とある二年の教室にて雑談をしている2人組がいた。
「おいおい、聞いたか?今年の一年にヤベェ奴が入学してくるって話。」
「聞いた聞いた。暴れオーガだろ?不良20人を無傷でボコしたとか…」
「暴れオーガじゃねえよ。もう一人ヤベェのがいるだろ?」
そんな雑談をしていると突然ドアが開かれた。そちらを見ると石矢魔の制服を着たスキンヘッドに額の傷が特徴の男がコツコツと歩いて教壇の方に上がった。
「あ…あいつは!?」
「どうした!?知っているのか?」
「大河内二郎…今年入学してくる大河内三郎の次兄だよ。何で石矢魔の制服を着てやがるんだ?」
そんな会話を無視するかのように二郎は教壇に立つ。そして驚きの言葉を発した。
「ほう…ここが俺の教室か。」
その教室にいた生徒は山彦のように繰り返し聞こえ、凍りついた。つまり、二郎はここに転入してきたということだ。
「おー、二郎。ここがお前の教室か。」
そしてもう一人、二郎と同じく石矢魔の制服を着てかつ特徴的な額の傷を持ったリーゼントの男が現れ二郎を呼ぶ。少なくともこの石矢魔で二郎を知っている人間で呼び捨てに出来る人間はいない。二年の生徒はその男の正体がわかってしまった。
「そうだよ。兄ちゃん。」
その男の正体は二郎の兄、大河内一郎だ。一郎は周りを見渡すとつまらなさそうに鼻を鳴らす。
「ここにいてもつまらねえし、三郎のところに行くか?」
「そうだね。兄ちゃん。」
凶悪極まりない二つの台風が過ぎ去り、二年達はホッと一息吐いた。
「おいおい聞いてないぞ…何で大河内兄弟が転入して来たんだ?」
「そりゃ末っ子の三郎を迎える為じゃないか?三郎の噂が聞けないのは凶暴過ぎるから…って聞いたぜ。目ぇつけられたら最後だ。」
「マジか…こんな格好してくるんじゃなかった…」
〜一年の教室〜
その頃、噂の種のなっている張本人、大河内三郎は唸っていた。その唸り声と肉食獣のような目つきが余計に周りの生徒をビビらせてしまい、生徒達は三郎の半径5メートルは近づかず、遠くで見るしかなかった。
「(あああっ!何てバカなんだ!?僕は!?県外の高校でこんなところしか受からない何て!!)」
しかし三郎は噂とは違い小心者だった。
「(でもこれでお兄ちゃん達と関わりのない生活が出来ると思えば…)」
気弱な三郎は少しでも二人の兄達と離れるべく県外の高校に入学しようとしてきた。しかし三郎は頭が非常に悪く名前を書くだけで入学出来ると揶揄されている石矢魔高校しか受からなかった。
「よー、三郎。」
三郎が一安心していると長兄一郎と次兄二郎が石矢魔の制服を着て教室に入ってきた。
「お、おおおお兄ちゃん!?何でここにいるの!?」
三郎は何故二人がここにいるのか理解出来ず、混乱する。二人は千葉県の石矢魔と揶揄される高校に在学しており、少なくともここにいるのは間違いである。そう思っていると一郎の口から答えが返ってきた。
「決まってんだろ?三郎のクラスメートに一言言っておこうと思ってよ。」
「そう言うことじゃなくて、お兄ちゃん達学校は?!」
「ここに転校してきた。」
三郎が声を荒げ、尋ねるが二郎はキッパリとそういった。
「(なんてこった…お兄ちゃんから逃れられないのか…)」
三郎はショックを受け、机に寝伏せてしまった。
「まあそんな訳でよろしく頼むわ…」
そんな三郎の気持ちは無視して一郎と二郎が自己紹介を終えると威圧のある低い声を出した。
「ちなみに三郎に手ェ出したら…死ぬ事になるかもしれねえから気をつけた方が良いぜ…なぁ二郎?」
「あぁ…全くだよ。兄ちゃん…」
不良達は理解してしまった。三郎を倒したとしても一郎と二郎の報復が待っていると。
「い、いいから出て行ってよ!お兄ちゃん!」
三郎はそんな兄達を押して無理やり追い出す。三郎自身はそれが嫌だった。ありのままの自身を見て欲しいからこそこの石矢魔高校に入学したのだ。一郎と二郎が脅迫したら平穏な学校生活が送れなくなってしまう。それ故の行動だった。
「馬鹿。心配してんじゃねえか。」
一郎も二郎もそう言って追い出され、その教室は静まり帰った。
「(やっといなくなった…)」
三郎が一安心して周りを見ると丁度いい具合にリア充がいた。そのリア充と「一緒にジュースを飲みに行こう」と誘おうとした。
「安田…」
しかし三郎は途中、どう話せば良いか迷ってしまった。
「ひいっ!!」
その結果、リア充生徒の安田が怯えてしまった。ここで三郎は少しでも警戒されないように続けた。
「ジュース…」
「ひいいぃぃーっ!ジュース買ってきますーっ!!」
安田は三郎の言葉を遮り、自動販売機まで走って行き、戻ると全種類のジュースを三郎に渡しその場から逃げてしまった。
「すげえ…もうパシらせてやがる。パネェよ。」
「パネェな。」
すぐに生徒をパシさせたことに他の生徒達は戦慄した。
その直後、一郎や二郎に並ぶほどの大柄な男がドアを乱暴に開いた。その男は安田の首を持ち気絶させ、その場に捨てた。
「おいおいあれって城山じゃないか?」
その男、城山をみて噂好きの生徒たちはヒソヒソと聞こえない声で話し合う。
「城山って言ったら、石矢魔統一に最も近い神崎の片腕の名前だよな?」
「なんでこんなところに…?」
そんな疑問を解くように城山が口を開いた。
「大河内三郎はお前か?」
「え?は、はい。」
「神崎さんのヨーグルッチを奪ったのは許せん…」
城山は神崎の好物であるヨーグルッチを安田に先を越され、買えなくなってしまった。それ故にヨーグルッチを奪った安田を追いかけ尋問し、ここまできた。そしてその
「三郎になにしてんの?」
だがそれを止めたのは三郎の兄、二郎だ。
「邪魔をするな!」
城山は二郎の拘束から逃れ、怒鳴る。それがいけなかった…
ガンッ!!
城山は天井に叩きつけられ、重力に従い、バスケットボールのようにバウンドする。
「俺に命令してんじゃねーっ!殺すぞっ!!」
それを引き起こした犯人である二郎はキレ、城山に追い打ちをかけ半殺しにする。
「兄ちゃん止めてよ…」
三郎はそれを黙って見ているしかなかった。だが一人の男が現れ、三郎を安心させる。
「おー、どーした二郎?」
「あっ!一郎お兄ちゃん!大変だよ!」
三郎はおどおどと一郎に詰め寄って二郎を止めようとした。しかし二郎の言葉によってそれは無駄におわった。
「おー、兄ちゃん。こいつが三郎に殴りかかったからよ…」
「何ぃ?」
それだけ聞けば充分だった。一郎は三郎を振り切り、城山の元に向かった。
「ナメんじゃねえっ!!」
一郎の蹴りが城山を独楽のように回転させ、再び城山は天井にぶつかりバスケットボールのようにバウンドした。
「大河内一族に歯向かったらどーなるか体で思い知れぃっ!!」
ガンガンガンガンッ!
もはや格闘ゲームのハメ技のような状態で一郎は城山に向かって叫ぶ。その有様はその場にいた全員がドン引きさせた。
「一郎お兄ちゃん止めてよ!」
「そうだよ。兄ちゃん。」
先程まで城山をボコしていた二郎が一郎を止め、三郎は一安心出来ると思っていた。だがそんな期待を裏切る言葉が二郎の口から発せられた。
「ここじゃ人の目があるから裏でじっくりと…」
「それもそうよの…俺としたことが…」
不気味な笑い声と共に一郎と二郎は城山を引きずり、その場を立ち去った。翌日、城山が全治一ヶ月の入院を余儀なくされたが一郎と二郎は責任を、通りすがりのトラックに擦りつけていたので学校側は退学処分を言い渡さずにいたのは余談である。
次回、べるぜバブの方の主人公が出てきます。今回は習作なのでそんなに期待しないでください。