このカードを攻撃力・守備力を400アップさせる装備カードとして対象モンスターに装備する。そして装備したモンスターは2回までモンスターに攻撃できる! ただしこの装備カードはエンドフェイズに破壊される。
行くぞ! 《ダベリオン》で《刀神ー不知火》を攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!」
「罠発動! 《シンクロ・バリアー》!
シンクロモンスターをリリースしてダメージを無効にする! このターン私にダメージはない!」
刀神ー不知火が次元の狭間に飲み込まれ、光る波動のバリアがダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの顎を受け止めて私にはダメージはない。
(何っ……? フリーチェーンのダメージ無効の罠だと……! どうして先ほど使わなかった? ミスか? いや、遊歌はそんなミスはしない。ダメージを受けることに意味があるのか……?
だが3900ものダメージを看過したと言うことは、逆転の一手が既に見えていると言うこと!)
「ならば、真正面から迎え撃つまでだ!
手札から速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動し《幻影騎士団ダスティローブ》、《幻影騎士団サイレントブーツ》、《幻影騎士団フラジャイルアーマー》の3枚を墓地に戻す。
更に墓地から《シャッフル・リボーン》を発動! 《タイラント・ウィング》をデッキに戻して1枚ドローする! 《タイラント・ウィング》が破壊されるのはエンドフェイズ。まだ破壊されていない! だが《シャッフル・リボーン》のこの効果を使ったターンのエンドフェイズに俺は手札を1枚除外する。
そして罠発動! 《死なばもろとも》!
お互いに手札が3枚以上存在するときに発動できる。お互いの手札を好きな順番でデッキボトムに戻して、俺はその枚数×300のライフを失う。その後、お互いにカードを5枚ドローする!」
ユートはライフを1800失ってまで手札を増強する。次の私の攻撃を正面から受け止めるつもりなのだろう。
「そして墓地の《幻影騎士団ダスティローブ》を除外して、デッキから《幻影騎士団クラックヘルム》を手札に加える。同様に《幻影騎士団サイレントブーツ》を除外して《
更に《幻影騎士団フラジャイルアーマー》を除外して、手札から《幻影霧剣》を墓地に送り1枚ドロー。
速攻魔法《手札断殺》を発動し、お互いに2枚のカードを墓地に送り、2枚ドローする!
カードを5枚セットして、フィールド魔法《エクシーズ・テリトリー》を発動! このカードがある以上、エクシーズモンスターはダメージ計算時のみ、そのランク×200の攻撃力を上げる!
そして《幻影騎士団クラックヘルム》の効果。エンドフェイズに墓地から『ファントム』カードを手札に加える。俺は《シャッフル・リボーン》の効果を先に発動し、後から《幻影騎士団クラックヘルム》の効果を使う。よって俺は手札を除外する必要はない」
【ユート】
LP2200
手札1枚(幻影霧剣)
場 ATK4800
《ダーク・リベリオン・
エクシーズ・ドラゴン》
伏せカードが5枚
フィールド魔法
《エクシーズ・テリトリー》
【ユーカ】
LP100
手札5枚
場 伏せカードが2枚
「私のターン、ドロー!
いい読みね、ユート! 私には既に勝利の方程式は完成している! 後は微分するだけ!
私は墓地から《妖刀ー不知火》の効果を発動!
このカードと墓地のアンデット族モンスターを除外して擬似的なシンクロ召喚を行える!
レベル6《地獄の門番イル・ブラッド》にレベル2《妖刀ー不知火》をチューニング!
ここから始まるスペクタクル! マジック、トラップ大いに結構! 捩じ伏せますので!
──シンクロ召喚! 《戦神ー不知火》!」
久しぶりの口上にちょっと満足しながら、私はシンクロモンスターをデュエルディスクに置く。
私には攻撃力勝負は柄じゃないのだけど。それはできないと言うことではないのだ。
「《戦神ー不知火》の効果! 特殊召喚に成功した場合、墓地のアンデット族モンスターを除外して、その攻撃力の数値を《戦神ー不知火》の攻撃力に加える!
私が除外するのは《刀神ー不知火》!
よって《戦神ー不知火》の攻撃力は5500!
まだよ! 除外された《刀神ー不知火》の効果! 相手モンスター1体の攻撃力を500下げる!」
「墓地より罠発動! 《スキル・プリズナー》!
その効果により、このターン《ダベリオン》はモンスター効果を受け付けない! よって攻撃力は4800のままだ! 《エクシーズ・テリトリー》を合わせて攻撃力は5600! 《戦神ー不知火》では届かない!
遊歌! 君の方程式は間違いだらけだ!」
ユートは不敵に笑って私を見た。
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを信頼しているのだろう。その目には一切の曇りがなかった。
皆の笑顔の為に戦っている現状が嬉しいのだ。
「いいえ! 私の方程式は正しい! 私が白と言えば黒でも白で、身体測定でもBだと言えばBなのよ!
さあ、バトルの時間! 私は《戦神ー不知火》で《ダベリオン》に攻撃! 不知火流 2刀の舞!」
「馬鹿なっ! 攻撃力は俺のモンスターの方が上だというのに! 《ダベリオン》、返り討ちだ!」
その鋭利な顎が2刀を持つ戦神を襲って。
「ふふっ。私は
この瞬間、墓地から《タスケルトン》の効果を発動する! このカードを墓地から除外することで、モンスターの攻撃を止めることができる!
《ネクロ・ガードナー》《超電磁タートル》とは違い《タスケルトン》は自分の攻撃にも使える!
この瞬間、手札から速攻魔法発動! 《ダブル・アップ・チャンス》! バトルが無効になった時、無効にされた攻撃モンスターをもう一度攻撃させられる! そして、そのダメージステップの間は攻撃力が2倍になる!
これで攻撃力は11000ポイントまで上がる!
だけどこれで終わりじゃない! 行くわよ、私の魂の鼓動! 罠発動! 《魂の一撃》!
このカードは1ターンに1枚のみ使える。ライフを半分払い、自分フィールドのモンスター1体を選択して、その攻撃力を自分のライフが4000を下回る数値分アップする! 私のライフは50! よって3950ポイントの攻撃力を《戦神ー不知火》に加える!
攻撃力は9450に上がった! 《ダブル・アップ・チャンス》を合わせて攻撃力は18900まで上昇する!
力こそパワー! これで13300のダメージよ!」
圧倒的な力で捩じ伏せるのはキングのデュエルであり、クイーンのデュエルではないので、私は普段から攻撃力で粉砕するデュエルはしないのだけど。
今回は例外。ユートはまさしく攻撃力で圧倒する、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンをエースにしているのだ。このビックウェーブには乗らなくちゃ(使命感)
……孤児の子たちもそれを楽しみにしているだろうから、その期待も裏切れない。
「ここまでの攻撃力は滅多に見ないな。
流石は遊歌だ。だがユートならこの逆境でも打ち勝つ筈だ! 耐えろユート。ここが正念場だ!」
などと最前列の観客席から聞こえてくる。
どうしてユートを応援するんだ。私を応援しろ私を。
「ふっ、俺は正面からこの逆境に反逆する!
罠発動! 《エクシーズ・ソウル》!
自分または相手の墓地からエクシーズモンスターを選択して発動できる。自分フィールドのモンスターの攻撃力は選択したモンスターのランク×200ポイントアップする。
俺が選ぶのは《アマテラス》! ランク4! よって《ダベリオン》の攻撃力は800アップする!」
「焼け石に水よ。それでは攻撃力は6400にしかならない。《戦神ー不知火》の18900までは遠すぎるわね!」
その程度の攻撃力上昇では3倍近い攻撃力の差は埋められない。だが、そんなことは分かっているとばかりにユートは笑う。欠片も諦めていないのだ。
「魂は砕けない! 罠発動! 《魂の一撃》!
1ターンに1度、ライフを半分払い、4000ポイントを下回る数値分《ダベリオン》の攻撃力を上げる!」
「足りないわよ! 2900ポイント上げたところで9300! 《戦神ー不知火》の半分にも満たない!」
【ユート】
LP1100
手札1枚
場 ATK4800
《ダーク・リベリオン
エクシーズ・ドラゴン》
伏せカードが3枚
チェーン2《エクシーズ・ソウル》
チェーン3《魂の一撃》
フィールド魔法
《エクシーズ・テリトリー》
【遊歌(死亡フラグ建設中)】
LP50
手札5枚
場 攻撃力5500
《戦神ー不知火》
伏せカードが1枚
チェーン1《魂の一撃》
「そして速攻魔法発動! 《非常食》!
このカードは自分フィールドの魔法・罠カードを墓地に送ることで効果を発動する。墓地に送ったカード×1000のライフを回復する!
俺は《魂の一撃》のみを墓地に送る!」
「自分のライフを回復……!? どうして《魂の一撃》にチェーンしてそんなことを……! まさかっ!」
「そのまさかだ! 言った筈だ、魂は砕けないと!
罠発動! 《闇よりの罠》! ライフを1000払い発動できる! 墓地に存在する通常罠を選択して、同じ効果を得る! これによって《魂の一撃》の1ターンに1度しか使えない誓約に反逆する!
だがこれは効果のコピーなので、残念ながらコストであるライフの半分は支払えない!」
コストと効果の応用だ。
非常食のコストで魂の一撃を墓地に送ることで、同一チェーン上に同じ効果を得た闇よりの罠を使えるのだ。
このコストを応用すれば、理論上自分の魔法・罠だけでかなりのチェーンを組める。チェーンバーン等で使われる技術である。
【ユート】
LP100
手札1枚
場 ATK4800
《ダーク・リベリオン
エクシーズ・ドラゴン》
伏せカードが1枚
チェーン2《エクシーズ・ソウル》
チェーン4《非常食》
チェーン5《闇よりの罠》
(開きスペース)
チェーン3《魂の一撃》
フィールド魔法
《エクシーズ・テリトリー》
【遊歌】
LP50
手札5枚
場 攻撃力5500
《戦神ー不知火》
伏せカードが1枚
チェーン1《魂の一撃》
「っ、でも! 《闇よりの罠》の攻撃力上昇は3900。チェーン処理の都合上《非常食》で回復した後に攻撃力が上昇する為《魂の一撃》の攻撃力上昇は2900!
《エクシーズ・テリトリー》を合わせても攻撃力は13200! 《戦神ー不知火》の攻撃力は越えられない……っ!」
「それはどうかな? 罠発動! 《三位一体》!
エクストラデッキのカードの種類を宣言する。お互いのエクストラデッキを確認し、宣言した種類のモンスターが多かったプレイヤーは、ライフを3000回復してもらう。
俺が宣言するのは、シンクロモンスターだ!
そして俺のデッキにはシンクロモンスターは居ない! さあ遊歌。君のエクストラデッキはどうかな?」
悪役のように私を見るユートに、しかし私は閉口せざるを得ない。頭が少し熱を持った。
まさか、魂の一撃で強化したダブル・アップ・チャンスを真正面から越えらるとは思わなかった。
それも《不屈の闘志》や《オネスト》のような相手の攻撃力を加える系統のカードを使わずに、だ。つまりは自分の力だけで私のモンスターを越えたのだ。
「私のエクストラデッキにシンクロモンスターはまだ存在するわ。よって私のライフは3000回復する。
流石ね……。これで《ダベリオン》の攻撃力は13200になり《戦神ー不知火》の攻撃力は12900になる。
そして私ではこのバトルは止められない……!」
そしてダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃が戦神ー不知火を捉え、戦神は破壊された。
(本当、私はいつもこうね。肝心な所で失敗ばっかり。昔も、今も。大切なものは失ってばかり……。
あの子たちの期待、応えられなかったな……)
「でも。それでも! この勝利だけは譲らない!
罠発動! 《ヘル・ブラスト》!
自分フィールドの表側表示のモンスターが破壊された時に発動できる! フィールド上の一番攻撃力の低いモンスターを破壊して、お互いにそのモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける!
これはダメージステップの発動よ! よって貴方の墓地の『ファントム』カードの効果は使えない!
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を破壊して、その攻撃力の半分のダメージ、つまり6200のダメージをお互いに受ける!」
「くっ、引き分けるつもりか……!?」
ユートの顔が驚いたように歪む。エキシビションデュエルとは言え、勝利を捨てるのかと表情が語る。
だが、安心して欲しい。そんな事はない。
「大事な事なのでもう1度言うわ!
私の
これが最後のピース! 《シンクロ・バリアー》! この効果は私のターンの終了時まで続いていた!
その上このカードは効果ダメージすら受け付けない! 《ヘル・ブラスト》の効果は貴方だけが受ける!」
「ぐぅぉおぉぉおおああぁあぁぁあああっ!」
ヘル・ブラストの効果を受け、悲鳴を上げて吹き飛ばされるユートを黒咲が救助しようと駆けていった。
「私の、勝ちだ……!」
だが孤児の子たちはダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの方が、戦神ー不知火よりも格好良かったのだろう。皆ユートの方に走っていった。
アンデットは化物だから。私みたいな化物に憧れるよりは、何倍も良い筈だ。その筈だ。
だけど、どこか心が寒かった。
黒咲の霊圧が……消えた……?
瑠璃の性格が判明すれば、vs黒咲は語られるかもしれません。
ちょっと丁寧めに文章を変更。勢いが減りますが、読みやすくはなった、筈。なってたらいいなぁ……(願望)